2005-06-09「7日朝日新聞夕刊記事より」<日記>再掲 本文と追補
<米教育界で新進化論争>
「神」に代わり?「知的計画」:[ニューヨーク=江木慎吾]
「生命の誕生や進化の背景には知的な背景があった」という「Intelligent Design(知的計画=ID)」説を学校で教えようと言う主張が、米国で頭をもたげている。米国では、旧約聖書の創世記に基づき、天地と人類は神が作ったとするキリスト教右派が勢力を保つ。そうした宗教右派の「進化論を学校で教えるな」と言う主張とは表向き一線を画しているのがID推進派の特徴だ。
<カリキュラム入りへ攻勢>
米東部ペンシルベニア州ドーバーで5月17日、日本の教育委員会に当たる学校区の公選委員の予備選挙があり、争点はIDの扱いをどうするかになった。何故生命は誕生したのか、生物がいかにして今の形を得たかは、進化論だけでは説明しきれず、そこに知的な計画が働いていると言うのがIDの主張だ。「神がつくった」とは言わない。
米国では州や学校区に教育内容を決める権限がゆだねられ、委員の構成で教育内容が左右される。ドーバーの学校区は昨年、高校の科学でIDに触れられるようになった。今のところ全米唯一とされる。<中略>
IDネットのジョン.カルバート共同代表は「進化は事実だとしても、推し進める何らかの仕組みがあるはず。それがIDだ。特に地球誕生や生命誕生は、進化論では説明できず、現在の自然界を見ても、知的な計画の存在を多くの科学者が認めている。」と言う。進化論を教えるな、とは主張しない。<後略>
以下概略を記します。現在の米国の教育界では「進化論推進派」と、神によって為されたとする「天地創造派」に二分されるが、政教分離によって公立学校では天地創造説を教えられないため、ID説を持ち出したとする見方もある。
以上が朝日新聞に掲載された内容であります。
2022年5月15日 追補
米宗教界で進化論を称えることはタブーとされるが、教義と進化論の矛盾が宗教界の足下に及ぼうとしているのを感じる。ここに来て環境に順応することによって進化してきた生物が、自助的に環境に呼応するのででなく、もっと大きな背景にある核となる存在によって、一貫した秩序の中にわれわれの生命がある。それは宇宙と一体であり、拡大伸長の絶えない運動の法則の下にある。「何かの仕組みがある」とは、恐らくこんなことを言っているのだと思う。ついでに言うなら、宗教の中でも科学と両立できるのは、お釈迦様の説いた仏教(本当の仏教)だけである、「気がつくのが遅過ぎた」と天才たちが言って世を去っている。われわれが地上に足をつけている間に、途方もない運動エネルギーが、途方もない法則によって、途方もない方向へと動かされている、と言うべきか。
物事には始めがあって終りがある。因果の法則に照らせば、ロシアのウクライナ侵攻は始めなのか結果なのか?われわれの目には始めに映るのだが、プーチンと取り巻きには結果だという。つまり、悪いのはウクライナで、EU側に走った浮気者だから「二度としないように思い知らせてやる」と殴る蹴るのDVに及んでいると云った、下町の無教養な叔父さんの趣が、ロシアの正当性を主張する根拠なのだろう。ロシアは小国と云われる由縁でもある。ウクライナの瓦礫の廃墟を見れば、今まで中立国だったフィンランドやスエーデンも、ロシアに信をおけない、おぞましい存在として、EUへの加盟に舵を切ったと云うのは、イヤと言うほどその気持ちが分る。
ウクライナの現状を、ロシア国民の多くはプロパガンダによって、叛乱分子の一掃のため、ウクライナを救うために義勇軍を送っているのだ、と信じている。真実から目を反らして相手国の心情に無関心でいられるのは、ロシアだけのことではない。
我が国においても沖縄基地問題は長年の腫れ物のように、問題を押しやることで本土の平安を得てきた。何が問題かは足下に問題を抱えてこそ、見据えることも出来るのではないか。