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民主党マニフェストを批判する無知な人々(2)

2009-07-29 20:40:28 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

民主党マニフェストを批判する無知な人々(2)
(その1)から続く


自民党議員の民主党マニフェストに対する批判は、概ね以下の三つに要約できる。


①財源が不明確だ。


②バラマキ政策である。


③成長戦略がない。


 ①財源問題から考える。


 民主党の政策を実行するために必要な金額は、


2010年度  7.1兆円


2011年度 12.6兆円


2012年度 13.2兆円


2013年度 16.8兆円


である。


 この金額を、公共事業、天下り、冗費、補助金などを削って捻出する。政府の隠し資金である「埋蔵金」や「租税特別措置」の見直しも実行する。


 一方、麻生政権が昨年10月から本年6月にかけて編成した3回の補正予算で、どれだけの歳入欠陥が生じたのかを以下に記載する。


2008年度第1次補正予算  1.1兆円


2008年度第2次補正予算 11.9兆円


2009年度第1次補正予算 13.9兆円


合計            26.9兆円


 わずか8ヵ月の間に、麻生政権は27兆円もの歳入欠陥を生み出した。


 この27兆円の歳入欠陥は、国債増発19兆円、政府資産取り崩し8兆円によって賄われた。


 「ザイゲン」、「ザイゲン」と自民党議員は叫ぶが、自民党は、わずか8ヵ月で、27兆円も国家財政に穴を開けたのである。


 民主党がマニフェストで示した政策をすべて実行し、一方で、財源調達を1円も行なわなくても、国家財政に穴を開ける規模は、2010年度と2011年度の2年間合計で20兆円である。麻生政権がわずか8ヵ月で生み出した国家財政の穴よりも少額だ。


 2010年度から2013年度までの4年間を考えてみて、マニフェストで示した政策をすべて実行すると、その合計額は49.7兆円になる。民主党は、この49.7兆円のすべてを各種財源捻出措置によって賄おうとしているが、仮に、財源調達が半分しかできなかったとしよう。


 そうなると、国家財政に与える負担、穴を開けてしまう金額は、4年間合計で25兆円になる。


 麻生政権は、たった8ヵ月で27兆円もの穴を国家財政に開けた。民主党のマニフェストは、たとえ、財源調達が4年間で、当初見込みの半分しか実現できなかったとしても、国家財政に与える負担は4年間合計で25兆円にとどまる。


 民主党の鳩山由紀夫代表は、7月28日、宮崎県での遊説において、


「与党は財源問題をおっしゃるが、あなた方に言われたくない。無駄遣いし放題でお金を垂れ流し、足りなければ国債を発行してきているではないか」


と述べたと報道されているが、鳩山代表の指摘は真実を示している。


 国家財政に8ヵ月で27兆円もの穴を開けた麻生政権が、民主党のマニフェストにおける「財源が明確でない」と批判するのは、笑止千万(しょうしせんばん)以外の何者でもない。おへそでお茶が沸いてしまう。


 民主党マニフェストに対する「バラマキ」の批判はあたらない。






 政府の景気支持策、生活支援策は、家計の可処分所得が増加するように実施されることが最も望ましい。家計は増加した可処分所得を用いて、自由に支出対象を定めて支出を増やせばよい。


 「子育て手当」と「アニメの殿堂」を比べてみよう。政策手法としては、「子育て手当」がはるかに優れている。理由が三つある。


①可処分所得増加政策は政治利権になりにくいが、「はこもの」を作る公共事業は政治利権、汚職の温床になりやすい。


②最終的な支出決定はそれぞれの経済主体、つまり市場に委ねた方がロスが小さい。「アニメの殿堂」に大きな需要があるとは考えられない。家計の可処分所得が増えたら、個人はよく考えて、最も必要度の高い分野に支出する。個人の自由意思に支出先決定を委ねる方が無駄は小さくなる。


③家計が支出を増加させる分野が産業として潤う。その分野が成長分野になる。政府が特定分野にお金を落とせば、一時的には、そこに業者が群がるが、その分野が中期的成長を生み出すとは限らない。


