Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パスカル・デュサパンの室内楽

2014年08月26日 | 音楽
 パスカル・デュサパン(1955‐)の室内楽。30代半ばの作品、弦楽四重奏曲第2番「タイム・ゾーン」(1988‐1990)と最新作の第7番「オープン・タイム」(2009)が演奏された。演奏はアルディッティ弦楽四重奏団。

 作品よりも先に演奏の話になってしまうが、さすがアルディッティ、その優秀さに脱帽した。リズムもなにも、すべて正確、音の重ね方も、音の引継ぎも、すべて適確(しかもニュアンス豊か)、また、アンサンブルをきっちり合わせ、ソロも奔放、それらの総体として、作品のすべての音が適切に表現されたと、そう信頼できる演奏だった。

 やっぱり演奏は大事だ、という月並みな感想に陥らないように気を付けて、話を先に進めると――。

 第2番は演奏時間40分くらいの単一楽章の曲。「24の部分からなる弦楽四重奏曲であるが、そのうちの12の部分は他の部分と連続している」(作曲者自身のプログラム・ノート)。単純平均で各部分は2分前後のミニアチュールだ。万華鏡のような変化とか、ミクロコスモスとか、そんな形容ができそうな曲だ。

 演奏も見事だったが、曲も面白かった。感覚の新鮮さがあった。作曲者が自分の聴きたい音を書いているという感じがする。その音の流れに乗ることができた。わたしは作曲者と同世代なのだが、だから、だろうか。妙に‘同世代’の共通項を感じた。

 部分的には最後の盛り上がりがバルトークのようだった。デュサパンは好きな作曲家の一人にバルトークをあげている。なので、バルトークへの敬意の表明だろうか。

 それから20年後の第7番も、「まったく休止することのないまま約40分の間、21の変奏がつづく」(作曲者自身のプログラム・ノート)。外形的には第2番と似ている。でも、20年の重みだろうか、音楽はそうとう変わっている。感覚的な洗練よりも、ドラマティックな展開に移行している。研ぎ澄まされた音よりも、ドラマを掘り下げる太い音になっている。

 途中、中間地点あたりで、バルトーク的なエネルギッシュな部分があった。第2番の最後を髣髴させて微笑ましかった。その後エネルギーは減衰して終わる。でも、正直にいうと、その過程で疲れが出て、音を表面的に追うだけになってしまった。

 なお、デュサパンはオペラも沢山作っている。メデア、ファウスト、ペンテジレーアと、その題材の選択が興味深い。
(2014.8.25.サントリーホール小ホール)
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