上手な「教え方」
「教育」という場面では、教える側が上、教えられる側が下、という上下関係が構築されます。この上下関係が教育にまつわる様々な問題を引き起こしているのかもしれません。
その根本的な問題が、「教える側が自らの教育能力についてのフィードバックを得にくい」ということです。
教える側は上の立場ですから、下の立場である聞き手が「あなたの教え方は下手だ」とはなかなか言えません。
また、もし聞き手からフィードバックがあったとしても、教える側には「自分は立場が上だ」という意識がありますから、なかなか素直に批判を受け入れ難いという問題もあります。教育者を批判すること自体が難しい(その批判が正しいかの判断が容易でない)ということもあるでしょう。
私自身、人に何かを伝えたり教えたりするということは難しいなと常々感じておりまして。なにかヒントはないものかなと考えていた時に見つけた記事があります。
刑事弁護人経験のある弁護士の先生みたいな方が、どのように教えるのか。
なるほど、興味があります。
超一流刑事弁護人は教える内容も超一流ですが、教え方も超一流とのこと。
WEBでそんな記事を見つけてなんども読み返していて、「なるほどなぁ」と感じたので備忘録しておきます。
彼らの上手な教え方のポイントをまとめてみると、教える立場にある人にきっと役立つかな。そう感じました。
長いですが。元の文はもっと長いです。(^^;;
抜粋して再構成して、自分なりに備忘録してあります。(^O^)
では、まとめてみます。
長くてすみません。(^^;;
では、行きます。(^^;;
Point1 「今から何について話すのかを最初に明示する。」
最初にこれから話す内容を示してもらえると、聞き手は何について注意して聞けばよいのかがわかります。すると、集中すべきポイントとそうでないポイントの判断ができるため、的確に話の内容を把握できます。また、メモも非常に取りやすいです。
Point2 「大事なことは何度でも・形を変えて言う。」
「基本=簡単なことなんだから何度も言う必要はない」という考え方は大間違いといってよいでしょう。同じことを何度も、しかも形を変えて説明することで、初めて「大事なこと」は理解できるのです。
Point3 「結論を先に、結論と理由は必ずセットで説明する。」
結論を先に言ってもらうと聞き手は聞きたいことをすぐに聞けるので安心します。質問を受けて返答するときに、まず結論を指摘することは非常に質問者にとって見通しが良くなります。
結論を先に、その後に理由を説明するというパターンを守るだけでも、聞き手にとってはずいぶんわかりやすいものになると思います。
Point4 「抽象的な概念は具体例に即して説明する。」
身近な具体例はすぐに理解できるので、具体例を示してもらえれば、具体と抽象がリンクして抽象を理解できるようになります。そして、具体と抽象を行き来することで、抽象的な概念に対する理解を深めることができます。
Point5 「最後にまとめを入れる。」
全てにおいて結論→理由→具体例→結論というスタイルで貫きます。これは英文を書く時によく指導されるPREP法*1というスタイルです。このスタイルは長い時を経て磨きぬかれた、メッセージをわかりやすく伝えるスタイルであり、また広く知られているので、このスタイルを忠実に守るだけで、的確に相手に伝わりやすいです。
Point6 「理由の説明やアドバイスの内容は、原理原則から導く。」
原理原則から理由を説明してもらえると、応用が効きます。「どうせ知っているだろうから言わなくていいだろう」ではなく、少しでも聞き手にわかってもらうために、「当たり前のことも丁寧に説明する」ことを心がけることは大切でしょう。
Point7 「聞き手に素早く試行錯誤をする機会を提供する。」
試行錯誤をする機会を与え、しかもそのサイクルを素早く回せると、学習速度が非常に高まります。なぜなら、前回の試行錯誤を踏まえてさらに次の試行錯誤をすることができるので、同じミスをしなくなるだけでなく、よりレベルの高い事柄に挑戦することができるようになるからです。
Point8 「フィードバックを上手に返す。」
まず良かったところを褒め、その後悪かったところを指摘するという順番は重要です。指摘された側が自信を持てるという効果もありますが、それだけでなく「自分のこのやり方は正しいんだ」と確信し、できていないところに気を回すことができるようになるからです。
「こうしたらもっと良くなる」と言えば、学習者はそれを学んでさらに次のステップに行くことができ、学習の高速化を図ることができます。
なぜ良かったか、なぜ悪かったかの理由を述べることも重要です。良かったことの理由がわかれば、同じ理由が妥当する他の事柄でも同じやり方をしようと学習者が自分で改善しようと試みることができますし、悪かった理由がわかれば、自分で考えて修正することができます。
逆に言うと、具体的な行動につながらないアドバイスは無価値です。むしろ、アドバイスした(を受けた)気になっただけで実際には何も変わっていないのであれば、そのアドバイスは有害であるとすらいえます。
教える側が自分のしたアドバイスの内容を自ら実践して見せると、アドバイスを求めた側は自分が具体的にどうすればよいかがわかるので、次回の試行錯誤時にすぐアドバイスを反映できるようになります。
「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」という山本五十六の言葉は、まさに上手にフィードバックを返す方法を体現したものだと思います。
Point9 「十分な下準備がされている。」
Point10 「聞き手への敬意を持つ。」
時間をきっちり守るというのも、十分な下準備のおかげさまですし、聞き手への敬意からくるものでしょう。フィードバックを素早く丁寧に返すということも、聞き手を尊重しているからこそだろうと思います。
なぜ刑事弁護人は教えるのがうまいのか?
