Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

旅日記(3):ルクレツィア・ボルジア

2014年08月03日 | 音楽
 ドニゼッティの「ルクレツィア・ボルジア」。タイトルロールはエディタ・グルベローヴァ。もう、グルベローヴァが歌うなら、なんでもいいという感じだ。

 そうはいっても、このオペラは聴いたことがないので、事前にCDを聴いてみた。これは力作だ。ドニゼッティにかぎらず、どんな作曲家でも、気合の入った作品と、そうでない作品があるが、これは気合の入った作品だ。若き日のヴェルディがこれを聴いて影響を受けたという逸話があるが、わかる気がする。

 プロローグ、第1幕そして第2幕の3幕構成になっている。プロローグの後半から第1幕にかけては出ずっぱり、第2幕の後半はほとんど一人舞台だ。しかもそのなかで高音が延々と伸びていく場面もあれば、ベルカント・オペラの枠を超えるようなドラマティックな場面もある。

 グルベローヴァとしても渾身の歌唱だったろう。声の伸びは若い頃のようにはいかないが、その代わりドラマの掘り下げに凄味があった。昨年7月にチューリヒでベルリーニの「異国の女」を観たが、作品のちがいからか、今年のほうが果敢にリスクをとっていたと思う。満場の聴衆は息をのんで聴き入った。終演後は割れるような拍手が起きた。

 思いがけないセレモニーがあった。2人の男性が舞台に上がり(1人はこの劇場のインテンダントだった。もう1人はだれかよくわからなかった)、グルベローヴァを讃えるスピーチをした。今年はグルベローヴァがこの劇場にデビューして40周年だそうだ。公演数は285回。グルベローヴァもこれに応えた。劇場、共演者そして聴衆にたいする感謝から始まり、途中「でも、これで終わりではありませんよ」といったときには、拍手と笑いが起きた。

 あとは延々とカーテンコールが続いた。30分くらいは続いたろうか。世界中から集まったグルベローヴァのファンたち。皆さん(わたしも)、過去の公演の数々を思い出し、賞賛と感謝の念を拍手に込めていたのだ。

 共演者もよかった。ジェンナーロを歌ったPavol Breslikは声も姿もいい若いテノールだ。グルベローヴァの熱烈な賛美者だった。ドン・アルフォンソを歌ったJohn Relyeaの深い声(バス)もよかった。

 指揮のパオロ・アッリヴァベーニの引き締まった造形と、演出のクリストフ・ロイのシャープなドラマ作りが、現代的なベルカント・オペラの実現に成功していた。
(2014.7.27.バイエルン州立歌劇場)

↓カーテンコールとセレモニー(同歌劇場のFacebookより)
https://www.facebook.com/baystaatsoper#!/media/set/?set=a.10152568550903794.1073741913.180609043793&type=1
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