極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

痩せた茗荷で冷や奴

2017年07月25日 | デジタル革命渦論

 

 

            

                         宣公三年(- 606) 鼎の軽重  / 楚の荘王制覇の時代 


                                                

   ※ 夏姫の禍:三夫二君一子を死なせ、一国二卿を滅ぼした稀代の妖婦の伝。夏姫は鄭
     (姫姓)の穆公の娘。はじめ、陣の夏氏(大夫夏御叙)に嫁した。ここでは、年代
     にとらわれず、夏姫をめぐる五つのエピソードを集めた。

   ※ 女の下着:宣公九年(-600)【経】 陣、その大夫洩冶(せつや)を殺す。
     陣の君生害公、大夫の孔寧、儀行父、この三人はいずれも夏姫と通じていた。三人
     はそれぞれ夏姫が身につけていた肌着をもらい、それを着こんで朝廷に出仕しては
     ふざけあっていた。洩冶という老大夫が、たまりかねて霊公を諌めた。
     「君主たる者が率先して風紀を乱していたのでは、下々への示しがつきません。他
     国への聞こえもいかがかと存じます。どうか、そのようなものを着用なさいませぬ
     よう」
      霊公は自らの非を認め、
     「わたしが悪かった。以後必ず慎しもう」
      と言った。そして、ふたりの大夫にもこのことを伝えた。だが、それを聞いたふ
     たりが、洩冶暗殺め計画を進言すると、霊公はそれをやめさせようとはしなかった。
     ついに、ふたりは洩冶を殺した。
      後に孔子はこの事件を批評している。
     「詩(太雅、板)に、
       ”よこしまの民多きとき
        ことさらに咎め立てすな”
     とあるのは、洩冶のことをいったのであろうか」

 

 Mar. 31, 2015


【抗癌最終戦観戦記 Ⅹ:マイクロRNA測定技術】

7月24日、国立がん研究センタなどは、血液1滴で乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい
検査法を開発し、来月から臨床研究を始め、早ければ2020年以内に国に事業化申請する。このように
一度に複数の種類のがんを早期発見できる検査法はこれまでなく、人間ドックなどに導入されれば、
がんによる死亡を減らせる可能性がある。検査法では、細胞から血液中に分泌される、遺伝子の働き
を調節する微小物質「マイクロRNA」を活用する。がん細胞と正常な細胞ではマイクロRNAの種
類が異なり、一定期間分解されない。同センターや検査技術を持つ東レなどは、がん患者ら約4万人
の保
存血液から、乳房や肺、胃、大腸、食道、肝臓、膵臓(すいぞう)など13種類のがんで、それ
ぞれ固有のマイク
ロRNAを特定した。血液1滴で、がんの「病期(ステージ)」が比較的早い「1
期」を含めすべてのがんで95%だった
以上(乳がんは97%)だったという(「血液1滴 がん13
種早期発見  3年めど事業化」 読売新聞,2007.07.24)。このように、1滴の血液や尿、唾液から、
がんの早期を実現する(下の2図参照)、そんな人工知能(AI)を背景とした臨床検査が確立されよ
うとしている。

2014.8.18

測定(検査)原理は、マイクロ
RNAを内包するエクソソーム(exosome)という、さまざまな細胞が
分泌し放出する粒子で、細胞間の情報伝達などに関わり、がんはこの「エクソソームを利用し、周囲
の細胞を“教育”し支配下に置くメカニズムをもち、このマイクロRNAを内包するエクソソームを媒
介としがんが増悪や転移を引き起こす(下図参照)。
タンパク質複合体又は「エクソソーム」と呼ばれる小
胞に包まれて分泌され、体液中で安定し、高感度の検出ができ、 血液中のマイクロRNAの種類・量を特定す
ることにより、病気を意識できない段階で、早期のがん発見できる。



さらに、マイクロRNAの解析やデータベース化に、人工知能の手法の一種である「ディープラーニン
(深層学習)」を採り入れ、マイクロRNAによる乳がんの診断アルゴリズムに試験導入し、驚くべ
き結果をえる。
がん診断マーカーとしてのマイクロRNAの特徴には腫瘍が小さいうちから、がん細
胞の特徴を反映でき、例えば大腸がんでは、CA19-9CEAのような現行の腫瘍マーカーでは、Ⅰ期ス
テージ1)のような早期段階では異常を検出しにくい。病期が進むほど検出率が高くなるのが、従来
のマーカーであっが、これに対しマイクロRNAは、ステージⅠのがんも十分に検出可能。腫瘍の大きさ
や病期によらずどの段階でも有効なマーカーとなり得るというわけだ。



