Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ロト/都響

2016年04月08日 | 音楽
 読響を振ってブーレーズやハイドンで鮮烈な印象を残したフランソワ=グザヴィエ・ロト(1971‐)が、今度は都響を振った(読響の前にはN響も振っている)。プログラムも、読響のときと同様、凝ったものだ。

 1曲目はシューベルトのピアノ曲「6つのドイツ舞曲」D820をウェーベルンがオーケストレーションしたもの。原曲は6曲の小品からなるが、ウェーベルンは大胆に構成を変えた。第1曲‐第2曲‐第1曲‐第3曲‐第1曲とつなげて前半とし、第4曲‐第5曲‐第4曲‐第6曲‐第4曲とつなげて後半とした。(※)

 各々の核となる第1曲と第4曲は、リズムパターンが似ている。しかも前半は弱音中心、後半は強音中心でくっきりしたコントラストが付いている。

 ウェーベルンの編曲というと、バッハの「音楽の捧げもの」から6声のリチェルカーレのオーケストラ版が思い浮かぶが、シューベルトのこういう編曲もあったのかと目を開かされた。しかも一筋縄ではいかない編曲。演奏も、この編曲がどんな曲を生んだのかを、的確に伝えていたと思う。

 2曲目はリヒャルト・シュトラウスの「メタモルフォーゼン」。絶望とか悲嘆とか、そういった感情に過度にのめり込まず、きちんと形を整えた演奏。言い換えれば、表現主義的な演奏ではなく、古典的なある一線に踏みとどまった演奏。

 終演後の静寂がすごかった。緊張感みなぎる長い静寂。その静寂がこの演奏のすべてを物語っていたと思う。

 3曲目はベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」。冒頭の2回の和音が、ピタッときまらず、微妙にずれていることに衝撃を受けた。むろん意図的にやっていることだ。これはなんだ。なぜだろうと思った。直後に第1主題が提示される。速めのテンポだが、サクサクした感じはしない。流動的な揺らぎがある。しなやかなリズム。弾みがある。音も瑞々しい。飛翔するような感覚がある。弦は12‐10‐8‐6‐4の編成だが、驚くほどよく鳴る。

 仕掛けが満載の演奏。一例をあげるなら、第4楽章の、あれは何番目の変奏だろう。普通は弦楽合奏で演奏される活気ある部分が、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、各1人で演奏された。突如闖入する室内楽的な部分。意表を突かれた。譜面にはどう書かれているのだろう。どんな根拠があるのだろう。ともかく、この後どんな仕掛けがあるのか分からないと、全身を耳にした。(※)
(2016.4.7.サントリーホール)

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コメント (3)
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