Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

東京シティ・フィルの1月定期

2011年02月01日 | 音楽
 東京シティ・フィルの1月定期は首席客演指揮者の矢崎彦太郎さんの指揮で次のプログラムが組まれた。
(1)グリーグ:交響曲ハ短調
(2)プロコフィエフ:バレエ組曲「道化師」

 見事に知らない曲ばかり。グリーグに交響曲があったとは知らなかった。またプロコフィエフの「道化師」というのも知らなかった。実のところ、プログラムが発表になってから長い間、カバレフスキーの同名の曲だと思っていた。

 もちろん、知らない曲をやればよいというわけではないが、こちらの好奇心を刺激してくれるのは有難い。そのうえで、曲自体がすぐれているなら申し分ない。今回の2曲は、それぞれちがう意味で、興味深い曲だった。

 まずグリーグの交響曲は、3年間のライプツィヒでの留学の後、コペンハーゲンに移ってニルス・ゲーゼのもとで学んでいたときに、ゲーゼに促されて書いた曲とのこと。4楽章からなる堂々とした交響曲だ。舩木篤也さんのプログラムノートにあるように、たしかにシューマンの影響下にあるが、第1楽章には後年の北欧的な情緒が――かすかに――感じられた。また第3楽章には民俗舞曲的な要素が感じられた。

 グリーグ自身はスコアに「もう演奏されることはないだろう」と書き込みをしたそうだ。以来、忘れられた作品だった。が、1980年にモスクワで蘇演。1981年にはグリーグの生地ベルゲンでも再演された。今回は日本初演か。

 これは習作かもしれないが、やがて北欧の情緒を確立するに至るグリーグの、その歩みの出発点をしるす作品。

 次のプロコフィエフの「道化師」は、プロコフィエフがロシア革命を避けて日本経由でアメリカに渡り、オペラ「三つのオレンジへの恋」やピアノ協奏曲第3番などを書いていた時期の作品。これはもう習作どころではなく、プロコフィエフの個性が遺憾なく発揮された曲だ。ストーリーはロシア民話からとられたもの。長くなるので詳述は避けるが、グロテスクな味がある。シテュエーションはまったくちがうが、バルトークの「中国の不思議な役人」的なグロテスクさを感じた。

 いずれの曲もオーケストラの面々には馴染みがなかったろうが、精一杯情熱をこめて演奏してくれた。終演後、定年を迎えた奏者に矢崎さんから花束が贈られた。そのかたとは多少の面識があるので、感慨深かった。
(2011.1.28.東京オペラシティ)
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