Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラザレフ/日本フィル

2012年10月21日 | 音楽
 ラザレフ/日本フィルが続けてきたプロコフィエフの交響曲全曲演奏プロジェクトの最終回が開催された。本来は昨年6月におこなわれる予定だったが、ラザレフの腰の悪化(手術をしたはずだ)により延期。それが今回実現した。

 1曲目はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。ソリストは川久保賜紀。初めてその演奏を聴いた。叙情的すぎず、かといって理知的すぎもせず、バランスよく、句読点のはっきりした演奏だ。出だしはかなりゆっくりしたテンポだった。そのテンポに戻ろうとする箇所がところどころにあったが、全体の造形は崩れなかった。音もひじょうに聴きやすい。これまた過度に甘美ではない。何度聴いたかわからないこの曲だが、新鮮な気持ちで聴くことができた。新たな気持ちで向き合うことができた――それが収穫だ。

 ラザレフ/日本フィルのサポートも安心して聴けた。ラザレフはもともと協奏曲がうまい。ソリストも合わせやすいだろう。今回は薄めの弦にたいして、管がはっきりと大きめの音を出していた。ラザレフとしては珍しいバランスだ。

 アンコールにクライスラーの「レチタティーヴォとアレグロ」からアレグロが演奏された。技巧的で面白い曲だった。

 2曲目はプロコフィエフの交響曲第6番。前回から1年以上の間があいたので、これまでの密度の濃さが維持されるかどうか、内心不安だったが、杞憂だった。練り上げられたアンサンブルと、曲の隅々にまで行き渡った表現意欲は変わらなかった。今まで聴いたことのないフレーズが浮かび上がってきたり、何気なく聴いていたフレーズがまったくちがう表現で演奏されていたりと、興味は尽きなかった。

 今まで聴いてきた演奏が脳裏をよぎった。一番記憶に残っているのはニューヨーク・フィルの定期を振ったデュトワの演奏だ。それを含めてこの演奏はもっとも情報量の多い演奏だった。

 ラザレフ/日本フィルのこのプロジェクトは有意義だった。わたしのなかでプロコフィエフの交響曲がユニークな位置を占めるに至った。これがなければ第2番、第3番そして第4番については明確なイメージをもたないままだった。

 ラザレフ/日本フィルは今ラフマニノフに取り組んでいる。ラフマニノフはわかっているつもりでいたが、そんなことはなかった。ラフマニノフにたいする認識を新たにする、というか、きちんと認識するいい機会だ。
(2012.10.19.サントリーホール)
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