Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パスカル・デュサパンの管弦楽

2014年08月22日 | 音楽

 サントリー芸術財団のサマーフェスティバル2014の開幕。まずは今年のテーマ作曲家パスカル・デュサパン(1955‐)の管弦楽から。

 1曲目はデュサパンが選んだ若手の作曲家クリストフ・ベルトラン(1981‐2010)の「マナ」。10分ほどの鮮烈な曲だ。2005年のルツェルン音楽祭でブーレーズ指揮ルツェルン音楽祭アカデミーにより初演された。たぶんそのときの音源だろう、Youtubeで聴くことができる(※1)。鋭角的な音だ。

 それにくらべると、昨日の演奏は感度の鈍い音だった。でも、Youtubeではわからないことがわかった。この曲はオーケストラが2群に分かれているのだ。指揮者を扇の要に見立て、左右に2群のオーケストラが広がっている。たとえばコントラバスは、向かって左側に4本、右側に4本という具合だ。そこから生まれる音響は、目の前でステレオを聴いているようだった。

 2曲目はデュサパンの弦楽四重奏曲第6番「ヒンターランド」。弦楽四重奏とオーケストラという特異な編成の曲だ。弦楽四重奏がオーケストラを先導する場面が多い。ソロ楽器ならぬソロ・アンサンブルだ。もっとも、オーケストラが波に乗って進み、そこに弦楽四重奏が加わる場面もある。

 だが、そのオーケストラの、中間部を除いた両端の音楽は、アップテンポのビート感があるものの、新古典的な、あまり現代とは関わっていない音楽のように感じられた。

 3曲目はデュサパンが影響を受けたというシベリウスの「タピオラ」。なるほど、短いフレーズが音響の空間に点滅するというか、息の長い音楽の層が底流にあり、そこに短いフレーズが飛び交うというか、そんな感覚の音楽が、現代のコンテクストで再検証されるような趣があった。

 4曲目はデュサパンの「風に耳をすませば」。ハインリヒ・フォン・クライストの戯曲「ペンテジレーア」(傑作だ!)を原作とする新作オペラ(来年3月にブリュッセルのモネ劇場で初演予定)(※2)からの3つの場面(メゾソプラノの独唱付き)。

 「ペンテジレーア」を原作とするオペラにはオトマール・シェック(1886‐1957)の作品がある。ドレスデンで観たことがある。クラリネットを10本も使うなど異形のオペラだ。それにくらべれば、デュサパンの作品は色彩豊かな‘現代オペラ’の音だ。冒頭の鄙びたハープの音型が最後にもう一度出てくる。印象的なテーマだ。
(2014.8.21.サントリーホール)

※1「マナ」のYoutube
https://www.youtube.com/watch?v=1B-DCuoXznU

※2「ペンテジレーア」の初演予定
http://www.lamonnaie.be/en/opera/430/Penthesilea
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