Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

森美術館「私たちのエコロジー」展

2024年03月18日 | 美術
 森美術館で開かれている「私たちのエコロジー」展は、環境問題に向き合う現代アートを集めた展覧会だ(3月31日まで)。上掲の画像(↑)の左半分はモニカ・アルカディリの「恨み言」。青い部屋に白い球が浮く。海に浮かぶ真珠をイメージしている。美しい。だが小さな声が聞こえる。「海は全てを暴いてしまう。強い呪いの力で。海に住むものとして、私は呪われた人生を送ってきた。呪われるとは、隠された事実を垣間見ることだ。(以下略)」と。真珠が呟いているのだ。

 アルカディリは1983年生まれ。ベルリン在住、クウェート国籍。ペルシャ湾岸は古代メソポタミア時代から天然真珠の産地だった。20世紀初頭に日本の養殖真珠によって駆逐された。声はその恨み言だ。

 本展では上記の「恨み言」をはじめ国内外の34人のアーティストの作品が展示されている。現代アートなので、予備知識なしに作品を見て、何を感じるか、何も感じないか。そんな自分を楽しめばいいと、わたしは割り切って見て回った。

 本展には3つのビデオ・インスタレーションが展示されている。三者三様でおもしろかった。エミリア・シュカルヌリーテの「時の矢」は、水中カメラが海底を映す。水没した古代都市の遺跡が見える。なぜか(水中なのに)発電所が現れる。さらに大蛇が泳いでくる。大蛇は発電所のコントロールパネルを這う。海底に敷設された配管が見える(なんだろう?)。最後に人間が尾ひれをつけて泳ぐ。

 脈絡のない映像だ。不合理な夢を見ているようだ。最後に出てくる泳ぐ人間は、夢を見ているわたし自身だろうか。見終わった後も夢から覚めない気がする。シュカルヌリーテは1987年リトアニア生まれ。

 ジュリアン・シャリエールの「制御された炎」は、真っ暗な空間に四方八方から炎が飛び交う。ものすごい勢いでこちらに向かってきたり、虚空に消えたりする。花火のようにも見えるが、巨大な隕石の地球への衝突(=地球の終わり)のようにも、またビッグバンのようにも見える。シャリエールは1987年スイス生まれ。ベルリン在住。

 アリ・シェリの「人と神と泥について」は、黒人の労働者たちが延々とレンガを作る。泥をこね、型にはめ、天日で乾かす。赤茶けた大地に無数の型が並ぶ。本作品にはナレーションが入る。たとえば「神は泥から人を作った」と。創世記の言葉だ。その他わたしの知らない宗教が語られる。無信仰のわたしは思う。「古来、人は泥と格闘して生きてきた。人は泥との格闘から神を作ったのかもしれない」と。シェリは1976年ベイルート生まれ。
(2024.2.12.森美術館)

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