 子育て手当は最も有効な「少子化対策」になる。また、「公立高校無償化」は「少子化対策」であると同時に、すべての子どもに夢を与える施策になる。「格差是正」策でもある。


 農業の所得補償制度は、日本の農業を存続させる有効な手法である。限られた財政資金の配分を思い切って変化させ、中長期の政策課題に充当するのは、「バラマキ」の対極に位置する「最も効率的な財政資金配分」である。


 麻生内閣は14兆円もの国費を投入した2009年度補正予算で、


公的部門の施設整備費に2.8兆円、


58の政府の基金に4.6兆円


の国費を投入した。


また、


役所の公用車購入1万5000台=588億円、


役所等の地デジ対応テレビ購入7万1000台=71億円、


の予算を計上した。


マンガ・アニメの殿堂には建設費だけで117億円が用意される一方、


生活保護の母子加算200億円は切り込まれたままにされた。


 麻生政権の補正予算こそ「バラマキ」の典型である。民主党の政策公約はその対極にある。


「成長戦略」について言えば、家計の可処分所得を増加させ、家計が支出を拡大させる分野が自律的に成長してゆくことを誘導することが、最も適切な政策対応である。


エコポイントもエコカーも、経団連企業への利益供与政策でしかない。


環境問題を重視するなら、各種基準を設定すれば良い。エコカーに対する財政支援をするなら、燃費の絶対基準に対応して助成額を決めなければ意味はない。高燃費・高排気量の高級乗用車購入が最も優遇されるのは、「環境にではなく大資本に優しい政策」である。


麻生政権は「政局より政策」、「景気回復」を重視して、景気対策を実行したと主張するが、その中核は「財政赤字を拡大させた」ことだ。


8ヵ月で27兆円も財政赤字を拡大させた。麻生首相は、「バラマキ・キング」、「財政赤字王」だ。「バラマキ・キング」、「財政赤字王」の麻生首相に民主党のマニフェストを「バラマキ」とは言われたくない鳩山代表の気持ちがよく分かる。


日本経済が不調だから、当面は財政政策をやや景気刺激的に運営する必要が高い。この観点からすると、4年間で49.7兆円かかる民主党が提示した施策について、その財源を満額まで調達せずに、やや控えめにすることが望ましい。


財源調達を必要額の半分にすると、4年間で約25兆円の景気支持効果が生まれることになる。1年当たり、GDP比で1%強の景気支持策を実施する経済効果が得られる。


中期の「経済成長」を誘導する具体的政策手法としては、「可処分所得増加策」が最も望ましい政策である。短期の「景気回復」を誘導するには、ある程度の財政収支赤字が生まれる状況を誘導することが望ましい。


したがって、民主党はマニフェストで示した施策の財源を100%カバーしようと、遮二無二(しゃにむに)行動しない方が良いことになる。ある程度、財源不足が生まれる程度に財源を調達することが「いい加減」ということになる。


民主党のマニフェストにおける財源調達を、やや気長に取り組むことによって、最も望ましい財政政策が実現できることになる。


民主党は自信を持って進むべきだ。御用メディアと自民党は、少しは経済を勉強するべきだ。頓珍漢(とんちんかん)な主張を叫んで、国民に間違った知識を付与することは、国民を不幸に導く原因になる。


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民主党マニフェストを批判する無知な人々(1)

2009-07-29 20:27:51 | 植草一秀氏の『知られざる真実』

民主党マニフェストを批判する無知な人々(1)
 民主党がマニフェストを発表した。自民党はまだ発表していない。麻生首相は昨年10月に解散総選挙を宣言したのに対応が遅い。細目でまだ調整がつかないらしい。


民主党マニフェストの最大の特徴は、予算を大幅に組み替える点にある。


7月24日付記事


「民主党対自民党:経済成長を促すのはどちら」


をもう一度、よく読みなおしてほしい。


ドイツの財政学者マスグレイブの整理によれば、財政の機能には次の三つがある。


①資源配分機能


②所得再分配機能


③景気安定化機能


 一般会計、特別会計を合計すると、年間の政府支出は207兆円に達する。この207兆円をどのように配分するのかを決めるのが政治である。


 政権が変われば、支出内容が変わるのは当たり前だ。政府支出の内容に多くの政策が反映されるのだ。


 民主党はこれまでの自公政権の政治をどのように変えるのか。


 予算の規模を変化させようとはしていないから、これまでの支出を削り、新しい支出に回す。


 大きな特徴で言えば、必要のない公共事業、「天下り」や「天下り機関」、役所へのお手盛り予算、あらゆる分野での無駄、などを徹底的に削減する。


 他方、子ども手当、公立高校の無償化、医療・介護の再生、農業の所得補償、ガソリン税の暫定税率廃止、高速道路の無料化、雇用対策、などを拡充するとしている。


 天下りや公的機関へのお手盛り予算を徹底的に削減すること、必要のない公共事業を実施しないこと、あらゆる無駄を排除すること、は望ましことである。民主党のマニフェストでは、4年後に公共事業削減で1.3兆円、人件費の削減で1.1兆円、無駄の排除や補助金の削減で6.1兆円の財源をねん出するとしている。


 207兆円の支出のうち、国債費などの80兆円、社会保障給付の46兆円、その他繰入金など10兆円には手をつけないから、残りの71兆円の政府支出のなかから、9兆円支出を切り詰めるとしている。13%程度の支出切り詰めは十分可能だと考えられる。


 この金額を切り詰めるのは2013年度であり、4年後だ。


 政府支出のなかの無駄と考えられる部分を切り詰めることは資源配分上望ましいことだ。「小さな政府」を「資源配分上の無駄を排除すること」と定義するなら、この意味での「小さな政府」は望ましい。民主党の政策は、この意味での「小さな政府」を目指すものだ。






 しかし、②所得再分配の機能では、民主党の主張は「大きな政府」を志向するものである。小泉政治の「市場原理主義」は、すべてを市場に委ね、結果における格差を放置した。その結果、政府が守らねばならない人々が悲惨な状況に追い込まれ、多くの国民が没落し、下流社会が形成された。


 民主党はすべての国民が安心して暮らせる、人間性を尊重する政治を志向する。すべての人々の暮らしを支えるため、子育て、医療、年金、介護、経済的弱者支援に、財政支出の多くを振り向けようとしている。


 ガソリン暫定税率廃止や高速道路無料化も、家計の所得を増加させる効果を持つ。


③の景気安定化の視点では、短期の経済政策の課題としての「景気回復」と、長期の経済政策の課題としての「経済成長」に、財政がどのような役割を果たすのかが問われる。


短期の景気安定化と財政の関係で最も重要なことは、財政収支の変化である。財政赤字拡大が非難されることが多いが、景気安定化との関係で言えば、「財政赤字拡大=景気回復誘導」、「財政赤字縮小=景気抑制誘導」になる。


したがって、短期的に景気回復を目指す経済政策とは、「財政赤字を拡大させる政策」ということになる。


他方、長期の「経済成長」は、技術進歩によって促される。人口の増加も影響する。これから未来に向かって成長する産業を育てることが、長期の「経済成長戦略」になる。


③景気安定化機能の視点から民主党の政策をどのように評価できるのかも考えなくてはならない。


民主党のマニフェストに対して自民党議員が批判しているという。メディアが一斉に自民党議員の民主党マニフェスト批判を右から左へと垂れ流すから、何も知らない国民は、民主党の政策に「欠陥がある」と勘違いしてしまう。これは、とんでもない間違いであり、選挙妨害である。


経済学を理解しない自民党議員が、民主党の政策だからと批判し、やはり経済学を理解しない御用メディアがその三流の感想を垂れ流している。


自民党議員の批判はおおむね、以下の三つに要約できる。


①財源が不明確だ。


②バラマキ政策である。


③成長戦略がない。


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