Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ベルリン国立美術館展

2012年08月13日 | 美術
 「ベルリン国立美術館展」へ。いうまでもなくフェルメールの「真珠の首飾りの少女」が目玉だ。たしかにこれ一点でも本展の価値はある。柔らかい光に包まれた空間。一瞬の表情をとらえた永遠性。色彩の調和。フェルメールの作品のなかでもとくに好きな一枚だ。

 家に帰って、昔現地で買い求めたポケット版の解説書(英文)を読んだ。少女が自分を映している鏡や、真珠のネックレスは、虚栄の象徴だと書いてあった。なるほど、そうなのか――。虚栄という文脈ではとらえていなかったので、戸惑った。会場で販売されている図録ではどのように解説されているのだろう。

 ドイツの美術館なので、デューラーの「ヤーコブ・ムッフェルの肖像」が来ていることも嬉しかった。デューラー最後の肖像画だそうだ。この人物の存在を永遠にとどめる作品だ。力量の衰えはまったくない。これも前述の解説書に載っていた。

 この調子で他の作品にも触れていったら、羅列的な書き方になりそうなので、とりあえずこのくらいで。クラナッハ、ベラスケス、レンブラントなど、興味をひかれる作品がいくつもあった。

 本展の特徴は二つあった。一つはリーメンシュナイダーの木彫をはじめ多数の彫刻が来ていること。リーメンシュナイダーはデューラーと同時期の彫刻家だ。当時ドイツ全土にわたって農民戦争が勃発した。その鎮圧のさいに皇帝側によって腕をへし折られ、失意のうちに人生を閉じたといわれている。

 展示されている「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」は、比較的小ぶりの作品だが、これでも十分にリーメンシュナイダーらしい精神性が感じられる。退治されている龍のユーモラスな顔が珍しい。

 他の彫刻にも観るべきものがあった。そのなかでもハンス・ヴィディツHans Wydyzという人の木彫「受胎告知」に注目した。大天使ガブリエルの衣の襞と、聖母マリアの豊かな髪の、うねるような彫りの深い表現がすごい。

 もう一つの特徴は、多数の素描が来ていることだ。とくにミケランジェロの「聖家族のための習作」はいつまでも観ていたい素描だ。聖母子、ヨセフ、幼児イエスと幼児ヨハネ、その他のモチーフが描き込まれている。現代的なコラージュのようだ。

 ボッティチェッリの素描もあった。ダンテの「神曲」のための挿絵の素描だ。ボッティチェッリの素描は初めて観た。油彩画とはまったくちがう感じがした。
(2012.8.10.国立西洋美術館)
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