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【スリル絶えない毎朝】
時事通信 5月20日(金)11時12分
福島原発事故は「神の仕業」=東電の責任否定―与謝野経財相
5月20日(金)7時56分 産経新聞
東日本大震災 「すべり過ぎ」で津波巨大化 東大解明
5月20日(金)6時38分 時事通信
67年境界線でパレスチナ国家=イスラエルに譲歩迫る―米大統領
5月16日 ワシントン ロイター
米債務は16日の国債発行で上限に=財務長官
私が分析作業を続けてきて、特に2001年の9.11事件後の10年間、どんどんひ
どくなっていると感じるのは、マスコミの報道を通りいっぺん見聞したとき
に人々が受け取る「表に出ている世界の様相(表相)」と、報道などの情報
をもとに分析していくと矛盾や説明の空白が見えてきて、それらを自分なり
に洞察すると気づく「一枚めくった下にありそうな世界の様相(深相)」と
の乖離だ。近年は、マスコミ報道に接したときに人々が感じる説明の空白が
大きくなりすぎて、多くの人がマスコミ自体に疑念を感じる度合いが増して
いる。説明のつかないことが増え、状況に対する不確実性、不透明性が拡大
している。
「田中宇の国際ニュース解説 2011年5月18日」
寝過ごしメルマガを開封する。「表相と深相の乖離は解消しない」→「世の中の野
望ある人々は、政治家や実業家、学者などとして歴史に名を残す人物になることを
めざすことが多いが、歴史に名を残す人は、表相的な考え方を逸脱しない人のこと
である。そう考えると、歴史に名を残すことも浅薄に見えてくる。」と締めくくる
部分で「お帰りなさい」と声を掛けたくなった。情報の解析の「粗密」があっても
「情報価値」の散逸があっては「無意味」だと。
偶然とはいえ、16日にIMF専務理事のドミニク・ストロスカーンが婦女暴行容疑
で米国でとっ捕まったが、ストロスカーンらが主導するギリシャ国債危機への救済
策を阻害してドルを延命させようとする米当局の濡れ衣逮捕と言う陰謀を想定する
のは勝手でお好きな様にすれば良いことだが、米国の8月2日のデフォルト期限は
相当深刻だ。オイルショック当時の「反インフレ闘争」に多少なりともかかわった
者としてはどこかで折り合いをつけるしかないが、<緊縮財政≒無政府≒自由>原理
主義の‘茶会’派が頑迷に抵抗しているという。したがって、偶発的にデフォルト
が起こりうるだろう。このように‘ジャスミン革命’の成り行きのように‘偶発’
は現代の高度消費社会の基本特性なのだ。
それじゃ、資産家や中間階級の財産をどのように守れば良いのかという情報が飛び
交う(『ドルが紙くずになった時に、資産を守る方法』など)。いわく、ドルが紙
くずになった時の行動の仕方とは「自分の回りの外的環境に振り回されないマイン
ドセット」→「自分にコントロールできるリスクとできないリスク」→「ドルの紙
くずを恐れないで日々の投資に取り組む方法を考える」という論法などがメルマガ
で送信されてくる。第二の職場の創設に日々時間を投入し、疲れ切っているわたし
(たち)には自明なことで「どうぞ、お好きにして下さい」というほかないのだが
無駄だと思われる‘情報’のなかに偶発的とはいえ、多少なりとも‘価値ある情報’
に接することもあるから全否定、拒絶はしないという選択を日々行っている過ぎな
い(これは驕りかもしれないが)。
とは言え、‘神の仕業’だから東電の賠償責任は逃れられるとの与謝野の「経済活
動とその因果関係に関する法体系」を不明にしたままの発言は余りにも不用意だ。
つまり、小難しく言えば「道徳的当為」を「道徳的当意」にして‘逃避’したとい
うことになり、そのことを表明したことで与謝野は自分の首を絞めたに等しい。
すなわち、「権力の正当化論」が複数存在する場合に、「私たちはいかにし
てそのなかからすぐれた正当化論(理由)を選ぶことができるのか」である。
権力の正当化論は、すでに過剰に存在する。だから私たちは、そのなかから
最もすぐれた正当化理由を選ばなければならない(中略)三人称は、いつも
