多摩の街路樹であるハナミズキが紅葉して赤い実をつけている。
大岳の裾に連なる多摩丘陵は、まだ緑の中にあって連綿と時の流れに委ねて沈黙している。その中にも雑木の楢やクヌギが黄葉し始めているのかも知れないが、まだ彼らの主舞台ではない。
月の末には、お決まりの「山また山」の山道を、性懲りも無く往来するのだけれど、さすがに相模湖の辺りは山肌がくすみ始めて、雑木の黄葉が際立ってきている。
仕事で行くのだが、できた品物を届けるだけだから、半分物見遊山的な気持ちのゆとりが持てる。若い二代目社長がお茶を勧めて、現況説明をしてくれた。まあ、工芸品の売れ行きは、ガクンと谷を描いて在庫の山となり、先の見通しはと言えば甚だ心もとない・・・高価なものはほとんど売れなくなったそうだ。
業績の落ちている時は、悪いことが重なるもので、素材にまつわる機械が故障して、復帰の見通しが利かない。そんな訳で、往きの積荷は重かったのだが、帰りは尻が持ち上がるほどに軽かった。製造業の多くは海外に拠点を移した結果、国内での業務連携が円滑に行かないで、零細業種を直撃しているのだ。
中央道で風を切って走るトラックも、なぜかふらついている感じがしてくる。その脇を走り抜ける私の車も、ぶるっと震えた。