極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

翳すだけで解決

2014年12月14日 | デジタル革命渦論

 

 

 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 33】 

 




2014年版のエネルギー技術展望から見えてくるもの

ETP 2014は、2050年までのエネルギーの未来について以下の3つの可能性を分析している。

■6℃シナリオ(6DS):世界が現在進んでいる、破滅的な結果をもたらしかねないシナリオ。
■4℃シナリオ(4DS):排出量の削減とエネルギー効率の改善に向けた各国の公約を反映したシ
            ナリオ。
■2℃シナリオ(2DS):温室効果ガスと二酸化炭素(CO2)の排出量を削減した持続可能なエネ
                       ルギーシステムの展望を提示するシナリオ。
 

再生可能エネルギー技術の目覚ましい進歩は、供給の未来像を一変させつつある。2011年時点で
まだ化石エネルギー担体が世界の電力構成において一次燃料の3分の2を占め、近年の需要増の
大半を満たしていたとしても、これは確かなことである。この数年間、風力発電と太陽光発電が
2桁の成長を記録したことなどにより、2011年には再生可能エネルギーの割合が世界全体で20%
まで押し上げられた。2DSでは、その割合が2050年までに65%に達する可能性がある。2DSの再生
可能エネルギー拡大シナリオ(2DS hi-Ren)では、太陽エネルギーは2040年までに主流の電源と
なり、2050年までに世界発電総量の26%を供給するようになる。 

 

 

太陽光発電の収斂とE-モビリティによる需要増のスマートカップリングが実現すれば、この両方
の技術の普及が助長されるだろう。太陽光発電と電力貯蔵の組み合わせが、新たな可能性を拓く。
電気自動車と家電による電力需要の増加を効果的に管理すれば、既存のインフラおよび技術の有
効活用と新たなオプション利用の最適化によって、統合型システムの運用を下支えすることがで
きる。電気自動車の充電をうまく管理しなければ、需要のピークはさらに高まる恐れがあるが、
日中とオフピークの充電をうまく管理編成すれば、負荷曲線の平準化や、太陽光発電の統合が容
易になる。電化の分野では、負荷管理、相互接続、柔軟な発電、貯蔵容量などはどれも太陽光発
電の大部分を統合するために利用できるものであり、費用対効果を競うことができる。小規模な
電力貯蔵と組み合わせた太陽光発電パネルは送電線網を利用しない場合に適しており、遠隔地に
おける電力アクセスを提供することができる。

2012年7から導入された固定価格買取制度(以下、FITと略記する)は、2年を過ぎて3年目。太陽
光の大量設備認定順題とそれにともなって、電力需給ハバランスに支障が生ずるのではないかとの
懸念もされている。日本は、これまで、世界的にみて自然エネルギーに消極的であったが、上図
は世界各国で1990年の自然エネルギーの割合に比べて2012年にはその割合がどのように変化して
いるか表している。日本は1990年に比べて自然エネルギーの割合を-0.1ポイント減らした。
ドイツの19.5ポイン増とは比べるまでもなく、米国の0.5ポイントよりも低い。しかし、日
本はこうした20年間にわたる自然エネルギー停滞の時代から福島第一原発事故を経て、自然エネ
ルギーの大幅導入を目指して2011年にFIT導入を決定、
導入後、わずか25ケ月(2014年7月末時点)
で、1,186万キロワットの新規の自然エネルギー電源が運転したことで発電量は急速に増大(下図
参照)。

他方で、自然エネルギーの急速な増大は、同時に買取費用の増大にもつながっており、この点が
懸念されている。 2013年度の FITのもとでの買取費用は5,792億円に達したが、同時に、多様な
便益が発生している点が見逃されるが、これは、二酸化炭素削減効果や価格変動リスク低減効果
など、自然エネルギーの便益には目に見えにくく、普及の初期段階では、自然エネルギー技術の
コスト高が影響するが、普及が進むにつれてコストの低減が進む。実際に、普及が先行している
太陽光発電においては――10キロワット未満の太陽光発電のシステムコストは、2010年度に比べ
て37%のコストダウンを実現。 1キロワット以上の太陽光では普及が進む 10~50キロワット
規模の中規模太陽光の場合、2010年度のコストが62.8万円/キロワットが、2013年10~12月は36.9
万円/キロワットと41%のコストダウンを実現する(下図参照)。

その影響による自然エネルギーの増大による主なメリットは、(1)化石燃料の消費量の削減で
あり、これにより、海外から輸入する燃料費の低減につながる。本財団の試算では、13年度は、
2441億円から3420億円の燃料費削減)。(2)二酸化炭素の削減――削減量は738~1,234万トン
に相当推計、これは家庭140~234万世帯の年間排出量に匹敵。(3)
、化石燃料の価格変動リスク
も軽減させるとともに、輸入化石燃料価格は、世界の需要動向や中東の政治情勢、為替など様々
な要因変動を抑制する。


● 全量固定価格買取制(FIT)の運用上の課題

2年間のFITの運用を通じて、自然エネルギーの急速な普及拡大を実現し、コストダウンも進んで
いることがわかったが普及にともなってコストダウンが進んでも、それが国民負担の軽減につな
がらない制度上の欠陥――設備認定のプロセスで、量と買取価格が非連動している。特に太陽光
発電は、量が増えるとコスト逓減することが経験則としてわかっている。下図は太陽光モジュー
ルの累積導大量を横輔に縦軸にモジュールの価格を示す。太陽光発電の累積導入量が2倍になる
と、太陽光モジュールの価格がおよそ20%低下する傾向
(太陽光発電システム全体についても
の相関)がみられる。したがって、FIT を適切に運用しようとすれば、価格を太陽光の導入に
じて下げなければならない。日本のFITの場合においても2012年度から 14年度 にかけて、毎
年度
買取価格を大幅に下げる。しかし、現在の認定運用においては、設備認定を通じて事業計画
段階
で買取価格が確定できる。 

今考えられているFIT改善の方向性は、導入の速度が速い太陽光発電に対し、量と価格が自動的に
連動するような仕組みを導入する必要――基準として年1回大幅に買取価格を見直すのではなく
量に応じて価格が自動調整されるような仕組みの導入が検討されている。

また、これ以外に、 政府の自然エネルギー普及の明確な政策目標が示されていないのが問題で
2014年4月に閣議決定された「エネルギー基本計画」では、自然エネルギーは、「これまでのエネ
ルギー基本計画を踏まえて示した水準を更に上回る水準の導入を」目指すと記載されているのみ
であり、極めて曖昧なものになっている。 国の目標が重要なのは、それが企業の投資行動に影
響を与えるからである。国が明確で、信輸陛の高い定量的な目標値を設定することで、企業は将
来的に自然エネルギー技術が市場に導入していくことが見通せるため、技術開発を積極的に進め
関連部材の工場建設など大型の投資を行えるが、2014年においても政府はあいまいななままであ
る。

さらに、エネルギー基本計画での数値を上回る水準とは 「2030年に20%」で
ある。これは他
の先進国で掲げている水準に比べて極めて控えめなものである。英国やフラ
ンスといった欧州主
要国、米国の主要州のカリフォルニア州など、「2020年」までに電力の20~
30%程度を自然エネ
ルギーでまかなうことを掲げ、ドイツやスペインは、さらに進んでおり、自
然エネルギー電力の
割合を2020年に30%後半にする目標を掲げている。これらの国の多くは、
かならずしも大規模
水力発電が豊富にあるわけではなく、水力発電が豊富な日本よりも目標達成
に対するハードルが
高い。



次に、九州電力をはじめとする電力会社による系統接続保留などに象徴される、系統を運用する

電力会社側では自然エネルギーの受け入れの態勢が十分出ない。(1)上流系統(特別高圧線)で
の接続制約が発生しているケースが増えているものの、それに対する整備費用の負担の仕方が自
然エネルギー電源に適した形になっていない。現行ルールでは、最初に系統接続する事業者が、
必要な上流系統の増強費を全額支払い、その後3年以内に他の事業者が増強された系統を共用す
る場合に当初要した費用を案分して負担するが、この仕組みでは最初にコストを負担する事業者が
巨額の費用を負担するリスクを負う(後続者が得する)。(2)第2に系統全体で太陽光や風力
といった自然変動電源の出力変動に対応する運用体制が整っていない。変動電源を系統に大量に
受け入れるには、変動電源の出力の変化を適切に予測し、必要な予備用の電源のコストの最小化
が求められるが、需給調整のエリアを拡大することで、変動電源の変動性は平滑化でき予備電源
が逓減でき、自然エネルギーの受け入れだけでなく、国全体の需給調整の効率化にも寄与ための
自然エネルギー受け入れのための態勢づくりが求められている。





● デジタル通信と光の融合 翳すだけで解決?

パナソニック株式会社は、LED光源を高速点滅させることでさまざまな情報を送ることができる
可視光通信技術を発展させ、その光源から発信されるさまざまな情報を搭載したID信号を、スマ
ートフォン搭載のイメージセンサーと専用アプリを用いて高速受信する技術を独自に開発。従来
の可視光通信方式を利用した光IDをスマートフォンを用いて読み取るためには、(1)専用の受
光器をスマートフォンに装着して用いなければならない、(2)低速(約10数bpsレベル)でしか
ータ送受信を行えない、などの制約条件があった。この技術を利用すると、スマートフォンに
用のアプリケーションソフトをインストールするだけで、スマートフォンと光IDの発信機器
(デ
ジタルサイネージ、LED照明など)の間での光ID送受信が可能になる。また、従来技術の数
百倍
の通信速度(数キロbps)で光IDを高速送受信することが可能となる。

 

 


【要約】

従来、発光ダイオード(LED)を光源として備える照明器具において、照明光の強度を変調す
ることによ
って信号を送信するものが提案されており、このような照明光通信装置では照明光そ
のものを変調することで信号を送信するため、赤外線通信装置のような特別の機
器を必要としな
い。また、照明用光源として発光ダイオードを用いることで省電力が実現できるから、地下街な
どでのユビキタス情報システムへの利用が検討されている。照明光通信装置は、定電流源と、平
滑コンデンサと、負荷回路と、負荷変動要素と、信号発生回路と、スイッチ要素とを備える。平
滑コンデンサは、定電流源の出力を平滑するものである。負荷回路は、複数の発光ダイオードを
含み、定電流源の出力が供給される。負荷変動要素は、一部の発光ダイオードに並列接続された
抵抗器から成り、負荷回路に負荷されることで負荷回路の負荷特性を部分的に変化させる。信号
発生回路は、2値の光通信信号を発生する。スイッチ要素は、負荷変動要素である抵抗器と直列
に接続されたスイッチング素子から成り、光通信信号によりオン/オフが切り替えられることで、
負荷変動要素を負荷回路に付加するか否かを切り替える。これにより、負荷回路の負荷特性が光
通信信号に応じて変化するため、発光ダイオードを流れる負荷電流が光通信信号の波形に変調さ
れる。

このような照明光通信装置では、通常、受信端末において通信信号を正常に受信できているか否
かを判定するために、CRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)符号を通信信号に付加
して送信するが、照明光通信装置が送信するデータは、屋内における照明器具の位置情報や、照
明器具の固有ID(Identifier:識別子)、または設置場所を特定するIDのようなIDデータ
であり、固定されたデータで、通信信号を送信する度にCRC符号を演算する必要がなく、予め
メモリに記憶されているCRC符号を通信信号に付加すればよい。
しかしながら、例えば想定を
超えた雷サージや静電気の発生などにより予期せぬメモリの劣化が生じ、IDデータが書き換わ
る場合がある。この場合、上記従来例のような照明光通信装置では、IDデータが書き換わるこ
とを想定していないため、通常時と同様にCRC符号を通信信号に付加して送信し、このCRC
符号は、書き換わったIDデータと対応するものではないため、受信端末では、通信信号を正常
に受信できず判定してしまうため
、このような照明光通信装置では、何らかの異常が発生して送
信するデータが書き換わった場合でも、通信信号は通常通り送信可能であるために誤った通信信
号を送信し続けるという問題があった。

そこで、上図の光源部3の出力する照明光の光強度を変調して2値の通信信号を重畳させる制御
回路11を備え、制御回路11は、通信信号で送信するデータに基づくCRC符号を予め記憶す
るメモリ110と、データに基づいてCRC符号を演算するCRC演算器112とを備え、少な
くとも起動時に、各CRC符号を比較し、一致すれば正常、一致しなければ異常と判定する第1
処理と、第1処理で異常と判定すると異常を外部に報知する第2処理とを実行する回路構造で、
何らかの異常が発生して送信するデータが書き換わった場合に、誤った通信信号を送信し続けるのを防
止する新規考案である。
         

 

 

 

 

 

 

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肉味噌のごとく熟成

2014年12月13日 | 環境工学システム論

 

 

 

 

● 「寒」の干牛肉  高校生達が肉みそを商品化

  

滋賀県立国際情報高(栗東市)の生徒たちが、地元の精肉店やみそ店と共同で、近江牛を
使った
肉みそを商品化。栗東産の塩こうじを効かせたまろやかな舌触りと甘辛い味付けで
好評を得て好
評だという。同高の国際ビジネス系列で商業を学ぶ3年生15人が、来夏に
県内で開かれる全国高校総体と全国高校総合文化祭(びわこ総文)で販売することを目標
に、「栗東の特産品を生かした商品を作ろう」と4月に企画した。常温で保存、販売でき
るため肉みそを商品化を決める。同市安養寺7丁目の精肉店「岡山」と同市上砥山の「青
木味噌商店」に協力を依頼し火加減や味付けの指導を受け作った。

江戸時代,彦根藩では牛肉を乾燥させていたという記録が残っている。この干牛肉は,
加減をできるだけ少なくするため,1年で最も寒い1月上旬から節分までの1ヶ月間で作ら

れていた。古来この1ヶ月間は「寒(かん)」と呼ばれていたため,「寒」干牛肉として
薬用に食されていたという。その頃の干牛肉の「製法書」が残っている。「寒中に肉を割
き筋を取り去り,清水に漬けて臭気を抜き,蒸してから糸につないで陰干しにする。寒中
でなければ,寒明けの頃でも塩を加えなければ痛んでしまう。温暖な季節でも塩を多く使
用すれば製造できるが,薬用としての性味が失われ,御用に立たない」
と書かれている。

 

【オールソーラーシステム完結論 32】 

● 太陽光発電の「自己消費モデル」の実証段階へ

新エネルギー・産業技術総合開発機構がドイツの南西部にあるシュパイアー市で、集合住
宅を対象にしたスマートコミュニティの実証事業を計画中している。日本が先行している
蓄電・蓄熱技術を導入して、太陽光発電の電力を最大限に利用する「自己消費モデル」の
確立を目指すとのこと。この自己消費モデルには3つの技術を組み合わせる。太陽光発電
電力を充放電するための蓄電池に加えて、外気を活用したヒートポンプによる蓄熱型の
水器、さらに住宅全体のエネルギーを最適にコントロールするHEMS(家庭向けエネルギ
管理システム)で構成する(上図/左参照)。いずれの分野でも日本の技術や製品の評
が高い。

実証事業で検証するポイントは4つあり、その1つが「逆潮流量の最小化」である。逆潮
流は自家発電設備から電力会社の送配電ネットワークに向けて電力が流れる現象で、発電
量が消費量を上回った場合に発生することが問題となっている。こうした逆潮流が増える
と、地域内に供給する電力の品質が低下することから、ドイツでも日本でも規制が設けら
れているが、ドイツでは2000年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度を開始して以降、
太陽光発電を中心に導入量が拡大して、現在では国全体の発電量の20%を超える水準に
達し、それに伴って太陽光発電のコストが低下して、電力会社の電気料金よりも安くなっ
結果、余剰電力を売電するメリットが薄れてきている。

 

図1   

● 人工光合成世界最高効率 二酸化炭素から燃料原料生成に成功

東芝は、光利用効率の高い可視光を吸収する多接合半導体とナノサイズの構造制御技術を
適用した金ナノ触媒を用いることで、燃料の原料となる一酸化炭素への変換を世界最高の
1.5%の効率で達成。ナノメートルオーダーの金ナノ触媒の作製条件を検討することで、
二酸化炭素を一酸化炭素に変換する活性サイトを増加させ、さらに電解液も工夫すること
で効率を向上させることに成功したという(上図参照)。この技術で二酸化炭素排出設備
火力発電所、工場など)に付随する二酸化炭素の分離回収システムへの適合を目指す。

図2 

東芝の1.5%という効率は、植物の光合成と比較してどの程度の能力なのだろうか。実は
高等植
と比較する限り、既に上回っている。例えば増殖能力が高く(光合成の能力が高
く)バイオエタ
ノールの原料として研究が続くスイッチグラスの効率は0.2%。東芝の成
果は、光合成
の能力に優れる藻類とほぼ同程度だということができる。

二酸化炭素と水素イオンから一酸化炭素と水を生み出している。一酸化炭素は毒性ある
ものの、さまざまな化学合成の原料
となり、燃料として使うこともできる有用なガスだ。
実験では触媒の表面から一酸化炭素の泡が発生している様子も目視でてきる。上図2
の特
徴は濃い青で描かれた部分と、濃い黄色で描かれた部分にある。まずは濃い青で描かれた
四角形の部分だ。「アモルファスシリコンを用いた3層の太陽電池と同じ材料を用いた(
多接合半導体)。それぞれの層が吸収する光の波長は異なる。このため、太陽光に含まれ
る幅広い波長の光を効率良く吸収できた。従来の人工光合成では太陽光に3%しか含まれて
いない紫外光だけを利用するものもあった。同社の技術は太陽光に53%含まれている可
視光も吸収できる。

濃い黄色で描かれた部分の特徴は、ナノメートルサイズの構造をもつ金ナノ触媒を使うこ
と。金ナノ触媒の作製条件を検討した結果、二酸化炭素が一酸化炭素に変化する「場」(
活性サイト)を増やすことができ、これが効率向上に役立ったという。ナノサイズの構造
制御技術である(【オールソーラーシステム完結論 ⅩⅢ】/『オールソーラーシステム完
結論
』)。



● メガソーラーの収益を地域に還元へ

固定価格買取制度によって全国各地で再生可能エネルギーの導入量が拡大した結果、利用者が
負担する「賦課金」の増加が問題視されている。一方で原子力発電に巨額の税金が投入され続け
ていることを考えると、人体にも環境にも優しい再生可能エネルギーの負担が増えるほうが国益
にかなうが、電気料金が相次いで値上がりする状況では、賦課金は可能な限り抑えたいと、
そこで広島県は中国電力グループと組んで「地域還元型再生可能エネルギー導入事業」を
2013年に開始した。両者が共同で設立した組合を通じ、県有地や市有地にメガソーラーを
建設して売電収入を得る計画(下図参照)。
 

 

第1期と第2期に分けて合計7カ所に10.4MW(メガワット)のメガソーラーを稼働させる。
すでに第1期の4カ所のうち3カ所で運転を開始した。2014年度は運転中の3カ所からの売
電収入が約2億4000万円になり、1年間で3800万円の利益が出る見通し。広島県の試算では、
固定価格買取制度を通じて2012~2014年度の3年間に設置予定の発電設備に対して、広島県
民が負担する賦課金の総額は20年間で400億円に達する。7カ所のメガソーラーで得られる
県の収益(約13億円)は400億円の3%強に相当する。さらに発電設備を拡大して地域に還
元できる比率を高めていく必要があるという。

  

太陽光由来の再生可能エネルギー(再エネ)は、シンクロナイズし急速な進展を遂げてい
ることが
見て取れる事例ニュースが続々と入っきている。わが太陽道事業(サンロード・
プロジェクト)は、"肉味噌のごとく熟成"、もはや、この流れは止められない。

 

  ● 今夜の一曲


   君とよくこの店に来たものさ

   訳もなくお茶を飲み話したよ

   学生でにきやかなこの店の

   片隅で聴いていたボフ・ディラン

   あの時の歌は聴こえない

   人の姿も変わったよ

   時は流れた

    

   あの頃は愛だとは知らないで

   サヨナラも言わないで別れたよ

   君と



   君とよくこの店に来たものさ

   訳もなくお茶を飲み話したよ

   窓の外街路樹が美しい

   ドアを開け君が来る気がするよ

   あの時は道に枯葉が

   音もたてすに舞っていた

   時は流れた

   あの頃は愛だとは知らないで

   サヨナラも言わないで別れたよ

   君と君と……

 


                                            『学生街の喫茶店』

                                                   唄 ガロ
                             作詞/作曲  山上路夫/すぎやまこういち


「学生街の喫茶店」は、GARO(ガロ)のシングル。1972年6月20日発売。発売元は日本コロ
ムビアのマッシュルームレーベル。セカンドアルバム『GARO2』からのシングル・カット。
リリース時は「美しすぎて」がA面、「学生街の喫茶店」がB面というスタイルであった。
のちに「学生街の喫茶店」が有線放送やラジオを中心に人気が出た(TBSラジオ『ヤングタ
ウンTOKYO』では「今月の歌」に選ばれた)ため、1972年12月前後からジャケット写真は
のままに、「学生街の喫茶店」のタイトルが目立つようにレイアウト変更されたリニュー

アル・ジャケット盤に切り替えられていった。堀内護(愛称MARK(マーク)1949-2014)
高富明(愛称:トミー)1950-1986)、大野真澄(愛称:ボーカル1949-) の3人グルー

としてデビュー。全員が生ギターとボーカルを担当するのが基本的な編成。ガロという名
前は、当時ザ・タイガースのマネージャーで三人の世話役でもあった中井國二が自分の子
供にと考えていた「我朗」から名付けられたという。

元メンバーの堀内護は今月上旬、病気のため死去。享年65。なお、同じく日高富明は1986
年夭折、享年36。

                                      合唱

 

 

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デジタル革命に漬る鬼げんこつ

2014年12月12日 | デジタル革命渦論

 


 

● はじめまして!筑波山麓「鬼げんこつ」

昨年。通販注文しても手に入らなかったザーサイの漬物「鬼のげんこつ漬」(中西育種農場)が届いたの
早速試食しろと持ってきた。放射能による農地汚染有無はクリアにされているのだろうかと訝しむも、ひ
と口かじてみたが、これは美味いと、購買の経緯など尋ねていたが、小皿を平らげていた。「
榨菜」と言
えば、桃屋の「榨菜」が反射的イメージできたが、それととも中国での仕事の朝食の粥とピータンと榨菜
漬けと青梗菜のオイル炒めも思い出すほど印象的な出会いがある。その榨菜が日本の筑波市の周辺?の農
場でつくられているのだろうが、興味を惹き、歴史、栽培方法、調理方法などネット検索し、早速マイ・
ライブラリーにストレージ
 する。栽培となると来年の9月の種まきまで待つことになるので、一旦ここはサスペン
ディング扱いに。

 

 


 総括 デフレ脱却と安定成長の道へ Ⅴ

A:地下化石燃料依存から再生エネルギー依存へのシフト加速(→グリーン国債の発行)。 


 

● 吉野屋牛丼値上げ談議から 

A:国土強靱化・社会保障支援への加速(→安全・安心国債の発行)。 

 

● 衆院選 "デフレ・縄・原発隠し!?"

A:経済がわからない、民意無視の候補者を選ばない。  

 

                                           

 


● シリコン結晶工学 革新的廃熱発電素子開発に道

大阪大学の中村芳明准教授らのグループは、約3ナノメートルの極めて小さい結晶シリコンを形成し、肉
眼で見え
るサイズの結晶シリコンと比べ熱伝導率を約200分の1まで抑えることに成功。地球上に多く
存在する元素のシリ
コンを使いて、高性能の熱電変換材料を作製できる可能性があるという。従来、廃熱
エネルギーを電気エネルギー
に変換する材料には、レアメタル(希少金属)や毒性の高い元素のものが使
われる。より安価で環境負荷の低い材
料が求められていた。ナノスケールの結晶シリコンを独自技術によ
り結晶方位をそろえて連結させ、熱伝導率を大幅に抑えたことで一気に、熱電変換素子の実用化が引き寄

せられた。

 

● ブルーライトで昆虫が死ぬって?! 

