Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

旅日記(1):オルフェオ

2014年08月01日 | 音楽
 モンテヴェルディの「オルフェオ」。ミュンヘンはこの時期オペラ・フェスティヴァルで連日賑わっている。これもその一環だ。会場はプリンツレゲンテン劇場。古い由緒ある劇場だ。国立歌劇場のほうではヴェルディの「運命の力」が掛かっていた。

 開演時間になると、客席がまだ明るいうちに、客席後方から例のファンファーレが吹奏された。ファンファーレは3回繰り返されるはずだが、このときは1回だけ。編成はトロンボーン4本とトランペット2本。拍手が起こる。やがてオーケストラはチューニングを再開する。今度は客席右サイドから2回目が吹奏された。また拍手。この分だともう一回あるなと思ったら、客席が暗くなって、指揮者が登場した。あれっ、と思ったら、今度は舞台に登場して3回目(今度は太鼓も加わった)。粋な演出だ。なんだかバイロイトの開幕ファンファーレみたいだなと思った。

 いやがうえにも期待が高まった。だが、演出にかんしては、尻すぼみになった。ギリシャの野原は、若者たちが車で乗り付ける広場になっていた。それはいいのだが、そこから先の発展がなかった。

 幕切れで登場するアポロは松葉杖をついていた。敗残兵のようだった。オルフェオはナイフで腕を切って自殺する。土に埋められるオルフェオ。若者たちと遊んでいたエウリディーチェ(生きている?)は、一緒に土のなかに入ろうとする。そこで幕。

 なんだかとってつけたような演出だ。演出とは難しいものだと思った。才能のある、なしが端的に表れてしまう。今回の演出はダーフィッド・ベッシュという人だった。

 もっとも、この公演はオルフェオを歌うクリスティアン・ゲルハーエルが目玉だった。現代の名バリトンの一人だ。さすがにパワーがあった。だが、モンテヴェルディのような古楽を歌うことはどれくらいあるのだろう。わたしには‘古楽唱法’とはちょっと異質に聴こえた。その点プロセルピーナと伝令を歌ったアンナ・ボニタティブスのほうが安心して聴けた。

 指揮はアイボー・ボルトン。ボルトンの「オルフェオ」を聴くのは2度目だ。前回はアン・デア・ウィーン劇場だった。オーケストラはちがうが、音楽作りは同じだ。ぐっと感情を込めた演奏。情感豊かな演奏にハッとする瞬間があった。

 終演後は大拍手だった。皆さん大らかに楽しんだようだ。それにひきかえ、わたしは‥。ちょっと反省した。
(2014.7.25.プリンツレゲンテン劇場)
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