Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

フランコ・ドナトーニ

2012年08月23日 | 音楽
 サントリー芸術財団のサマーフェスティヴァル2012でフランコ・ドナトーニの管弦楽作品集の演奏会があった。

 ドナトーニ(1927~2000)といわれても、その名前すら知らなかった。ナクソス・ミュージック・ライブラリーを覗いてみたら、かなりの数のCDが登録されていた。そのすべてとはいかなかったが、いくつかのCDを聴いてみた。最初は戸惑ったが、馴れてくると、面白くなった。

 なにが面白いかというと、音の鮮度がいいこと、瑞々しいこと、リズムが自由なこと、拍節感が自由なこと――言葉でいうと、そういったことだった。でもこれらのことは、実際に音楽を聴いてみないと、イメージがわかない性質のものだ。実際にその音楽を聴くと、音が生き生きしていることがわかる。

 ナクソスで聴いた曲は、クラリネット独奏のための「クレール」(1980/99)やヴィブラフォン独奏のための「オマール」(1985)など。最初期の「ファゴット協奏曲」(1952)も聴いた。これはバルトーク的だった。ドナトーニはここから出発したのか、ということがわかる曲だった。

 今回の演奏会はすべてオーケストラ曲だが、どれもCDで聴いた印象とちがわなかった。音が瑞々しく、リズムが自由。音楽の局面、局面が短く、かつ鮮明で、それらがクルクル移り変わる。独奏曲ならともかく、これをオーケストラでやるのは大変だろう。

 曲目に馴染みはないが、一応書いておくと、「イン・カウダ2」(1993~94)、「イン・カウダ3」(1996)、「エサ(イン・カウダ5)」(2000)(注:この曲はロサンゼルス・フィルの委嘱。『エサ』とはエサ=ペッカ・サロネンの『エサ』)、「プロム」(1999)(注:BBCプロムスの委嘱)、「ブルーノのための二重性」(1974~75)(注:ブルーノ・マデルナに献呈)の5曲。すべて日本初演。

 指揮は杉山洋一さん。イタリア在住の作曲家・指揮者で、ドナトーニ晩年の愛弟子だった。今年1月に都響を振ってブーレーズの「エクラ/ミュルティプル」の鮮やかな演奏を聴かせたことが記憶に新しい。今回も見事な指揮だった。オーケストラは東京フィル。モチベーションの高い演奏だった。

 演奏会とそれに向けての予習のお陰で、ドナトーニという作曲家を知ることができた。今後も興味をもってその作品に接することができる。これがなによりの収穫だ。
(2012.8.22.サントリーホール)
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