東北大学科の堀雅敏准教授の研究グループは、青色光を当てると昆虫が死ぬことを発見。紫外線の中でも
波長が短いUVCUVBは生物に対して強い毒性をもつことが知られているが、比較的複雑な動物に対し長
波長の紫外線(UVA)でも致死させるほどの強い毒性は知られていなかった。
一般的に、光は波長が短い
ほど生物への殺傷力が強くなるがて、紫外線よりも波長の長い可視光が昆虫のような動物に対し致死効果がある
とは考えられないが、この研究で、ある種の昆虫では、紫外線よりも青色光のほうが強い殺虫効果が得られること、
そして、昆虫の種により効果的な光の波長が異なることも明確になったという。青色光を当てるだけで殺虫できる新
たな技術開発につながり、可視光の生体への影響を明らかにする上でも役立つという。それにしても、これにより、
光感受性の謎がさらに深めたかもしれない。

 

 

 

● 電力と通信を融合した吉野ケ里メガソーラーが完成 

三井住友建設は三田川PC工場(佐賀県吉野ケ里町)内の未利用地約1万3000平方メートルに、メガソーラー「(
吉野ケ里)三田川太陽光発電所」を完成させた。発電出力は1000キロワットで、年間127万キロワット時(一般家
庭約350世帯分の年間消費電力量に相当)の発電量を見込む。発電状況のモニタリングには直流高圧電力ケー
ブル利用の電力線通信(PLC)を導入。商業ベースの太陽光発電所では初めての実用化になるという。PLC技術
を活用した管理や保守・運営ノウハウを蓄積するため自社で事業化。出力250ワットの太陽光パネル14枚を直列
接続したストリング(列)単位で、住友電気工業のPLC技術を使い、発電状況をモニタリングしている。計測用の配
線や電源が不要になりパネル設置後、1日でセンサーの取り付け作業を終えた、という。



PLC(電力線通信)とは、電力線を通信回線としても利用する技術。450kHz以下の周波数を用いるものを
  低速PLC、2-30MHzを用いるものを高速PLCと呼ぶこともある。
10kHzから450kHzまでの周波数を用いた
   製品のデータ通信速度は、9600bps程度である。
2006年10月に総務省が、屋内に限り2MHzから 30MHz
   周波数使用を認める項目を追加する省令改正をしたのを受けて、2006年12月から高速電力線通信対応製
   品が流通している。
電力線通信、PLC(Power Line Communication)、PLT(Power Line Telecommunication
   とも
呼ばれる。

  もともとPLCの技術は電話線はないが電力線だけはあるような過疎地域や山岳地域などで、電話利用で
   はじめようとしたのが発端であるが、 しかし送電線の高電圧を介するため,その設備は大掛かりな物
   になり一般利用はほとんど行われず電力会社の保守用に利用されていたものであった。その後単なる電
   話としての利用にとどまらずデジタル信号の伝送といったアクセス系への応用に発展しインターネット
   網の普及とともにさらに役割をひろげつつある。


ことしも、わずかになりました。ことしの漢字は『税』と決まったとか。個人的には、デジタル革命渦論
はますます盛んとなり、自説の正統性を確認する毎日であった気がする。このままいくと、デジタルとマ
ネー社会が、ボーダレスになり融合することになる。たとえば、それは「地下化石燃料」の価格を逓減さ
せつつ「再生可能エネルギー社会」へと
シフト加速する。今後もますます面白くなり、わく、わくする毎
日となるだろう。

                                                                                              

 

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ナノ多孔質電極工学

2014年12月11日 | ネオコンバーテック

 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 31】 

 

● ナノ多孔質電極工学

過日、「オールソーラーシステム完結論 29」(『太陽光励起レーザ工学』)で掲載した
ように、水素製造の水電解法には、電極のコストが大きな技術隘路――次世代エネルギー
媒体として注目される水素の発生電極には高価な白金を使用――となっているが、これを
窒素と硫黄を導入し3次元ナノ多孔質グラフェンを素材にした水素発生電極――白金代替
のニッケルと同等の水素発生能力をもつ――を、東北大学らの研究グループが製造するこ
とに成功したことが公表され、これにより、従来の2次元構造の電極に比べ、3次元構造
を持つ電極を使用することで、より水素の製造効率を高めることができ、また製造コスト
を逓減できるものと期待されている。さらに、少量のニッケルを添加し白金を越える水素
発生能力を持つニッケル添加3次元ナノ多孔質グラフェンの開発やリチウム二次電池の電
極材料の研究がを進めていくことが可能となる。

この研究は、ナノ多孔質金属(下図参照)を用いた化学気相蒸着(CVD)法を用い、3次元水素電
極の開発。ピリジンとチオフェンをグラフェンの前駆体として採用し、ナノ多孔質金属の表面に窒素
と硫黄元素を含有したグラフェンを蒸着することにより、ナノ多孔質金属の幾何学構造(上図2(a))
/左)を維持した3次元ナノ多孔質グラフェンを作製。電子顕微鏡を用いて(上図1/左)のような
チューブ構造と鋭い回折スポットを持つ高い結晶性を持った構造であることを確認(図2
(b))、化学的にドーピングされた窒素と硫黄元素がグラフェン上で均一に混じってい
ることが明らかになり(図2(c))、このようなグラフェンは窒素と硫黄を含有しなが
ら曲面構造を作り、ナノ多孔質構造を形成していることを明らかにした。また、1グラム
当たり800m2と膨大な表面積を持ち、この表面積測定をもとに、単位触媒体積あたりの
表面積は従来の電極と比べ同体積で500倍程度増大することを明らかにした。

 

尚、ナノ多孔質金属は物質の内部にナノサイズの細孔がランダムにつながったスポンジ構
造体(ナノサイズの細孔を持つ多孔質構造体)のこと。例えば、図4の金の場合、ひも状
の構造体が連続してつながって穴が開いている状態である。ナノ多孔質を持つ物質では、
この穴とひも状構造が数ナノメートルサイズの状態で維持されている。また、ナノ多孔質
グラフェンの場合、ひも状構造の表面に薄皮1枚残して中が中空になっている構造体を持
つ。

今回開発に成功した3次元ナノ多孔質グラフェンでは硫黄周りにある欠陥構造が寄与し、
水素発生反応を促進したと思われ、また炭素、窒素と硫黄のみで構成されたグラフェン電
極は白金と比べて、水素発生効率が若干劣るものの、白金は高価(1グラム5千円程度)
なことを考えると、エネルギー利用効率や材料コストにおいて十分に利用価値が高くなる
と考えられるという。



低コストで水電解水素を安全に貯蔵できれば、再生可能エネルギーの貯蔵が可能となる。
北米大陸で沸き立つ、由来不詳の"
シェールガス"(地下化石燃料)が地球温暖化ガスを当
面まき散らすリスクを考えれば、由来明確な再生エネルギーからの水素ガス利用社会のア
ドバンテージは当然高いものとなる。これは面白い。

 

● ソーラーシュアリングに太陽光追尾型パネルが登場

農地に整備された太陽光発電施設。太陽の位置に合わせてパネルの向きが変わる太陽光発
施設が完成し、8日に完成式が行われた。一般的な固定型より発電効率が高く、パネル
の影が農
作物に与える影響も小さいという。農業収入の減少を売電で補える仕組み。同市
平下神谷の農地約1万5千平方メートルに、小型パネルを縦横5枚ずつ組み合わせた太
光パネルを支柱に取り付けた75基を建設。出力412キロワット、年間発電量75万キ
ロ・ワット時と見込み、9月末から稼働している。ほぼ全量を東北電力に売電し、約2億
円の工費を8~9年で回収する計画。



施設がある場所の緯度や経度、日時をコンピューターに入力すると、太陽光パネルの向き
が自動
的に変わる「追尾型」。発電量は固定型の1・4~1・5倍になり、農業施設では
国内最大級という。
設置面積は支柱部分のみのため、農地が広く使える。風が通りやすい
よう太陽光パネルは高い
位置に設置され、小型パネルの隙間からも日光が入るよう工夫さ
れている。同法人は来年3月に
イチジクの苗1500本を植えて栽培を始め、2年後に加
工業者に販売する予定だ。県内は耕作放
棄地が多く、コメや野菜は価格が下落傾向にあり、
売電収入は農業の存続を期待している。


  


● 豪 3接合波長分散集光型化合物半導体太陽電池で40%超の変換効率

豪ニューサウスウェールズ大学の研究チームは今月8日、太陽電池パネルの効率を向上さ
せる画期的な技術を開発したと発表。将来的に、再生可能エネルギーの安価な供給源となること
が期待されている。研究チームは、太陽電池パネルに当たる太陽光の40%以上を電気に変える
ことに世界で初めて成功(今夜は下図の情報しか入手できなかったので残件扱)。

 

     Spectrum splitting concentrator system

 



【オールバイオマスシステム完結論 Ⅴ】 

● 静かなエネルギーブーム、木質ペレットって?!

米国南部の森の奥深く、樹木の屑が静かな、けれど論争的なエネルギーブームの火付け
となっている。木質ペレットと呼ばれるバイオマスエネルギー。同国北東部で長いこと家
庭用暖房燃料として利用されてきた木質ペレットは、最近になって新たな市場で急速に需
要が高まっているという(2014.12.10「
ナショナルジオグラフィック ニュース」)。再生可能エネ
ルギーの拡大を模索するヨーロッパが、発電に利用するために木質ペレットをかつてないほど大
量に輸入し始めた。おかげで米国のペレット産業は大きな変貌を遂げ、昨年のバイオマス輸出量
は2倍に増加する。 輸出量の半分以上はイギリスへ向かう。イギリスの電力会社ドラックスは、6
ヵ所の発電所のうち3ヵ所を、石炭に代わって木質ペレットの燃焼に使えるよう改装した。
また、米国に支社を置き、本国の発電所へ送るペレットを製造するために、ルイジアナ州
とミシシッピー州に2つの製造工場を建設、来年操業を開始する予定だという。

 

しかし、産業界と環境保護団体がペレットの気候変動への影響を巡って対立している。産
業界は、本来なら廃棄されるはずの木材の副産物を利用していると主張するが、環境団体

は、製造量が増加すれば森林破壊につながり、環境にもよくないと反論。石炭や石油のよ
うな化石燃料と違い、木は再生可能な燃料である。1本切れば、もう1本植えることがで
きるが、気候変動を食い止めてくれる木を大量に切り倒して大西洋の反対側へ運搬するだ
けではカーボン・バランスやカーボン・リスクは東電ながら評価されない。皮肉にも、木
質ペレット産業の成長による経済的および生態的影響は、その需要が横ばいになるか低下
するまでは明らかにはならないという。それは、新しい木を育てるのには何年もかかり、
森林研究もそれだけ時間がかかる。「まだ分かっていないことが多すぎる。はっきりとし
たことが言えるには20年はかかるだろう」と米国林野局の関係者が話す。




とはいえ、数年前までは、米国で製造されていた木質ペレットの80%が国内で消費され
ていたが、
そのほとんどは、個人住宅の暖房燃料として使われ、厳しい冬が続く近年、石
油価格の高騰と安価な天然ガスの不足から、北東部では木質ペレットへの需要が記録的に
上昇している。この先10年間で世界的な需要は倍増。ペレット業界は米国南東部での事
業拡大を推し進め、南部には国内森林の40%が集中し、長い間、製材用材、パルプ、紙
の原料として木材が生産されてきた。ペレットの製造に使われるのは木の先端や細い枝、
損した木材など低品質の副産物製材用だけであり、高品質には回らず、残りかすを拾い集める
のが精いっぱいだという。さて、ここから読み取れることは カーボンリスクとカーボンバランスシ
ートの機動的な視える化とその経済空間の確定だろうと考ええている。


※"Science clear on biomass: EPA shouldn't make same mistake as Europe"  http://thehill.com/blogs/
congress-blog/energy-environment/221027-science-clear-on-biomass-epa-shouldnt-make-same

 


● 大豆品種こぼれ話

小腹が空くと、冷蔵庫をあけ絹豆腐1/4丁を皿に取り、ガーリックパウダーとオリーブオ
イルと醤油と食酢をかけ頂いているが、その大豆の地道な品種改良、育種が行われているこ
とを2つの研究成果報告を知り改めて驚く。その1つが豆腐や豆乳、しょうゆ、みそなど多
様な加工製品の原料に適した大豆新品種「こがねさやか」を育成した。種子中の酵素リポキ
シゲナーゼを品種改良によって欠失させたのが特徴で、豆腐や豆乳にしたときに青臭さがな
く、中粒でたんぱく質の含有率も高いため、しょうゆの原料にも向くというもの(下図、上
/左)。近畿中国四国地域の大豆は豆腐用の「サチユタカ」や「フクユタカ」が主力だが、
豆腐以外の大豆加工製品に適した品種は少なく、地場産業振興の悩みになっていた。しょう
ゆ醸造に用いる場合、サチユタカは粒が大きく原料に向かないため、中粒のタマホマレを用
いていたという。このタマホマレは、しょうゆ醸造に必要なたんぱく質の含有率が低い欠点
がある。新品種のこがねさやかはたんぱく質の含有率が高いため、うまみ成分のもとになる
窒素分が高くなり、しょうゆ原料に向く。青臭みの発生原因となるリポキシゲナーゼを含ま
ないため、豆乳を製造したときに青臭さがなく、飲みやすい味にできるという。

もう1つが、大豆を畑で収穫する時、豆が畑に落下するのを防ぐ遺伝子を発見し、この遺伝
子を導
入してコンバインなどの機械収穫に対応した脱粒しにくい大豆品種の開発もつなげる
というもの(上
図、上/右、下/左右)。落下を防ぐ遺伝子は「pdh1」と名付けた。大
豆は成熟すると乾燥によって
さやがはじけ、収穫前や収穫作業時に脱粒するため、農家にと
っては大きな損失になる。pdh1は
さやのねじれを抑えて、さやがはじけて脱粒するのを
防ぐ。国内の主要品種にはpdh1がほとんど
なく、海外大豆生産国の大半の品種はpdh
1が導入していることも判明。農研機構ではpdh1とDN
Aマーカーを利用して、脱粒し
にくい大豆新品種開発を推進。さやが裂けやすい品種では収量の30
%の豆を失うケースも
報告されており、新品種ができれば国産大豆の競争力向上につながる
ということだ。

それにしても、たくさんの研究報告をみて、何か、地道な努力に頭が下がる思いだ。これか
らは湯豆腐の季節だ。


                                                                                                   

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デフレ脱却と安定成長への道 Ⅳ

2014年12月10日 | 政策論

 

 

 

● デフレ脱却と安定成長への道 Ⅳ

デフレ基調に増税しリセッションに入り自ら政策能力の無能さを晒しているようなも
のだが、それにバネにして――これを「背水の陣」つまり、中国の史記『淮陰侯伝』
の故事。それによると、漢と趙との戦いで、漢軍の兵士は寄せ集めばかりだったが、そ
こで漢の韓信は、あえて川を背に陣を敷き、兵士遥か退けば溺れるほかない捨て
身の態
勢にするが、趙の軍は兵法の常識を映り、川を背にして陣をとった漢の軍を見
て大
いしたが韓信の目論見ともリ漢軍の兵は決死の覚悟で戦い、見事勝利をあさめる。

の故事から、失敗の許されない状況で全力をあげて事にあたることを、「背水の陣
を敷
<」「背水の陣で臨仁」というようになった――という故事に習って総選挙に打ってでた
構図となっている。マスコミの選挙情勢は自民圧勝と報じられている。また、アベノ
ミックスは、それより先立つ、わたしの成長戦略『双頭の狗鷲』と基本的には変わる
ところがないことを前提としつつも、今回の投票行動は、野党結集強化が必要という
結論――比例代表は『生活の党』、小選挙区は、自民・共産・民主の三つどもえとな
っているため『民主党』と――苦肉の妥協策ではあるがそう決めている。


                         

先回につづき、今夜で『そして、日本の富は略奪される』、『アベノミクスの逆襲』
とも終わる。この2冊を比較して、TPPを巡り、前者は、「断固反対」、後者は「
合コン論」と大きく意見が異なり、また、アベノミクスの第一の矢の金融政策でも違
いをみせる。その意味で、菊池英博の金融政策の考え方とわたし(たち)は立ち位置
を異にする。

 ← 詳細はこちらをクリック

 


                    【朝日ボツ原稿】リフレ派の勝利に終わった金融政策論争

  アベノミクスは、金融政策(第一の矢)、財政政策(第二の矢)、成長戦略(
 第三の矢)から構成されている。成長戦略もおもしろい論点であるが、本稿では
 金融政策と財政政策というマクロ経済学の分野に絞って論じたい。なお、成長戦
 略に関心がある人は、筆者の『「成長戦略」の罠』(祥伝社、2014年)を参照し
 てほしい。

  まず、第一の矢の金融政策から述べたい。初めに学界ではどうなのかというと、
 金融政策については長い間論争の対象だった。主な論点は、①金融政策で物価を
 コントロールできるか、②金融政策によって生産や雇用の水準を高めることがで
 きるか、③金融緩和を行なうと財政破綻などの大きな危険があるのかどうか、で
 ある。


  ここで、この点を詳しく論じるのは本稿の趣旨ではない。幸いにも、金融政策
 について、顕著な効果があるということに肯定的で弊害が少ないという立場(リ
 フレ派)の学者と、その逆に、効果がなく弊害が大きいという立場(デフレ派)
 の学者の両方が共同で書いた本、原田泰・斉藤誠編著『徹底分析アベノミクス』
 (中央経済社、2014年)が最近出版された。

  これまで、それぞれの立場の学者の書いた本はかなりあるが、両者の立場の学
 者を含む、対比する形で書かれた本はなかった。日本でアベノミクスに関心が集
 まり、その検証をせざるをえなくなったわけだ。筆者も、金融政策に肯定的な立
 場から、同書中に一つの論文を書いている。
同書と、これまでのデータ(特に消
 費税増税を行なうまで)を見ていただければ、どちらが正しかったかは明らかで
 ある。この意味で、金融政策が有効かどうかという、いわゆるリフレ論争は一つ
 の決着を見ている。

  ここでは、日本のアカデミズムにおけるリフレ論争を振り返っておこう。
  筆者は1998年から2001年まで米プリンストン大学にいたが、知的刺激にあふれ
 た時期だった。前FRB(連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ教授、2008年
 にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授らが、日本を題材にして非伝統
 的金融政策を毎週のセミナーで侃々房々と議論されていたのはおもしろかった。
  一言で言えば、金融緩和政策を大胆にやれば、デフレから脱却できるというも
 のだった。

  2001年に帰国後、経済財政諮問会議を手伝うことになったが、その当時の日本
 のアカデミズムに驚いた。一部のマイナーな人たち(今ではリフレ派といわれる)
 を除き、主流派の人たちは、クルーーグマンらのいうことは信じてはいけないと
 公言していた。

  たとえば、諮問会議の民間議員だった吉川洋・東京大学教授から「高橋さん、
 貨幣数量説を信じているの?」といわれたこともある。それに対して、「マネー
 をマネタリーベースにすれば、通貨発行益があるので、長期的には成立すると思
 います」と答えたが、吉川教授は否定的だった。

  こうした学界を変えるように運動すべきという人もいたが、筆者は、頑迷固階
 な学者を説得するには実社会で証明するほうが近道と考えていた。もちろん、米
 国アカデミズムの賢人たちと同じ考えだから、失敗はないという確信があった。

  幸いなことに、小泉政権時の竹中平蔵大臣や中川秀直自民党政調会長には、筆者の
 説明を納得してもらった。2003年3月の日銀人事で福井俊彦氏が総裁になったが、
 デフレ脱却を約束したため、量的緩和はすぐできた。

  ところが、ゼロ金利になると、どんな金融政策も無効になるという主張が出て
 きて、量的緩和の足を引っ張るような動きになった。斉藤誠・一橋大学教授のブ
 ラックホール論だ。モデル式もあるので、日本のアカデミズムで受け入れられて
 いた。

  しかし、その論文を読むと、経済学の大学院生にはわからないが、数学科の学
 生なら簡単にわかる誤りがあった。筆者はそれを『経済セミナー』(2003年5月
 号 日本評論社)に書いた。斉藤教授はびっくりして筆者にメールを送ってきた
 が、その中で筆者の指摘に再反論はなかった。もちろん、表での再反論もない。
 日本のアカデミズムでは、筆者のような行動はありえず、「なかったこと」にな
 っているらしい。

  小泉政権での量的緩和は不徹底であったが、データ分析すれば日本経済に好影
 響を与えたことがわかる。だが、それすら日本のアカデミズムの主流派は怠った
 (数少ない例外は関西大学の本多佑三教授)。
  前掲した『徹底分析アベノミクス』の編著者の万人は、斉藤誠・一橋大学教授
 であり同教授は日本を代表するマクロ経済学者である。11年前に斉藤教授の批
 判論文を書いた筆者は、今回も金融政策に効果があったとして、斉藤教授の見解
 を否定している。ところが前回も今回も斉藤教授からは反論がない。長年にわた
 る日本におけるリフレ論争が、リフレ派の勝利に終わったと筆者が考える所以で
 ある。
 

        朝日新聞社に「掲載拒否」された"アベノミクス批判"批判コラム
                       高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

 

        【朝日ボツ原稿】インフレ目標に言及しない『朝日』の編集委員

  こうした状況において、メディアが果たす役割は何だろうか。学界において、
 学者が一つの立場を主張するのは、どのような立場であれ、学者として理解でき
 る。それが学者の本分である。それが間違っている場合には評判を失うという、
 学者なりの責任の取り方になっている。
   これは、学者が普通のサラリーマンではないからできることだ。しかし、メデ
 ィアの場合、書き手はほとんどがサラリーマンである。筆者はサラリーマンでな
 い個人で頑張っている人を知らないわけではないが、日本で、個人のフリージャ
 ーナリストはごく少数しかいない。多くは会社に属しているサラリーマン・ジャ
 ーナリストである。
 
  そうしたサラリーマンであると、きちんとした個人の意見は出てこないし、個
 人で取れる責任もない。これでは事後検証しても意味がないことになる。
  また、メディアの人は、きちんとした学問の訓練を受けていないために、高度
 な専門知識に欠けている。このため、学界でも意見の割れるような分野をきちん
 と報道できない。
    ややもすると、学界で割れている意見の一方のみを過大に扱い、中途半端な理
  解であたかも自分の意見のように書く場合もある。そうした実例として、朝日新
  聞編集委員の原真人氏が書いて『朝日新聞』に掲載されたものを取り上げてみよ
  う。2012年12月19日付の「高成長の幻を追うな〈政権再交代〉」である。以下、
  一部を引用する。


 〈自民党圧勝を受けた金融市場は新政権を歓迎し、安倍晋三総裁が望んだ円安・
 株高が進んでいる。だが市場はしばしば誤ったメッセージを発するものだ。
 財政と金融の両方でお金をばらまこうという「アベノミクス」は、短期の相場を
 考える金融市場の人々には心地よく響くが、日本の将来にとっては危うい路線で
 ある。
 
 量的緩和政策はデフレ解消や成長促進への効果が薄く、副作用が大きい。それ
 がこの2007年、日本銀行が試みを重ねた末に学んだ答えである。
にもかかわらず
 安倍氏はデフレ脱却のため日銀に「輪転機をぐるぐる回してお札
を刷る」よう求
 めている。

  このうえ際限なくお金をばらまけばどうなるか。経済は好転せず人々の給料が
 上がらないまま、金利や物価だけが上昇しかねない。その先にはギリシャのよう
 な危機連鎖が持っている〉
 〈民主党政権も理解していたとは言えない。「コンクリートから人へ」といいつ
 つ、整備新幹線の着工など大型公共事業を進める逆行政策が目立った。

  さらにそれを加連させんとする安倍氏には、「名目3%成長」という人口増時
 代の高い潜在成長率の感覚があるようだ。日本が人口減少の成熟社会となった今、
 そこにこだわれば、政策のゆがみは大きくなる〉

 〈新政権がアベノミクスにとらわれ続けるなら、持続可能社会の実現をさらに連
 ざけるだけだ。そうなれば、私たちは遠回りのコストをまた負担させられること
 になる〉
 

  安倍総裁が、〈「輪転機をぐるぐる回してお札を刷る」よう求めている〉とし、
 〈このうえ際限なくお金をばらまけばどうなるか〉と書く表現は、悪意に満ちた
 感情論である。当時の安部総裁は、「インフレ目標における目標のインフレ率を
 達成するまで、金融緩和を無制限に続ける」よう、世界標準のインフレ目標政策
 を求めているだけだ。実際、この日本の世界標準政策は、ダボス会議などの国際
 会議などで賞賛を浴び、ノーベル賞経済学者クルーグマン・プリンストン大学教
 授らの世界の経済学者からは高く評価された。

