Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

マウリッツハイス美術館展

2012年08月15日 | 美術
 「マウリッツハイス美術館展」に行った。混雑しているようなので、いつ行こうかと思案していた。たまたま13日(月)が混雑緩和のための臨時開館と聞いたので、思い切って行ってみた。夕方4時半に到着。20分待ちだった。このくらいなら仕方がない。会場に入っても混雑していた。人の肩越しにチラッと観ればいいかと思った。ところが閉館30分前の6時になったら、潮が引くように人がいなくなった。ガラガラの会場のなかで、これはと思う絵をじっくり観ることができた。

 まずはフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。以前この作品の誕生の秘話(フィクションだが)を描いた同名の映画を観た。息詰まるような濃密な映画だった。そのとき以来この作品を観たいと思っていた。叶わぬ夢かと思ったが、実現した。

 やっと会えた。わたしには美しすぎる(魅力がありすぎる)と思った。そう思ったのは年のせいだろう。黒一色の背景が珍しかった。なんとモダンなことか。この時代の類例として、スペインの画家スルバランの「ボデゴン(静物画)」を想い出した。2006年のプラド美術館展に来ていた作品。あれも背景は黒一色だった。

 フェルメールの作品がもう1点来ていた。「ディアナとニンフたち」だ。2008年のフェルメール展にも来ていた。今回のほうがきれいだと感じた。

 本展でフェルメールと同程度のウェイトを占めているのがレンブラントだ。レンブラントは6点来ていた。なかでもレンブラントが亡くなった年に描かれた「自画像」に感動した。人生の急上昇と急降下を経験し、すべてを失ったレンブラント。顔の皮膚はゆるみ、穏やかな表情をしている。この自画像では高価な帽子をかぶり、マントを羽織っている。精一杯の盛装だ。こちらを向いたその顔は「我かく在りき」と語っているようだった。

 これらの作品以外にも観るべき作品は多かった。というよりも、たんに数をそろえるために来ている作品がないことが本展の特徴だった。全48点。まさに「絵画の宝石箱」に相応しい内容だ。

 たとえば、ルーベンスの「ミハエル・オフォヴィウスの肖像」は味わい深かった。豊かな人間性が伝わってきた。工房を使って制作した大規模なバロック絵画とはちがう手応えがあった。

 静物画のコーナーはどの作品も面白かった。この時代の静物画はすごい。その迫真性はこの時代特有のものだ。
(2012.8.13.東京都美術館)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする