Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

アラン・ギルバート&都響

2011年07月23日 | 音楽
 「都響スペシャル」として、ニューヨーク・フィル音楽監督のアラン・ギルバートが都響を振った。ギルバートは若いころよくN響を振っていたが、なかでも2007年12月に聴いたマルティヌーの交響曲第4番は感銘深かった。それ以降、日本のオーケストラは振っていないはずだ。都響とは今回が初めて。

 1曲目はブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。後で振り返ってみると、この曲からすでに都響に変化が表れていたのだが、まだこのときは半信半疑だった。音がきれいで、バランスがいつもとはちがうと感じたが、それがほんとうに起きていることなのか、この曲だけなのか、確信がもてなかった。

 2曲目はベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」。ヴァイオリン独奏はフランク・ペーター・ツィンマーマン。オーケストラの音色は暖色系の色彩感にあふれ、多彩な色彩が流動する緻密なテクスチュアの上に、独奏ヴァイオリンが明瞭な図柄を織り込む、という演奏だった。

 第2楽章後半で、バッハのコラールが引用されてしばらくしたころに、ツィンマーマンがオーケストラのなかに入っていき、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンの間に立った。ハッとして聴いていると、この箇所では独奏ヴァイオリンとコンサートマスターが、ときには同じ音型を弾きながら、絡み合っていくのだった。なるほど、ここはこうなっているのかと、目からうろこが落ちる思いだった。

 アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番から「サラバンド」が演奏された。これもいうまでもなく、すばらしかった。ホール全体が楽器となって鳴っていた。

 3曲目はブラームスの交響曲第1番。これはもう前の2曲で予感したとおり、緻密で、バランスがよく、しかも曲の性格からいって、ダイナミックで、アグレッシヴな面にも欠けていない演奏だった。

 この曲に至ってよくわかったが、わたしがこの演奏会で聴いたのは、都響の変貌だった。音にふくらみがあり、網の目のように絡み合い、どんなに強音が鳴らされても、アンサンブルが損なわれない――そういう1個の有機体のような演奏だった。

 プログラムに載った奥田佳道さんの記事によると、アラン・ギルバートは若いころフィラデルフィア管弦楽団のヴァイオリン奏者だったそうだ。なるほど、と思った。
(2011.7.18.サントリーホール)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする