出版と同時に、チリ紙交換に出されなくてはならない書物
書物悪評 : 広瀬佳一他 「ユーラシアの紛争と平和」 明石書店
数十人の大学教授が集まり執筆し、激動するユーラシア諸国の国際情勢について多くの論文を掲載している。
一読し、学ぶべき事は、何一つ無い。大学教授という職業の低脳ぶり「だけについて」学ぶ事が出来る。
米国大統領候補バラク・オバマのブレーンである戦略家ズビグニュー・ブレジンスキーは、今後、世界の中心となるのはユーラシアであると断言している。
今後、ユーラシアが金融投資、資源開発、産業発展、消費レベルの上昇、戦争・紛争多発による軍事産業「活躍」の「主戦場」になる。
特に資源開発、東西交易の要地となるカザフスタン等、また、ロシアのエネルギー輸出の通路となるウクライナが、戦争、紛争の中心地となる。
21世紀、この地域を制した者が、世界の覇者となり、世界を制する。
日本にとって、この地域に「足場を確保する事」は、ロシアによるヨーロッパへのエネルギー輸出、つまりヨーロッパのエネルギー源、ロシアの資金源に「日本が発言力を持つ」事を意味する。ヨーロッパ、ロシアは日本に「敵対政策が取れなくなる」。
圧倒的に不足する中国のエネルギー、その供給源となる、ロシア、カザフスタンへの「日本の強い影響力」は、日本の中国への「強い影響力」となる。
日本人が共有する中国、朝鮮、ロシアへの「脅威感情」は、「俗悪ネット右翼に顕著な」、反朝鮮、反中国の感情的ヒステリーという低次元段階を超越しなければならない。また「外敵」に対して「民族主義、天皇主義」と言う、「古代社会に逆戻りした、カルト宗教」に逃げ込もうとするイルミナティ陰謀論者の低脳段階を超えなければならない。そして、ウクライナ、カザフスタン等の地域を政治・経済的に「押さえる」事によって、いかに、中国・朝鮮・ロシア3国の対日敵対政策を「抑えるか」と言う、政治・経済「政策論」へと、発展させられなくてはならない。
排外的・感情的ヒステリーではなく、投資と技術提供、それと引き換えに資源とエネルギーを入手する、恒常的「国益」ビジネス関係が、敵国を味方に転換させる。
カザフスタン、キルギスタン等は、かつてモンゴル帝国の一部であり、現在も、モンゴルと一体化し、中国とロシアの「脅威」に備え、独立した大帝国を形成しようと考えている。
この地域は日本への「支援要請」を強く打診してきている。
そして北朝鮮の内情に最も詳しいのが、モンゴルの諜報部である。北朝鮮による日本人拉致被害者救済のポイントも、ここにある。
ウクライナはロシアに怯えている。カザフスタンは中国、ロシアに怯えている。日本が中国、ロシアの進出に脅威を感じている事と同様である。
世界で未開発の資源が最も大量に眠っているカザフスタン。世界の穀倉地帯と呼ばれるウクライナ。資金と、技術のない両国。資金と技術のある日本。食糧と資源の無い日本。日本と、この地域は、凹凸の関係にある(ウクライナの耕地確保に関して、既に日本は欧米穀物商社に惨敗状態にある)。
21世紀は、ユーラシアの、この2地域の「心臓部」を巡り、戦争と紛争が繰り返される時代となる。
本書には、こうした問題意識が全く無い。
なぜ、幼稚園の子供が、プラスチック製のオモチャの「卓球」のラケットを持ち、米国大リーグ「野球」のヤンキース・スタジアムの「バッターボックス」に立っているのか、理解不能である。なぜ、日本の大学教授達が、ユーラシアの国際情勢についての、書物を出版するのか、理解不能である。