この様に、「デジタルヘルス事業」の「がん診断マーカーとしてのマイクロRNA」を含む検査システム
のコスト展
開は急速に逓減していくだろう。少し気になるのは検査時間(診断も含め)の品質展開が
どうなっているかであ
る(できれば、数分以内に結果が出ればと考える)。

※ 関連特許:WO2015190591 A1  乳がんの検出キット又はデバイス及び検出方法 東レ株式会社 他



     

読書録:村上春樹著『騎士団長殺し 第Ⅱ部 遷ろうメタファー編』      

    第43章 それがただの夢として終わってしまうわけはない

  旅行のあいだの記憶はなぜかとても漠然としていた。日記帳かおりのノートブックに記録され
 ているのは、訪れた土地の名前、泊まった施設、食べたもの、車の走行距離、一日分の支出、そ
 の程度のものだ。記述は気まぐれで、いかにも素っ気なかった。心情や感怨みたいなものはとこ
 にも見当たらない。たぶん書くべきことが何もなかったのだろう。だから日記を読み返しても、
 ある一日とほかの一日の区別がほとんどつかない。記されている地名だけを見ても、それがどん
 なところだったか思い出せない。地名すら書いていない日もたくさんある。同じような風景、同
 じような食べ物、同じような気候(寒いか、それほど寒くないか、その二種類の気候しかそこに
 はなかった)。今の私に思い出せるのは、そのような単調な反復の感覚だけだ。

  小型のスケッチブックに描かれた風景や事物は、日記よりはもう少しありありと私の記憶を蘇
 らせてくれた(カメラは持っていかなかったから、写真は一枚も残っていない。その代わりにス
 ケッチをした)。とはいえ私はその旅行のあいだ、それほど多くの絵を描いたわけではない。時
 間を持てあましたときに、短い鉛筆やボールペンを手にとって、そのへんの目につくものを気ま
 ぐれにスケッチしていただけだ。道ばたの草花や、犬や描や、あるいは山並みなんかを。ときお
 り気が向くと周りにいる人物のスケッチもしたが、そのほとんどは請われて相手にあげてしまっ
 た。



  日記の四月十九日のページのいちばん下に「昨夜・夢」という記述があった。それ以上のこと
 は何も書かれていない。私かその宿に泊まっていたときのことだ。そしてその「昨夜・夢」とい
 う文字の下に、2Bの鉛筆で太いアンダーラインがぐいと引かれていた。日記に記し、わざわざ
 アンダーラインまで引いたからには、きっと特別な意味を特つ夢であったはずだ。しかしそこで
 どんな夢を見たのか、思い出すまでに少し時回がかかった。それから記憶が一気に蘇った。
  私はその日の明け方近くにとても鮮明な、そして淫扉な夢を見たのだ。

  夢の中で私は広尾のマンションの一室にいた。私とユズが六年間、二人で暮らしていた部屋だ。
 ベッドがあって、妻が▽人でそこに寝ていた。私はその姿を天井から見下ろしていた。つまり私
 は空中に浮かんでいたことになる。しかしそのことをとくに不思議には思わなかった。その夢の
 中では、自分か空中に浮かんでいるのは、私にとってごく当たり前のことだった。決して不自然
 な出来事ではない。そして言うまでもなく、私はそれを夢だとは思っていなかった。宙に浮かん
 でいる私にとってそれは、あくまで今そこで実際に起きていることだった。

  私はユズを起こさないように、静かに天井から下に降りていった。そしてベッドの足元に立っ
 た。私はそのとき性的にとても興奮していた。とても長いあいだ彼女の身体を抱いていなかった
 からだ。私は彼女がかけていた布団を少しずつ剥いでいった。ユズはずいぶん深く眠り込んでい
 るらしく(あるいは睡眠導人別を飲んでいたのかもしれない)、布団をすっかりとっても、目を
 覚ます気配も見せなかった。身動きひとつしなかった。そのことで私はより大胆になった。ゆっ
 くり時間をかけて彼女のパジャマのズボンを説がせ、下着をとった。談いブルーのパジャマと、
 白い小さなコツトンの下着だった。それでも彼女は目を覚まさなかった。抵抗もせず、声もあげ
 なかった。