私見ですが、刑事弁護人の仕事のひとつは、刑事訴訟に関わる人たち(裁判官・裁判員・被告人等)に「自分の主張を伝えること」だと思います。どんなにがんばっても、自分の主張が相手に伝わらなければ説得することもできません。だから、彼らは「伝える技術」を徹底的に磨いています。何を、どんな順番で、どういう言葉で、どのタイミングで伝えれば伝わるのかにこだわりぬきます。
「伝える」ということは、「言葉の受け手がその言葉の意味を理解すること」です。そして、教育の内実のひとつはまさに「伝えること」であり、コミュニケーションそのものです。彼らはまた、コミュニケーションの達人であると言ってもよいでしょう。
最後に弁護人の言葉として紹介されていたものに以下のようなものがありました。
なるほどなぁと考えさせられますね。
このやり方は、たくさんの刑事弁護人さんたちが何十年もかけて試行錯誤し、築きあげてきた形のようです。
「いろんな冒頭陳述をしてみて、失敗して、結局この形に収まっできているとのこと。みなさんもぜひ、先人の結晶を受け継いでみてください。」
なるほど、説得力がありますね。
「教育」という場面では、教える側が上、教えられる側が下、という上下関係が構築されます。この上下関係が教育にまつわる様々な問題を引き起こしているのかもしれません。
その根本的な問題が、「教える側が自らの教育能力についてのフィードバックを得にくい」ということです。
教える側は上の立場ですから、下の立場である聞き手が「あなたの教え方は下手だ」とはなかなか言えません。
また、もし聞き手からフィードバックがあったとしても、教える側には「自分は立場が上だ」という意識がありますから、なかなか素直に批判を受け入れ難いという問題もあります。教育者を批判すること自体が難しい(その批判が正しいかの判断が容易でない)ということもあるでしょう。
私自身、人に何かを伝えたり教えたりするということは難しいなと常々感じておりまして。なにかヒントはないものかなと考えていた時に見つけた記事があります。
刑事弁護人経験のある弁護士の先生みたいな方が、どのように教えるのか。
なるほど、興味があります。
超一流刑事弁護人は教える内容も超一流ですが、教え方も超一流とのこと。
WEBでそんな記事を見つけてなんども読み返していて、「なるほどなぁ」と感じたので備忘録しておきます。
彼らの上手な教え方のポイントをまとめてみると、教える立場にある人にきっと役立つかな。そう感じました。
長いですが。元の文はもっと長いです。(^^;;
抜粋して再構成して、自分なりに備忘録してあります。(^O^)
では、まとめてみます。
長くてすみません。(^^;;
では、行きます。(^^;;
Point1 「今から何について話すのかを最初に明示する。」
最初にこれから話す内容を示してもらえると、聞き手は何について注意して聞けばよいのかがわかります。すると、集中すべきポイントとそうでないポイントの判断ができるため、的確に話の内容を把握できます。また、メモも非常に取りやすいです。
Point2 「大事なことは何度でも・形を変えて言う。」
「基本=簡単なことなんだから何度も言う必要はない」という考え方は大間違いといってよいでしょう。同じことを何度も、しかも形を変えて説明することで、初めて「大事なこと」は理解できるのです。
Point3 「結論を先に、結論と理由は必ずセットで説明する。」
結論を先に言ってもらうと聞き手は聞きたいことをすぐに聞けるので安心します。質問を受けて返答するときに、まず結論を指摘することは非常に質問者にとって見通しが良くなります。
結論を先に、その後に理由を説明するというパターンを守るだけでも、聞き手にとってはずいぶんわかりやすいものになると思います。
Point4 「抽象的な概念は具体例に即して説明する。」
身近な具体例はすぐに理解できるので、具体例を示してもらえれば、具体と抽象がリンクして抽象を理解できるようになります。そして、具体と抽象を行き来することで、抽象的な概念に対する理解を深めることができます。