 
  それだけでも原氏の論説は的外れであったのが明らかだ。もっとも、この部分
 は、前述したように、日本のアカデミズムにも大きな責任があるが、その尻馬に
 乗った原氏の責任も免れないだろう。

  いずれにしても、なぜ原氏は「目標のインフレ率を達成するまで」という部分
 を書かないのだろうか。この点について、当時の安倍総裁はきちんと発言してお
 り、原氏が意図的に発言を歪めたとしか思えない。


  さすがに原氏も、金融政策において、インフレ目標が日本以外の先進国で行な
 われていることを知っていただろう(もし知らなければ、このような記事を新聞
 に書く資格はない)。

  だから、「インフレ目標」に言及したくないとともに、安倍総裁の真意を歪め
 る報道をしたのだろう。

  他にも、お粗末な記述はある。〈「名目3%成長」という人口増時代の高い潜
 在成長率〉という記述であるが、原氏は、日本以外の先進国の名目経済成長率や
 人口増加率を知らないのだろう。そうした無知の下で、日本は人口減少なので経
 済成長できないと思い込んでいるとしか思えない。


 
  原氏に限らず、日本のメディアのデータ・リテラシーはきわめて低い。官庁の
 サイトからデータをエクセル形式でダウンロードし、グラフを書けるジャーナリ
 ストはきわめて少ない。筆者は役人時代に記者クラブの記者たちの相手をしてい
 たが、その中で、役所のサイトのどこに統計データがあるのかも知らない記者ば
 かりだった。当然、そのデータを読み、グラフ化することもできなかった。


  原氏の〈「名目3%成長」という人口増時代の高い潜在成長率〉という記述が
 いかにデタラメであるかを示すには、世界の先進国の名目経済成長率と人目増加
 率を知ればいい。

  筆者が大学の講義で大学生に教えていることを紹介しよう。こうした国際的な
 ものを調べるには、国際機関が便利である。どこでも似たようなデータベースを
 公開しているが、ここでは国際通貨基金(IMF)をとる。そのサイトの中に、
 「World Economic Outlook Databases http://www.imf.org/external/pubs/ft/
 weo/2014/01/weodata/index.aspx)」 がある。

 
 
 そこには、先進国の名目GDPと人口数の時系列データがある。それらをダウ
 ンロードして、各国ごとに、名目GDPと人目について、各年の伸び率を計算し
 2000年から2012年までの平均をとり、各国を一つの点として散布図にしたものが
 図1である。

  これを見ると、日本の名目経済成長率は先進国の中で最下位の低水準であるが、
 他の国では3%どころか4、5%でも高いほうではないことがわかる。しかも、
 日本より人口減少の激しい国がいくつもあることもわかる。それらの国を見れば、
 名目経済成長率は日本よりも高いこともわかる。

 
   しかも、人口増加率と名目経済成長率との相関係数は0.01と無相関である。つ
 いでに、人目増加率とインフレ率も無相関である。人口減少がデフレの原因など
 という人もいるが、データから見れば関係ない。

  繰り返すが、この散布図は、筆者の教える大学の大学生でも、インターネット
 からのデ-タによって1、2時間ほどでつくれるものだ。この程度のことで、前
 掲の新聞の記述はウソであると読者から見透かされているのだ。
 

         朝日新聞社に「掲載拒否」された"アベノミクス批判"批判コラム
                       高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

 

財政出動を機動的に出動するオバマ米国大統領政策を時系列的に検証しその正統性
解説し、日本型資本主義の骨格――①新自由主義・市場原理主義から決別、②「
官民
協調」路線で国家を再建すること、③輸出立国から内需中心の福祉国家へ転換
するこ
と、④産業構造を内需主導型に転換し「社会的共通資本」の整備・拡充を重
視するこ
と、⑤預貯金を日本国民のために使うこと、⑥株主の利益よりも国民の雇
用を重視す
る国家理念を確立すること、⑦古い設備を捨て、設備の更新を図ること、
⑧農業は株
式会社組織ではなく組合組織で、食料自給率向上と輸出産業化を図るこ
とを提案した
上で、新たな財政規律の指標――①基礎的財収支均衡政策の撤廃と新
しい財政規律の
指標を設定すること、②目標とする物価の指標を「消費者物価」か
ら「GDPデフレ
ーター」に変更すること、③「5年100兆円の政府投資計画」
など長期デフレ解消
策をとること、④格差を縮小させる政策をとるを、提案する。


しかしながら、マネタリズムの否定、インフレターゲットの廃止、日銀廃止・地方
権推進・一院制導入などの改革の否定など中央集権・国家官僚制の強化など閉鎖
的な
保守的側面が目立つようだが
、彼が提唱する「日本型資本主義」を開放的な高度消費
資本制(前社会主義)社会にリファインできれば世界の垂範となるだろう。
      

      TPPに参加してもGDPは10年間で実質3・2兆円増に過ぎない

  内閣府は日本がTPPに参加すると、10年後のGDPが実質3.2兆円増加する
 と発表している。
「10年間で」わずか「実質」3.2兆円という数字は、現在の
 GDPの0.66%に過ぎない。驚くべき低い数字だ。しかも10年間での話である。
 
さらに、ここで「実質」と言っていることから、国民の生活実感から見た「名目」
 に引き直してみると、デフレが継続しているので、「実質プラス成長」は「名目
 成長ではマイナス」になる。この理由は、「実質成長率=名目成長率ーGDPデ
 フレーター」であるから、デフレの下ではGDPデフレーターがマイナスである
 ために、実質成長率がプラスになっているだけであり、日本の名目GDP(経済
 規模)はマイナスになると見られる(第6章参照)。


 政府白身、TPPに参加すれば、日本はデフレが進み、マイナス成長になること
 を認めているのだ。「15年継続するデフレを解消しよう」という安倍首相の方針
 に真っ向から反する結論が出ている。デフレ解消政策をとるのであれば、TPP
 には参加すべきではない。


 日本の中国への輸出は2010年では全休の19.4%であって、中国は最大の輸

 国である。日本がTPPに参加すれば、アメリカと日本を条約で結びつけるこ

 になり、対中貿易は対米貿易よりも条件が悪くなる。実質的に中国を敵視するこ

 とになり、中国側がTPP非加盟国とFTA自由貿易協定)を締結すれば、日本
 は対中国
輸出面で大きなマイナスになる。

 そこで中国は、TPP非加盟国とFTAを結んで、アメリカと日本を牽制するこ
 とが予想され
よう。さらに、中国がEUとFTAを締結するとすれば、日本の対
 中輸出はさらに減るであろう。
TPP参加を表明している国のうちシンガポール、
 マレーシアは日本とすでにFTAを結んでおり、日本がTPPに加盟しても、こ
 の2カ国に対してはなんのプラスもない。アメリカとの関係で見ると、アメリカ
 の自動車輸入の関税率は現在の2・5%で据え置かれることがすでに事前協議で
 決まっており、なんの影響もない。そのほかの国に対しても、現地生産が進んで

 おり、日本の輸出はTPPによる関税引き下げがなくても順調に推移しているの
 で、TPPの参加の可否は輸出には関係しない。むしろTPPに参加することで、
 かえって参加していない国との貿易・資本取引面でマイナスになるであろう。
 
                                    第7章 TPPはアメリカの日本占領政策
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される

 

                日銀マネーはアメリカの超金融緩和縮小に利用され、日本経済を破壊する

 ここで、2012年12月末から2013年11月末までマネタリーベースとマネ
  ーサプライの推移を見てみよう(第6章の図表6-I「マネタリーベースとマネ
  ーサプライの関係」参照、211ぺージ)。この間、マネタリーベースは 132
 兆円から58兆円増えて190兆円になったにもかかわらず、マネーサプライは113兆
 円から117兆円と わずか4兆円しか増加していない。マネタリーベースの資金量
  をいくら増やしても、国内のマネーサプライはほとんど増えておらず、増加分の
  差額である54兆円
は海外へ流れている。

 アメリカのバーナンキFRB議長は、2013年12月20目に超金融緩和の縮小の第一
  歩として、2014年1月から市場で買い上げる国債などの金額を現在の月850債ドル
  から月750債ドルに縮小すると発表した。ニューヨーク市場では「アメリカの
 景気は量的緩和縮小を受け止められるほど回復している」との見方が広がり、株
 式市場では安心感が広がっている。バーナンキが2013年6月に超金融緩和の
 縮小方針を述べたあとで、内外の株価や発展途上国の為替相場が混乱したのとは
 大きな違いである。アメリカの景気回復が進んでいることは事実であるとしても、
 ウォール街では、日銀が超金融緩和を継続し、FRBのマネー縮小を補い、これ
 がFRBの超金融緩和の出口戦略を支えていくことが期待されている。まさに、
 日本財布論が具体的な数字で表れているのだ。


 アメリカでは、現在、超金融緩和の縮小に伴って「量的緩和の罠」という問題が
 議論されている。金融緩和を縮小していくと、長期国債の価格が下がり、長期金
 利が上昇する。そうなると、設備投資を抑制することになり、景気回復にプレー
 キがかかる。超金融緩和を縮小する過程で、いかにして長期金利の上昇を抑える
 かが問題であり、この点については過去の実例はなく、未知の世界へ模索してい
 くことになる。


 黒田総裁はマネタリーベースを270兆円まで増加させる方針であるから 2014年中
 にさらに80兆円の国債等を買い上げ、日銀マネーを市場に放出していくだろう。
 しかし、これらのマネーは日本国内では使われず、ニューヨーク市場の投機資金
 に使われるだけだ。しかも、現在の日銀は超金融緩和の出口戦略をまったく考え
 ていない。無謀な超金融緩和をやめて、国土強靭化を中心とする公共投資の裏付
 けとなる金融や国内の実需に見合った資金需要に限定すべきである。
 

                               終章 こうすれば新自由主義の侵略を阻止できる
                               菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』



                    機動的な財政支出は長期間継続して初めて効果が出る 

 2013年3月に総額12兆円の補正予算が成立し、そのうち10兆円は東日本大震
 災の復興関連と社会的資本の復旧と更新投資であり、ある程度、経済効果が期待
 できる。しかし、1回限りの公共投資ではその場しのぎに過ぎず、民間投資を引
 き出す効果はほとんどない。2年目以降も長期にわたって継続することであり、
 とくに現在は、社会資本が回収超過なので、社会資本の拡充に努めるべきである。


 日本の社会資本は2007年から回収超過で、新規の投資が減価償却(投資の回
 収減耗)を下回っており、これが社会資本の老朽化となっている。さらに、社会
 資本への投資(公共投資)が減ると、民間投資も減少する関連性が確認されてお
 り、事実、その通りになっている。国土強靭化政策を基盤として、長期的に財政
 支出を継続することだ(図表8-1「日本は民間も政府も投資不足」参照)。


 投資の乗数効果は毎年投資を継続するから「1」を上回る効果があるのであって、
 単年度で終わらせると、投資「1」に対して所得「1」しか増えない。経済成長
 の理論がない新自由主義・市場原理主義では、この点を理解できず、内開府は公
 共投資を抑えるために意図的に投資乗数効果が出ないモデルをつくっている。



 第6章に戻って図表6-6「5兆円の公共投資を継続的に増加させたときの経済
 効果」
をご参照願いたい(226ぺLン)。公共投資の乗数効果が「1」以下の
 モデルは、内閣府
だけであって、ほかの民間のモデルの乗数効果は「3年で1.5~
 3.0」、5年で「2.0~3.5であり、内閣府モデルは信用できない。それまで日本経
 済の成長のベース
となっていた経済モデルは、経済企画庁時代に宍戸数太郎氏ら
 が中心になって作成した

 
 マクロ経済モデルが中心であり、民間の経済モデルと整合性のある適切なモデル
 であっ
た。しかし、現在の内閣府モデルは、2001~2002年頃、竹中平蔵
 氏が経済・財政担当大臣であったときにつくられたものと言われている。2001年
 から始まった構造改革というデフレ政策は、内閣府の経済モデルまで偽装してデ
 フレのペースをつくっていたのである。このモデルで公共投資を削減してデフレ
 を長期化させ、余った国民の預貯金は米国情へ投資させる政策をとったのだ(
 6章参照
)。 

                              終章 こうすれば新自由主義の侵略を阻止できる
                               菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』

                                 この項了   

 


● 太陽光で給電可能なセキュリティシステム

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徳島大雪と復元力

2014年12月08日 | 政策論

 

 

【オールソーラーシステム完結論 40】
 
 

 

 

● 集光型マルチ太陽電池セル変換効率50%時代

集光型太陽電池セルの世界記録がまた塗り替えられ44.7%(297倍集光)。約1年で
着実に効率を高まっている。今回の成果は変換効率50%を目指す技術開発の途中経過
であり、近い将来50%の太陽電池セルを公開できそうだ(今回開発された技術は既に
フランス国内の生産ラインに組み込まれているという。また、集光型太陽電池セルを

用いた太陽電池モジュールの開発も進んでいる。Fraunhofer ISEは44.7%を記録した太
陽電池セル52枚をドイツORAFOL Fresnel Optics社が製造したフレネルレンズと組み
合わせた太陽電池モジュールを開発している。集光型用の太陽電池セルは小さい。製
造技術上、大型化できないためレンズなどと組み合わせて使う。下図のウエハーの直
径は100ミリメートル。セル1つの寸法は3ミリメートル角以下。製品化にまで1~
2年を要し、1キロワットアワーを発電するコストが8ユーロセント(約11円)未
満になるという。Soitec社は量産可能になった集光型太陽電池セルを用いたモジュー
ルの販売を既に進めている。同社の子会社であるSoitec Solar Development社は、2014
年10月、米San Diego Gas&Electricと米カリフォルニア州の発電所向けに交流出力150
メガワット(8万3400基)の販売契約を結んだことを発表。

尚、46.0%という記録を達成した太陽電池セルには構造上の特徴がある。異なる化合
物半導体を上下方向に4層重ね合わせた4接合太陽電池セルと呼ばれる構造(上図参
照)。

 

 

このように欧米での太陽光発電の開発と導入実績は着々と進んでいるかのようにみえ
る。うかうかしていると技術立国日本は一周遅れの後塵を拝すことになる。これは本
懐や如何に!?


 

● デフレ脱却と安定成長への道 Ⅲ

 

 
原子力発電の日本に導入した中曽根康弘は、新自由主義・市場原理主義も導入したが
ことの発端とか、その後のデジタル革命に象徴される科学技術進歩や自民党政権数々
の失策を重ねた結果、勤労国民は長いデフレ不況で苦しむことになったという。今夜
は第4章から5章にかけ読み込む。新自由主義と闘いでは、デヴィッド・ハーヴェイ
は国際的な連帯意志でその侵攻を阻止しようと呼びかけるが、著者は国家主義的な共
同体意志でその侵略を阻止しようと提案する。次回の第6、7章でこの項で終了とな
る。いよいよ佳境を向かえる。
尚、昨夜と同様に詳細は各著書の別に参照願う(→ こちら

          基礎的財政収支均衡策で子ブッシユ大統領に貢いだ小泉首相と財務省

 小泉首相は就任2年目の2002年1月の施政方針演説で、「基礎的財政収支(
 PB)の赤字を10年後の2012年にゼロないし黒字に転換する」という緊縮財
 政によるデフレ政策をなぜとったのだろうか。それは、日本に日本人の預貯金を
 使わせないようにし、余剰資金をアメリカに吸い上げさせるアメリカの日本財布
 論と、緊縮均衡財政を強行したい財務省の思惑が一致したからであろう。


 日本に均衡財政を要求することは、石油危機以降の安定成長路線を否定するもの
 であり、日本の余剰預貯金が国内では使われないようにし、日本をデフレにする
 政策である。石油危機以降の日本は、余ってきた国民の預貯金を政府が国債を発
 行して吸収し、その資金を公共投資として使い、社会的なインフラを構築してい
 くという政策をとってきた。この政策は石油危機の前に、『列島改造論』で田中
 角栄首相が唱えた政策であって、一時は頓挫したものの、1970年代後半から
 具体化し、官民共同して築いてきた安定成長路線であった(図表5‐1日本は政
 府投資が民間投資を補完する経済体質」参照)。

 つまり、民間の投資だけでは使い切れない余剰資金を政府が国債で吸い上げ、そ
 れを公共投資に使って社会インフラをつくり、この政府投資に民間がフォローし
 て官民共同の投資で相乗効果を生んできたのである。

 ところが、こうした理想的な資金循環と経済成長を遮断したのが1996年の橋
 本財政改革であった。橋本財政改革法は、「中央政府と地方政府の合計で財政赤
 字を今後5年間で名目GDPの3%以内にする」という数値目標つきの法律であ
 った。当初からこの目標はあまりにも厳しく、実現不可能であり、目標を達成す
 るためには大幅な財政支出の削減が予想された。これを見越して、外資を中心と
 した大胆な日本株売りが発生し、多額の株式を保有していた大手銀行は、株価暴
 落による信用危機に遭遇したのである。

 そのため、1997年には金融危機が発生し、財政赤字はかえって拡大すること
 になってしまった。金融危機が発生したとき、竹下登元首相が「財政規律を法制
 化したのが失敗だったなあ」とつぶやいたと聞いた(自民党の有力政治家から聞
 いた話)。まさにその通りであったので、財務省はその汚名を返上するために、
 再び緊縮財政を導入しようと考えていたのだ。


 また小泉首相は、新自由主義者・市場原理主義者として「小さい政府」を指向し
 OECDの統計で見れば「すでに小さすぎる日本の政府」を、さらに小さくしよ
 うとしていた。この考えと、1997年の財政改革の失敗を糊塗するために緊縮
 財政を実行したい財務省の思惑とが一致し、それが子ブッシュの日本財布論の強
 化に答える形で、デフレ政策が進められたのである。「デフレを始めたのは自民
 党で、花を咲かせたのは民主党である」(2013年3月、参議院予算委員会、
 自民党・脇雅史氏)という発言があり、政策デフレであったことを現在の自民党
 は認識している。この結果、得をしたのはアメリカであった。

                      第5章 日本はこうして悪魔に犯された
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』

 

 

       地方交付税交付金と国庫補助金を大幅に削減して米国債購入の原資を捻出

  基礎的財政収支均所政策の目標を達成するために、政府(財務省)がとってきた
  手段は緊縮財政であり、その内訳は「公共投資と地方交付税交付金・国庫支出金」
 を毎年削減していく政策であった。これで国内需要と地方経済は大きなダメージ
 を受けた。

 「地方交付税交付金」は太平洋戦争中の1943年に制度化された財政支出で、
 中央政府が徴収した法人税と所得税の一定割合を地方政府に分与するという政策
 である。政策の基本的な考えは、「日本中どこにいても日本国民は平等な公共サ
 ービスを受けられる。とくに教育と医療は全国的に同じ基準で受けられる」とい
 うもので、戦後も継続され、目本国の平等で公平な財政支出として、諸外国、と
 くこ発展途上こくの模範となっている。

 また経済的な側面から見ると、全国的に日本国民はよく働き、貯金する。その貯
 金は地方だけでは使い切れないので、地方銀行や郵便局を通して、東京や大阪な
 ど経済活動が盛んな地域に集められて、貸し出しの原資となる。企業活動による
 利益ら、法人税と所得税が生じて、中央政府に集められる。しかし、その原資は
 地方の居住者の預貯金であるから、中央政府に集められた税収はその運用益であ
 る。そこで、原資を供給してくれた地方の国民に、地方交付税交付金として配分
 するという仕組みである。

 小泉構造改革で地方交付税交付金と国庫支出金(補助言、公共投資を毎年削減し
 てきた結果、削減額の累計は、2000年度を基準としてみると、2001年度
 から2010年度までの10年間で、実に75・4兆円に達した。その内訳は、公共
 投資で16.4兆円、地方交付税交付金で43.1兆円、国庫支出金(補助金)で15.9兆
 円の削減である。これだけの資金が緊縮財政で減らされ、実質的に「地方から中
 央政府へ召し上げられた」のである。どのように吸い上げられたかは、図表5-
 2「緊縮財政で国が地方から召し上げた金額」をご覧願いたい。

 「金は天下の回りモノ」と言われている。地方から中央に集められたお金を地方
 へ戻さないと、経済は活性化しない。基礎的財政収支均衡政策は「地方から金を
 召し上げ、運用益は地方には回さない」(やらずぼったくり)という政策であり
 国内経済を疲弊させる。その結果、リーマン・ショックで輸出企業の税収が激減
 したときに、内需中心の企業からは税収が上がらず、日本経済全体で弱体化した
 姿になっていたのだ。

                       第5章 日本はこうして悪魔に犯された
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』


        デフレ政策の結果、国内から94兆円が海外へ(米国債へ70兆円)

  内開府が毎年発行している「国民経済計算」(2013)によれば、過去10年間
 で家計の金融資産は108兆円も増加したのに、国内で使われた資金はわずか14
  兆円にすぎず、残りの94兆円が海外に放出されている(図表5‐3「過去10年間
  で94兆円が海外に流失」参照)。 この図表では、経済主体を「家計」「企業」
  「政府」と「海外」に分けて、資金の流れがどのように循環しているかを示して
 いる。2000年から2010年にかけての過去10年間で、「家計」の金融資産
 は1436兆円から1544兆円と108兆円も増加している。しかし、デフレ
 政策をとったために、「家計」と「企業」で使う資金が減り(家計では17兆円減、
企業では220兆円減)、「政府」では増えている(251兆円)ものの、合計
 で94兆円が捻出されて「海外」に流失している。国内のどこから捻出されたかを
 見ると、次の通りである。 

①地方交付税交付金・公共投資・国庫支出金(補助金)の合計で見た削減累計額
 が75.5兆円に達し(図5-2参照)、さらにデフレによる国内での圧縮分で18.6兆
 円を捻出し、合計で94見円が国内から海外へ流失した。

 ②国内の余剰資金の対外純債務の行き先を見ると、政府による米国債の購入(外
 貨準備の増加順)が70兆円であり、残りの24兆円は民間企業と個人が海外へ投資
 した金額である。小泉首相と財務省は、基礎的財政収支均衡目標を取り入れた緊
 縮財政(デフレ政策)をとって日本国民の預貯金を日本のために使わせないよう
 にした結果、国内から94兆円が海外へ流出し、そのうちの75%で、政府が米国債
 に投資したのだ。

 小泉構造改革は、アメリカの合衆国財務省に緊縮デフレ政策で協力していたのだ。
 このことがはっきりと証明されている。原資はすべて日本国民の預貯金であり、
 少なくとも70兆円が米国債に流れている。

 

                       第5章 日本はこうして悪魔に犯された
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』


     アメリカの財布になろうとした郵政民営化(自民党の正義派・愛国派が反対)

  郵政公社民営化法案は、2005年7月4日、衆議院本会議で可決された。しか
  し、与党・自民党内から法案に反対する議員が多く出たために、わずか5票差と
  いう僅差の可決であった(37人反対、H人棄権)。次いで参議院では、8月7日
 に本会議で否決された(自民党の22人が反対)。参議院で否決されたその日に、
 小泉純一郎首相は衆議院を解散し、「郵政公社民営化に賛成か、反対か、国民に
 問いてみたい」と宣言して、選挙で勝負する方針を打ち出した.

