鈴鹿市議会議員 中西だいすけの活動日誌

鈴鹿市議会議員として年齢も含め5期目のベテランになりました。日々の活動や感じたこと、議会での動きなどをつづります。

昨日のアサリについての水産海洋学会から

2014年11月30日 10時48分07秒 | Weblog
昨日のアサリに関する「水産海洋地域研究集会 第10回伊勢・三河湾の環境と漁業を考える ー伊勢湾全域のアサリ資源の復活を目指してー」は、伊勢湾と三河湾でのアサリ資源についてとても参考になる内容でした。会場からの質問も専門的な視点からのものが多く、1時から5時半まであっという間に感じるほどでした。

よく“ 湧いてくる ”と表現されるアサリですが、伊勢湾での状況はどのようなしくみでそうなっているのかまだ正確にはよくわかっていないこと、とはいっても、その中で鈴鹿の沖が特徴的な場所であることや、貧酸素水塊が沿岸に近づくと大きなダメージが鈴鹿だけでなく他地域でも出ることなど、私たちも関心を持たなければアサリそのものが厳しい状況になることがよくわかりました。

現在、三重県で鈴鹿川河口の吉崎海岸で、浚渫土砂をつかって浅瀬をつくる取り組みが行われています。それにより生育環境が整えられ資源としてのアサリの増加が期待されているのですが、一方で、膨大な量の土砂が必要になるだけでなく、工事が元々の環境に与える影響や生物の多様性なども考えなければいけないなど、課題はまだまだ多いことは確かです(環境アセスメントは行っているということでした。)。また三河湾での同様の取り組みと比較すると、打ち寄せる波による浸食の影響も気になるところです。
このことから考えることは、人口減少の局面に入っている私たちは、これまで別の用途に利用したり開発したりしてきた干潟などを、できるところから干潟に戻すように取り組むことが、もしかするとコストも低く抑えながら、生物資源も環境も豊かにできるのではないかということです。

生物としてのアサリは年2回の産卵で増えるのですが、鈴鹿の沖が大きな母貝場となっている可能性があるとのことです。鈴鹿沖が母貝場として特徴的なのは、鈴鹿の漁業従事者の方々が漁獲制限など他地域とは違うアサリ漁の形態をとっていることも要因としてあるかもしれません。また、漂着物が鈴鹿に流れ着きやすいという話を聞いたことがありますが潮の流れで幼生が流れ着きやすいのかもしれませんし、深いところに生育場所があることも関係しているかもしれません。これらのことから考えるべきことは、漁業関係の方は知っていることや、鈴鹿にある県水産研究所で取り組んでいることについて、鈴鹿に住んでいる私たちがこのようなことに関心をほとんどはらっていないのではないかということです。
“ 湧いてくる ”といわれるアサリですが鈴鹿沖が重要な位置づけにある可能性や、ウミガメのこともあわせながら鈴鹿市の教育に取り入れることを考えるべきと思います。

発表の中で、ある場所の生物がなんらかの原因で減少しても、減少した地域へ他の場所の同じ生物から子供などが供給され、また生物群が復活するという「地域個体群間ネットワーク」についての説明があったのですが、この考えは重要だと感じました。
伊勢湾のアサリについて、鈴鹿沖が松阪や伊勢などのアサリの生息に関係していることがそれにあたるのですが、伊勢湾内が豊かな海であるためには、湾奥部の桑名や愛知県側などで豊かな海であることも重要で、さらに、いろいろな場所で生息環境が豊かでそこでも母貝が産卵することが、伊勢湾全体でアサリが豊かな、というよりも、過去の伊勢湾の状況に近づくことができるのでしょう。
このことに関連して、母貝場の可能性が高いエリアについて禁漁とするような条例の制定を視野に入れてはどうかと考えます。たとえば、海から一つ目の橋までに漁業権が設定される一方で、それより川上側は特に貝の採集に制限がない状況になっているのですが、具体的には調査の上でこれを考え直すこともひとつと思います。

私たちができることは、アサリと聞くと産業とつながりやすいのですが環境という課題も含め、次世代にどうつなげていくのかについて、一人でも多くの人が身近な伊勢湾とアサリに関心を持つように、漁業者・研究者・行政が連携してこのような課題に取り組む体制をつくることです。

市民の側からは“ 食 ”の視点からアサリの課題を考え、アサリと関連する課題について自分ごとの一部としていくことが大切と思います。たとえば外国からの輸入がなくても私たちの身近な海で採れる量で、私たちの食が支えられるようにするためには、アサリの生息できる環境を整備するという考えとつながります。とすれば、どのような方策を私たちは選択するのかが問われます。他の地域から土砂を持ってきて干潟を造成するのか、もともと干潟であったところを干潟に戻すのか(堤防のあり方の見直しが必要かも)、調査と研究の上で各地の母貝場となるところで禁漁区を設定したり漁獲制限で母貝保護を行うのか、垂下養殖などで人工的に産卵環境をつくるのか、どれを選択をするにしても応分のコストが必要になりますし、影響を受ける人たちや環境・生物のことを考える必要があり、より多くの人が関わって合意形成が必要になるでしょう。

このように書いてきて考えたのは、“ 地域個体群間ネットワーク ”について私たち人間社会にもあてはまることなのだろうなということです。日本が魅力的で持続的であるためには、東京・首都圏だけが潤ってもだめで、それぞれの地域でそれぞれに活気があることが重要でしょう。中京圏については名古屋周辺が栄えるだけではなく愛知県内はもちろん三重や岐阜も活気があるべきでしょうし、三重県内でもどこの都市がということではなくそれぞれに活気があることが大切だと思います。その活気はそこで暮らす人たちからこそ産まれるものだということを、私たちは見失ってはいけないと思います。


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