どんより蒸し暑い梅雨さなかにあって、ひときわ目に付くのが七色十色のアジサイの花である。各家の庭にはその家を象徴するかのように濃い紫や深みのある青色、ある家には対照的な赤紫のそれぞれに精一杯の色合いを出している。
どんよりとした太陽の見えない空の下であるからこそ、アジサイは強い光彩を自ら発して通りがかりの私の心に迫ってくる。
アジサイの名所と言われる古刹や公園のアジサイには丹念に手入れされた、鑑賞者を意識して見事な花を咲かせる株も多いが、一般の家庭に咲くアジサイにも、そそとして力の限り咲き誇る数本の株から、言いようのない情を感じるのは何故だろう。
もちろん勝手に感じていることなのだが、その家に特別な感情を抱いているわけでもないし、家族構成も知らない。
それでも他家のアジサイであっても、我が家のと変わらない花情を発散しているから胸を打たれるのである。