Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ヴァイグレ/読響

2021年06月16日 | 音楽
 プログラムに惹かれてヴァイグレ指揮読響の名曲コンサートに行った。まずプログラムをいうと、ヴェルディの「運命の力」序曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(ヴァイオリン独奏はアラベラ・美歩・シュタインバッハー)そしてブラームスの交響曲第1番。どの曲も指揮者とオーケストラがどう料理するか、注目される曲だ。

 客席はほぼ満席だった。実際には緊急事態宣言を受けて、チケットの販売を途中で取りやめたようなので、満席ではなかったろうが、見た目にはコロナ禍以前の演奏会と変わらなかった。集客しやすいプログラムだったせいもあるだろうが、昨年11月から今年2月まで日本に長期滞在して読響を支えたヴァイグレへの支持が集まっているからでもあるだろう。

 ヴェルディの「運命の力」序曲は目の覚めるような名演だった。ピッチがぴたっと合っていて解像度が高かった。曲の細部までニュアンスが突き詰められ、しかも全体の彫りが深かった。指揮者とオーケストラが気合を入れて準備した演奏だ。

 冒頭のトランペットの音が明るくて印象的だった。それが一気にわたしたち聴衆をヴェルディの世界に誘った。続く弦の音型もシャープだった。弦は14型の編成で、重くもなく、軽くもなく、快い緊張感があった。中間部に出てくるクラリネットのソロも表情豊かだった(クラリネットは金子さんではなかったかと思う。最後のブラームスの交響曲第1番でも目立っていた)。

 メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では、アラベラ・美歩・シュタインバッハーの演奏に注目した。名前も写真もよく見かける演奏家だが、実演を聴くのは、わたしは初めてではないかと思う。たいへん優秀なヴァイオリン奏者だ。どんなパッセージでももたつかず、音程もピシッと決まる。技術的には見事というしかない。

 だが、そのうえでいうと、わたしは感情移入が難しかった。なぜだろう。音が細くて、中に入りこめないからだろうか。それとも、それ以外の要因があるのだろうか。たとえば演奏家のメンタリティとか。それはわからなかったが。

 ブラームスの交響曲第1番は、骨格の太い演奏だった。低音がよく鳴り、スケールが大きく、ドイツ的といえばドイツ的な、日本人の指揮者ではなかなかこうはいかない演奏だった。コロナ禍で、特別な例を除いて、外人指揮者の来日が難しくなっているが、それでもやはり外人指揮者を招く意味はあると思った。ただ、わたしには1曲目の「運命の力」序曲の音が鮮明に残っているからだろうか、ピッチのゆるさが気になった。どこかに粗い面のある演奏だった。
(2021.6.15.サントリーホール)
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