Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ライマンの『メデア』と現代オペラの演出

2012年10月01日 | 音楽
 11月に予定されている東京二期会公演、ライマンのオペラ「メデア」は、今秋一番の楽しみだが、予習の材料がなかった。DVDが出ていることは知っていたが、自宅でDVDを観る習慣はない。そんな折にドイツ文化センターでDVDを観賞した後シンポジウムをおこなう「ライマンの『メデア』と現代オペラの演出」という催しがあることを知った。まさに渡りに船だった。

 当日は台風が接近していた。ラジオは交通機関の乱れを報じていた。まあ、そのときはそのときだ、という軽い気持ちで出かけた。

 DVDはひじょうに面白かった。2010年のウィーン国立歌劇場の初演の記録。指揮はミヒャエル・ボーダー、演出はマルコ・アルトゥーロ・マレッリ、タイトルロールはマルリス・ペーターゼン。演奏も演出もすばらしかった。その概要は当日出席されていた東条硯夫先生がブログ(左欄のブックマークに登録)で紹介している。

 DVD観賞後、中央大学准教授の森岡実穂氏および若手演出家の舘亜里沙氏、加藤祐美子氏の三名による解説があった。おかげでDVDを一度観ただけではわからない点を理解することができた。

 最後に会場からの質問に答える時間があった。これがすこぶる面白かった。最初のかたは3点の意見を述べた。なかでも、森岡実穂氏がメデアを現代の「移民」になぞらえたことにたいして、「移民」とは本質的に異なるのではないか、と指摘した点が面白かった。たしかに「移民」に喩えることは興味深いが、牽強付会の観がなくもない。


 2番目のかたは、現存している作曲家の場合、演出家は、作曲家と意見が異なったときはどうするのか、という質問だった。答えはよくわからなかった。

 3番目のかたは(このかたは日本語が堪能なドイツ人?だった)、オペラは西洋文化の凝縮であって、たとえば物の渡し方ひとつとっても、日本人は目上の人にたいして両手で渡すが、ヨーロッパでは片手で渡す、そういう習慣のちがいを勉強するのか、という質問だった。これは本質に触れる質問だったが、答えははっきりしなかった。

 予定の時間を多少オーバーして7時過ぎに閉会。外はすでに荒れ模様だった。ダイヤが乱れている地下鉄を乗り継いで、なんとか帰れそうだったが、下車駅の3駅前でついに止まってしまった。しかたなく歩き始めた。傘をさしていられる状態ではなかったので、濡れて帰った。
(2012.9.30.ドイツ文化センター)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする