Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ゲオルク・フリードリヒ・ハースの管弦楽

2017年09月08日 | 音楽
 細川俊夫が監修するサントリーホール国際作曲委嘱シリーズの今年のテーマ作曲家はゲオルク・フリードリヒ・ハース(1953‐)。開演前のプレトークに登場したハースは、写真よりも太っていた。今は亡き指揮者カール・ベームに(少し)似ている。ハースもベームもオーストリアのグラーツ生まれ。同郷人だ。

 プレトークの内容は省くが、細川俊夫の質問が的確かつ簡潔でよかった。お陰でハースの話が十分に聞けた。通訳の方も優秀だった。

 さて1曲目はハースの師フリードリヒ・ツェルハ(1926‐)の「夜」(2013)。演奏時間はおよそ20分の曲だが、その中間あたりでいかにもベルクのような濃密な音楽が出てきた。それ以外の部分での現代的な感覚とは明らかに異質。未完のオペラ「ルル」の第3幕を補筆・完成させたツェルハがベルクに捧げたオマージュか。

 演奏はイラン・ヴォルコフ指揮東京交響楽団。以下の曲でも同様だが、ヴォルコフのモチベーションの高さと、オーケストラにたいする強いリーダーシップが印象的だった。東京交響楽団もよくついていった。

 2曲目は今年の委嘱作品、ハースの「ヴァイオリン協奏曲第2番」(2017)。全体は9つの部分からなり、それらが切れ目なく続く。演奏時間はおよそ32分。各部分には名称がついているが、その8番目の「純正音程」の美しさに思わず身を乗り出した。沼野雄司氏のプログラムノーツによれば、「「ソより四分音高い音」の上に構成される倍音を全楽器が奏する」響き。その澄んだ美しさは、別世界を垣間見るようだった。

 ヴァイオリン独奏はミランダ・クックソン。新作のこの曲をすっかり掌中に収めた演奏。少しも硬さがなく、しなやかな感じさえした。オーストラリア生まれの女性奏者。大変な実力の持ち主かもしれない。

 3曲目はハースの現在の弟子キャサリン・ボールチ(1991‐)の「リーフ・ファブリック」(2017)。ツェルハ~ハース~ボールチと3代続く血脈がありそうだ。

 4曲目はハースの「夏の夜に於ける夢」(2009)。曲が始まってしばらくすると、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」序曲の冒頭の4つの和音が出てくる。しみじみと心に沁みるが、そのうち、どことなくワーグナーのような音響が現れる。反ユダヤ主義者のワーグナーはメンデルスゾーンを攻撃した。そんな事実の示唆か。
(2017.9.7.サントリーホール)
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