  なぜ自民党の多くの議員が反対したのか。ここで、図表5‐4「日本の国債・財
 投債保有者別内訳」をご覧いとどきたい。2004年19一月末時点で、政府短

 期証券を除いた国債発行総額は505兆円あり、この33%に当たる166兆円が
 日本郵政公社によって保有されていたのである。したがって、日本郵政公社が民
 間企業になり、外資に買収されると、国債発行額の3分の1が外資に握られ、日
 本の国債調達に穴が開き、国家財政が破綻し、国家が破滅の危機に遭遇する。 

 この危機感が自民党内に広がり、多くの正義派・愛国派の議員が民営化に反対し
 たのである。事実、郵政民営化を要求するアメリカは、民営化すればアメリカの
 投資銀行が日本郵政公社を買収し、300兆円の金融資産を手に入れて、その運
 用資金を自由自在に操作しようとしていたのだ。1994年からの「年次改革要
 望書」では、毎年、「簡保生命を民営化せよ」と要求していた。しかし、本音と
 しては郵便保険を含む300兆円を一挙に手に入れようと考えていたことは確か
 であり、財政赤字国アメリカとしては、新規国債の引き受け先として日本郵政公
 社を考えていたのだ。

 ここにアメリカの国家戦略がある。この考えはいまでも変わらない。当時の大マ
 スコミはこうした事実を報道しようとせず、国民には民営化に伴う危機を知らせ
 ずに、「官から民へ」の大スローガンを立てて国民を煽りに煽ったのだ。国民は
 事実を知らないまま、マスコミの「官から民ヘ」「官から民へ」の大キャンペー
 ンで、選挙に放り出されたのである。



                        第5章 日本はこうして悪魔に犯された
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』



昨夜につづき、今夜は第5章の「今こそ『アベノミクスの逆襲』の時」に入る。ここ
では「経済成長してパイを大きくすれば6~7割の社会問題は片づく」という極めて
シンプルな帰結が導き出される(詳細は → こちら)。

 

         消費税を増税するかしないかで、どれほどの違いが生まれたか

 もし、2014年4月からの増税がなかったらGDPの「額」はどう推移しただろう
 か。そして、今後どうなるだろうか。もし、増税がなかったらどうだったかは、
 じつはシンプルに考えられる。下図8を見ていただきたい。第一章で説明したよ
 うに、GDPの「率」ではなく「実額」を概念的にグラフにしたものだ。

 2014年4月の消費税増税がない場合、1年ごとに2%の成長で経済が伸びていった
 と考えれば、それほど変な数字ではないはずだ。第1章で見たように、1年で2
 %成長するということは、四半期で分けると、0.5%成長くらいになる。2013年
 10-12月期の実質GDP527兆円を基準に、四半期ごとに0.5%ずつ成長していっ
 たと単純に計算すると、本来ならば527兆円(13年10-12月期)→529.6兆円(14
 年1-3月期)→531.3兆円(14年4-6月期) →534.9兆円(14年7-9月期)→537.8
 兆円(14年10-11月期)……というように伸びていく。

 これに対して、実際のGDPの動きを概念図としてグラフに描いてみると、2014
 年4月に消費税の増税があったので、その前段階の駆け込み需要でグラフはグッ
 と膨らみ、4月以降、大幅に落ち込むことになる。その落ち込みが事前にいわれ
 ていたように「軽微」なものではなかったことも、前に説明したとおりだ。駆け
 込み需要の反動減だけではなく、増税で実質所得が減った分の打撃を受けている
 ので、残念ながら駆け込み需要の山よりも、その後に来る谷のほうが深い。


 このあとはどうなるか? 一回落ち込んだところから、再び年2%成長のライン
 に乗ったとしても、当然のことながら到達点は2014年4月に増税しなかった場合
 には届かない(それでも「V字回復」ラインだ。実際にはもっと成長率が落ち込
 んで「L字回復」になる可削悒も否定できないがべ 「率」だけで見ていると、
 2014年4-6月期に大幅に落ち込んだだけに、次の期は「劇的に回復した」と見せ
  かけられてしまうかもしれない。だが実際には、「額」で見た場合には、このグ
  ラフで示されている打撃(差)を受けてしまっているということだ。

 もし、2015年10月に消費税が8%から10%に引き上げられたら、その前後にまた、
  山と谷が発生して、何もしなければ一段低いところに落ち込んでしまうことにな
  る。今となっては、落ちてしまったものは致し方ない。落ちた現実を受け入れつ
  つ、倦まずたゆまず、そこから伸ばしていくしかない。そして、今後、経済が落
  ち込むことがないように知恵を絞るしかない。では、どういう手を打つべきだろ
  うか。

 

                        第5章 今こそ「アベノミクスの逆襲」の時 
                       高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

 

                            「反成長」に飯の種がある人たちの妄言など決して聞くべからず 

 そして、経済成長のための道は、今まで説明してきたように、きわめてシンプル
  だ。第4章で詳しく紹介したように、あの平成バブル退治後に日本経済が大惨事
  に追い込まれたのは、「政策の失敗」があったがゆえのことであった。遂にいえ
 ば、よい政策さえとれば、経済成長を実現することは不可能でも何でもないのだ。


 最後に、反成長論者の嫌う図を1つ乗せておこう。

 いずれも、最近20年間で、日本の経済成長が世界でほぼビリで、マネーの増や
 し方を
怠ったことを示唆している。「相関関係は因果関係でない」などとL張す
 る人もいるが、先進国では、マネーの変化のあと1~2年で成長率が変化するこ
 ともわかっている。これは、マネーが「原因」で、経済成長が「結果」なのでは
 ないか。

 経済失策があまりに長く続いたので、日本経済はもう成長できないとすら思い込
 んでいる人がいる。だが、それは問違いだ。現に、2012年12月に政権の座
 に就いた安倍首相相が「アベノミクス」を高らかに唱えて以来、日本経済は劇的
 に好転した。まっとうに奮闘してきた日本企業の多くがまっとうな成果を手にで
 きるようになり、次々と過去最高益を叩き出す企業が続出した。労働者の賃金も
 上がり始めた。その一方、これまでのデフレに対応して労働者に過重なしわ寄せ
 をしてきた「ブラック企業」は、たちどころに苦境に追い込まれていった。この
 ようなことこそ、正しい政策が正しい結果を生む、何よりの証拠ではなくて、何
 であろうか。

 これまで本書で見てきたように、自分たちの邪な思惑を実現するために、あえて
 間違いだらけの経済論を信じ込み、真剣にそれに向けて行動を繰り広げる人たち
 もいる。その尻馬に乗る経済学者やエコノミストも数知れない。そして、「アベ
 ノミクス」に象徴される経済政策に対して、闇雲で素っ頓狂でバカげた批判を繰
 り返す人が後を絶たない。

 だが、根本において間違っているものは、どこまでいっても間違いでしかない。
 そのようなものに嘸されていたら、再び日本経済は地を這うような苦境に叩き込
 まれるに違いない。
もちろん成長しなくても、困らないどころか、むしろかえって都合の
 よい人々がいることも事実だ。収入が高くなくても安定している公務員からすれ
 ば、デフレのほうが快適だ。たとえ景気が悪くなろうとも、増税を断行してバラ
 マキを増やしたほうが、権益が拡大し、天下り先が増えて、老後が安定する人た
 ちもいる。様々な問題が噴出したほうが都合がよいマスメディアもあるだろう。
 自分自身が妄信するイデオロギーに基づいて「経済成長」をあたかも悪であるか
 のように描き出す勢力すら存在する。

 だが、そんな「反成長」に飯の種があるような人たちのいうことを聞いていては、
 その他
大勢の普通の国民は塗炭の苦しみに叩き落とされるしかないのだ。今、「
 アベノミクス」
の成果を拡大できるか、それとも地に堕としてしまうかの瀬戸際
 である。ぜひとも「アベ
ノミクスの逆襲」を実現させなくてはならない。何か経
 済成長をもたらす「正しい政策」な
のか。難しい現実の中で、それでもなお、正
 しい政策を貫こうとしている勢力はどこにい
るのか。そして「言論」を封殺し、
 誰かにとって都合のよい「もっともらしい嘘」をついてい
るのは誰なのか。きち
 んと見極める眼が、今こそ、求められているのである。

 

                        第5章 今こそ「アベノミクスの逆襲」の時 
                       高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

                                 この項つづく 

 

  ● 今夜の一曲

カプリースの24の奇想曲最終曲24番

すでに述べた通り、リーマン・ショック後に就任したオバマ大統領は、経済情勢が 
ニコロ・パガニーニの24の奇想曲作品1は、ヴァイオリン独奏曲。無伴奏曲で、
ヴァイオリンの重音奏法や、視覚的にも演奏効果の高い左手ピッツィカートなど強
烈な技巧が随所に盛り込まれた作品。ヴァイオリン演奏家には難曲に挙げられる。
フランツ・リストは演奏技巧のもつ音楽の可能性に触発され、ピアノ曲に編曲して
いる。1800年から1810年頃にかけてジェノヴァで作曲されている。その10年後の
1820年にミラノで「作品1」としてリコルディから出版される。作曲の動機につい
ては不明ではあるが、ロカテッリやロードなどのフランコ・イタリア派作曲家たち
からの影響がある。パガニーニは、舞曲や行進曲のリズムの使用、バロック音楽や
ジプシー音楽からの影響、ヴェネツィアの舟歌からの引用やギターのトレモロの模
倣など、多くのヴァイオリン曲の中で特異な魅力を放つ。

この最終曲(イ短調、2/4拍子)は全曲をまとめるにふさわしい華麗な変奏曲。主題
と11の変奏、それに終曲が付随する。僅か16小節の主題が技巧的に展開されてい
るる。後の作曲家に「パガニーニの主題による変奏曲」として改作され、なかでもリ
ストの「パガニーニ練習曲第6番」、ブラームスのパガニーニの主題変奏曲、ラフマ
ニノフのパガニーニの主題による狂詩曲などロマン派作家が競ってピアノ作品に改作
・編曲された。

 

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皇帝ダリアとワンダフル工学

2014年12月07日 | 政策論

 

 

● 皇帝ダリア騒動 

最近、外出すると皇帝ダリアの花をよく見かけるようになった。ところが、当初車窓か
ら眺めているだけで、秋咲の合歓の木の花があるのか知らないがそうだと勘違いしてい
た。翌日、彼女が何の花かしつこく尋ねるが要領得ない返事でおざなりにしていたが、
「皇帝ダリアよ!」と部屋に飛び込んでくる。懇意にしているご近所に咲いていたので
尋ねてきたという。ご主人が皇帝ダリアの株が分けてもられるかもしれないというので、
春には庭植できるかもしれないという。高茎草のダリアがこの庭に割くのか・・・。

皇帝ダリアは、日が短くならないと花芽ができないので、開花期が遅く11月下旬から咲
き出す。近くに街灯や電灯があると日が長いと感じ、花芽をつけないので注意も必要。
成長すると5~6メートルにもなる。草丈を高くしたくない場合は、何回か切り戻して
高さ調整する。科名:キク科、属名:ダリア属、学名:Dahlia imperialis、別名:木
立ダリア・インペリアルダリア。原産は中米、メキシコに分布、木質化する3種がツリ
ーダリアと呼ばれるが、そのなかでも特に茎が太くなり草丈が高くなるという。また、
庭植えのものは露地で越冬するが凍結は厳禁。

 

                                                                              

 

 

● デフレ脱却と安定成長への道 Ⅱ


さて、第3章の見出しは、ズバリ「まやかしだったアメリカの市場原理主義」と切り
てる。これを言い換えれば「グローバリズムなんて、単なる英米的強欲主義(=英米流
金融資本主義)」と
言い換えても許されるだろう。また、「デフレからの脱却」はすで
にレーガン政権で
試行され失敗するが後継者のクリントンは 新自由主義・市場原理主
義から脱却できず
格差が広がり、上位1%しかマネーは流れてこない社会を変えられず、
続く子ブッシユ政権は徹底した新自由主義・市場原理主義でアメリカを崩壊させたと言
う。

当初は、感覚で高橋洋一と菊池英博両氏の著書をチョイスし、同時並行的読み進めてき
たが、ここにきて日米の経済運営の経緯と矛盾を立体的に浮き彫りできたような手応え
を感じている。以下、恣意的に関連する節を掲載した。尚、詳細は各著書の別に参照願
う(→ こちら

 

        冷戦終了後は政府投資が経済成長の牽引力(クリントン・モデル)

 冷戦が終わり平和になったアメリカで、初めて平時に経済を成長させることを目標
 として国家予算を組んだのは、1993年1月に就任したクリントン大統領であっ
 た。このときまで、軍事予算と軍需バブルで国内経済を成長させてきた国が、どの
 ようにして方向転換を図るかが、最大の課題であった。

 そこで考えたのが、いままで軍事費に投入していた予算を国内の公共投資(道路交
 通網整備、地域開発、職業教育・学校教育施設の拡充など)に振り向けて内需をつ
 くり出し、民間投資を喚起させることであった。同時に、株式市場では、軍需バブ
 ルに代わってTITバブルを演出することであった。その内容の骨子は77ページで
 述べた通り、1993年8月の「包括予算調整法」であり、この政策理念を初年度
 1993年度予算から8年間継続して実行したのである。

 この結果、大統領就任時点(1992年度予算)では、2903億ドルあった財政
 赤字を5年後の1998年に解消し、退任した2000年度予算では、財政収支が
 2362億ドルの黒字になったのである(8年間の予算支出の内訳は、図表3‐1
 「クリントン大統領の予算支出の内訳」参照)。
クリントン大統領の2期8年間の
 実績を、第1期(1993~1996年度)と第2期(1997~2000年度)
 に分けてまとめてみると、8年間の財政支出(予算支出の総額と項目別の支出)の
 特徴は次の通りである。

 

 ①全体の予算総額は、第1期は年平均対前年比プラス3・3%、第2期は同じくプ
 ラス3.O
%であり、8年間の累計で33%増加している。「債務国だから、軍事費
 を減少して予算総額を削減する」のではなく、軍事費の減少分を公共投資に振り向
 け、さらに総予算を前年比で3%以上増加させている。増加率が3%台であるのは、
 物価の上昇率を2%程度と見込み、「物価上昇+1%」を予算総支出にするという
 方針の 表れである。

 日本では、「クリントンは均衡財政をとって赤字を解消した」(財務省の資料、2
  001年3月の理財局次長の発言という意見がある。しかし、これは大きな事実誤
  認である。図表3‐Iでわかる通り、債務国のアメリカが、当初の2~3年間はあ
 えて赤字を増加させて公共投資を実行して景気対策をとり、景気回復によって税収
 を増加させる政策をとったのだ。これが成功して、2年目から税収が徐々に増え、
 5年後の1998年に財政収支が黒字になったのである。黒字になってからも財政
 支出総額を毎年平均3%増加させ、その増加分は政府投資に集中的に支出した。こ
 うして8年目には、財政黒字が2362億ドルになり、8年間で5265億ドルの
 財政収支を改善したのである(図表3‐2「過去20年間のアメリカの財政収支の推
 移」参照)。

 ②財政支出の内訳を見ると、軍事費は8年間累計でマイナス1.2%である。この
 軍事費の減少分と財政支出総額の増加分を原資として、「裁量的項目」のうち「道
 路輸送関係」は年平均対前年比プラス7.7%、8年間の累計で70%の増加となり
 「地域開発」は年平均前年度比プラス9.8%、8年間の累計で80%の増加、「教
 訓練」は年平均前年度比プラス5・5%、8年間の累計では44%の増加であった。

 8年間継続して投資関連支出を重点的に増やしていくのは容易ではない。それを実
 行したことによって国内の有効需要を喚起し、民間投資を誘発して、投資の乗数効
 果が加速され、経済成長を促進してきたのだ。8年間の財政支出総額は33%の増加
 であるのに、政府投資の増加は46%であり、この差額こそ、予算の支出にウエイト
 をつけて公共投資に集中した結果である。これが景気回復と税収増加をもたらした
 のである(図表3-3「クリントン大統領の経済政策の効果」参照)。



 クリントン政策はまさに政府によるケインズ的な需要喚起であり、供給サイド経済
 学ではない。この実績こそ、供給サイドを重視する経済学の誤りを示し、需要喚起
 の経済学こそ、経済を成長させる原動力であることを証明している

 ③クリントンは就任演説で「公平な税制を導入する」と宣言したので、これを具体
 化した。所得税の最高税率を従来の31%から39・5%へ引き上げ、1993年1月
 に遡って実施した。大企業に対しては、法人税の最高税率を34%から35%に引き上
 げ、多くの特別償却を廃止した。

                  第3章 まやかしだったアメリカの市場原理主義
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』

 
                格差が広がるアメリカ、上位1%しかマネーは流れてこない

 アメリカの雇用情勢を見ると、デジタル革命によって事務職の仕事が減り、中間層
 は職を失ってきたので、政府は職業訓練やNPOの新設などで、失業の増加を食い
 止めようとしてきた。しかし、減税の恩恵を受けた大企業や個人富裕層が失業を救
 済するような事業活動を起こす機会は少なく、最近では、失業率は6~7%以上に
 高止まりしている。供給サイドの強化のためと称して法人税の減税をしても、雇用
 の増加は期待できず、新自由主義・市場原理主義は失業を増加させ、雇用条件を悪
 化させたのである。

 アメリカ社会で格差がどのように拡大してきたかを最新の「議会予算局」の統計で
 見ると、「上位1%の最富裕層」の所得のGDPに占める比率は、1985年にG
 DPの12%であったのに対し、2010年になると25%と2倍以上に増加している。
 また保有資産で見ると、「ヒ位1%の最富裕層」の保有資産総額は、1985年に
 33%であったのに、2010年では40%に増えている。さらに過去28年間(197
 9~2007年)の所得の伸び率を見ると、図表3‐4[アメリカにおける所得の
 階層別伸び率」の通りである。

 ここで驚くべきことは、この28年間で物価の上昇率(インフレ率)が約80%なのに
 対し、所得全体の平均の伸びは62%と、平均値の所得では物価上昇を下回っている
 ことだ。物価上昇率を上回っているのは「最富裕聯(ト位I%)」だけであって、
 「富裕層衰富裕層1%を除く上位20%こですら、所得の伸び率は65%であり、イン
 フレ率約80%を下回っている。さらに中間聯(上下2割を除く6割の層)の所得上
 昇率は37%に過ぎず、まさに中関聯の没落と言わざるをえない。下位の20%は、28
 年間でわずか18%しか所得が増えておらず、これには子ブッシユ大統領のときに最
 低賃金が8年間も据え置かれていたことが大きく影響している。アメリカの例では
 っきりわかるように、新自由主義・市場原理主義を理念とする政策をとっていけば、
 富裕聯と大企業に富が集中することになる。しかし、富裕聯と大企業が事業を起こ
 しても雇用が増えることは期待できず、有効需要が減り、失業を生み、デフレにな
 る。アメリカはこうした事態をどのようにして乗り切ろうとしているのか。
 

                  第3章 まやかしだったアメリカの市場原理主義
                   菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』


                               アメリカがデフレを回避させる3つの方法

  実はアメリカは、必死にデフレを回避する政策をとっているのだ。経済がデフレにならない
 ようにするためには、「経済全体の需要が供給を下回らないこと」「消費者物価と物価の総
 合指数であるGDPデフレーターーを前年比でプラスにすること」「賃金水準を下げないこと
 (下落しなぃょぅに岩盤をっくること)」が必要であり、常にこの3つを充足させる政策を継続
 することである。

 これを意識して、レーガン以降の大統領が一貫してとってきた政策がある。それは、
 ①「総
 需要を喚起する政策をとること」、②「財政政策では軍事費と公共投資・
 地域開発に財政資金を投入して有効需要を喚起し、金融を緩和してバブルを起こし、
 物価を底上げすること」、③「組合員のベース給与は物価上昇率に準じて増やし、
 消費需要を底上げすること」「労使契約で可能な限り賃金水準と雇用を維持するこ
 と」である。


 すでに述べた通り、リーマン・ショック後に就任したオバマ大統領は、経済情勢が
 デフレ傾向にあったために、就任早々の2009年2月、緊急補正予算(2年総額
 70兆円)を組むことによって、公共投資と社会保障費の増額でデフレ回避に成功し
 た。
金融面からのデフレ回避策は、金融を大幅に緩和して財政支出を金融面から支
 えるとともに、マネーゲームをやりやすくする環境を整備して、バブルを引き起こ

 すことである。株式市場では株価を引き上げ、石油、鉄鋼、鉱石、大豆、穀物など
 の商品市場では価格を意図的に引き上げてきたのだ。こうして、海外から低価格の
 商品(99セントショップ、ペイレスマーケットの物資など)が入ってきても、消費
 者物価の平均を下げないようにしてきたのだ。 

 さらに賃金水準が下がらないようにして雇用破壊を防止している。アメリカではA
 FL‐CIO(アメリカ労働総同盟・産業別組合会議)という組合の大連合組織(
 日本の連合に相当する)があり、毎年の労使間交渉で賃金水準が決まる。賃金水準
 はインフレ率をペースにするので、物価が上がれば組合員の賃金は上がる。組合交
 渉で賃金基準が決まれば全米の基準
となり、これが賃金の家宝硬直性となって、デフレを
  回避する大きな要因になるのだ。しかし、非組合員や非正規社員、移民などの賃金にはこ
  うした約定はないので、物価が上がっても賃金が下がることもあり、下方硬直性はない。し
  たがって、非組合員が多いほど、賃金のデフレ効果が強い。


                  第3章 まやかしだったアメリカの市場原理主義
                    菊池英博 箸 『そして、日本の富は略奪される』


 

第4章 「バブル期」の真実がわかれば、現在の経済が見える」では、平成元年をはじ
めとする「失われし20年」を政策作成担当者としての現場体験を、1つ1つ交えて検
証されていく。これはビビットに圧巻である(詳細は → こちら)。
 

                      1980年代後半の「バブル期」はインフレではなかった

  多くの人は1980年代後半のフバブル期」のことを誤解している。バブル期に
 は何でも価
格が上がり、著しいインフレが起こっていたかのように思っている方が、
 ほとんどではないだろうか。

  だが、現実は違うのだ。価格が上がっていたのは、土地や株などの一部の資産価
 格だけであり、一般物価はそれほど上がっていなかったのである。
  物価はむしろ健全な範囲内だった。経済成長率も特に高かったわけではなく、当
 時の先進国水準では平均的だった。

  つまり、1980年代のバブル経済は、株と土地以外は、「健全な経済」あるい
 は「フツーの経済」だったのだ。

  バブル景気については、地価高騰やバブル紳士の暗躍など、負の歴史のように振
 り返られることが多い。今も市況が過熱気味になると「バブル再来」という言葉が
 批判的に使われ、アンチ経済成長的な心理が広がる要因にもなっている。

  バブル期とは一般的には1987年から1990年までをいうが、どのような経
 済状況だったのか、指標を振り返ってみよう。


         〈マクロ経済指標 1987年~1990年

  名目GDP成長率  5~8%
  実質GDP成長率  4~5%
  失業率       2~2.7%
  物価上昇率     0.5~3.3%

  あらためて数字を見ると、驚かれる方もいるのではなかろうか。今からは想像で
 きないほどの健全な数字だ。

  特に、物価上昇率に注目してほしい。0.5~3.3%だから、インフレといえ
 るような数字ではない。

  ここが一番誤解されている点である。「バブル期」と呼ばれているけれども、一
 般物価は、狂乱物価でもなかったし、バブルでもなかったのだ。

  一方、株価と不動産価格は異常であった。
  日経平均株価は1986年には、現在と同じくらいの1万5千円程度だった。翌
 1987年の10月19日にブラックマンデーがあり、一時値を下げたが、その後
 急上昇していき、1989年12月29日に3万8957円の史上最高値をつけた。

 それをピークにして、1990年末にかけて2万3000円くらいまでに一気に下
 がり、1992年初めには2万円を割り込むほどになった。この問に、株を高値で
 つかんだ人は、大きな含み損を抱えることになった。

  土地の価格も異常に上がった。株価より1~2年遅れ、1991年ごろにピーク
 を迎えている。都心では地上げ屋や土地転がしなどが横行し、都心の小さな土地が
 高値で取引された。一定規模の大きさの土地にまとめられて転売され、転売に次ぐ
 転売で異常なほどに値を上げていった。その土地を担保に金融機関は融資をした。

  ところが、バブルがはじけ、土地の価格が下落し、土地は担保価値がなくなった。
 金融機関は融資の回収を急いだものの、結局、多額の不良債権を抱えることになっ
 た。


  株と不動産に関しては、まさしく異常なほどのバブルであった。だがその一方で、
 GDP成
長率、物価、失業率などマクロ経済のほうは、いたって健全だったのであ
 る。
片方はきわめて異常で、片方はきわめて健全だという、この経済状態をどのよ
 うに分析するかがポイントだ。

  実は、当時の日銀はこの状態を正しく分析することができなかった。両者を切り
 分けず、まとめて一つの経済状態として考えてしまったのだ。そのため、インフレ
 ではないにもかかわらず不要な引き締め政策をすることになり、以後、それを正当
 化するための施策が続くことになってしまった。

          第4章 「バブル期」の真実がわかれば、現在の経済が見える  
                        高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

 

                                               ノーリスクの莫大な利益を生んでいた「法律の不備」

 私はバブル期に大蔵省証券局の業務課(証券会社の指導監督をする部署)に在籍し
 ていた。そこで目の当たりにしたのは、ほぼ違法ともいえる証券会社の営業であっ
 た。顧客に対して損失補填を約束しながら株式の購入を勧めていたのだ。その株式
 購入資金を、顧客の自己資金で賄うのではなく、銀行が融資するというパターンも
 横行していた。これは株式の購入に限らず、土地の購入でもよく見られた話だ。

