Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カンブルラン/読響

2015年02月14日 | 音楽
 カンブルラン率いる読響が3月上旬に欧州公演をおこなう。ベルリンなど5都市でAプロ、Bプロの2種類のプログラムを演奏する。昨日の定期ではそのうちのAプロが披露された。

 1曲目は武満徹の「鳥は星形の庭に降りる」。武満徹の代表作の一つだ。小澤征爾指揮ボストン交響楽団のレコードが出たときには繰り返し聴いた。もちろん、その後、日本のいくつかのオーケストラでも聴いた。でも、どういうわけか、昨日は意外に地味な曲だと感じた。

 編成が比較的小さく、演奏時間は13分程度。でも、そういう外形的なことではなく、音色が地味で、音量も抑え気味、表現は内省的だと感じた。端的にいうと、ドビュッシーなどに通じる色彩感よりも、むしろ禅の世界観に通じるなにかを感じた。

 なぜ、そうなるのか。この曲が作曲された1977年からすでに38年がたち、その後の作曲界がずっと遠いところまで来てしまったからか。それともカンブルランがこの曲から読み取ったものが、西洋とは違った世界観だったのか。ともかく、この演奏がベルリンその他でどう受け止められるか、興味のあるところだ。

 2曲目はバルトークのヴィオラ協奏曲。バルトークの遺作のこの曲、未完の草稿を弟子のシェルイが補筆したわけだが、何度聴いても、とくにオーケストラ部分が控えめで、昨日も第1楽章では苛々してしまった。だが、昨日は、そのオーケストラ部分の演奏がくっきりした輪郭を持っていた。今まで聴いた中で昨日が一番よかった。

 ヴィオラ独奏のニルス・メンケマイヤーもよかった。豊かな音色もさることながら、音楽性がすばらしい。これは持って生まれたものだ。1978年生まれのドイツ人。アンコールにバッハの無伴奏チェロ組曲第1番からサラバンドが演奏された。

 プログラム後半はまずアイヴズの「答えのない質問」。そしてアタッカでドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」に移行した。シュールな「答えのない質問」から休みなく「新世界より」につながると、「新世界より」がまるで違った曲に聴こえる。実験的な音の構造の曲。新鮮な驚嘆のうちに一気に聴き終えた感じがする。

 カンブルランは以前にもハイドンの「天地創造」の冒頭からヴァレーズの「砂漠」につなげ(テープ音楽部分はカット)、再度「天地創造」に戻ったことがある。あのときの驚きを思い出した。
(2015.2.13.サントリーホール)
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