  私はやさしく彼女の脚を開き、指でヴァギナに触れた。それは温かく開き、じゆうぷんに湿っ
 ていた。まるで私に触られるのを待ち受けていたみたいに。私はもう我慢できなくなり、堅くな
 ったペニスを彼女の中に押し入れた。というか、その場所は私のペニスを温かいバターのように
 受け入れ、積極的に呑み込んでいった。ユズは目を覚まさなかったが、そこで大きく息をつき、
 小さな声を上げた。こうされるのを待ちかねていた、という声だった。乳房に手を触れると、乳
 首が果実の種のように硬くなっているのがわかった。



  彼女は今、何か深い夢を見ているのかもしれない。私はそう思った。そしてその夢の中で私の
 ことを、別の誰かと間違えているのかもしれない。というのはもう長いあいだ、彼女は私に抱か
 れることを拒んできたからだ。しかし彼女がどんな夢を見ていようと、その夢の中で私をほかの
 誰と取り違えていようと、私は既に彼女の中に入ってしまっていたし、今さらそれを中断するこ
 とはできなかった。もし行為の途中で目が覚めたら、ユズは相手が私であることを知ってショッ
 クを受けるかもしれない。腹を立てるかもしれない。でももしそうなったとしても、それはその
 ときのことだ。今はこのまま行き着くところまで行くしかない。私の頭は激しい欲望のために、
 ほとんど聯が切れた川のような状態になっていた。

  私は最初のうち、眠っているユズを起こさないように、過度の刺激を避けて静かにゆっくりと
 ペニスを動かしていたが、やがて自然にその動きは遠くなっていった。彼女の内側の肉は私の到
 来を明らかに歓迎し、より荒々しい動きを求めていたからだ。そしてほどなく私は射精の瞬間を
 迎えた。もっと長く彼女の中に入っていたかったが、それ以上自分をコントロールすることは不
 可能だった。それは私にとってずいぶん久しぶりの性交だったし、彼女は眠りの中にありながら、
 これまで見せたことのないような積極的な反応をしていたからだ。

  射精は激しく、幾度も幾度も繰り返された。精液は彼女の内側で溢れ、ヴァギナの外にこぼれ
 落ち、シーツをべっとりと濡らせていった。止めようとしても、私にはなすすべがなかった。こ
 のまま射精を続けたら、自分はこのまま空っぽになってしまうのではないかと心配になるほどだ
 った。それでもユズは声をあげることもなく、息を乱すこともなく、こんこんと眠り続けていた。
 しかしその一方で、彼女の徨は私を解放しようとはしなかった。それは確固とした意思を持って
 激しく収縮し、いつまでも私の体液を搾り続けた。

  そこで私ははっと目を覚ました。そして自分か実際に射精していることに気づいた。下着が多
 量の精液で濡れていた。私はシーツを汚さないように急いで下着を説ぎ、洗面所でそれを洗った。
 それから部屋を出て、裏口から庭の温泉に入った。壁も天井もない剥き出しの露天風呂なので、
 そこに着くまではおそろしく寒いが、いったん湯に身体を沈めてしまえばあとは芯まで温かくな
 る。



  夜明け前のひっそりとした時刻、私は一人きりでその湯につかり、湯気のために水が溶けて、
 水滴となってしたたり落ちる音を聞きながら、何度も何度もその光景を頭の中に再現した。それ
 はあまりに生々しい感触を伴う記憶だったので、とても夢だとは思えなかった。私は本当にあの
 広尾のマンションを訪れ、本当にユズと性交したのだ。そうとしか考えられなかった。私の両手
 はユズの肌の滑らかな感触をありありと記憶していたし、私のペニスにはまだ彼女の内側の感触
 が残っていた。それは私を激しく求め、私にぴったりしがみついていた(あるいは彼女は別の誰
 かと取り違えていたのかもしれないが、とにかくその相手は私だった)。ユズの性器はペニスを
 まわりから締め付け、私の精液を一滴残らず自分のものにしようとしていた。

  私はその夢について(あるいは夢のようなものについて)、ある種のやましさを感じないでも
 なかった。要するに私は想像の中で妻をレイプしたのだ。眠っているユズの衣服を剥ぎ取り、相
 手の了解もなく性器を挿入したのだ。たとえ夫婦間であっても、一方的な性交が法的に暴力行為
 とみなされることはある。そういう意味では私の行為は決して褒められたものではなかった。し
 かし結局のところ、客観的に見ればそれは夢なのだ。私が眠りの中で休験したことなのだ。人々
 はそれを夢と呼ぶ。私が意図してその夢をつくりあげたわけではない。私がその夢の筋書きを書
 いたわけではない。