不偏であるとはかぎらない。現実には、さまざまな三人称が、さまざまな要
求を掲げるのみで、「三人称の『地平』」というレトリックは、現実の三人
称のどの担い手をも、代弁していないかもしれない。そもそも「三人称」が
「地平」をなしているという保証はどこにもない(中略)だから「適切な権
威とはなにか」という理論的問題は、難しい。はたして立法過程論は、こう
した理論的課題において、重要な貢献をなしうるであろうか。
書評的考察「大屋雄裕著『法解釈の言語哲学』勁草書房2006」
橋本努200704(未発表)
※「東京電力福島第一原発の何が問題だったのか 検証その2」
※「情報隠蔽で世界の孤児になりつつある日本。」
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いずれ『プロジェクト・ヘーリオスのはじまり』でも掲載しようと思っているが、
日本の農林水産業、とりわけ農業の政策の欠陥について指摘していきたいと考えて
いる。ここではそのヒントになる『デジタル革命』の付き合い方を「生物工学の現
在」を俯瞰することで触れてみる。
DNA塩基配列決定能力と計算機能力の飛躍的上昇により、デジタル化された莫大な
量の遺伝情報が集積される時代となり、大量のデータをいかに利用するかが次の時
代に託される。次世代の生命科学のかたちの1つは、近年欧米で盛んに研究、情報
交換されているのが合成生物学だ。
生きている状態を人工的に作り出すことは、人類の夢。生命誕生は、化学進化から
機能集合体のコアセルベート誕生仮説などにみられる、物質誕生とその相互作用に
よって生命の“かたぢが作られ現在の生命体が樹立したと考えられている。この現
在の生命体は遺伝情報の機能的集積体(ゲノム)を中心に生きている。
ゲノムを再設計し、機能的なコアセルベートの状態を作製したのち、両者を組み合
せることによって生命を作り出せるはずであるが、機械的、あるいは生化学反応の
一部で生命類似体を作る試みは、オートマトンや生体内の遺伝子発現制御サーキッ
トの人的作製、機能的膜内空間の化学合成、計算機内での任意遺伝子の組合せによ
る代謝シミュレーションなど多様なアプローチがある。しかし生命体は天文学的な
長い時間と奇跡的な偶然により生み出されてきたので、簡単には再構成できないと
考えられる。
2011 vol.69「B&I」
ところで、ゲノムデザインとはいったいなにを目指しているのか。“ゲノムを定方
向指向で操作することで、産業に役立つ生命体の樹立”といった意味であろう。実
際の生物産業ではどんなことがかんがえられているのが図上だ。日本では昔から発
酵工業が盛んであり、物質生産用の変異処理を用いた遺伝育種では、ゲノムデザイ
ンなど意識せずともランダムな変異の蓄積によって物質生産の効率を著しく上昇さ
せてきた(ここでは‘アナログ生物工学’と呼ぼう)。その伝統的な育種で作り出
された生産菌のゲノム配列を決定し、生産力の向上や代謝制御発酵の新しい方法論
を探り出す試みも行われはじめている。これらの手法とは異なり、本シリーズで取
り扱うゲノムデザインは、ある種の方向性と目的を持ったインテリジェントシステ
ムの構築を指している。
現在システムバイオロジー分野は、生命体の持つロバスト性、つまりは、外的環境
変化の許容性を生命システムとして保持し、生命という系が柔軟性を持っているこ
とにほかならず、この“柔らかざをいかに設計するかがゲノムデザインの難しさで
もある。実際に生命体をゲノムデザインするところから始めて創成することを実践
的ゲノムデザインと呼ぶ。その実践的合成生物学は、現時点ではまだデザインとい
うより再構成段階にありその再構成も難しいとされる。
合成生物が誕生した事実は、完全な生命体でないウイルスの Synthia誕生のインパ
クトは、生命創造に限りなく近いという点で、生命倫理面、宗教面、哲学面などで
広く論議される。米国ではベンター研究所の成果の現状と将来性のオバマ米大統領
が設置した生命倫理問題研究に関する大統領諮問委員会からの答申が2010年12月16
