Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

齊藤一郎/セントラル愛知交響楽団

2012年03月26日 | 音楽
 「地方都市オーケストラ・フェスティヴァル」で齊藤一郎指揮セントラル愛知交響楽団の演奏会を聴いた。これはかねてから楽しみにしていた演奏会だ。

 実に意欲的でアグレッシヴなプログラムだ。よくこういうプログラムを組むものだと感心する。

 1曲目は木下正道の「問いと炎2」。リコーダーとチェロを独奏楽器とする二重協奏曲だ。冒頭、バスドラムの強打で始まる。以下、ゆったりと持続する時間の流れのなかで、根源的な音が刻み込まれる。リコーダーとチェロの独奏者も自己の存在をかけた音を打ち込む。これは、今まで聴いたことがない、だれにも似ていない音楽だ。できることならもう一度聴きたい。そのときは絶対にこのメンバーで。

 2曲目は水野みか子の「レオダマイヤ」。これは箏(二十絃箏)と尺八のための二重協奏曲だ。こちらは対照的に、オーケストラのいかにも現代音楽風なテクスチュアに、箏と尺八がみやびな模様を織り込む音楽。残念ながら、全体的におとなしく、既視感が漂っていた。箏は野村祐子、尺八は野村峰山。

 3曲目はバッハの「ゴルトベルク変奏曲」の野平一郎による編曲。冒頭のアリアは木管の各楽器で受け渡され、弦に引き継がれる。これはウェーベルンの先例に敬意を表したものか。第1変奏はいかにもバロック的な編曲だが、第2変奏になると現代的な音響が忍びこむ。第3変奏はバロック的な編曲に戻るが、どこかに異分子が潜り込んでいたかもしれない(はっきり記憶していないが、どうだったか。ともかく第2変奏の洗礼を受けた後なので緊張していた。)

 途中から、「どうもこの編曲では3曲ごとに一つのグループになっていて、バロック調、現代調、バロック調(変調あり)という順に出てくるようだ」と思い始めた。後半(第16変奏以降)もしばらくはそのパターンで追えたが、そうは問屋がおろさなかった。最後はパターンが崩れて一泡吹かされた。

 「最後のアリアの回帰はどうなるのだろう」と思ったら、冒頭と同様の編曲で戻ってきた。なるほど、そうなのかと思っていたら、やがて途切れ途切れになり、消え入るように終わった。なんて洒落た編曲だろう。思わず微笑んでしまった。

 齊藤一郎は岩城宏之のアシスタントをしていたそうだ。故人の精神を受け継ぐ人が現われて嬉しい。セントラル愛知交響楽団の演奏も鮮やかだった。フレッシュな音で、切れのよい演奏だった。
(2012.3.25.すみだトリフォニーホール)

注:「問いと炎2」の2はローマ数字。

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