  とはいえそれが私が望み、求めたおこないであることも確かだった。もし現実に――夢ではな
 く――その上うな状況に置かれていたら、私はやはり同じことをしていたかもしれない。眠り込
 んでいる彼女の衣服をそっと剥ぎ取り、彼女の中に勝手に押し入っていたかもしれない。私はユ
 ズの身体を抱きたかったし、彼女の中に入りたかった。私はそのような強い欲望に取りつかれて
 いた。そして私は夢の中でそれを、おそらく現実より誇張されたかたちで実現することになった
 (逆の言い方をすれば、それは夢の中でしか実現できないことだった)。

  そのリアルな性夢は、一人で孤独な旅を続けている私に、しばらくのおいたある種の幸福な実
 感をもたらしてくれた。浮揚態とでも言えばいいのだろうか。その夢のことを思い出すと、自分
 はまだひとつの生命として、この世界に有機的に結びついているのだと感じることができた。論
 理でもなく、観念でもなく、あくまでひとつの肉感を通して、私はこの世界に繋ぎとめられてい
 るのだ。

  しかしそれと同時に、おそらく誰かが――どこかの別の男が――そのような感覚を、ユズを相
 手に実際に昧わっているのだと思うと、私の心は差し込むような痛みを覚えた。その誰かは彼女
 の堅くなった乳首を触り、白い小さな下着を覗かせ、彼女の湿ったヴァギナの中に性器を挿入し、
 何度も射精しているのだ。そのことを想像すると、自分の内側で血が流されているような痛切な
 感覚があった。それは(思い出せる限り)私が生まれて初めて経験する感覚だった。
  それが四月十九日の明け方に私が見た不思議な夢だった。そして私は日記に「昨夜・夢」と記
 し、その下に2Bの鉛筆で太いアンダーラインを引いたのだ。



  そしてちょうどその時期に、ユズは受胎したことになる。もちろんピンポイントで受胎日を特
 定することはできない。しかしその頃といってもおかしくはないはずだ。
  免色の語ってくれた話によく似ている、と私は思った。ただし免色は実際に生身の相手と、オ
 フィスのソファの上で性交をした。夢の中の出来事ではない。そしてちょうどその頃に相手の女
 性は受胎した。彼女はその直後に年上の資産家と結婚し、ほどなく秋川まりえを出産した。だか
 ら秋川まりえが自分の子供ではあるまいかと免色が考えるのは、それなりに根拠のあることだっ
 た。ささやかな可能性かもしれないが、現実としてあり得ないことではない。しかし私の場合、
 私とユズとのコ枚の性交は、あくまで夢の中で起こったことにすぎない。そのとき私は青森の山
 中にいて、彼女は(おそらく)東京の都心にいた。だからユズがこれから出産しようとしている
 子供が私の子供であるはずはない。論理的に考えるなら、ものごとは実にはっきりしている。そ
 んな可能性はまったくのゼロだ。もし論理的に考えるなら。

  しかしそうやってあっさりと論理だけで片付けてしまうには、私か見た夢はあまりにも鮮烈だ
 った。そしてその夢の中でおこなわれた性行為は、六年にわたる結婚生活のあいだに、私がユズ
 を相手におこなったどんな実際のものより印象的であり、遥かに強い快楽を伴っていた。射精を
 何度も何度も続けていた瞬間、私の頭の中はすべてのヒューズが同時にはじけ飛んだような状態
 になっていた。現実のいくつもの層が溶けて頭の中で混じり合い、重く混濁した。まるで世界の
 原初のカオスのように。
  そんな生々しい出来事ただの夢として終わってしまうわけはない――それが私の抱いた実感
 だった。その夢はきっと何かに結びついているはずだ。それは現実に何かしらの影響を及ぼして
 いるはずだ。 


                                     この項つづく 
 

 

 Chilled Tofu with Myoga

● 痩せた茗荷で冷や奴

ことしは茗荷は異常気象で茗荷の実が小さく痩せているのと彼女が言う例年なら、天麩羅、ピクル
ス、漬け物(香物)と夏を彩る食采。摘み立てのそれを見せる。などほど「痩せているね」と言う
と「あなたの贅肉を分けてやってはどうなの」と皮肉を言うので「きみは茗荷でなくて毒(ぶす)
だね」とやり返す。それでも、冷や奴にそれを刻みトッピングしたもの小皿に乗せ差し出す。醤油
を垂らし頂く。口の中でガラスの風鈴が鳴り響いた。

 

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