Point5 「最後にまとめを入れる。」
全てにおいて結論→理由→具体例→結論というスタイルで貫きます。これは英文を書く時によく指導されるPREP法*1というスタイルです。このスタイルは長い時を経て磨きぬかれた、メッセージをわかりやすく伝えるスタイルであり、また広く知られているので、このスタイルを忠実に守るだけで、的確に相手に伝わりやすいです。
Point6 「理由の説明やアドバイスの内容は、原理原則から導く。」
原理原則から理由を説明してもらえると、応用が効きます。「どうせ知っているだろうから言わなくていいだろう」ではなく、少しでも聞き手にわかってもらうために、「当たり前のことも丁寧に説明する」ことを心がけることは大切でしょう。
Point7 「聞き手に素早く試行錯誤をする機会を提供する。」
試行錯誤をする機会を与え、しかもそのサイクルを素早く回せると、学習速度が非常に高まります。なぜなら、前回の試行錯誤を踏まえてさらに次の試行錯誤をすることができるので、同じミスをしなくなるだけでなく、よりレベルの高い事柄に挑戦することができるようになるからです。
Point8 「フィードバックを上手に返す。」
まず良かったところを褒め、その後悪かったところを指摘するという順番は重要です。指摘された側が自信を持てるという効果もありますが、それだけでなく「自分のこのやり方は正しいんだ」と確信し、できていないところに気を回すことができるようになるからです。
「こうしたらもっと良くなる」と言えば、学習者はそれを学んでさらに次のステップに行くことができ、学習の高速化を図ることができます。
なぜ良かったか、なぜ悪かったかの理由を述べることも重要です。良かったことの理由がわかれば、同じ理由が妥当する他の事柄でも同じやり方をしようと学習者が自分で改善しようと試みることができますし、悪かった理由がわかれば、自分で考えて修正することができます。
逆に言うと、具体的な行動につながらないアドバイスは無価値です。むしろ、アドバイスした(を受けた)気になっただけで実際には何も変わっていないのであれば、そのアドバイスは有害であるとすらいえます。
教える側が自分のしたアドバイスの内容を自ら実践して見せると、アドバイスを求めた側は自分が具体的にどうすればよいかがわかるので、次回の試行錯誤時にすぐアドバイスを反映できるようになります。
「やってみせ 言って聞かせて させて見せ ほめてやらねば 人は動かじ」という山本五十六の言葉は、まさに上手にフィードバックを返す方法を体現したものだと思います。
Point9 「十分な下準備がされている。」
Point10 「聞き手への敬意を持つ。」
時間をきっちり守るというのも、十分な下準備のおかげさまですし、聞き手への敬意からくるものでしょう。フィードバックを素早く丁寧に返すということも、聞き手を尊重しているからこそだろうと思います。
なぜ刑事弁護人は教えるのがうまいのか?
私見ですが、刑事弁護人の仕事のひとつは、刑事訴訟に関わる人たち(裁判官・裁判員・被告人等)に「自分の主張を伝えること」だと思います。どんなにがんばっても、自分の主張が相手に伝わらなければ説得することもできません。だから、彼らは「伝える技術」を徹底的に磨いています。何を、どんな順番で、どういう言葉で、どのタイミングで伝えれば伝わるのかにこだわりぬきます。
「伝える」ということは、「言葉の受け手がその言葉の意味を理解すること」です。そして、教育の内実のひとつはまさに「伝えること」であり、コミュニケーションそのものです。彼らはまた、コミュニケーションの達人であると言ってもよいでしょう。
最後に弁護人の言葉として紹介されていたものに以下のようなものがありました。
なるほどなぁと考えさせられますね。
このやり方は、たくさんの刑事弁護人さんたちが何十年もかけて試行錯誤し、築きあげてきた形のようです。
「いろんな冒頭陳述をしてみて、失敗して、結局この形に収まっできているとのこと。みなさんもぜひ、先人の結晶を受け継いでみてください。」
なるほど、説得力がありますね。