Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

THEハプスブルク

2009年11月06日 | 美術
 国立新美術館で開催中の「THEハプスブルク」展には開会早々行ったが、みるものを絞って、もう一度行ってきた。

 この展覧会は、ウィーン美術史美術館とブダペスト国立西洋美術館から、ハプスブルク家をキーワードに作品を選んで、構成されている。展示作品は主に16世紀から18世紀にかけての絵画や工芸品、武具など。
 そのうち絵画の展示は、ハプスブルク家の肖像画のほか、イタリア絵画、ドイツ絵画、スペイン絵画、フランドル・オランダ絵画の5セクションに分かれている。私がもう一度みたいと思ったのは、ドイツ絵画とスペイン絵画。

 ドイツ絵画では、デューラーの油彩が3点きている。日本でデューラーの油彩をみられること自体得がたいことだが、その3点のなかでも「若いヴェネツィア女性の肖像」にはなにか強いものを感じた。しっかりと前をみる大きな眼、高い鼻、とがった顎――いかにも聡明そうな女性だ。ドイツの画家が描く女性像は、意志の強い、個性をもった女性が多い。これもその一つ。
 クラナッハ(父)の油彩が2点。なかでも「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」は、その凄惨なテーマによって、多くの人が立ち止まっていた。この絵は最近になって洗浄されたのかもしれないが、色彩が鮮明。冷たい肌の感触はクラナッハ特有のものだが、それが色の白さによって強調され、恐ろしいような官能性がある。
 小品ではあるが、アルトドルファーの油彩が1点。「聖家族と聖アガピトゥス」。上目づかいの聖母マリアが、幼児イエスよりも堂々としていて存在感があり、いかにもドイツの絵画だ。
 以上の3人の作品が揃うことは、あまりないのではないか。このように、ある時代を「点」ではなくて「面」でみせてくれるのが、この展覧会の特徴だ。このことは、ドイツ絵画だけではなく、その他の絵画でも貫かれている。

 スペイン絵画では、この展覧会の最大の目玉であるベラスケスの「白衣の王女マルガリータ・テレサ」と「皇太子フェリペ・プロスペロ」。前者はこの画家の代表作の一つ「ラス・メニーナス(女官たち)」と同時期の作品。そのすべすべした衣装の艶とカールした金髪の艶が、絵のなかで呼応している。後者では皇太子の生命のはかなささえも描き出してしまった画家の力量に驚嘆。
 そのほか、ムリーリョ、スルバランなどもきていて、こちらも「面」でみせてくれる(ただしスルバランは、その真価を伝えるものとはいえないのが残念)。
 また「面」からはみ出したところにポツンとゴヤがあって驚く(「カバリェーロ侯ホセ・アントニオの肖像」)。
(2009.11.05.国立新美術館)
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