猛暑の夏が引き延ばされて、10月になっても夏日が続いていたのに、もう冬型の気候に慣らせようと順応態勢に入っている体がある。そんな経緯をもう一つの目が冷静に見つめている。昨日も今日も青天に恵まれた小春日の中を、喧騒からほど遠い一角に身を置いて世情の動きをかいま見ているのだが、所詮傍観の域を出ないけれど、悪夢の中で藻搔いているよりは感情放出の度合いは深く思い入れは強い。
世界がこれほどに荒れてきたのは、時代の転換期に差しかかっているからで、グローバル経済の行き詰まりがアメリカの世界牽引力をも弱めてきたからであろう。強権的な外交姿勢も必然的に影を潜めた、と思っていたところに、ロシアのウクライナ侵攻が勃発し、イスラエルのパレスチナ・ガザ地区への砲爆が半端ないほどに徹底した破壊を見せている。東アジアにも核の力を盾に自己主張を強めている国もある。混乱の中で身を処する努力は、窒息して息絶え絶えになるのを避ける自己救済の手段でもあろうが、止むにやまれずに行った最期の手段が、一方の正義をかざす大勢の規範から見れば異端と映る。どちらにも究極的な神判断ができないところに、人間の思想的バイアスが歴史を燻らせているとも云える。
かつてパレスチナ国があった。その前はイスラエル王国とユダ国があり、ともに滅亡の果てに各地に散った国人はモーセの導きでカナンの地に至り、パレスチナ国を打ち立てた。ユダヤ人の血脈はパレスチナ人の血の中に潜在して、本来のユダヤを保ってきたのである。エルサレム以前の創世記に現れるメソポタミアは、二つの河に挟まれた肥沃な地にアダムとイブの神話が生まれたところ。知恵の実の林檎を食べたことで永遠の命は死ぬ運命に変えられてしまった。そして今、イスラエルを建国したユダヤ人とは、どこから来て何者なのか。
確かにユダヤ人を名乗っているが、彼らの由来はひさしを借りて母屋を占拠したハザール人ではなかったか。パレスチナの地に「我らユダヤ人」と信じた輩が、「神に約束された地、イスラエルを建国する」といって割いて入った。ここに矛盾が起きているのだ。これを後押ししたのがアメリカであるから、混沌とした中東の情勢は、利権も絡んできな臭さを増している。恐らくこの情勢は対立が拡大して完全に世界は割れる。パレスチナ・ハマスが過激な行動に出たのも、究極の阻害された圧迫から誘爆されたもので、世界がパレスチナを忘れかけたことによる。
『馬脚を現す』とは、広辞苑によると、馬の役に扮した役者がうかつにも姿を見せてしまい、失態をやらかしてしまうことから、化けの皮が剥がれる、ぼろを出すことを言うのだとあった。世界はまさしく混沌のるつぼに向かって本性丸出しの怪状況にある。
ウクライナ問題ではロシアプーチンの一方的な領土侵犯が非難され、制裁を受けて孤立状態にあったかと思えば、いつの間にかロシアプーチンの上塗りとも云える、イスライルのパレスチナ空爆とガザ侵攻に全面支援を表明したバイデン大統領の二律背反、ロシア国連大使ネベンジャがいうところの『二重基準』が、低迷するロシアを蘇生させてしまった。世界を導く覇権国家は、とどのつまりは幻想だったのだ。アメリカにおけるユダヤロビーが政権に与える影響は大きなものがあるようだが、中東でのアラブ対策を要石とするイスラエルを支援することは、国是に適っているのだろう。日本人には分かりにくいアメリカの深部が、時として露骨に際立つときがある。