 当時、私は株価が上がっている原因を探ろうと思って調べてみたところ、簡単に分
 析することができた。株式売買回転率を調べると、「ファントラ」「営業特金」の
 回転率だけが異常に高かったのだ。

  「ファントラ」はファンド・トラストの略で、具体的な運用方法を信託会社に任せる金融商品
 のことだ。一方、「営業特金」というのは、当時流行っていた証券会社の財テク手
 法で、特金とは特定金銭信託の略称だ。法形式は違うが、経済的にはほぼ同じく、
 「(実質的に証券会社に運用を信託する」手法である。
  当時、私は「なぜ、ファントラ、営業特金はこれほど顧客からの注文を取れるの
 だろう」と不思議に思った。さらに調べると、企業が財テクに走っているのは「抜
 け道」があるためだとわかった。

 企業が持金を設定し、本体で所有している有価証券を特金に移管すると、本体が所
 有している有価証券の帳簿価格を変えずに有価証券運用を行なえるというメリット
 があった。

  つまり、企業の保有する有価証券に莫大な含み益が発生しても、その含み益を顕
 在化させない形で有価証券を運用できるのである。 こんな制度なら、評判を取る
 のが当然である。これは「簿価分離」というが、税制の歪みであり、それが悪用さ
 れていたのだ。証券会社の営業担当は、「いくら売却益が出ても、本体のほうの含
 み益は別だから大丈夫です。含み益を出さなくてもいいんです」といって売り込み
 をかけていた。


  その一方、証券会社の営業担当は事実上の損失補填もしていた。「もし損が出て
 も大丈夫です」と口約束をしたり、名刺の裏に一筆書いたりしていたのだ。当時の
 法令上、売買一任は事実上禁止されていたが、若干法令の不備があり、営業特金は
 野放しの状態だった。また、当時の法令でも、事前の損失補填は禁止されていたが、
 事後の補填を禁止する明文上の規定がなかったので、その点でも法令の不備があっ
 た。
証券会社は、この営業特金とともに時価発行増資(エクイティ・ファイナンス)
 も顧客に勧めていた。増資を持ちかけておいて、その一方で、営業特金のファンド
 を使ってその会社の株を買い上げる。そうすると、株価が上がって、時価発行増資
 をするときに莫大な資本がダダ同然で手に入るのだ。

  企業は、時価発行増資で多額の資本を得て、財テクでも大きな利益を得る。財テ
 クのほうは事実上の損失補填までしてもらっているので、まったくノーリスクでド
 カンとお金が入ってくる。資金は銀行が融資してくれるので自己資金もいらない。
 利益だけが入ってくる仕組みで、企業は儲かって儲かって仕方がない状態だった。
 財テクをしたい企業からの注文が、次から次へと証券会社に入っていた。

  営業特金とファントラだけが異常に高い株式売買回転率を示していたのは、こう
 いうカラクリがあったためであった。株価を押し上げているのは、金がジャブジャ
 ブだからではなく、営業特金とファントラの異常な「回転率」の高さの問題だった
 のである。そして、それに釣られる形で一般投資家が株に手を出していた。

  しかし、どう考えてもこの財テクの仕組みは正常ではないし、事実上の法令違反
 でもあった。証券会社は、営業持金をクロスさせてわからないようにしていたが、
 実際にやっていることは、時価発行増資で多額の資金を得るために、自社株を買っ
 て株価をつり上げているようなものである。
法律の不備が原因と思われるので、私
 は、すぐにでも対処しなければならないと考えた。
 

          第4章 「バブル期」の真実がわかれば、現在の経済が見える  
                        高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』


                        「株バブル」と「不動産バブル」は二通の通達で終焉 

  私は証券検査で証券会社の営業の実態を把握していたので上司に報告したところ、
 上司から証券会社の営業姿勢を改める規制をつくるように命じられた。営業特金に
 一定の規制をかけ、事後的な損失補填を禁止することが目的だった。国税庁のほう
 も、税法の穴に気がついて動き出そうとしていた。 法改正でやりたかったが、法
 改正だと間に合わないので、通達という形をとった。通達は、形式的には行政内部
 の連絡文書(上級官庁の大蔵省から、下位官庁の地方財務局に対するもの)である
 が、証券会社への指導内容が書いてあるので、法令を補完するもの、場合によって
 は法令に準ずるものと見られていた。実際、そのときに私が起草した通達は、その
 後に証券取引法に取り込まれて規定された。当時は通達は法規的なものと理解され
 ていた。

   その通達は「証券会社の営業姿勢の適正化及び証券事故の未然防止について」として、
  役所の御用納めの日に当たる1989年12月26日に出された。これによって、証券会社が
 損失補填する財テクを事実上禁止
した。
   しかし、証券会社にとっては死活問題である。金儲けができなくなる。向こうも
  必死だった。

  証券会社を指導しなければいけないので、私は、現場の営業担当者たちがやって
 いる実態を把握して、それを証券会社の本社に突きつけた。証券会社の営業担当者
 は、損失補填を口約束したり、名刺の裏に補填すると書いて相手に渡していたので、
 「お宅の支店の営業担当者たちは、こういうものを名刺に書いて渡していますけど、
 把握していますか?」と聞いた。本社の人間はビックリしていた。真顔で驚いてい
 たから、本当に知らなかったのかもしれない。「今は株価が上がっているからいい
 ですけど、もし株価が落ちて、すべての会社から補填を求められたら、どうなりま
 すか?」と間いたら「そんなことになったら、うちは潰れます」という答えだった。

  名刺の裏に個人で書いたものだから会社の保証ではない。しかし、現実的には会
 社が言い逃れをするのは無理である。

  私は「損失補填というのは、そもそも公序良俗違反だから、我々がこの通達を出
 せば、『行政のほうが指導してきたから、従わざるをえないんです』といって、損
 失補填の約束を反故にできますよ」と伝えたら、青ざめた顔で「早く通達を出して
 ください」と懇願された。

  実際、証券会社にとってはかなり危険な状態だったと思う。株価が上がり続けて
 いるから問題が起こっていなかっただけで、いったん下がり始めたら証券会社にと
 って大変なことになっていたはずだ。

  こうして通達が出される運びとなった。

  そのころの大蔵省は局長が力を持っており、局長の権限で通達を出していた。は
 っきりいえば、局長が大臣のような感じだった。本当の大臣には報告するだけだ。

  当時の証券局長は角谷正彦氏だったが、局長室での会議で、「高橋、この通達を
 出すと株価はどうなる?」と聞かれた。「すぐに株価は下がります」と答えたのを
 覚えている。

  株価が下がることになるが、それでも角谷局長は決断して通達を出してくれた。
  通達を出しだのが1989年12月26日。年末の12月29日の大納会の日に
 日経平均は3万8957円の最高値をつけている。翌年1月4日の『日本経済新聞』
 には、株価予想として6万円という数字まで出ていた。しかし、実際の株価は一月
 から下がり始めた。


  株価はどんどん下がっていき角谷局長からは「お前、よく当たったな」といわれ
 た。私は、売買回転率に原因があると見ていたので、通達によって回転率が下がれ
 ば、株価も下がるだろうと予測していた。「これで、株高は終わった」と思った。

 銀行局も同じような問題意識を持っていたようだ。土地融資規制が弱かったので、
 融資を絞った。1990年3月27日に不動産融資総量規制の通達が出され、同年
 4月から実施された。不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える内容
 によって、不動産向けの融資が絞られ、不動産価格の下落が始まった。

  株価はすぐに反応するが、不動産価格の場合は少し時間がかかる。一年後くらい
 から不
動産価格は大幅に下がり始めた。この総量規制の通達が出たとき「これで土
 地の値段は下がるな」と思った。

  振り返っていえば、1989年12月の営業持金禁止通達で「株バブル」が終わ
 り、1990年3月の不動産融資総量規制通達で「不動産バブル」が終わった、と
 いうのが私の認識だ。
株と不動産の資産バブルが終わったので、バブルは終わりである。
 ところが、そこに日銀が乗り出してきた。

          第4章 「バブル期」の真実がわかれば、現在の経済が見える  
                        高橋洋一 著『アベノミクスの逆襲』

                                 この項つづく 

 

 

 

● 今夜のワンダフル工学

窓に貼り付どこでもデジタルフォンやデジタルパッドを簡単に充電できる優れもの。
もっとも、ソーラー素子の効率が向上しコンパクトにできれば室内照明だけでも充分
な充電が可能となる(『ナノポア工学』あるいは『量子ドットアレイ工学』)。
 

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米菓と狗鷲

2014年12月06日 | 政策論

 

 
例の山椒あられかおかきなのか定かでないが平和堂で買ってきたので食べてみて、こ
れなら思い出での「鬼山椒」と同じだねといことで戴いた。正確には「一口おかき鬼
山椒」といって大津市の中西永生堂の製造になるものだ。山椒が効いているので細か
く割りお茶漬けにして食した方が良いのかもしれと思った。ところで、「あられ」と
は。米菓でももっとも小さなものにあたるという。餅を小さく切り(欠き)、乾燥さ
せたものを表面がきつね色になるまで炙った米菓で、小粒なものをあられと呼ぶが、
本来はもち米をそのまま炒ったものをあられ、なまこ餅(ナマコに似た形状に成形さ
れた餅)を切って干し、焼いたもの(かき餅)をおかきと呼んでいた。しかし現在で
は同じ餅を原料とした焼き子を大きさで区別しているに過ぎないというから区別し難
いのは致し方ない。ところで、かき餅は豊臣秀吉の好物とされ、太閤となっても間食
として身辺から離さなかったとされるからこの時代から普及多様化したのではないだ
ろか。
 

 


"Wikipedia"によれば、米菓(べいか)とは、米から作った菓子で、煎餅をはじめおか
き、あられなど、日本人に古くから親しみのあるものが多く、主にもち米、うるち米
作られる。米菓は、新潟県を中心に全国で広く生産されており、主に焼いて作られ
ているが、揚げて作られるものもあるなど多様性があるとか。また原料とする米の種
類がもち米であるものを「あられ(おかき)」、うるち米であるものを「煎餅」といい、
大きく2つに分けられる。「あられ」は「おかき」の小さいもので、製造方法に大き
な違いはない。
なお、煎餅には小麦粉やそば粉など米以外を原料とするものもあり、例
えば瓦せんべい、南部煎餅、炭酸せんべいなど
がありあられ(霰)とはあられ餅(霰
餅)の略で、米餅を長さ2、3センチ、縦
横5ミリ程度の長さに切り、火で炙った菓
とある。炒った豆(表面をコーティ
ングする)を使用するものもあり、一般的には火
で炙るが、油で揚げた揚げ餅もあ
るという。この「鬼山椒」はたまり醤油で熟っくり
と焼き上げてつくられているとメーカの説明である。さてこのあられ騒動?これにて
件落着 ^^;。

   こちらは「鬼サラダ」

 

 



● デフレ脱却と安定成長への道

わたしが成長戦略『双頭の狗鷲』を構想したのは鳩山民主党政権誕生前後であった(
「リフレ派宣言」「日銀解体論」「未来国債」「日本列島高架線埋設化」「高速道路
無料化」などもをその前後で掲載)から、アベノミックスの"デフレ脱却路線"と同じ
立ち位置にあると思っている。それ間違いないか?その意味でこの著書の精読は大切
な作業となっている。

 

                失業率を大きく下げる役割を担うのは「厚生労働省」ではない

 日本で「失業率を大きく下げる役割を果たすのは、どの役所?」と聞くと、ほと
 んどの人は「厚生労働省」と答える。マスコミの記者の人たちも厚生労働省だと
 考えている。

  アメリカで記者たちに同じ質問をすると「FRB」と答える。それが正解だ。
  失業率を大きく左右できるのは中央銀行、日本でいえば日銀である。

  残念ながら、厚労省の政策で失業率が大きく下がることはない。ハローワーク
 がどんなに頑張っても、失業率の大幅改善にはほとんど関係ない。失業率の絶対
 水準を左右するのは金融政策だ。金融政策によって失業率は下がっていく。


  ただ、どんなに優れた金融政策をしても、一定のところから先は失業率は下が
 らなくなる。三%の前半あたりで止まる。そこから先は、雇用のミスマッチの問
 題などがある。その部分を担当するのが厚労省だ。ミスマッチを減らすという点
 では厚労省の施策は意味があるのだが、失業率の水準を大きく増減させるほどの
 インパクトは持っていない。また、ミスマッチは個人個人の問題なので、簡単に
 は解決せず、厚労省がどんなに頑張っても限界がある。

 
  失業率を改善させるのは、厚労省ではなく、日銀の仕事である。日銀の金融政
 策の目的は失業率改善である。

  もちろん物価の安定といってもいいのだが、物価と失業率は連動している。数
 値が連動しているときには、数学的には一つの数値だけをいえばいいことになる。
  世の中の人にとって最も大切なことは「物価」よりコ雇用」だと思う。だから
 私は、経済政策の中で指標をIつしか選べないとしたら「失業率」を選ぶ。

  その視点で見ていくと、アベノミクスの第一の矢(金融政策)の最大の効果は、
 失業率を改善し、就業者を増やしたことである。


  民主党政権の前は、失業率は4~5%程度で、仕事に就いている就業者数は6300
 万人くらいだった。鳩山由紀夫政権以降の民主党政権下で失業率は5%台が続き、
 就業者数は6280万人程度にまで減少した。第二次安倍政権が誕生して以降は好転
 し、失業率は4%台から3%台まで低下している。就業者数も6360万人程度へと
 上昇傾向である。2014年7月の就業者数は6,363万人で、前年同月比20ヵ月連続の
 増加となっている。失業率は3.5%である。

 
  失業率が下がれば、自殺率や犯罪率が低下することが知られている。生活保護
 率も下がる。問題となっているブラック企業も求人が困難になって、自ずと淘汰
 されていく。いずれにしても、失業率は最も重要な指標である。

  アベノミクスの効果として「株価」がよく注目されるが、アベノミクスの最大
 の成果は「失業者を減らした」ことである。この点を見過ごしてはいけない。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』


                      デフレを解消しないままの雇用政策は、むしろ逆効果の可能性もある

 デフレの時代が長く続き、不安定な非正規雇用が増えたことで、厚生労働省など
 が非正
規社員を正社員にさせる法規制を強化し続けてきた。非正規社員で一定年
 数働いたら、継続雇用をするには、正社員として雇わなければならないという規
 制だ。
こういう労働政策は単に現象に対応しているだけで、結果として大きな効力がな
 い。デフレを解消しないで法規制することは、むしろ歪みやひずみを生み、ブラ
 ック企業を増やす可能性がある。

 
 雇用政策に血道を上げたがる人々は、「デフレは脱却できない」という思い込み
 があるから、表面的な規制を強化しようとするのだろう。

 だが、デフレ下では、できるだけ労働コストを安くすることが企業にとって合理
 的な行動になってしまう。無理に正規雇用にさせると、どこかでコストを削ろう
 とするから、社会保険料を払わなかったり、精神的に追いつめて辞めさせようと
 したりする会社が出てくる。つまり、ブラック企業が増えてしまうのだ。それで

 は何のために正社員にさせたのかわからなくなる。おそらく他にも水面下でいろ
 いろな
違法行為が横行するだろう。
 
 デフレ下では、企業にとって従業員を正社員にするインセンティブが何もない。
 政府が規制しても企業は政府の意図どおりには動かない。隠れてブラック化する
 恐れがある。
デフレを止めれば、正社員にしないと人が集まらず企業は競争に敗
 れる。デフレが解消された環境下では、デフレ下と状況が反転して、正規雇用を
 進めることが企業にとっての最適行動となる。規制をしなくても、正社員を増や
 さざるをえなくなる。
デフレ下で無理に対症療法をすると歪みを生む。非正規雇
 用を多く生み出す理由の根幹であるデフレをなくすことが、労働政策として最も
 効果が高いのである。
アベノミクスのデフレ脱却は、ここに手を打ったといって
 よい。デフレ脱却がブラック企業潰しにも大きな役割を果たす。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』


              デフレさえ止めればブラック企業の頭の悪い経営者は淘汰される

 ブラック企業とは、賃金を叩いて、長時間働かせて、人を使い捨てのようにして
 利益を上げている企業だ。正社員を減らし、非正規にして賃金を抑える。不要に
 なったら辞めさせる企業もある。
しかし、アベノミクスによってデフレ脱却へ向
 かい、状況は一変した。ブラック企業として話題になっていた企業が、人手不足
 で閉店に追い込まれているというニュースも出ている。これは当然の成り行きだ
 と思う。

 私はデフレ脱却によってブラック企業が淘汰されると予測し、アベノミクスが始
 まったころにいくつかの記事に書いた。実際、そのとおりになりつつある。ブラ
 ック企業というのは、ある意味で、デフレ下において合理的な経営モデルだった。
 デフレ下では賃金を下げれば下げるほど利益が出る。正社員より非正規にしたほ
 うが利益が出る。ところが、物価が上昇し、インフレになると状況は一変する。
 アルバイトが集まらなくなり、賃金を上げざるをえなくなる。非正規を中心にし
 ていると、先はどのニュースの例のように、人手不足で閉店に追い込まれる可能
 性が高くなり、安定した経営はできなくなる。正規社員にしたほうが安定的に利
 益を出せる。非正規で賃金を叩いて使い捨てにする企業は、自ずから淘汰されて
 いく。

 ローソンを率いていた新浪剛史氏は、アベノミクスでデフレ脱却が起こると予測
 して、いち早く「雇用を増やします」「正規社員にします」と宣言した。実際、
 アルバイトを正規社員にし、賃金も上げている。このあたりが賢い経営者と頭の
  悪
い経営者の違いだ。
 
 賢い経営者は、デフレという条件と、インフレという条件では、経営行動を変え
 なければいけないとわかっている。「賃下げ、非正規化」はデフレ下では最適行
 動だが、インフレ下では逆になり「賃上げ、正規化」が正しい経営行動となる。
 新浪氏のような経営者はそれがわかっているから、すぐに正規化、賃上げを表明
 したのである。

 
 ブラック企業の頭の悪い経営者たちは、デフレという条件下で、単に、賃金を下
 げ、非正規にして使い捨てていただけなのに、それを自分の経営手腕や能力、努
 力の賜物だと思い込む。要するに、経済のメカニズムや自社の収益のメカニズム
 を理解していないのだ。だから、前提条件が変わっても行動を変えられない。デ
 フレに慣れきってしまって、いまだに労働者の使い捨てが、さも正しいことであ
 るかのように思い込んでいる。真の経営能力はないから、「二十四時間働け」と
 いった精神論でしか経営ができない。
そういうブラック企業が、デフレ脱却によ
 って淘汰されるのは良いことだと思う。経済のメカニズムを理解している人は、
 インフレ下で安定的に利益を上げるための最適行動は、「賃上げ、正規社員化」
 だと知っている。

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

                 「経済は予想インフレ率で動いている」と、どうしていえるのか 

 金融緩和の効果を信じられない人は、なぜ金融緩和で企業が行動パターンを変え
 るかが理解できない場合が多いようだ。
私が強調するのは、「経済は予想インフ
 レ率で動いている」ということだ。予想インフレ率は実質金利に影響を与える。
 式を書くと次のようになる。

                   実質金利=名目金利I予想インフレ率 

 企業の経営者は予想によって動いている。「今後、景気は良くなるだろうか」「
 物価は上がるだろうか」といったことを考えて、設備投資をするかどうか、借入
 れをするかなどを判断している。過去の実績も考慮に入れるが、今後のことを予
 想しなければ経営判断はできない。
企業経営者の先行き予想を調査しているのが
 三ヵ月ごとに発表される「日銀短観」である。


 各業種の企業が三ヵ月後の業況を予想し、それが数値としてまとめられている。
 この日銀短観の調査に2014年3月分から、「企業の物価見通し」というのが加わ
 った。一年後、三年後、五年後の物価上昇率を予想したものだ。


 2014年6月の調査では、物価上昇率は、一年後「1.5%」、三年後「1.8%」、五
 年後「1.7%」と予想されている。始まったばかりの調査で企業側も慣れていな
 いかもしれないが、この先、予想の変化を見ていけば、重要な参考数値となる。


 この物価上昇率の予想(予想インフレ率)が、経済の中では非常に大きなポイン
 トなのである。
企業の投資判断に影響を及ぼすのは、実質金利だ。先に挙げた式
 の中で、「現在のインフレ率」ではなく、「予想インフレ率」を引いているとこ
 ろがポイントである。この式を最初に日本で提示したのは私だった。それまでは 
 実質金利を出すときに、名目金利から「実現したインフレ率」を引いていた。し
 かし、実現したインフレ率は投資行動にはほとんど影響しない。行動を左右する
 のは将来の予想だ。

 
 たとえば、お金を借り入れるにしても、返済するのは今ではなく将来である。金

 融機関から利息(名目金利)を提示されたときに、将来高いインフレ率になると
 予想していれば、実質的な金利は安くなるから借りようと考える。将来デフレに
 なると思えば、実質的な金利は高くなるから、借りるのをやめようと思う。

 もう少し感覚的なことをいうと、インフレ率を高く予想する人は、「将来、会社
 の収入
は増えるだろう」と感じている人で、デフレを予想する人は「会社の収入
 は減るだろう」と感じている人だ。
その感覚はだいたい当たる。インフレになれ
 ば、回りまわって会社の収入はいずれ増える。収入が増えそうだと思う人はお金
 を借りるし、投資をしようとする。予想インフレ率に基づいた実質金利によって
 投資行動は決まってくる。


 経済学では、消費行動や投資行動は予想で決まるというのが初歩的な理論だ。し
 かし、私が「予想インフレ率」の概念の重要性を主張したとき、経済の専門家に
 も理解してもらえなかった。
政策担当者の中には「予想なんて、あいまいで、フ
 ワフワしたものじゃないか」と考える人が多かったし、「そんな予想なんていう
 雲をつかむようなものに、日本の金融政策は左右されません」という人もいた。

 私は、予想インフレ率を可視化できないかと考えた。 

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

 
            「予想インフレ率」を物価連動国債で可視化すると、物事がうまく回る

 アメリカでは1990年代に「物価連動国債」というものが発行された。実は、これ
 を使うと予想インフレ率を計算できて、グラフなどにして可視化できる。物価連
 動国債とは、物価に連動して価格が調整される国債のことである。このようなも
 のが発行されれば、マーケットの人はプロだから、真剣に物価を予想しながら植
 付けをする。金がかかっているから、アンケート調査のように「いい加減」に予
 想する人はいない。マーケットのプロたちが考える予想インフレ率の平均が、こ
 の物価連動国債によってわかる。

 たとえば、十年物の物価連動国債を発行すると、その物価連動国債の利回りが出
 る。これと普通の十年物国債の利回りの差を出す。それを十年間で平均したもの
 が「予想インフレ率」だ。
アメリカはこの数値を金融政策の判断の参考にできる
 と考えて、一年債、三年債、五年債などいろいろな物価連動国債を発行している。
 それぞれの期間の「予想インフレ率」を出せる。

 
 1999年に私はアメリカに留学して、物価連動国債のことを知った。「これは金融
 政策に役立つ」と思い、帰国して2001年に経済財政政策担当大臣の竹中氏に物価
 連動国債の発行を提案した。私のオリジナルではなく、アメリカ、イギリスなど
 海外では普通に行なわれていることだ。
竹中氏はその提案に乗ってくれたが、財
 務省が反対して発行を渋っていた。「高橋がいっていることだから嫌だ」という
 感情的な反発もあったらしいことは、私の不徳の致すところである。

 中には、「インフレになると償還が大変になる」という人もいた。だが、インフ
 レになれば経済成長が起こっていて税収も増えているから大きな影響はない。ア
 メリカでは、物価連動国債は国債発行額の四分の一の規模にまで達しているほど
 だ。
それから二年かかり2003年に、日本で初めての十年物の物価連動国債が発行
 された。発行規模は小さいが、大きな進歩だった。
マーケットは本当に正直に反
 応するもので、2008年に、デフレ脱却に消極的だった白川方明氏が日銀総裁に就
 任すると、予想インフレ率はとたんに下がり始めて、マイナスにまでなってしま
 った。つまりデフレを予想したわけである。

