Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

樋田毅「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」

2024年10月25日 | 読書
 樋田毅氏の「旧統一教会 大江益夫・元広報部長懺悔録」(以下「懺悔録」)を読んだ。大江益夫氏は1993年~1999年に旧統一教会(以下「統一教会」)の広報部長を務めた。その前後も統一教会と関連団体の要職を歴任した。その大江氏へのインタビュー本だ。

 インタビュアーの樋田毅氏は元朝日新聞記者。樋田氏はすでに「記者襲撃――赤報隊事件30年目の真実」(岩波書店)、「最後の社主――朝日新聞が封印した「御影の令嬢」へのレクイエム」(講談社)そして「彼は早稲田で死んだ――大学構内リンチ殺人事件の永遠」(文藝春秋社)の著書がある。わたしはすべて読んだ。どれもひじょうに惹かれた。そこで「懺悔録」も読んだ次第だ。

 統一教会の幹部だった人物の回顧録。自身が行い、また見聞きした事柄を率直に語っている。樋田氏とは思想信条が異なるはずだが、それにもかかわらず、二人のあいだに信頼関係が成立していることが窺われる。

 大江氏は広報部長時代に「事実を認め、社会がそれに対してどう思うかも認めるが、同時に信教の自由も認めるようにマスコミに求める」(わたしの言葉による要約だ)という姿勢を基本にしたそうだ。その姿勢が身についているのだろう。本書でも事実を認め、その事実が社会からどう見えるかも理解する。だが、信教の自由も認めてほしい、という姿勢が一貫する。結果、教団の存続を図る。それが大江氏の防衛ラインだろう。

 大江氏が認める事実には興味深い点が多々ある。たとえば統一教会に武装組織があった(今もある?)こと。前記の樋田氏の著作「記者襲撃」でも触れられた点だ。それが裏付けられた格好だ。大江氏の推定では400人ほどいたという。相当な数だ。武装組織(大江氏は「武闘派」と呼ぶ)はソ連(当時)、中国、北朝鮮の日本への武力侵攻に備えたものというが、武装組織である以上、いつ暴走しないともかぎらない。

 また自民党との関係では、自民党と深い関係があったことを前提に、いま解散命令請求が出されていることについて、「自民党は自らに対して解散命令請求を出すべし、と言いたいです。そして自ら解党していただきたい、と思っています。」と憤る。さんざん世話になったくせに、今になって切り捨てるのか、という怒りだ。それは本音だろう。だが一方では、自民党への牽制の意図があるかもしれない。

 余談だが、樋田氏と大江氏のあいだに信頼関係が成立したのは、二人が同時期に早稲田大学の学生だった(学部は違う)ことがあるかもしれない。その時期の早稲田は革マル派が起こした川口大三郎君の殺害事件で大揺れだった。わたしも同時期に早稲田大学の学生だった。わたしたちは同じ時代の空気を吸った。

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