Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ラ・フォル・ジュルネ(5月2日)

2015年05月03日 | 音楽
 ラ・フォル・ジュルネの1日目。まずケラー弦楽四重奏団から聴いた。曲目はハイドンの「十字架上のキリストの最後の7つの言葉」。これは名演だった。全9楽章から成るこの曲の、楽章を追うごとに演奏の密度が濃くなった。音楽も、最初は淡々としているが、だんだん変化に富んでくる。それが実感できた。

 いうまでもないが、原曲はオーケストラ曲だ。後にハイドン自身が弦楽四重奏版とオラトリオ版を作成した。また、クラヴィーア版もあり、これはハイドン自身が監修している。では、どれが面白いか。わたしはやはりオーケストラ版が一番面白いと思う。では、詰まらないのはどれかというと、弦楽四重奏版だと、そう思っていた。

 そんな先入見をこの演奏はきれいさっぱり追い払った。第1ヴァイオリンのアンドラーシュ・ケラーの力量の故だが、もう一つ、第2ヴァイオリンのセンスの良さも付け加えたい。時々ハッとすることがあった。

 次の演奏会までに3時間ほど空きがあったので、近くの三菱一号館美術館で開催中の「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」を見た。その感想は後日また書いてみたい。

 美術館から帰ってきて、次はラ・ヴェネクシアーナによるモンテヴェルディのマドリガル8曲。まったく残響のないデッドな空間が、演奏者には気の毒だ。でも、聴いている方には、演奏者一人ひとりの力量や、楽曲の把握の程度がよく分かる。そんな意地の悪い聴き方をした。

 この演奏会はプログラムの変更があった。当初のプログラムはモンテヴェルディとジェズアルドを交互に歌い、さらに他の作曲家の曲を挟むものだった。急な変更だったのだろう。会場で配られたプログラムは翌日のもの。しかもそのプログラムにも変更があった。貼り紙で告知していた。

 次はメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」。成田達輝(ヴァイオリン)、吉田誠(クラリネット)、萩原麻未(ピアノ)の若き俊英3人に、なんと!堤剛(チェロ)が加わったアンサンブルだ。今年のラ・フォル・ジュルネ最大の聴きものだった。

 第5曲「イエズスの永遠性への頌歌」での、チェロがきわめてゆっくり歌う長大なメロディーラインの演奏に、わたしは全神経を集中した。堤剛の往年の演奏にくらべると、音量は落ちているかもしれない。でも、ものすごい集中力があった。わたしの音楽人生の中でも、これは空前絶後の経験になった。
(2015.5.2.よみうりホール、B5、D7)
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