 それに不快感を持っていたのか、同年9月のりIマン・ショックを機に、日本で
 は物価連動国債の発行が停止されてしまった。ちなみに、リーマンショク後に物
 価連動国債の発行を停止した国は他にはない。安倍首相はさすがによくわかって
 いる人で、二度目の首相に就任すると、財務省は2013年に物価連動国債を再開さ
 せている。安倍政権の政策を受けてマーケットの予想インフレ率はどんどん上が
 っていった。


 予想インフレ率は、マーケットが将来の物価をどう考えるか、経済政策をどう見
 ているかを知る重要な判断材料となる。マーケットから算出した予想インフレ率
 と
マネタリーベースの関係を調べていくと、マネタリーベースを増やすと予想イ
 ンフレ率が上がるということがわかった。これを最初に発見したのは私である。
 つまり、マネタリーベースを増やすと、マーケットはインフレを予想するように
 なるということだ。その結果、実質金利が下がって投資が増え、やがて経済が上
 向く。現在の日銀の岩田規久男副総裁は、この理論に沿って金融政策を運営して
 いる。


 物価連動国債で予想インフレ率が可視化されたため、日銀は予想インフレ率を見
 ながら金融政策の判断をしている。他の国も同様で、中央銀行は予想インフレ率
 の指標を見ながら金融政策を決めている。
物価連動国債は、実は年金問題にも有
 効に働く。インフレになったときに償還される元本がインフレ率に応じて増える
 からだ。普通の国債だと元本が増えない。年金基金にとっては
物価連動国債は
 運用がしやすい。最近の報道では、財務省は年金基金による購入を見込んで物価
  連動
国債の発行額を増やす方針とされている

                        第3章 アベノミクスへの通信簿  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

 




菊池英博の『そして、日本の富は略奪される―アメリカが仕掛けた新自由主義の正体
』の多くは、このブログの
「新自由主義論Ⅰ-新たな飛躍に向けて-新自由主義から
デジタル・ケイジアンへの道」(『デジタルケインズと共生・贈与』)で考察した
ヴィッド・ハーヴェイ
『新自由主義――その歴史的展開と現在』(作品社、2007年)
の分析と重複するとことが多々あり、序章と第1章および第2章も注目し節のみピッ
クアップした。(詳細は → こちら を参照)。

                         ワシントン・コンセンサス

 1991年12月25日、69年間継続したソビエト連邦が崩壊した。このときまで、第二
 次世界大戦後の世界は、民主主義・資本主義と共産主義・社会主義の対立となり
 とくに共産主義はソ連を盟主とした独裁政治の下で社会主義を進め、東ヨーロッ
 パ諸国が共産化された。こうしたなかで、私有財産を中核とする資本主義と財産
 の国有化を中核とする社会主義の中間的な混合経済が、戦前からドイツとフラン
 スを中心に西ヨーロッパで広がっていた。しかし、これらの国は民主主義であり
 「民主主義と資本主義を守る旗手としてのアメリカ」とともに行動し、世界は民
 主主義の国々と共産主義(独裁主義)の国々に分かれ、「東西対立」と言われて
 きたのである。

 ソ連邦の崩壊は、共産主義の敗北であり、とくに戦後の冷戦の勝者は民主主義・
 資本主義であった。ソ連邦崩壊によって、それまでソ連邦との対立構造のなか、
 民主主義のリーダーとして存在意義を持っていたアメリカは、存在意義が薄れて
 きたために、新たなレゾンデートル(自らが世界のりIダーであることを鼓吹す
 る理念)をつくりあげようとした。これが現在、一般に言われている「ワシント
 ン・コンセンサス」であり、その基本理念が新自由主義・市場原理主義(グロー
 バリズム)である。

 ワシントン・コンセンサスという言葉は、ソ連邦崩壊以前の1989年に、アメ
 リカの国際経済研究所(IIE)のジョン・ウィリアムソンによって最初に使わ
 れている。中南米諸国を支配下に置きたいアメリカは、ワシントンに本拠を置く
 IMF(国際通貨基金)と世界銀行と共同で、これらの国々の経済指針をまとめ
 これをワシントン・コンセンサス(見解の一致)という名目で発表した。アメリ
 カはIMFと世界銀行への最大の出資国であり、その議案には拒否権を持ってい
 るので、これらの国際機関を巻き込んで、中南米を席巻しようとしたのだ。

 ウィリアムソンがまとめた政策は、財政赤字の是正、補助金削減などの緊縮財政
 税制改革(累進課税の緩和)、金融改革、競争力ある為替レート、貿易の自由化、
 資本取引の自由化(外資導入の促進)、国営企業の民営化、規制緩和、所有権の
 確立(外資の保護)からなっていた。まさに新自由主義・市場原理主義の基本政
 策そのものであり、IMF・世銀などの国際機関は、融資を求めにきた国に対し
 てこうした条件を強制したのである。

 
  1991年12月のソ連邦の崩壊によって、旧ソ運部内の共和国は独立し、それぞれ自
 立した経済を樹立する必要に連られた。そこでアメリカは、ロシアをはじめとす
 る旧共産主義国にシカゴ・ボーイズを中心とする経済顧問団を派遣し、ワシント
 ン・コンセンサスを政策パッケージとして採用させたのである。その内容は、国
 有企業の民営化、規制緩和、物資の価格の自由化、通商の自由化、金融自由化、
 財政規律の回復と緊縮財政が中心であり、資本主義経済に不慣れな旧社会主義国
 を短期間で資本主義化しようとした。この基本理念が新自由主義・市場原理主義
 であったため、旧社会主義国家は「体制転換による大不況」と言われる混乱状態
 に陥ってしまったのである。


 社会秩序は乱れ、どの国でもマフイアと呼ばれるような不当利得者(レントシー
 カ上を生み出した。生産性の低下で経済はマイナス成長に落ち込み、インフレが
 同時進行するなど、惨價たる経済情勢になってしまった。ロシアは1998年に国債
 の返済不能状態(デフォルト)を起こし、世界を巻き込む金融危機を引き起こし
 たのだ。

 しかし、混乱の原因は、アメリカのシカゴ・ボーイズが各国内に賛同者をつくり
 彼らを巻き込んで富を少数の投資家に集中するよう仕向けてきた政策にある。こ
 うした動乱のなかで、巨額の富を得だのが外資と国内の一部のレントシーカー(
 不当利益の追求者)であり、貧富の格差の拡大と社会的混乱は想像を絶するもの
 であった。 「富を国民全体で分かち合う」という理念をペースとしてきた旧共
 産主義国家で、短期間に「富が1%に集中する」格差社会になってしまったのだ。
 こうした混乱を背景として、2000年にロシア連邦の2代目大統領としてウラジミ
 ール・プーチン(旧KGB、国家保安委員会出身)が就任し、権威主義的政治で
 社会経済がようやく安定してきた。


 旧共産主義国家の新しい指導者は、新自由主義・市場原理主義の手法を利用して
 自らの利益になる政策を採用させることにより、富を収奪することに成功した。
 しかし、こうした事実が表面化するにつれて、ワシントン・コンセンサスには
 「民営化、自由化、規制緩和を三本柱とする新自由主義者・市場原理主義者のイ
 デオロギーであり、経済を安定的に成長させることはできない」という批判が強
 まった。とくにワシントン・コンセンサスを強く批判したのは、ジョージ・ソロ
 ス(ロンドンに拠点を置く証券投資家)とジョセフ・スティグリッツである。

 さらに、このあと述べるように、IMFは、ワシントン・コンセンサスを東アジ
 アの通貨危機の解決方法に適用することで、対象国の経済社会体制を破壊し、少
 数の投資家と利権者がその国の富を収奪するという手法をとったのである。
2009
 年のG20サミットでは、イギリスのゴードン・ブラウン首相(労働党)が「ワシ
 ントン・コンセンサスは終わった」と言明し、注目された。ブラウン首相自身、
 法人税を下げて財政赤字を拡大させるなど、労働党でありながら新自由主義的政

 策をとって失敗した政治家である。彼の口から出たこの言葉は、新自由主義・市
 場原理主義を理念とする政策がいかに虚しい結果しかもたらさないかを、自戒を
 込めて表現したものと言えよう。しかし、他国の富を収奪して「1%の利得者」
 に集中させようとするワシントン・コンセンサスの勢いは、決して終わっていな
 い。


                  第2章 「自由」とは「海外侵略」のことだった
                   菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』


                       アメリカに要請された規制緩和が引き起こした通貨危機

  アメリカは、東アジア諸国に経済と金融の両面で規制緩和と自由化を求め、これ
 らの諸国は、国内体制が不十分であるにもかかわらず、外資に門戸を開放せざる
  をえなかった。アメリカは、金融を自由化させて金融先物相場を導入させ、外資
  制の廃止、短期資本
の流出入の自由化を要求し、一国の経済情勢が外資によって
  左右されやすい体制をつ
くらせたのだ。
 
 金融自由化の結果、各国内では自国通貨よりも金利の低い外貨(大部分がドル)
  の借り
入れが進んだ。その借り入れによって不動産投資や地域開発への投資が増
  加し、国内
ではバブル現象が起きていた。国内経済は活況を呈し、輸入が増加し
 たために国際収
支(一国のモノとサービス、投資の受払ぃの収支)は赤字になり
 その穴埋めに短期資本
を受け入れていた。

 多くの企業は、金利が安い外貨借り入れを増やした。しかし、自国通貨が事実上
 のドル
ペッグ相場(わずかな変動幅でドルに固定する通貨制度)であったので、
 為替リスクが小
さいと考え、為替リスクを回避する手段(返済に備えて外貨を先
 物市場で買っておく)をと
らなかったのだ。さらに、各国政府は、先物市場やデ
 リバティブ量融派生商品)の分野の
取引を自由化した場合、その影響が自国にど
 う影響するかをト分に検証しなかったため、
金融市場に大きな変動が起きると、
 防御する方法もわからず、一挙に大損失を披ったの
である。この損失分は、新自
 由主義者・市場原理主義者の利得であり、アジア通貨危機
はまさに新自由主義者
 ・市場原理主義者に仕組まれた壮大な富の収奪であった。相手
国が金融規制緩和
 の影響を理解していないうちに、一挙に富を奪うのが新自由主義・市
場原理主義
 者の手法であり、当時のアメリカのクリントン大統領が先頭に立って東アジア

 国の富の収奪作戦を主導したのだ。

 

 1997年7月を基準としてその後の切り下げ率を見ると、タイのパーツ、韓国の
 ォン、マレーシアのリンギットはピークで65%まで落ち込み、50~60%の水
準で
 ようやく安定した。インドネシアのルビアは20~30%の水準まで切り下げら
れて
 いる。短期間にいかに激しい売り込み(ドルの切りヒげ)があったかがわか
るで
 あろう(図2-1「東アジア通貨為替相場(対米ドル相場指数)」参照)。歴史
上、
 これほど激しい投機的な売りは初めての出来事であり、売り手はアメリカを
はじ
 めとする外資系のヘッジファンド(投資信託、国際投機集団)であった。彼
らは、
 各国の通貨の切り下げ分だけ投機的利益を確保し、各国はその分だけ富を奪
われ
 たのである。歴史上、戦争以外の平和な時代で、これほど激しい損失を受けた独
 立
国はなかったであろう。

                 第2章 「自由」とは「海外侵略」のことだった
                   菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』


                               この項つづく

 

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反デフレパーシャルの加速度

2014年12月05日 | 政策論

 

 

 

● 加速度を超広域・高分解能で検知可能なセンサを開発

東京工業大学とNTTアドバンステクノロジの研究グループは、0・1ミリG(
重力加速度)から20Gまでの広い範囲を高分解能で計測できる加速度センサー
を開発。5つの加速度センサーを1枚の基板にまとめ、それぞれ千分の1の分解

能を実現したことを公表。超広域・高分解な小型加速度センサの実現で、医療用
人体行動検知センサ――正確な人体行動解析に基づく医療診断やロボット開発な
へ向けた新デバイス・システム開発につながる。

力が加わると電極間の距離が変わり、その静電容量の変化を計測する。片方の電
極がバネで宙に浮いた構造をMEMS加工技術で製作した。電極の重さやバネの
強さを変えることで検出できる加速度を調整する。
0・1Gと1G、3G、10
G、20Gの加速度センサーを作り、4ミリメートル角の基板にまとめた。電極
を比重の重い金で作り、小さくても応答しやすくした。シリコン製電極に比べて
大きさを10分の1に小型化。各センサーは千分の1の分解能をもつ。
0・1ミ
リGと微少な変化を計測できるセンサーの場合、呼吸のようなわずかな動きも捉
えられる。一方、車のエアバッグが作動する目安が約25Gであり、日常におけ
るほぼすべての加速度を検出できるという。
 

今回の研究成果は、静電容量型MEMS 加速度センサの、加速度検出範囲が可動錘の
寸法と質量に強く依存するため、単一錘による加速度検出範囲の広域化は困難だ
った。また、従来の高分解能シリコンMEMS 加速度センサでは大きな錘が必要なた
め、異なる検出範囲を有する複数のセンサを1 チップに集積できなかったが、
電容量型加速度センサの分解能が可動錘の質量に比例す
ることに着目し、錘材料
をシリコン(室温時:約2.3 g/cm3)から金(室温時:約19 g/cm3
に置き換える
ことで、センサ寸法を約10分の1に小型化できたことが大きな成果である。


MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて作製された各種セ
ンサやスイッチなどのを短時間で効率よく開発するため、ユーザのコンピュータ
上で動作する専用アプリケーションを用いてMEMS素子の機械特性や電気特性
をシミュレーションし、意図した挙動が示されることを確認し、シミュレーショ
ン結果をもとに、ユーザのコンピュータ上で動作するコンピュータ支援設計のア
プリケーションソフトを用い、MEMS素子製造用のフォトマスクを作製にパタ
ン配置しレイアウトパタンを作成し、このレイアウトパタンを用いてフォトマス
クを作製しているが、フォトマスクは、MEMS素子を作製するときのパターニ
ングにおけるリソグラフィーで用いられる。例えば、下図7は、MEMS素子設
計方法の説明図で、この設計方法では、MEMS素子の機械的特性と電気的特性
を解析する解析アプリケーション701と、フォトマスクパタンをレイアウトす
るためのCADアプリケーション702と、解析アプリケーション701のシミ
ュレーション結果をもとにシステム設計を行うシステム設計アプリケーション7
03である。

図8、9は、MEMS素子の設計方法の説明図で、図8は、MEMS素子の構成
を示し、図9は、当該MEMS素子の等価回路を示す。等価回路では、MEMS
素子の可動部801の質量M0を、電子回路のインダクタ901のインダクタンス
値、MEMS素子の可動部801を支えているばね部802のばね定数K0は、電
子回路の容量902の容量値C0の逆数、MEMS素子が受ける機械的な減衰係数
0は、電子回路の抵抗903の抵抗値R0に置き換えているが、MEMS素子の
うち静電アクチュエータに特有の現象であるプルイン,リリースダンピングなど
を解析が困難である。
 

そこで、電子回路データ生成部101および等価回路データ生成部102は、ユ
ーザが入
力したデータに従い作製された電子回路設計データおよび等価回路設計
データを
同じ形式のデータである例えば「ネットリスト」で生成する。すなわち、
子回路データ生成部101および等価回路データ生成部102は、回路解析部
103で用いることができる同一のデータ形式で、電子回路設計データと等価回
路設計データを生成(下図1参照)。生成された同じ形式とされた回路設
データ
を、回路解析部103が解析することで、従来に比較して手間をかけることなく、

より簡単に、迅速にMEMS素子を含む半導体装置の設計が行えるもので、研究
開発を円滑に迅速に行えるこのような、設計支援装置(アプリ)の開発が開発に
は重要な要件となっている。


 

 

● 反デフレパーシャル共闘論

先回は、「偽装財政危機」という視点から読み込んでみたが、今回は『アベノミ
クスの逆襲』の「第3章 アベノミクスへの通信簿」から入り高橋流「身体検査」
法」を学び、結論から先に言うと、「反デフレ政策」では部分的に「反デフレパ
ーシャル共闘」できそうだ。

                       アベノミクスのメニューに「増税」は入っていない


 消費税増税が決まったのは2011年である。2012年8月に消費税法の改正法が
 成立している。このときの政権は民主党の野田佳彦政権である。その少し前
 の6月に民主党、自民党、公明党の間で消費税を増税する三党合意ができた
 が当時の自民党総裁は谷垣禎一氏で、幹事長は石原伸晃氏だった。
  安倍晋三氏は消費税増税には直接的に関わっていない。もちろん、自民党
 が賛成した法律であり、安倍氏も当時は衆議院議員として議決に加わってい
 るから責任逃れをするつもりはないだろう。しかし、当時の安倍氏は不遇の
 時代でもあり、増税法にはあまり関わっていないのは事実である。

  このときに成立した法律の中に増税の施行日も記載されている。「平成二
 十六年四月一日」と「平成二十七年十月一日」の期日が書き込まれているか
 ら、凍結法を通さないかぎり、回避することはできない。何もしなければ、
 法律どおりに施行される。これは安倍氏が首相に就任して以来推進してきた
 アベノミクスとは、関係のないものだ。(中略)安倍音三氏は、2012年9月
 の自民党総裁選に出馬し当選した。この自民党総裁選のときにデフレ対策と
 しての金融政策を主張したのは安倍氏だけだった。(中略)だが経済政策で
 は、安倍氏は金融緩和と財政出動を強く主張していたのに対して、石破氏は
 どちらかといえば金融緊縮と財政緊縮寄りの政策であった。総裁候補の中で、
 思い切った金融緩和と財政出動を主張していたのは安倍氏だけだった。ここ
 からアベノミクスはスタートしているのである。 


                    第3章 アベノミクスへの通信簿  
                   高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』



          増税前はアベノミクスの成功で経済が大幅に好転した

 2014年4月以降の景気悪化を受けて、評論家の中にはアベノミクスが失敗し
 て景気が悪くなったかのようにいう人がいるが、物忘れも甚だしい。まった
 くの間違いだ。アベノミクスによって経済が良くなり、消費税増税で経済が
 悪くなったのである。
  アベノミクスを図で説明しよう。図7は、総需要と総供給の曲線のグラフ
 だ。横軸はGDP、縦軸は価格である。この曲線に影響を及ぼすものとして
 三つの要素がある。①金融政策、②財政政策、③外的ショックである。金融
 政策は、金融緩和あるいは引き締めであり、財政政策は公共投資で財政を緩
 和したり、増税で財政を引き締めたりすることだ。外的ショックというのは、
 リーマン・ショックや大震災などを指す。

 2013年は、金融緩和によって「金融」はプラス要因、財政出動によって「財
 政」はプラス要因として働いた。「外的ショック」は特になかった。これに
 よって、総需要の曲線は右上に押し上げられた。総供給と交差する点が、そ
 の年のGDPと物価を表す。つまり、2012年はGDPが伸び、物価が上がっ
 た。
 2014年はどうかというと、金融緩和を続けているので「金融」はプラス要因
 として働く。ところが、消費税を増税したために「財政」はマイナス要因と
 なった。「外的ショック」は2014年も特になかった。

 総需要の曲線は2012年には右上に上がっていたのが少し左下に戻りつつある。
 総供給との接点が左下に下がる。つまり、物価は下落し、GDPは減少する
 ということだ。2014年は期が終わっていないが、何か手を打たないと、総需
 要曲線がどんどん左下に降りてきて、物価もGDPも大きく下がる可能性が
 ある。2013年と2014年の政策を比較してもらえばわかるが、違いは財政政策
 だけである。すなわち、消費税増税だ。

 
                異次元緩和では資金は供給されない」という議論の誤謬 

 一橋大学大学院経済学研究科教授の斉藤誠氏が、以前に「名目ゼロ金利にな
 ると金融政策が効かなくなる」と金融緩和を批判していた。この根拠となっ
 ているブラックホール論というのは数式のモデルだから、私にとって理解は
 容易である。
 斉藤氏のブラックホール論を間いて、文系の人たちは「そうだ。ゼロ金利な
 んだから、これ以上金利を下げられない。金融緩和しても効かない」という
 ことで斉藤氏の意見を鵜呑みにしたようだ。

 私は、斉藤氏が記事を載せていた経済雑誌の編集者に知り合いがいたので、
 「斉藤氏の計算が間違っている」と伝えたところ興味を持ってくれて、私が
 計算し直した記事を載せてくれた。私はまったく同じモデルを使い、数式で
 解いて「計算が間違っている」と指摘したにすぎない。斉藤氏が書いていた
 ように、ブラックホールになるときもあるが、数式を計算してみると、金融
 政策をきちんとした場合にはブラックホールにならないという答えが出る。
 数式上、そうなっているのだ。私の論考に対し、斉藤氏は何も反論していな
 い。また『週刊東洋経済』2014年8月2日号で、斉藤誠氏は「異次元緩和で資
 金は供給されない」というタイトルのコラムを書いた。

 斎藤氏はこのコラムで「民間銀行は13年度に日銀当座預金に69.2兆円を預け
 たが、その資金源は民間銀行が日銀に国債を売却した43.7兆円と、家計や企
 業から集めた預金のハ割に相当する25.5兆円」と指摘し、「異次元緩和は経
 済を好循環させるために資金を供給するどころか、日銀が国債市場と民間銀
 行の預金を囲い込んで民間から資金を吸い上げてしまっているのである」と
 した。これに対して私が『夕刊フジ』 (2014年8月7日付)で反論した。

 金融緩和を批判する人は、突きつめてみれば「信用乗数が下がるから金融緩
 和はけしからん」という趣旨の話をすることが多い。信用乗数とは、金融緩
 和をしたときにどのくらい効率的に市場でお金が使われるかという乗数だ。
 数式としては、

  信用乗数=マネーストック+マネタリーベース

 である。マネタリーベースというのは現金だと思ってもらえばいい。それに
 対して、マネーストックというのは預金に当たる。預金はその裏側には貸出
 しがある。銀行のバランスシートを見れば、右側に預金があって左側に貸出
 しがある。わかりやすくいえば、日銀が現金を増やしたときに、銀行の貸出
 しが増えるかどうかである。
 
 金融緩和というのはマネタリーベースを増やすことだ。金融緩和で現金を増
 やしたときに、その分だけ貸出しが増えれば、信用乗数は一定となる。現金
 を増やしても、貸出しが増えなければ、信用乗数は下がる。
  斉藤氏は、前段で、金融緩和をすると信用乗数が下がると述べているのだ
 が、それは当たり前のことである。マネタリーベースを増やしても貸出しは
 すぐには増えない。しかし、金融緩和をすると実質金利が下がるので、景気
 は良くなる。景気が良くなってGDP成長率が増えて失業率が下がる。信用
 乗数は下がるけれども、景気が良くなって失業率が下がるのだから何の問題
 もない。信用乗数のために金融政策をしているわけではないのだ。

 金融緩和で現金を増やしても、銀行の貸出しはすぐには増えず、信用乗数が
 下がることは、理論的に考えてもらえば、すぐにわかるはずだ。景気が良く
 なってきた際に、企業は最初は在庫で対応する。倉庫に在庫がまだたくさん
 残っているのに、「よし、設備を増やして増産しよう」と考える経営者はい
 ない。まずは在庫を売って対応しようと考える。在庫で対応しきれなくなっ
 たときには、設備をフル稼働させて増産する。それでも追いつかないときに
 は設備投資を考える。しかも、設備を増やすにしても、いきなり借入れをす
 るわけではなく、まずは手持ちのお金(内部留保)で設備投資をすることを
 考える。優良企業は内部留保をたくさん持っているので、外部資金を借りな
 いで内部留保でずっと回していく。それで足りなくなったら最後に外部資金
 を借り入れる。

 つまり、外部資金を借り入れるまでには時間が、これまでの過去データでは、
 二、三年もかかるということである。「在庫→生産増→内部留保で設備投資
 →外部資金で設備投資」の順番なので、景気が良くなっても銀行の貸出しは
 すぐには増えない。マネタリーベースを増やしても、マネーストックが増え
 るのは遅れるので、信用乗数は下がる。これは当たり前のことなのである。

 金融緩和の批判者は、だいたい2タイプに分けられる。1つめのタイプは、
 「信用乗数が一定だ」と思い込んで批判をする人。もう1つのタイプは、「
 信用乗数が下がるから金融緩和は効果がない」という人だ。私の書いた『夕
 刊フジ』の記事に対するものではないが、斉藤氏は2014年8月8日付、8月10
 日付でホームページ上にコメントを発表しており、8月10日付のほうで(略)
 式の背景について注意深く言及しないままに、標準的な教科書の説明に安易
 に乗りかかった面があったことは確かです。深く反省しています」というコ
 メントを発表されたので、それ以上の議論とはならなかった。


