木工芸・漆・道具        

 木肌の美しさに惹かれ、指物の伝統技術と道具に魅せられて・・・・・ 木工芸 市川 (宇治市炭山)

鞴(ふいご)修理

2008-09-05 22:23:44 | 木工
 少し前の仕事ですが、いつかブログに、と思っていた記事です。

三木の千代鶴貞秀さんの紹介で三木金物古式鍛錬技術保存会の鞴修理の仕事をさせてもらいました。

いくつかの古い鞴の中から傷みの比較的少ない1台を預かってきました。




長年の使用の中で、底や周りが焼けてたり、




土に埋めて使っている部分は腐りがきていました。

底板をはずしてみると・・・




底板は半分炭になっていました。
外が燃えているわけではないので、空気の吹き出し口から入ってきた熱風により、長い時間をかけて炭化していったものでしょう。




丁寧に分解し、部分的な焼けこげは補修し、傷みのひどい部材は交換することにしました。
材はすべて杉の柾目板を使っています。




先板の焼けた部分は切り取り、新しい板を核矧ぎ(さねはぎ)しました。




薄い(2.5~3分)側板は、風圧に耐えられるよう接着面の広い相欠き接ぎにしました。




底板は作り変えました。底板についた小穴(溝のこと)に側板がはめ込まれます。
ところがこの鞴というのは単純な構造のようで随所に修理者をうならせるような仕掛けが・・・。
まず、側板は長さ120cm幅60cmほどの大きさながら厚みはわずか3分ほど。
これに空気の圧力がかかれば当然べこべこするはず。
それを防ぐため、横方向にも高さ方向にも内側にわずか湾曲させ張りを持たせているのです。
したがって、底板の小穴もわずかな曲線で掘らなければなりません。
また、狸の毛皮まいた板(ピストン)がスムーズに前後できるよう、底板には部分的にガラス板が貼られています。




杉の板で作られた弁は、和紙が貼られ、微妙な余裕を持って麻紐で取り付けられています。板は取り付け部分は薄く、下部が厚くわずかな厚みの変化を持たせて削られています。これも作りかえました。





板を打ち付けているくぎは普通のくぎではありません。頭の部分を巻いた巻頭釘(まきがしらくぎ)を使います。
1本1本鍛造して作られていて、普通の釘に比べるとさびにくく丈夫です。

今手に入る頭巻釘はこの鞴に使われているものに比べると頭の部分が短いです。
今回は特注する時間がなかったので、1寸6分(右側)の頭巻釘を使いました。








これで修理完了です。うまく空気を送ってくれました。
単純な仕組みの鞴ですが、あらゆるところに昔の工人の知恵が込められており、実に勉強になりました。
この経験を生かし、次は新しい鞴を制作してみたいと思います。材料の杉の柾目材はすでに準備してあります。側板の湾曲をどうして出すのか、その点が課題として残っていますが・・・。


コメント
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