Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

矢崎彦太郎/東京シティ・フィル

2012年08月07日 | 音楽
 フェスタサマーミューザKAWASAKIで矢崎彦太郎/東京シティ・フィルを聴いた。いつもながら矢崎さんの凝ったプログラムが魅力だ。

 1曲目はドビュッシーのバレエ音楽「おもちゃ箱」。今年4月にカンブルラン/読響が取り上げた曲だ。今回は矢崎さん自身が作成した台本による語り付き。語りが入ると話の進行がよくわかる。カンブルラン/読響の演奏はすばらしかったが、今回のほうが楽しめた。

 語りは中井美穂さん。2008年の同フェスタで矢崎彦太郎/東京シティ・フィルがプーランクの「子象ババールの物語」を取り上げたときの語りもこの人だったそうだ。あの演奏会は行きたかったが、ついに行けなかった。よかったろうな、と改めて思った。

 この曲はドビュッシーと親交のあった絵本画家アンドレ・エレの絵本と台本にドビュッシーが音楽を付けたものだ(当初はピアノ用)。その絵本の原画が今ブリヂストン美術館で開催中の「ドビュッシー展」に来ている。いかにも腕白そうな楽しい原画だ。あの原画を見ていたお陰でこの作品がよくわかった。

 2曲目はムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」。ただしラヴェル編曲ではなく、セルゲイ・ゴルチャコフ編曲版。ゴルチャコフはモスクワ音楽院の作曲家教授で、この編曲は1950年代におこなわれたそうだ。

 冒頭の「プロムナード」はラヴェルと同じくトランペットで始まるが、こちらはソロではなく、2本(部分的には3本)。続く「小人」もラヴェルに似ているが、こちらはウッドブロックが、グロテスクというか、ユーモラスに使われている。

 ラヴェルと大きくちがう点は、「ビドロ(牛車)」がフォルテで始まり、チューバのソロではなく、ホルンとトロンボーンで一斉に吹奏される点と、ラヴェルが省略した「第5プロムナード」が復活されている点だ。

 その他にも細かいところではラヴェルとちがう点が多々あった。全体的にラヴェルのアンチテーゼを目指すのではなく、ラヴェルを基調として、それを批評する版だと感じた。リムスキー=コルサコフの改訂版を使い、フランス的に洗練をきわめたラヴェルにたいして、ムソルグスキーの原典版に立ち返り、ロシア的な原色をもとめた版だ。

 演奏もそのことを強く意識した豪快なものだった。

 会場は洗足学園前田ホール(「溝の口」駅下車)。初めて行ったホールだが、ひじょうに聴きやすいホールだった。
(2012.8.6.洗足学園前田ホール)
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