Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

作曲家の個展Ⅱ 一柳慧×湯浅譲二

2017年10月31日 | 音楽
 サントリー芸術財団の「作曲家の個展Ⅱ」。今年の作曲家は一柳慧(1933‐)と湯浅譲二(1929‐)。

 開演前にプレトークがあった。司会は沼野雄司。さすがに簡潔でポイントを押さえた(ドキッとするような質問も一つ交えた)司会ぶり。音楽学者が司会をすると、自説をくどくど述べる人がいるが(聴衆は作曲家の話を聴きたいのに‥)、沼野雄司はそんなことはなかった。

 一柳慧と湯浅譲二は、演奏会で姿をお見かけすることも多いが、湯浅譲二は昨年末から体調を崩されたそうで、姿をお見かけせず、心配していた。最近ある演奏会で久しぶりにお見かけしたが、本調子ではなさそうだった。だが、プレトークでは杖も使わずに登場されたので安堵した。

 プログラム前半は、一柳慧のピアノ協奏曲第3番「分水嶺」(1991)(ピアノ独奏は木村かをり)と湯浅譲二の「ピアノ・コンチェルティーノ」(1994)(ピアノ独奏は児玉桃)。同世代のお二人の同時期のピアノ協奏曲。モノクロームな一柳慧の作品と、盟友・武満徹を髣髴とさせるカラフルな湯浅譲二の作品とが好対照。

 プログラム後半に入る前に、湯浅譲二へ委嘱されたが、体調不良により未完の作品の、冒頭の2分程度が演奏された。本来はこの演奏会で初演されたはず。それが完成されなかったことに心を痛めたが、さわりの部分だけでも音になったことは嬉しい。心配を吹き飛ばすような力強い音が鳴った。

 次に未完のその委嘱作の代わりに、旧作の「クロノプラスティクⅡ‐エドガー・ヴァレーズ讃‐」(1999/2000)が演奏された。これは名演。透明で色彩豊かな音がしなやかに動き、純度の高い演奏が展開された。言い遅れたが、当日のオーケストラは都響、指揮は杉山洋一。

 湯浅譲二が書いたプログラム・ノートによると、この作品が初演されたとき、「私は演奏に満足していなくて、再演を望んでいた。」と。わたしは氏のこのような率直さが好きなのだが、さて、今回の演奏はどうだったろう。満足してもらえたのではないかと思うが‥。

 最後に一柳慧への委嘱作「ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲」が初演された。ヴァイオリン独奏は成田達輝、チェロ独奏は堤剛。二人の演奏は聴き応えがあったが、30分程度かかる大作のこの曲は、既視感・既聴感のある音が続いた。
(2017.10.30.サントリーホール)
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