                    第3章 アベノミクスへの通信簿  
                   高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』

 
 ※ 
黒木玄のウェブサイト「ブラックホールとハイパーインフレ



       金融政策の最終目標は「失業率改善」だと言い切ってもいい

 私は金融緩和について「信用乗数が下がる」と批判する人には、「でも、失
 業者が減るから、それでいいでしょ」と答えている。それ以上に答えようが
 ない。信用乗数が下がるのは事実だが、そもそも信用乗数など、マイナスに
 なったら政策の方向性を間違うので大変になるが、プラスであれば小さくな
 っても、どうでもいい数字だ。 

 金融政策の目標を明確に認識していないから、どうでもいいことに目を奪わ
 れてしまう。金融政策の最終目標は、「失業率」だ。失業者が減ることが金
 融政策の目標であると言い切ってもいい。「金融政策の目標はGDPと失業
 率の改善」といってもいいのだが、GDPと失業率は連動しており、GDP
 が増えれば、失業率は下がる。どちらを追い求めても答えは同じになるので、
 一つに絞って、失業率の低下が金融政策の最終目標ということにする。
 失業率が下がっていれば、GDPは増えている。

 世の中の人は、何でも難しく考えすぎる傾向がある。私は、もともと理学部
 数学科出身だから、いつも数式を頭に入れていて、できるだけ数学的にシン
 プルに考えるようにしている。そうすると物事がスッキリと見えてくる。G
 DPと失業率という二つの数字があって、両方が連動しているのだから、両
 方を追い求めなくても、どちらか一つでいいと考えるわけである。だから、
 「金融政策の目標は失業率」とシンプルに言い切っている。
 もちろん、金融政策から失業率の改善に辿り着くまでの間にいろいろなプロ
 セスがある。それらが全部連動して、最後の段階で失業率が変化する。その
 プロセスは数式で記述した経済理論で全部説明できる。この失業率の低下に
 水を差すのが、消費税増税である。

                    第3章 アベノミクスへの通信簿  
                   高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』



つぎに、菊池英博の『そして、日本の富は略奪される―アメリカが仕掛けた新自
由主義の正体』に移ろう。少し読み進めると、ちょっと古めいた国民国家主義的
な論調に気付くが、
「新自由主義論Ⅰ-新たな飛躍に向けて-新自由主義からデ
ジタル・ケイジアンへの道」(『デジタルケインズと共生・贈与』)で考察した
デヴィッド・ハーヴェイ『新自由主義――その歴史的展開と現在』(作品社、20
07年)の訳者の渡辺治のような開放的な国民福祉主義とは異なるものを感じてい
る。

                       国民の期待にどう答えるのか

 ところが、日本は対外的に世界殼大の純債権国であり、官民介計で 296兆円
 の対外純債権がある。国民一人あたりで見れば、233万円に達する( 2012年
 末現在、財務省発表)。このように世界一の金持ち国家であるのに、国民の
 世帯所得で見ると、アメリカに次ぐ貧困国なのだ。

  国民の所得の総合計である名目GDP(名目国内総生産)で見ると、過去
 15年間で日本の凋落ぶりは目を覆うばかりである(図表 0-2「名目GDPの
  国際比較」参照)。この図表でわかるように、日本のデフレが始まる直の
  1997年を基準(100)として、 その後の成長を見ると、2012年にアメリカは
  190、イギリスは 184、ユーロ圈は162と、どの国も成長(増加)しているの
 
に、日本だけがマイナス成長である。基準の 1997年の日本の名目GDPは
 513兆円であるから、もし日本がこの間
、アメリカ・イギリス並みに成長していれ
  ば、GDPは950兆円前後、ユーロ並の成長であれば830兆円前後になってい
 るはずだ。そうすれば国税ペースで 90~100兆円上がっており、消費税増税
 なしで、社会保障費は十分に賄えたのだ。



 名目GDPの成長がマイナスになったため、当然、日本国民の賃金は低迷し
  ており、1997年に比べて2012年には平均B%も低落している。なおこの間、
  日本はデフレで物価が下がっており、この下落分を賃金ヒ昇とみなせば、実
  質賃金はその分だけヒ昇することになる。しかし、デフレ分を調整した実質
  賃金でみてもマイナスであり、国民生活に与えるマイナスのインパクトは極
  めて人きく、これが税収を減らす原因になっている。


  一人あたりの国民所得を国際比較すると、日本は1994年には3位(主要国で
  は1位)であったのに、1997年から凋落し始めた。しかし、1996年の橋本財
  政改革が招いた金融危機1988年)を解決した小泉首相の積極財政政策が実っ
  て、2000年には3位に回復した。ところが2001年からの小泉構造改革による
  デフレ政策によって、日本は坂道を転げ落ちるように順位を下げ、2007年に

  は19位まで転落した。その後、円高となりドルベースでは若干順位が上昇し
 た
とはいえ、2011年で14位である(図表 0-3「日本の一人あたり名目GDP
  の推移」参照)。




 2007年に放映されたNHKスペシャル「ワーキングプア」では、苦境にあえ
   ぐ若者は「この国は豊かな国だと思っていた」と嘆いていた。事実、国家全体として
 は豊かな国なのに、その富が99%の日本国民のために(とくに社会的弱者の
 ため
に)配分されていないのだ。日本の政府が、われわれ国民の預貯金を日
 本国民の
ために使う政策をとって名目GDPを増やし、財政政策でその再分
 配を図れば、間
違いなく国民は豊かになれる。  

 私は過去15年間、時には孤軍奮闘して「デフレ解消を優先すべきである」「
 新自由主義・市場原理主義は悪魔の経済学であるから決別すべきである」と
 主張してきた。2012年3月2日の衆議院予算委員会では、「デフレ脱却のため
 に『5年100兆円の緊急補正予算』」を提案した(拙著『日本を滅ぼす消費
 税増税』講談社現代新書、終章参照)。だから、安倍普三首相と麻生太郎副
 総理が「15年も継続するデフレ解消を優先させたい」と宣言したとき、「よ
 く言ってくれた、あきらめずに辛抱強く主張してきた甲斐があった」と歓喜
 に絶えなかった。

 しかし、万歳するには早すぎる。安倍首相と自民党政権が、新自由主義・市
 場原理
主義という悪魔と決別して、日本型資本主義を確立させないと、日本
 経済は成長路
線に戻れない。私はこの方向をしっかりと注視し、愛国的で善
 良な同志と協力して
真摯な活動を継続していきたい。

                   「序章 1%の悪魔が日本を襲う」
                        菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』

 
           「国家からの自由」を求めるユダヤ出身学者の思想

 新自由主義・市場原理主義という思想(イデオロギ士の創始者はミルトン・
 フリー・ドマン(1912~2006)という経済学者である。その思想的源流をア
 ダム・スミス(1723~1790、『国富論』の著者)やフリードリッヒ・ハイエ
 ク(1899~1992)という経済学者に求める意見もある。
しかし、若干の類似
 点があるとしても、その中身は先人たちの思想とは似て非なるものだ。新自
 由主義は単に経済学、経済思想にとどまらず、その思想と理論(理屈)をベ
 ースとして、富を一部の富裕層に集中しようとする政治経済行動の理論的骨
 格で、その目的のためには政治権力と結託して行動を起こし、手段を選ばず
 目的を貫徹しようとする執念を持っている。新自由主義思想は、政権を狙う
 政治家が一国の富を富裕層に集中する経済政策をとるときに利用する経済理
 論であり、さらに時の権力に迎合するレントシーカーや学者に利用されてい
 る。新自由主義の経済政策上の手法が市場原理主義である。

 新自由主義思想と市場原理主義をわかりやすく説明した好著として、『悪夢
 のサイ
クル』(内橋克人著、文瓶春秋)と『経済学は誰のためにあるのか』
 (内橋克人編、岩波書店)がある。これらの文献を参考にしながら、ミルト
 ン・フリードマンの考えを浮き彫りにしてみよう。

 ミルトン・フリードマンは1912年にニューヨークで生まれた。両親はハンガ
 リー出身のユダヤ人で、ヨーロッパにおけるユダヤ人迫害を恐れてニューヨ
 ークに渡り、厳しい下積みの仕事をして生計を立ててきた。フリードマンも
 苦学して奨学金を受け、ラトガーズ大学(アメリカのニュージャーシー州)
 を卒業し、シカゴ大学で修士号、コロンビア大学で博士号を取得した。その
 後、コロンビア大学や連邦政府で働いたあとに、シカゴ大学教授となった。

 彼が修士号を取得した頃のシカゴ大学には、フランク・ナイト、ジェイコブ・バイナー、
 フリードリッヒ・フォン・ハイエクといった自由主義思想を持つ経済学者が在籍してい
 た。とくにハイエクは、徹底した自由主義者として知られており、これら学
 者の集団はシカゴ学派と呼ばれている。こうした環境のなかで、特異な思想
 を打ち立てたのがフリードマンである。彼が1950年代に来日したときに案内
 した経済学者・伊東光晴氏は、著書『21世紀の世界と日本』(岩波浬店)の
 なかで、フリードマンが長洲一二氏(経済学者)との対談で語った言葉を紹
 介している(『悪夢のサイクル』より引用)。

 「実は私はユダヤ人である。ユダヤ人がスターリン治下のソビエトにおいて
 どういう待遇を受けたか、特に東欧の人間たちがどういう待遇を受けたか。
 またヒトラー治ドにおいてユダヤ人がどのような残酷な死を招いたかという
 ようなことはいまさら申し上げるまでもないでしょう。私が自由な市場に委
 ねるのがいちばんいいということを主張するところには、国家も制度も民族
 も一切力を持だない、一つのメカニズムが人間社会を結ぶということが最も
 幸福であるという、ヒトラー治下の、スターリン治下のユダヤ人の血の叫び
 である」フリードマンの考えは、自由な市場をつくり、そこに「人間の自由
 」を実現していくことになる。自由主義はもともと「国家からの自由」「国
 家は個人に一切干渉すべきではない」というものであり、これが彼の考えの
 基本になっている。ここで、極端な自由主義者であるフリードマンの人とな
 りと、新自由主義の特徴を表すエピソードを2つあげておこう。

                   「第1章 新自由主義という悪魔の誕生」
               菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』


  ※この節のつづきは → こちら


                   福祉型資本主義で「貧困・不況・格差」は過去のもの

 第二次世界大戦に勝利したアメリカは、大恐慌の反省から自由放任資本主義
 がもたらした弊害を除去し、安定した資本主義を継続させて、経済成長と経
 済的平等を両立させることに成功した。資本主義の下で資本家の富を労働者
 とも公平に分かち合い、まさに福祉型資本主義時代に入ったのである。経済
 学者であるジョン・ケネス・ガルブレイス(1908~2006)は多くの著書のな
 かで、「自由放任の古典的資本主義がもたらした貧困・不況・格差(不牛等
 )はもはや過去のものになった」「こうなったのは、大恐慌によって破壊さ
 れた資本主義から多くのことを学び、破綻を避けるためのビルトイン・スタ
 ビライザー(安定化措置)を経済の中に取り付けたからだ」という趣旨の見
 解を述べている。

 こうして、1950~1960年代のアメリカでは、中産階級と呼ばれる社会的中間
 層が大幅に増え、ベビーブームを起こし、新規投資が雇用と所得を生んだ。
 消費の拡大が投資を増やすという好循環で経済が成長し、累進課税と政府投
 資による官民協調で、安定した社会を形成してきたのである。まさに福祉型
 資本主義であり、日本でも1970年代後半から1980年代初頭までは「一位総中
 流」という理想的な資本主義社会が形成されていたのだ。

 このような繁栄を支えてきたのが、ケインズ学派の経済学である。市場主義
 を維持しながら、政府が総需要管理を適切に行う政策をとって市場に介入し
 ていけば、景気変動を調整でき、税制を含む分配政策によって国民を平等に
 し、幸福にできる。それによって、さらに経済を発展させるという政治経済
 思想である。

                   「第1章 新自由主義という悪魔の誕生」
               菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』

                             この項つづく

 

 

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デジタルグリッド工学

2014年12月04日 | デジタル革命渦論

 

 

【オールソーラーシステム完結論 39】
 
 

 ● 情報と電力の融合 デジタルグリッド工学

 

デジタルグリッドTMは、情報と、情報によりアクティブに電力制御を行う半導体素子と
を組み合わせて電力潮流を制御する新しい電力システム。
電力潮流を複数の電力系統に
流すデジタルグリッドルーターTMや、同期系統の中で電力機器に外部信号を加えてルー
ターと連携制御をさせるデジタルグリッドコントローラーTMなどのキーデバイスから構
成されるが、東京大学発ベンチャーのDigital Grid は、今月2日、再生可能エネルギー導
入を促進する新技術「デジタルグリッド」の開発を加速させるため、日本政策投資銀行
やNECなど、5社より増資による5億8千万円の資金を調達したことを公表。



具体的には、技術の核である「デジタルグリッドルーター(DGR)」と蓄電池を組み合
せることで自然エネルギー変動を吸収する仕組みを作り上げ、再生可能エネルギー導入
を促進し、電力の融通機能を特徴とする新しいエネルギーサービスを提供。このシステ
ムでは、送配電の単位(セル)を1件の家庭と考えて、各家庭に、蓄電池とDGRを設置
し、エネルギーサービスを提供する。全体的なイメージとしては、多数の家庭に設置さ
れた蓄電池と、それを制御するDGR、電力をリアルタイムでもインターするセンサーを
ICT(情報通信技術)の力を駆使して、ネットワーク的に制御。それによってエネル
ギーを融通制御するもの。

 

● デジタルグリッドとは

デジタルグリッドとは,電力系統内において情報により指定された複数のインバータ等
を同時に
動作させて電力を非同期に制御することにより、制御した電力を識別可能とす
る、情報と電力
の融合したインターネットライクな電力インフラストラクチャー。

● セルとは

セルはデジタルグリッドルーター(DGR)で区分された、分散形電源・貯蔵装置・負荷を持
つ自立運転可能な最小グリッド単位.(家庭・商業施設・ビル・ゲートタウン・村・町・
市・県・地方等)

・セルは,自然エネルギー変動を内部でとどめ、停電連鎖が起きにくい.
・セルは基幹配電・変電・送電系統にピークカット・周波数垂下特性・電圧維持などの
  アンシラリーサービスを提供。
・セル内部に無停電とハイパワーを供給。
・系統側から見ると、自前でユニバーサルサービス設備を調達してくれ、必要な時には
  グリッドサポートしてくれる需要家



● デジタルグリッドにより得られる効用

・セルは,自然エネルギー変動を内部でとどめ、停電連鎖が起きにくい.
・セルは基幹配電・変電・送電系統にピークカット・周波数垂下特性・電圧維持などの
 アンシラリーサービスを提供。
・セル内部に無停電とハイパワーを供給。
・系統側から見ると、自前でユニバーサルサービス設備を調達してくれ、必要な時には
 グリッドサポートしてくれる需要家

● 効無効電力の随意制御 



尚、デジタルグリッドにより、従来の総括原価主義による電気料金は、個別原価主義に
基づく個別電気料金になり、安い電気を求める需要家や高くてもグリーンな電力を求め
る需要家の選好の自由度が生まれる。
電気に付随してCO2価値やRPS価値、商品先物 派
生商品、保険商品などの価値も取引されるようになる。
電力貯蔵とルーターの持つ柔軟
な接続形態により需要家は、電力の時間価値も取引できるようになる。
電力系統にとっ
ても、有効電力や無効電力の柔軟な提供を受けることができ、信頼度の高い系統運用が
可能になるという。
 

● アドレスをつけることによる電力の識別

 

Digital Grid 社は東大特任教授の阿部力也が提唱するパワーエレクトロニクスとICT
 の融合技術である「デジタルグリッド」の事業化を目的に、2013年11月に設立された
 ベンチャー企業。
 

スマートグリッドではなくデジタルグリッドですか。それでいて、情報と電力の融合というから、デ
ジタル革命の基本特性第1則のシームレスときて、アナログ(交流)とデジタルの融合でもある。
これはえらい展開となりますね。

  ● 始まった6年52億キロの旅

 

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偽装財政危機の呪縛

2014年12月03日 | 政策論

 

 

 



● 偽装財政危機の呪縛

アベノミクスを問う選挙であるというが、息子達の反応をみているとやはり消極的で
むしろ「無駄な選挙」程度ににしか受け取っていないようだが、このわたしは?とい
えば、直前まで支持政党は決まらないと考えていたが、比例区・小選挙区とも決まっ
ている。しかし、相変わらず財務官僚のを煽るかのようなマスコミの論調やテレビの
コメンテータの発言など目耳し気分を悪くしている中、あるテレビ討論で、維新の会
の橋元大阪市長の唐突な「
ケインズ批判」に、経済政策の此彼を再確認しておかなけ
ればと思い、高橋洋一箸の『アベノミクスの逆襲』と菊池英博箸の『そして、日本の
富は略奪される』を熟っくり読み込み、『反財政危機論』としてまとめ記載していく
ことに。

           「巨額の借金があるから金利が上がると破綻する」論の嘘


  「日本は1,100兆円もの借金があるから、金利が上がると利払いで大変なことに
  な
る。財政が破綻する」というとんでもないことをいう人がいる。これは、ほと
  ん
ど言い掛かりである。
  こういう破綻論者というのは、物事の片方しか見ていない。両サイドを見なけ
 れば意味がない
  まず1100兆円の借金というのは、政府のバランスシート(貸借対照表)の右側
 の「負債の部」の話。左側の「資産の部」には約 650兆円の資産がある。差し引
 
すれば、450兆円であり、日本のGDP約500兆円で割ってみれば、その範囲内
 
収まる。片側だけしか見ないから、1,100兆円の借金は大変だ。破綻する」とい
  う破綻論
になる。

  それに加えて、もう一つ間違っているのは、金利についても片側しか見ていな
 いことである。名目金利(長期金利)はだいたい名目GDP成長率とほぽ同じく
 らいになる。片側の金利上昇しか見ていないから、バカげた破綻論になる。
  名目金利が上昇するときには、もう一方で同じくらいの率の経済成長が起こっ
 ている。経済成長が起こっているのだから、実体経済が良くなっているというこ
 とだ。名目金利が上がっても何も問題はない。経済成長が起こらずに、名目金利
 だけ上昇するというのなら問題だが、それはよほどのことがなければ起こりえな
 い。

  経済成長が起こると、税収が増えて財政収支が改善され、破綻どころかむしろ
 健全化に近づいていく。金利上昇で破綻というのはまったくバカげた話である。
 長期金利が上がっているときには経済成長が起こっていて国の収入も増える。だ
 から、破綻することはないのである。
  こういうバカげた論を真に受けていると、「財政を健全化して借金を返してお
 かないと大変なことになる。それにはやっぱり増税しかない」というロジックに
 偏されてしまう。


              第2章 検証!「増税」を正当化するデタラメな議論  
                     高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』



相も変わらず、単年度会計主義の財務官僚や米国の格付け機関(≒英米流金融資本主

義)などから財政規律重視の悪宣伝が、陰に微に入りマスコミを通じ愚民政策の常套
手段としバラまかれているが、わたし(たち)は、政府が行う財政投資である公共事
業を、土木建設偏重事業とは考えないし、国債発行を赤字国債ではなく未来国債と考
え、日本の付加価値(品格向上)を高める事業だと考えている。

 
                  「国債暴落説」は増税のためのデタラメにすぎない

 2012年の2月2日付の『朝日新聞』に、三菱東京UFJ銀行が日本国債の急落を想
 定したシミュレーションを内々に行なったという記事が載った。それによると、
 2016 年にも10年物の長期国債の利回りが約1%(当時)から3.5%になり、国債
 の急落が始まるという内容であった。

  そもそも、この程度のことで「急落」だの「暴落」だのといった表現を使うほ
 うがどうかしている。

  このくらいのシナリオならリスク分析としてどの金融機関もやっていることだ。
 金融庁もそうしたシナリオによるリスク分析を以前から求めている。『朝日新聞』
 を読むかぎりでは、まるで、こうしたシミュレーションを他の金融機関では行な
 っておらず、三菱東京UFJ銀行でも、あたかも初めてシミュレーションしたか
 のようである。いかがなものかと思わざるをえない記事だ。

  内容を見ても、はっきりいって暴落でも何でもないシナリオだった。三菱東京
 UFJ銀行は 200兆円の資産のうち二割程度を国債で保有しており、その平均的
  な償還年限は3年程度であることは公開資料からわかる。1%から 3.5%への金
  利上昇であれば、国債の価格低下は8%程度である。全体の資産から見れば、2
  割×8%程度であり、せいぜい2%ほどだ。

  大した問題ではないのに、『朝日新聞』が大げさに書いたのは、財務省が財政
 危機を煽るためにりIクしたのではないかといわれていた。財政当局が、新聞を
 使って、危機でもないことを危機であるかのように報道させている可能性がある
 から気をつけたほうがいい。新聞の見出しを鵜呑みにしないことだ。

  マスコミがいろいろなシナリオを想定することは勝手だ。だが、極端なシナリ
 オを想定して、それを一般の人が読むことに、何かメリットがあるのだろうか。
 たとえば「1ドル=50円になる」とか「百年デフレが続く」とか 「300%のハイ
 パーインフレになる」とか、極端なシナリオをいう人もいるが、そんな話を聞い
 て何の役に立つのだろうか。

  さすがに「1ドル=50円」を信じる人はまずいないが、「300% のハイパーイ
 ンフレ」は信じる人がいる。現時点で3%にも達していないのに 2桁も違う300
 %のほうを信じてしまう。いったんインフレが始まると急激に進んで止められな
 くなるなどというが、どこにその根拠があるのかまったくわからない。


              第2章 検証!「増税」を正当化するデタラメな議論  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』



なお、わたし(たち)は1990年初頭金融機関による過剰貸し付け運動(いわゆるバブ
ル)がはじけた1995年ごろ当面、円は110円±15円と考えていたから、現在進行
中の円安も想定内にあることを付け加えておこう。


                    「増税しないと国際的信認が失われる」は、まるで幽霊話

 消費税増税派は、よく「国際社会に増税を約束したのだから、増税をやめれば国
 際的信認が失われる」ともっともらしく主張する。だが、そういう人たちは、何
 をもって国際的信認といっているのだろう。国際社会の実情を知っているとは思
 えない。

    よその国の人は他国の消費税になどまったく興味がない。そもそも税体系も知
  らないし、税率がどうのとか、そんなことには何の関心も持っていない。国際会
  議で消費税の税率のことを話しても、「そんなこと、オレたちには関係ないよ。
  自分の国でやってくれよ」という反応になる。

   逆の立場で考えてみれば容易にわかるはずだ。あなたは、よその国の税率に関
  心があるだろうか。そもそも、よその国の税率を知っているだろうか。よその国
  の税率がどう変わろうと、増税をやめようと、どうでもいいはずだ。
  国際的信認うんぬんという話は、「外国の人はこういっている」といわれると
 弱い日本
人の心理につけ込んだ財務省のロジックである。増税したい財務省が、
 「これは、国際
的に約束したことだ。これを守らなければ国際的信認が失われる」
 と言い張っているに
すぎない。

  IMF(国際通貨基金)には財務省の人間が出向している。日本のマスコミの
 記者は英語があまりできないから、IMFの外国人に取材せず、財務省の人間に
 日本語で取材をする。
それを新聞に載せているだけだ。出向している財務省の人間で
  あっても、一応IMFの職員だから、「IMFの意向はこうだ」という記事に
 なる。日本の財務省から出向した人間に関いているのだから、財務省の都合のい
 いことしか話さないに決まっている。その出向者が「増税は約束だ」と話せば、
 「IMFは、増税は約束だといっている」という記事を書いても間違いとはいえ
 ないわけである。こうして情報操作されている。

  私はそのカラクリを知っているので、新聞に「IMFの意向」というような記
 事が載ったときには、IMFの公表している英語の文章を確認する。そうすると、
 「全然、違うじゃないか」ということがたくさんある。

  もっとも、財務省はIMFの副専務理事を出しているので影響力はそれなりに
 ある。財務省の人間が英語でIMFの文章を書いていることもあるから、見破る
 のは簡単ではない。昔は日本の出資額は二位で、今は中国に抜かれて三位だが、
 出資額が多いことも影響力の強さにつながっている。そして出資している窓口は
 財務省である。

