青木豪さんの新作「おどくみ」。始まったばかりなので、ネタばれにならないように気を付けながら、感想を。
これは横須賀のお惣菜屋さんの話。時がはっきり設定されているのがユニークだ。第1場は昭和62年8月11日(火)午後1時頃、第2場は昭和63年2月23日(火)午後4時頃、第3場は昭和63年2月24日(水)午前11時15分頃と夕方、第4場は平成5年4月10日(土)午後4時過ぎ、という具合。
要するに、昭和の終わりの日々と、それから数年後の平成のある日だ。青木さんは昭和42年(1967年)生まれなので、昭和の終わりの頃は20歳前後。一般的には人生でもっとも多感な年頃だ。その時期に遭遇した「昭和」という時代の終わりは、青木さんに重くのしかかったのかもしれない。
とはいっても、この芝居は重い芝居ではなく、お惣菜屋さんを舞台にした家庭劇(ホームドラマ)だ。テンポのよい会話が飛び交う、明るい、ユーモラスな芝居だ。
横須賀でお惣菜屋さんを経営する夫婦がいて、妻は働き者だが、夫は怠け者。妻はそんな夫にイライラしている。もっと問題なのは夫の弟。夫に輪をかけた怠け者で、そういう弟の面倒をみてやる夫に、妻はさらにイライラする。夫婦には子供が二人いて、長男は大学で映画研究部に所属し、天皇暗殺を狙うテロリストの映画を作っている。その他、妹、従業員、長男の友人2人。
これらの登場人物による複数のストーリー、あるいはシチュエーションの謎解きが並行的に進み、ときどき思いがけず絡み合ったりする。
長男が作っている映画(その題名が「おどくみ」だ)のストーリーをめぐって、みんなが意見をいって、二転三転するのが面白い。そのうち、天皇制についての解釈が出てくる。それも、井上ひさしの芝居のように、真正面から取り組むのではなく、サラッとした調子で出てくる。これが意外に鋭い。
「鳩」が象徴的に使われているが、残念ながら、どういう意図かは、よくわからなかった。もしかすると、ヒントになる台詞があって、それを聞き落としたのかもしれない。図像的にはルネ・マグリットの鳥の絵に似ていたが。
なお、これは小さいことだけれど、厨房で使われているザル、その他の調理器具が、ピカピカで真新しいことが、ちょっと興ざめだった。これらの小道具は使い古したものを用意してほしかった。
(2011.6.30.新国立劇場小劇場)
これは横須賀のお惣菜屋さんの話。時がはっきり設定されているのがユニークだ。第1場は昭和62年8月11日(火)午後1時頃、第2場は昭和63年2月23日(火)午後4時頃、第3場は昭和63年2月24日(水)午前11時15分頃と夕方、第4場は平成5年4月10日(土)午後4時過ぎ、という具合。
要するに、昭和の終わりの日々と、それから数年後の平成のある日だ。青木さんは昭和42年(1967年)生まれなので、昭和の終わりの頃は20歳前後。一般的には人生でもっとも多感な年頃だ。その時期に遭遇した「昭和」という時代の終わりは、青木さんに重くのしかかったのかもしれない。
とはいっても、この芝居は重い芝居ではなく、お惣菜屋さんを舞台にした家庭劇(ホームドラマ)だ。テンポのよい会話が飛び交う、明るい、ユーモラスな芝居だ。
横須賀でお惣菜屋さんを経営する夫婦がいて、妻は働き者だが、夫は怠け者。妻はそんな夫にイライラしている。もっと問題なのは夫の弟。夫に輪をかけた怠け者で、そういう弟の面倒をみてやる夫に、妻はさらにイライラする。夫婦には子供が二人いて、長男は大学で映画研究部に所属し、天皇暗殺を狙うテロリストの映画を作っている。その他、妹、従業員、長男の友人2人。
これらの登場人物による複数のストーリー、あるいはシチュエーションの謎解きが並行的に進み、ときどき思いがけず絡み合ったりする。
長男が作っている映画(その題名が「おどくみ」だ)のストーリーをめぐって、みんなが意見をいって、二転三転するのが面白い。そのうち、天皇制についての解釈が出てくる。それも、井上ひさしの芝居のように、真正面から取り組むのではなく、サラッとした調子で出てくる。これが意外に鋭い。
「鳩」が象徴的に使われているが、残念ながら、どういう意図かは、よくわからなかった。もしかすると、ヒントになる台詞があって、それを聞き落としたのかもしれない。図像的にはルネ・マグリットの鳥の絵に似ていたが。
なお、これは小さいことだけれど、厨房で使われているザル、その他の調理器具が、ピカピカで真新しいことが、ちょっと興ざめだった。これらの小道具は使い古したものを用意してほしかった。
(2011.6.30.新国立劇場小劇場)