Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ブーレーズ&ピンチャー

2021年08月26日 | 音楽
 サントリーホール・サマーフェスティバルの4日目は、18:00から小ホールでブーレーズ(1925‐2016)のピアノ曲2曲のコンサート、19:30から大ホールで今年のテーマ作曲家・ピンチャー(1971‐)の室内楽2曲のコンサートがあった。

 ブーレーズのコンサートは、今年のプロデューサー「アンサンブル・アンテルコンタンポラン」(以下「EIC」)の創設者であり、また初代の音楽監督でもあったブーレーズを記念するものだろう。曲目は2台のピアノのための「構造」第2巻(1956、61)とピアノ独奏のための「ピアノ・ソナタ第2番」(1947~48)。演奏は、前者がディミトリ・ヴァシラキスと永野英樹、後者がヴァシラキス。二人ともEICのメンバーだ。

 「構造」第2巻の演奏は、なぜかピンとこなかった。一方、「ピアノ・ソナタ第2番」の演奏には豊かな流れがあり、上質な音楽を感じた。わたしは今までこの曲をCDや実演で何度か聴いてきたが、この演奏が一番しっくりきたように思う。

 ピンチャーの室内楽のコンサートでは、チェロとピアノのための「光の諸相 Profiles of Light」(2012~15)とソロ・トランペット、ソロ・ホルン、アンサンブルのための「音蝕 sonic eclipse」(2009~10)が演奏された。

 「光の諸相」は、第1部がピアノ独奏、第2部がチェロ独奏、第3部がチェロとピアノのデュオになっている。演奏は、チェロがエリック=マリア・クテュリエ(第2部と第3部)、ピアノが永野英樹(第1部)とディミトリ・ヴァシラキス(第3部)。

 クテュリエはEICのメンバーだが、名手ぞろいのメンバーの中で、わたしがもっとも強い印象を受けた奏者だ。前日までの3回のコンサートでも注目していたが、この「光の諸相」の演奏が決定的になった。人並外れた音楽への没入。それが音楽の深奥に迫る。「光の諸相」の第3部は前日に聴いた「初めに(ベレシート)」(2013)に通じる音楽だ。前日はよくわからないところがあったが、クテュリエの演奏でなにかがつかめた。

 「音蝕」は、第1部がソロ・トランペットと小編成のアンサンブル、第2部がソロ・ホルンと同アンサンブル、第3部がソロ・トランペット、ソロ・ホルンと同アンサンブルで演奏される。ソロ・トランペットとソロ・ホルンはEICのメンバーだ。名前は省略するが、舌を巻くほどうまい。アンサンブルは日本の若手~中堅奏者で編成された。皆さん優秀でよくまとまっていたが、EICと比較すると、EICのほうが個々の奏者のキャラが立っている。そこには超えがたい壁があるように感じた。
(2021.8.25.サントリーホール)

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