日に出された。日本にでは、まだ規制はないものの、遺伝子組換え食品での騒ぎに
見られるように、感覚的にまるで化け物を想定され忌み嫌われるような事態は避け
なければならない。
2011 vol.69「B&I」
遺伝子もゲノムも化学物質のDNAであり、4種類の塩基、A(アデニン)、T(チミン)、
G(グアニン)、C(シトシン)で構成される核酸が一列につながった細長い高分子で
ある。ゲノムDNAは細胞内の化学物質の中で分子量が最大の高分子である。ゲノム
と遺伝子の違いはその大きさである。自分で栄養を取り込んで生育するバクテリア
は、最も小さなマイコプラズマ菌のゲノムでも約500個の遺伝子がある。最も研究
が進んでいる大腸菌と枯草菌の野性株は約4,000個の遺伝子がある。物質生産には
不要な遺伝子、あるいは生育阻害する遺伝子を探して、それらをゲノムから除去す
れば、物質生産を簡便に行える汎用的な宿主が育種できるかもしれない。この発想
で大腸菌・枯草菌ゲノムから、一定の環境条件では特に必要としない遺伝子を大量
に除いた株の構築がNEDOプロジェクトで試みられ、ゲノムから約3割~4割の遺伝
子が除かれ身軽になった大腸菌株、枯草菌株が実際に得られ、それらはゲノムがコ
ンパクトで、成長速度、細胞密度も物質生産に適するレベルであるという驚くべき
性質を示したという。
ゲノムが擦り切れず丸ごと取り扱うには、徹生物の力を借り、ゲノム丸ごとクロー
ニングするのである。大腸菌は残念ながらゲノムサイズのDNA操作は不得手で。上
図に示すように、大腸菌のBACと呼ぶプラスミドベクターを用いても300 kbp(30万
塩基対)当たりが上限で、最も小さなマイコプラズマ菌のゲノムですらカバーでき
ないが、日米2つのグループが独立に、枯草菌、あるいは酵母を宿主に用いること
でサイズの制約はなくなったのだ。
2011 vol.69「B&I」
化学合成ゲノム作製法により、合成ゲノム生物学時代の入□に立つことになった。
合成ゲノムの将来性は実は技術的に越えなければならない課題が山積している。微
生物ゲノムの多くは環状で、酵母を宿主とするベンター法では環状のゲノムが直接
得られるので直感的に理解しやすいようで、ベンター研究所以外のいくつかのグル
ープが取り組もうとしている。枯草菌、酵母のシステムとも「小さく分割したDNA
を設計通りつなぎ合せてゲノムにする」という原理は共通であり、細かな方法はお
互いにかなり異なる。どちらの手法でも、手間とコストがかかる。例として約470
万塩基対の大腸菌ゲノムを丸ごとクローニングしようとすると、ベンター研あるい
はドミノ法どちらでも約3年間、約3億円の実費を要す。研究市場だけでも約10年
で35億ドル以上との見積もりもある。生命の基本的な仕組みの解明という基礎分野
への適用はもちろんであるが、環境・エネルギー問題の解消に向けたバイオ燃料、
温室効果ガスの二酸化炭素除去徹生物の開発などへの応用が期待される。さらに代
謝プロセスを効率化し高生産にする産業微生物がかかわるあらゆる領域に広がるの
ではと期待されている。
さて、設計図(デザイン)至上主義ともとれる合成ゲノムであるが、分子量が大き
くなるに従い操作管理ミスも生じやすくなることは想像に難くない。その事例デー
タがある一定レベルまで蓄積されれば以外と早く実用展開し、全人類の幸福に貢献
できるのではないかと思われる。また、農林水産業や鉱業を含めた電子情報産業な
どの三次産業を加えた、‘1+2+3=6次産業化’をより一層推進させていくこ
とが食料・エネルギー・資源自給の安全保障を担保する重要政策であることを、ま
た、これはコンピュータのデジタル技術の進歩なくしてなしえないことを再確認す
る。
朝起きて、次々と届く情報を見て、いちいち反応する必要もないのにと思いながら
また余分なことをしてしまったのかもしれないと反省している。もう季節は五月下
旬。
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