「まだ発見できないのか?」
苛立だしげに職員に問いかける高原は、無理矢理にでも一緒に連れて出るべきだったと後悔のほぞを噛んでいた。取りあえず計画の第一段階が終わり、実行に移す機会を待つばかりになったというのに、本番前の予行演習を目論んでいた検体の全てが行方不明になろうとは、高原には予想外の衝撃だった。
(何が何でも発見しなければ・・・)
全ての準備は完了している。後は最後の実証テストを残すのみなのだ。最初期の、自分の細胞を利用した効果の検証に始まり、3体の検体を利用した、人体への直接投与による効果と副作用の検討を重ね、そして新たに入手した2体の検体による動物への投与限界量の評価まで行った。それに可能な限り精密に構築したシュミレーションと誤差を極力排した各種計算結果。後は最終調整したサンプルを利用して、本当にヒトへ効果を発揮しうるかどうかを確認し、最後の仕上げを行うのみなのだ。だが、このままでは最悪延期せざるを得ないかもしれない。ここまで完璧に研究を進めてきた高原にとって、そんな結末はもはや絶対に許容できない話だった。
「まだ見つからないのか?」
もう何度言ったか数える気も失せる科白を、高原は手近な職員に投げつけた。返ってくる答えも、聞き飽きた科白でしかない。男一人、女二人、子猫と子犬が一匹ずつ。これだけの団体がこの小さな建物の中でそう隠れていられる場所もないはずなのに。
こうなったら最後の手段をとってあぶりだすしかないのかもしれない。この研究所その物を、夢の時空に封じ込める。そうして根気よく鍛え続けたあの3つの精神波動を掴み取ればいいのだ。高原には、自分の全力を投じればそれくらいそう無理なく出来るとの自信があった。だがこれまでそれを躊躇していたのは、他ならないその行為が、あの忌むべき存在に、自分の居場所と目的を悟らせる結果になるかも知れない、という一点だった。来るべき日のために周到に準備を重ねること一年。最大の障害を排除してから一週間。あらゆる準備が整ってから20時間あまり。ようやく機が熟してきたこの場面で、出来ればそんな危険を冒したくはなかった。
「くそっ! 何をやっているんだ! まだ見つからんのか!」
苛立ちが益々募る中、そんな高原の逆鱗を殴りつけるような報告が、警備員詰め所からもたらされた。
「何! またあの警官が? ええいもういい! こっちはそれどころじゃないんだ。追い返せ! 方法は任せる。とにかく近づけるんじゃない!」
インタホンを本体に叩き付けた高原は、大股で立入禁止区域へと移動を開始した。
もうこうなったら、最悪の事態に備え準備を整えておかないと!
苛立だしげに職員に問いかける高原は、無理矢理にでも一緒に連れて出るべきだったと後悔のほぞを噛んでいた。取りあえず計画の第一段階が終わり、実行に移す機会を待つばかりになったというのに、本番前の予行演習を目論んでいた検体の全てが行方不明になろうとは、高原には予想外の衝撃だった。
(何が何でも発見しなければ・・・)
全ての準備は完了している。後は最後の実証テストを残すのみなのだ。最初期の、自分の細胞を利用した効果の検証に始まり、3体の検体を利用した、人体への直接投与による効果と副作用の検討を重ね、そして新たに入手した2体の検体による動物への投与限界量の評価まで行った。それに可能な限り精密に構築したシュミレーションと誤差を極力排した各種計算結果。後は最終調整したサンプルを利用して、本当にヒトへ効果を発揮しうるかどうかを確認し、最後の仕上げを行うのみなのだ。だが、このままでは最悪延期せざるを得ないかもしれない。ここまで完璧に研究を進めてきた高原にとって、そんな結末はもはや絶対に許容できない話だった。
「まだ見つからないのか?」
もう何度言ったか数える気も失せる科白を、高原は手近な職員に投げつけた。返ってくる答えも、聞き飽きた科白でしかない。男一人、女二人、子猫と子犬が一匹ずつ。これだけの団体がこの小さな建物の中でそう隠れていられる場所もないはずなのに。
こうなったら最後の手段をとってあぶりだすしかないのかもしれない。この研究所その物を、夢の時空に封じ込める。そうして根気よく鍛え続けたあの3つの精神波動を掴み取ればいいのだ。高原には、自分の全力を投じればそれくらいそう無理なく出来るとの自信があった。だがこれまでそれを躊躇していたのは、他ならないその行為が、あの忌むべき存在に、自分の居場所と目的を悟らせる結果になるかも知れない、という一点だった。来るべき日のために周到に準備を重ねること一年。最大の障害を排除してから一週間。あらゆる準備が整ってから20時間あまり。ようやく機が熟してきたこの場面で、出来ればそんな危険を冒したくはなかった。
「くそっ! 何をやっているんだ! まだ見つからんのか!」
苛立ちが益々募る中、そんな高原の逆鱗を殴りつけるような報告が、警備員詰め所からもたらされた。
「何! またあの警官が? ええいもういい! こっちはそれどころじゃないんだ。追い返せ! 方法は任せる。とにかく近づけるんじゃない!」
インタホンを本体に叩き付けた高原は、大股で立入禁止区域へと移動を開始した。
もうこうなったら、最悪の事態に備え準備を整えておかないと!