Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

テミルカーノフ/読響

2018年02月21日 | 音楽
 今月の読響は、定期の日には用事があったので、名曲コンサートに振り替えた。指揮は定期と同様テミルカーノフ。1曲目はグリンカの「ルスランとリュドミラ」序曲。猛然と始まったその演奏は、弦の音に濁りがあるのが気になった。テンポを落とした副主題では気にならなかったが、再び猛スピードのテーマに戻ると、弦の濁りにひっかかった。しかも、全体的に、アンサンブルに余裕が欠けた。大向こう受けはするだろうが、荒っぽさが否めない演奏だった。

 2曲目はプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番。ヴァイオリン独奏はスペイン生まれの若手奏者、レティシア・モレノ。わたしは初めて聴くが、その攻めの演奏に目を見張った。鋭角的に切り込む演奏。音は細く、朗々と鳴らすタイプではない。だが、けっしてオーケストラに埋もれない。たしかな才能を持つ証しだろう。

 テミルカーノフも丁寧にバックをつけていた。読響も余裕を取り戻した。結果、これは名演となり、わたしは安堵した。

 アンコールにバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番からアダージョが演奏された。これも細い音。それはこのヴァイオリニストの、他のヴァイオリニストとは一線を画す個性の一部だと得心した。その音で、まるで水面を滑るように、淀みなく演奏した。余分な思い入れのないバッハ。こういうバッハもいいと思った。

 3曲目はドヴォルザークの交響曲第9番「新世界から」。第1楽章、第2楽章ではとくに変わったことはなかったが、第3楽章に入ると、テミルカーノフ持ち前の、前へ、前へと進む演奏が現れた。前のめりのその演奏は、ライヴならではの躍動感を生むものだが‥。第4楽章もその流れで進んだ。

 アンコールがあった。ブラームスのハンガリー舞曲第1番。これは1曲目の「ルスランとリュドミラ」序曲に立ち返るような、轟々と鳴り、猛然と突き進む演奏。大波が打ち寄せるようだが、その一方で音の濁りが増した。

 テミルカーノフは今年80歳になる。残念ながら、往年のテミルカーノフ(たとえば10年前のテミルカーノフ)とは違っているようだ。端的にいって、音のコントロールが緩くなっている。それは年齢からくるものか。それとも今回は名曲コンサートだったからで、定期では違ったのだろうか。

 わたしはなんだか納得できない思いで会場を後にした。
(2018.2.20.サントリーホール)
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