フェリックス・ヴァロットン(1865‐1925)はスイスのローザンヌに生まれ、フランスで活動した画家。ナビ派の一員だ。
ヴァロットンを知ったのはオルセー美術館展2010「ポスト印象派」だった。その直後にヴィンタートゥール美術館展でも再会した。ヴァロットンってどういう画家だろうと思った。本展はその全体像をつかむいい機会。楽しみにしていた。
チラシ↑に使われている「ボール」(1899)はオルセー美術館展にも来ていた。印象的な作品だ。一種‘白日夢’のようでもある。2枚の(異なるアングルの)写真を組み合わせた構図。本展ではそれらの写真も展示されていた。用意周到だ。
もっとも、そのような作風が主流かというと、そうでもなかった。生涯を通して追及した作風というわけではない。
「ボール」と同じ制作年の「夕食、ランプの光」(1899)は今回もっとも印象的な作品だった。4人の家族が食卓を囲んでいる。黒いシルエットの人物が画家本人だ。妙に白々しい気詰まりな雰囲気が漂っている。正面の子どもはまっすぐこちらを見ている。画家に「あなたはだれ?」と問うているようだ。内心動揺する画家。
同時期の作品に連作木版画「アンティミテ」(1897‐1898)がある。ドラマの各場面を見ているようだ。これを見て得心したのだが、「夕食、ランプの光」は‘演劇的’な作品だ。人物配置、そしてその緊張関係が、演劇のような感覚なのだ。ヴァロットンの手つきは劇作家のようだ――。
そう思ってWikipediaを調べてみたら、ヴァロットンは8つの戯曲を書いていた。「批評的には不評だった」そうだが、絵画的には面白い。ユニークだ。このような‘演劇的’な作品は、同時期だけではなく、後年になっても現れる。「貞淑なシュザンヌ」(1922)がそうだ。3人の男女の緊張関係。だが、これも、生涯をかけて追及した作風というわけでもないようだ。
傑作だったのは(傑作というのは‘滑稽な’という意味だが)、「竜を退治するペルセウス」(1910)。「力自慢の大道芸人のような」ペルセウス、「剥製のワニかと見紛う」竜、「中年の裸体を晒す」アンドロメダ(いずれもキャプションの言葉より)。思わず笑ってしまった。腰が抜けるような感じがした。これはいったいなんだろう。どうしてこんな戯画的な作品が生まれたのだろう。
(2014.8.10.三菱一号館美術館)
※各作品の画像(本展のホームページ)(「竜を退治するペルセウス」を除く)
http://mimt.jp/vallotton/midokoro.html
※※「竜を退治するペルセウス」(収蔵館作成のYoutube)
https://www.youtube.com/watch?v=JalyHs-Ki7o
ヴァロットンを知ったのはオルセー美術館展2010「ポスト印象派」だった。その直後にヴィンタートゥール美術館展でも再会した。ヴァロットンってどういう画家だろうと思った。本展はその全体像をつかむいい機会。楽しみにしていた。
チラシ↑に使われている「ボール」(1899)はオルセー美術館展にも来ていた。印象的な作品だ。一種‘白日夢’のようでもある。2枚の(異なるアングルの)写真を組み合わせた構図。本展ではそれらの写真も展示されていた。用意周到だ。
もっとも、そのような作風が主流かというと、そうでもなかった。生涯を通して追及した作風というわけではない。
「ボール」と同じ制作年の「夕食、ランプの光」(1899)は今回もっとも印象的な作品だった。4人の家族が食卓を囲んでいる。黒いシルエットの人物が画家本人だ。妙に白々しい気詰まりな雰囲気が漂っている。正面の子どもはまっすぐこちらを見ている。画家に「あなたはだれ?」と問うているようだ。内心動揺する画家。
同時期の作品に連作木版画「アンティミテ」(1897‐1898)がある。ドラマの各場面を見ているようだ。これを見て得心したのだが、「夕食、ランプの光」は‘演劇的’な作品だ。人物配置、そしてその緊張関係が、演劇のような感覚なのだ。ヴァロットンの手つきは劇作家のようだ――。
そう思ってWikipediaを調べてみたら、ヴァロットンは8つの戯曲を書いていた。「批評的には不評だった」そうだが、絵画的には面白い。ユニークだ。このような‘演劇的’な作品は、同時期だけではなく、後年になっても現れる。「貞淑なシュザンヌ」(1922)がそうだ。3人の男女の緊張関係。だが、これも、生涯をかけて追及した作風というわけでもないようだ。
傑作だったのは(傑作というのは‘滑稽な’という意味だが)、「竜を退治するペルセウス」(1910)。「力自慢の大道芸人のような」ペルセウス、「剥製のワニかと見紛う」竜、「中年の裸体を晒す」アンドロメダ(いずれもキャプションの言葉より)。思わず笑ってしまった。腰が抜けるような感じがした。これはいったいなんだろう。どうしてこんな戯画的な作品が生まれたのだろう。
(2014.8.10.三菱一号館美術館)
※各作品の画像(本展のホームページ)(「竜を退治するペルセウス」を除く)
http://mimt.jp/vallotton/midokoro.html
※※「竜を退治するペルセウス」(収蔵館作成のYoutube)
https://www.youtube.com/watch?v=JalyHs-Ki7o