  国際機関の中にOECD(経済協力開発機構)というのがあるが、こちらはあ
 まり出資は関係ない機関だ。だから、財務省も人を送り込むことができず、代々、
 外務省が人を送り込んでいる。最近は事務局長含みで財務省から財務官を送り込
 んでいるが、財務省があまり影響力を行使できなかったので、OECDのほうで
 はわりと自由に財務省の意向と違うことをいっている
出向者もいた。

  国際機関といっても、特徴が違うし、意見もバラバラだ。税金に関して国際的
 信認などというものは、まるで関係がないとしかいいようがない。国際会議の場
 で、単に英語で「スピーチ」したというだけである。誰も「約束」などと思って
 いない。 海外の投資家は、増税には関心がない。彼らの関心は、日本の経済状
 態が良いかどうか、景気が良いかどうかだけである。日本の景気が良くなりそう
 だと思えば、日本へ投資をする。アベノミクスが始まったころも、海外投資家は
 「日本経済が良くなる」という期待感で日本に投資したのである。増税しないと
 彼らが日本から逃げていくなどという話は、まったくありえない。逆に、増税し
 て景気が落ち込むと思えば、さっさと投資を引き揚げるだろう。

  
  小泉政権時代は増税していないから、国際的信認がなかったのかというと、そ
 ういうこともない。小泉政権では、民営化の話が出ていたから、海外の投資家が
 ビジネスチャンスと見て日本に投資をした。その国の経済状況を見ながら、儲け
 るチャンスがあるかどうかを判断するのが投資家であって、増税するかどうかは
 彼らにとってはどうでもいいことなのである。

  逆にいえば、投資家は必死だから、「減税して景気を回復させて税収を増やす」
 という常識的な経済政策手法も十分にわきまえている。「減税=破綻に直結」な
 どという単純な話に乗る人など少ない。

  では、「国際的な信認」というのは、誰に対する信認なのだろう? 聞けば聞
 くほど、幽霊話のような不思議な話である。ついでに、「国際公約だから、消費
 税増税を」もデタラメだ。


  国際公約は「international commitment」というので 「international commitment」と
 「tax」という言葉でグーグルを使って検索すると膨大な数がヒットするが、その
 中身は、税の回避行動について各国で協力して対処しようという内容が多い。そ
 のために、情報交換などで、各国で協力する責任・義務を求めているのだ。

  ここで、「tax」の代わりに「consumption tax(消費税)」として再び検索する
 とヒット数はガクンと減少する。しかも、その内容のほとんどは日本の新聞記事
  の英訳だ。そこには、日本の消費税増税が国際公約になっていると書かれている。

 つまり世界では、日本の消費税増税が国際公約になっているという意識は、まず
 ないのだ。

              第2章 検証!「増税」を正当化するデタラメな議論  
                      高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』


             消費税を「社会保障」目的税とする国は世界にはない

 消費税増税についての根本的な問題を指摘しておきたい。「なぜ消費税を増税す
 るのか」という点である。多くの国民は「このままだと年金が払えなくなる。年
 金を払うために消費税を使う」といわれて、消費税が社会保障に必要だと思わさ
 れている。これこそが最大のまやかしである

  増税の理由として、「財政破綻を防ぐため」といわれても一般国民にとっては
 ピンとこない。しかし、「年金のため」といわれれば、「増税は必要だ」と思っ
 てしまう。これは増税派の巧妙な手である。

  多くの国民は、消費税は社会保障のために使われると信じており、それが最も
 良い方法だと思わされている。しかし実は、世界の先進国で社会保障の目的税と
 して消費税を充てようという国は、日本を除いて一つもないのだ。「北欧諸国の
 社会保障を支えているのは消費税」というのも、厳密にいえば誤解である

  社会保障は、給付と負担の関係が明確な保険料方式でやるのが筋である。とは
 いっ
ても、保険料を支払えない人もいるから、その人たちに対しては何らかの手
 を打だなければならない。高額所得者から累進課税で所得税を多く取って、低所
 得者の保険料に充てる。
これで社会保障の話は終わりである。消費税など出てくる余
 地は一切ない。社会保障論と税理論からいえば、財務省が主張するような消費税
 を社会保障目的税にするのはおかしなことである。なぜ、こんなおかしなことが
 日本で起こ
ったのかというと、1999年の自自公連立時に、大蔵省が小沢一郎自由
 党党首(当時)に「消費税を上げるために社会保障に使うと書いてください」と
 入れ知恵したからだ。政治上の取引として与党に了解されたものである。大蔵省
 と与党の「政治的な取引」であったので法律に書き込むことはなく、予算総則に
 書かれることになった。


  2000年の税制改正に関する答申(政府税制調査会)の中には「諸外国において
 も消費税等を目的税としている例は見当たらない」との記述がある。私自身が関
 係していたからよく覚えている。何年かはその記述は続いた。

  ところが、いつのまにかその記述は一切書き込まれなくなった

  消費税を社会保障に使うという理屈は、消費税を上げたい人たちの国民向けの
 ごまかしである。「社会保障目的税」といわれたら、国民は反対しにくくなる。

  その後、民主党がマニフェストに「最低保障年金は税方式」と書き込み、この
 時点から本格的におかしくなった。現行制度の社会保険料方式でも税が投入され
 ているので、税方式はその割合を高めることだという民主党議員もいたが、まっ
 たくの認識の間違いである。世界の先進国で、社会保険料方式から税方式に移行
 した国もない。移行にコストと時間がかかり、メリットは少ないためだ。税財源
 の役人は、給付と負担の関係を不明確にして、社会保障への信頼を失いかねない。

  しかし、その民主党が政権を取って、社会保障目的のための税であるかのよう
 に見せかけて、増税を決めたのだ。法律の名前は「社会保障の安定財源の確保等
 を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律
」で
 ある。

              第2章 検証!「増税」を正当化するデタラメな議論  
                    高橋洋一著 『アベノミクスの逆襲』


なお、わたし(たち)の”未来国債構想”の「安全保障国債」の社会保障関連の投資

事業には、いわゆる"国土強靱化事業"のような防災事業や高齢者の "ターミナルケア
業" あるいは、食糧・エネルギー・防衛などの安全保障事業もその対象にイメージ
ているが、具体的にどのようなものでパッケジー化し、評価是正しているかは、今
の議論待ちである。 




さてこのように、高橋洋一は小泉政権のブレーンでもあった構造改革派(≒ネオ・リ
ベラリズム)と "アベノミクス擁護派"をミックスした立ち位置のようにみえるが、
これに対し、ブログ紹介してきた三橋貴明(ハンドルネーム)は、それよりラジカル
な批判を行っているが、バックボーンにはいわゆる"ケインズ主義"があるのではと推
測している、それでは、国民国家主義とケインズ主義経済学からの立ち位置から発言
ている専門家の書物を探してみたのがここで初めて掲載する菊池英博の『そして、
日本の富は略奪される』である。
 


 


まずは、「まえがき」から刺激的である。そてによると――2012年12月、民主党から
自民党政権に代わり、再び日本では、小泉構造改革で強行された新自由主義・市場原
理主義的な政策がとられつつある。実は、この「新自由主義」というのは「悪魔のご
とき思想」であり、このイデオロギーを具体的に実行していく経済的手法が「市場原
理主義」である――「悪魔のごとし思想」と言うのだ。新自由主義批判はすでにこの
ブログでも掲載してきたことだが、日米間の歴史的経緯など、これまで深く触れなか
ったからなおのことであった。


 なぜ「悪魔のごとき思想」かというと、「自由」という名の下で、国民の富を吸
 い上げ、社会や生活基盤を破壊していくものだからだ。新自由主義的な政策が進
 んだアメリカでは、「1%の人(悪魔)だけが富み、99%は貧困になる」という
 格差社会が生じている。それに加え、そこには日本の富を密かに狙う、アメリカ
 の対日戦略も隠されている。アメリカは1994年から日本に「年次改革要望書」を
 送り、日本の社会経済体制をアメリカ型に変更するように要求してきた。この新
 自由主義・市場原理主義(グロしバリズム)の理念をベースとして、日本の社会
 経済を破壊・停滞させ、成長を抑制させる。その結果、発生する余剰資金を海外
 へ流失させ、アメリカの国債や金融市場・商品市場に資金を供給させるわけであ
 る。

   さらにアメリカは、わずか4カ国で始まっていた地域内自由貿易協定を衣替え
 し、日本を標とした大がかりな国際条約に組み替えてきた。それがTPPである。
 その内容には、日本に「関税の撤廃」「資本取引の完全自由化」「規制の緩和・
 撤廃」を要求するだけでなく、アメリカの進出企業が絶対に有利になるよう仕組
 まれた「ISD条項」、一度決めたらアメリカに不利になる改訂はできない「ラ
 チェット条項」など、多くの不平等条項が盛り込まれている。

  すでに2013年初頭に、「日本政府がファンドを創設して米国債50兆円を購入す
 ることを検討している」というニュース(2013年1月14日付けブルームバーグ)
 が流れており、「1%の悪魔」に牽引されるアメリカが、政府ベースで目本の富
 を収奪する計画が表面化している。
  
  こうしたアメリカの要求を受け、それを実行していくのが、日木の中央政府の
 官僚と与党の政治家、野党でもアメリカの対日改革要求に賛成する政治家、新自
 由主義によって利益を得る大企業である。それに、大マスコミ(全国紙、NHK、
 民放)はほとんどが新自由主義・市場原理主義を礼賛する。さらに政府の審議会
 や諮問委員会に招かれる学者や識者には、多くの新自由主義者が加わり、国民を
 洗脳しようとしている。

                                               
                                                 菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』



 本書では、すでにイギリスとアメリカの実験で答えが出ている新自由主義政策の
 実態を
指摘し、1%の悪魔しか豊かになれない社会の危険性を指摘したい。さら
 にデフレ解
消と経済成長を取り戻そうと、自民党の経済政策が始まっているとは
 いえ新自由主義
的な政策では、日本は一段と弱体化し、国家破滅の危機に瀕する
 ことを解き明かす。

  こうした「悪魔の侵略」に対抗して、どのようにすれば日本を防衛できるのか。
 それに
は、日本が新自由主義・市場原理主義と決別して、目本の伝統を重んじる
 「日本型資本主義の理念」を確立することであり、同時に対外純債権を296兆円
 (2012年末現在、すべて国民の個人預貯金が原資)も保有する世界一の金持ち国
 家として、その資金を日本国民のために使い、15年も継続する恐慌型デフレから
 脱却するための長期戦略を樹立し、経済成長を取り戻すことである。これが最大
 の財政基盤強化と財政再建の道であり、国家再興の出発点である。ここでは、そ
 の長期的な道筋を具体的に示していく。

                                                 菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』



次の、「序章 1%の悪魔が日本を襲う」では、「再び悪魔に犯される日本」として
――2001年4月の自民党の総裁選挙で、小泉純一郎氏は「自民党をぶっ潰す」「構造
改革なくして成長なし」と絶叫して当選し、首相に就任した。当初の支持率は歴代の
内閣で最高の80%に達し、多くの日本国民が、小泉氏が日本を変革し、経済が好転す
ることで、自分たちの生活が豊かになるものと期待した。ところが、「規制緩和」「
不良債権処理」「公共投資不要論」「財政は緊縮・金融は緩和」という新しい政策は
デフレ政策であり、デフレは解消するどころか一段と進み、日本経済は低迷した(上
図の2つのグラフ参照)。円安ゼロ金利政策で輸出は伸びても国民の所得は減る一方
で、所得格差は拡大し、日本の経済力が減退していった――ところが、米国のバブル
もあり対米輸出の好景気もあり
 小泉構造改革の時点では、政府もマスコミも公表し
なかったので、多くの国民は気づくこともなかった。構造改革」という政策は、1994
年から米国が日本に送付してくる「年次改革要望書」に沿い、日本を米国型の社会に
改造し、デフレ政策をとらせ、日本の富を米国に吸い取らせるものであったと主張し、
米国の対日要望書の基本理念は、新自由主義・市場原理主義であり、この政策理念に
基づく政策をとっていけば、日本国民の富をアメリカの一部の富裕層と大企業に集中
させることができるように仕組まれたと主張する。まさに構造改革は、新自由主義・
市場原理主義という恐ろしい悪魔の襲来だった。そもそも、このイデオロギー(思想)
と策略を組み立てたのは、ミルトン・フリードマンという経済学者であった(第1章
参照)という。これはすでに「新自由主義論Ⅰ-新たな飛躍に向けて-新自由主義か
らデジタル・ケイジアンへの道」(『インフレーションを説明する』)で学習してき
たことである。

 
そして、次節「悪魔を追い払おうと二度も政権交代が起こった」ではつぎのように主
張している。

 2009年8月30日、戦後の日本では衆議院選挙という国民の意志によって、事実上
 初めての政権交代が実現した。自公政権から民主党・社会民主党・国民新党の三
 党連立政権の成立である。このときのスローガンは「国民の生活が第一である。
 構造改革という改革は国民の生活を豊かにするものではなく、国民の富をどこか
 に吸いLげるものであることに国民が気づいたのだ。さらに、郵政民営化によっ
 て、国の財産が二束三文で叩き売られ、新たに利権を得た人物が多額の富を吸い
 上げている実情にも、国民は疑惑を持った。

 このときの選挙で国民に約束した三党の共通政策を見ると、「過度の競争を煽る
 市場原理主義を排し、国民全体の共同意識を鼓舞する。過度の円安による輸出増
 加よりも、内需拡大によって経済成長を促進する。国民一人ひとりの生活を豊か
 にするために、デフレからの脱皮を優先する。郵政民営化は見直す。社会福祉に
 重点を置く」などを謳い、「国民の生活が第一」のスローガンでまとめたのであ
 る。この政策はまさに「反新自由主義・反市場原理主義」であり、「共存共栄資
 本主義」を取り戻そうという国民の意思の表れであった。こうして三党連立政権
 が成立した。

 当初、鳩山由紀夫内閣のときには、デフレ脱却の政治姿勢が示され、景気回復の
 補正予算を組む政策をとった。しかし、普大間基地問題に関する党内の混乱によ
 って、鳩山内閣は総辞職し、小沢幹事長も検察による冤罪で辞任せざるをえなく
 なり、国民の期待は頓挫した。鳩山首相の退陣で、小泉構造改革・市場原理主義・
 新自由主義からの脱皮を期待した国民の夢ははかなくも消え去った。

 2010年6月に就任した菅直人首相は、財務省のデフレ政策継続の要請(表向きは
 財政規律を維持するため)を受けて、就任後初の閣議で基礎的財政収支均衡策(
 2020年に基礎的財政収支を均衡させるという典型的なデフレ政策で、税収の範囲
  内でしか財政支出をしないという目標)を決め、小泉構造改革を上回るデフレ政
  策を取り入れた。さらに2011年9月に就任した野田桂彦首相は、新自由主義者・
  市場原理主義者の理念に従って、大企業の利益になる法人税減税を実施し、さら
  にデフレが15年も継続しているというのに、消費税増税を提案し、野党の自民党・
 公明党と談合して成立させてしまった。

 国民の「反」新自由主義・市場原理主義の要望を担って政権の座に就いた民主党
 の党首でありながら、手の平を返して国民を裏切ったのである。加えて、アメリ
 カから21世紀の帝国主義と言われている「TPP(環パシフィック・パートナー
 シップ)」への参加を要求されると、野田首相自身、あまり理解もせずに、参加
 する方針を表明した。ここで国民は再び動いたのである

                                    「序章 1%の悪魔が日本を襲う」
                                                     菊池英博箸 『そして、日本の富は略奪される』

 

 
                                              
  この項つづく

 

  

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氷蒟蒻ブームと食感工学

2014年12月02日 | 創作料理

 

  

はじめて目耳した「氷こんにゃく」に驚く。単純にこんにゃくを凍らせたものだが、
解凍後は「まるでお肉のような食感がする食材」へと大変身を遂げるという。
普段の
料理
でお肉の代わりに使えばカロリーも大幅に削減できるダイエット食材としてブー
ムになっている(朝日放送『おはよう朝日です』2014.12.02)。このブームは今年3
月に『橋爪佐和子の氷コンニャク・レシピ』(健康雑誌「安心」)で掲載された、6
月に『やせる!若返る!美肌になる!「氷コンニャク」超美味レシピ』(マキノ出版)
が発売に始まる。火付け役の橋爪佐和子は、1982年生まれ。大学卒業後、専門学校で
学び、鍼灸あんまマッサージ師の資格を取得し、2011年、女性専門の鍼灸院「四次元
堂」を開業。日本古来の鍼灸指圧術と民間療法や自然療法を取り入れたセルフケアを
女性誌などで提唱。料理は趣味というより生きがいで、ヒマを見つけてはオリジナル
レシピをコンテストに応募経歴をもつ。

     Frozen konjac recipes

そのマキノ出版社の本によると「氷コンニャクは、コンニャクを冷凍し解凍して水切
するだけで作れます/氷コンニャクは肉のような食感が特徴です。ですから普段の
料理に
使う肉を氷コンニャクに置き換えるだけで、自然とカロリーが減っていきます
/氷コンニャクなら、肉を食べているような満足感を味わいながらダイエットできま
す/さらに、氷コンニャクを使った和風、洋風、中華風、デザートなどバラエティに
富んだレシピを紹介/そして、実際に氷コンニャクを食卓に取り入れて、「やせた!」
「美肌になった!」「便秘が解消した!」などの体験談も掲載しています/氷コンニ
ャクは、その切り方次第で無限の可能性を秘めた食材です」と紹介されている。

 

ところで、「ドイツで独自に豆腐料理が展開」(『ハイウェイからフリーウェイへ』)
で掲載したように、豆腐ソーセイジや豆腐ジャム、豆腐チーズとして日本の豆腐が世
界的に健康食品として認知されてきているように、日本の蒟蒻も世界的に認知される
可能性を秘めていることをこのブログでも健康食品として取り上げてきたが、まさか
冷凍コンニャク(蒟蒻)としてブームになっているとは気がつかなかった。そのレシ
ピも豊富で、唐揚げ、ステーキ、蒲焼き、焼き鳥、焼き肉、カレー、パスタなど急速
に創作拡大している。

   
 

特に、今朝のテレビではパスタ(下写真)料理で、蒟蒻ラザニアが紹介されていたの
が印象的だった。それにしても冷凍→解凍→脱水・乾燥することでお肉のような食感
になるのかよく分からず――冷凍し解凍することでスポンジ状になることはわかって
いるが――観ていた。つまり、"食感説明パラメーター"が、例えば、スポンジ構造に
関わる空間パラメーターや強度、弾性値、固有振動数などの食肉との比較データが揃
っていないようにみえる(その実はいまも密かに食感工学分野の研究開発が進行して
いるのかも知れないが)。それが明らかになれば、次の研究開発課題は、他の食品と
のブレンドやそのレシピ開発となる。いずれにしても、低カロリーで大豆タンパク同
様に健康食品としてでなく、牛食肉偏重による地球環境劣化防止を兼ねた素晴らしい
食品として、この極東日本から世界へ貢献、贈与していくことになるだろう。これは
面白い。

 

  
  


先進国において、カロリーの摂取過多による肥満・病気が問題になっている。そこで
カロリーがほとんどなく、また、コンニャク主成分のグルコマンナンに摂取した糖分
を体内で包み込む、という作用が認められる為に、糖尿病対策にもコンニャクや精製
グルコマンナン入りの食品が従来より種々考案されている。従来からは以下の製法が
用いられてきた。

(1)グルコマンナンを主成分とするコンニャク粉に水を加えて膨潤させて得たゾル
化物質を、2~3時間の後、アルカリ性凝固用物質を添加して得たゲル化物質を、そ
のまま使用するか、30~40分間、放置してから70℃~80℃の湯で15分間位
茹でて、それを食用コンニャクとして一般市販するか、他の食品素材と混合・混練・
結着・包含、によりグルコマンナン入り加工食品を得る方法。

(2)コンニャク粉、又は、精製グルコマンナンと水から成るゾル化物質と他の食品
素材を混合・混練・含浸・溶解・結着、によりグルコマンナン入り加工食品を得る方
法。

(3)第三の方法として、第一の方法で得た、コンニャク粉、また、精製グルコマン
ナンのゲル化物質を、他の食品素材と混合した後、冷凍、または、乾燥させて得た加
食品、また、前記ゲル化物質を冷凍した後、10~15%以下に乾燥、または脱水
する方法。

これに対し下記、新規考案※は、コンニャク芋の製粉、または、精製グルコマンナン
のゾル化物質に凝固用アルカリ物質を加えて得たゲル化物質を冷凍・解凍・脱水の後
に、押圧、を一回以上加えることにより押圧なしでは著しく食感が劣り、現実の商
品としては流通・販売の不可能な食品素材の食感の大巾に改善でき、他の食品素材と
の混合その他の方法で、良質で食感の良い健康的なファーストフードや一般加工食品
の製造が可能なるというものである。


WO2005/065466 コンニャク粉、又は、精製グルコマンナンのゲル化物質由来の食
  
品素材


  Lasagne: So wird sie perfekt

冬季、こんにゃくを屋外に晒すことによって、凍結・融解処理を繰り返され、こんに
ゃくは乾
燥したスポンジ様となる。これは、北関東その他各地における保存食として
知られており、
また乳児の産毛取り用具として使用されていたことも知られている。
スポンジ様のこんにゃ
く、いわゆるこんにゃくスポンジは近年、その優れた弾力性や、
海綿・ウレタンゴム製のス
ポンジと比較して遙かに優れた肌触りの良さという特性が
着目され、乳児のみならず敏感
肌の女性、あるいは乾皮症等の高齢者を初めとして、
洗浄用具としての使用が普及拡大
してきた(下記、新規考案※)。

それ以外に、ゲル化した寒天やゼラチン等を泡形成用ゲル粒としてコンニャク粉の
液に混合してコンニャクを形成し、凍結処理、熱湯洗浄による泡形成用ゲル粒
の溶解
除去処理に供するという技術、こんにゃく粉を水に溶解しぺースト状物を得
る工程→
加熱によりぺースト状物を成形器内で凝固させこんにゃくを得る工程→こんにゃくを
セルラーゼで処理した酵素分解こんにゃくを得る工程→酵素分解こんにゃくを20℃

以下の水中で熟成する工程→凍結-解凍処理に供して乾燥させ工程から、表面のスキ
ン層が部分的に除去され、内部が均一なこんにゃくスポンジを得られる。清潔な状態
で使用できるこんにゃくスポンジの提供が目的として掲げられており、デヒドロ酢酸
ソーダ0.05~0.5重量%を溶解した水溶液を10~30重量%を含浸させるこ
とで微生物抵抗性を付与する技術、さらに、抗菌剤のブリードを可能にした5~100
μmの樹脂粒子を、0.1~10%の乾燥重量比でアクリル系樹脂液およびエポキシ系
架橋剤を用いて練り込み、定着させたこんにゃくスポンジなどの食品以外の製造など
も考案されている。

特開2014-147302 こんにゃく粉製素材、その製造方法、スポンジ状素材製造方法、
  ポンジ製品および食品

 

【オールバイオマスシステム完結論 Ⅳ】 

● ゴミ焼却からの回収CO2で野菜栽培 佐賀市で実証スタート

ゴミの焼却で発生した二酸化炭素(CO2)を回収し、野菜の栽培に使う実証事業が佐
賀市で始まった。CO2を貯蔵せずに利用できればCO2回収にメリットが生まれる。
すでに佐賀市にはCO2の利用を希望する企業が名乗りをあげており、地域産業振興の
役割も期待できそうだ。

 

 

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有機半導体ドーピング工学

2014年12月01日 | デジタル革命渦論

 

 

 

【オールソーラーシステム完結論 38】
 
 

 ● 世界初!有機半導体でドーピング増感現象を発見!

無機半導体産業においては、pn制御によって種々の半導体接合を形成することによっ
て、LSI(集積回路)、LED(発光ダイオード)に代表されるデバイスを自由自在に作
製するが、有機半導体は無機半導体に比べて半世紀遅れ、有機半導体のpn制御は分子
科学研究所らのグループが2年前に確立。その後、同研究グループが、加えた不純物
の分子(ドー
パント)の個数に対する発生電子の個数(ドーピング効率※)が、有機
半導体の場合
約10パーセントと、無機半導体(シリコン)の室温ドーピング効率が百
パーセントと比
べ大変低い値。今回、同研究グループは、2つの有機半導体が混合さ
れた共蒸着膜ではドーピング効率が単独膜よりも大きくなるドーピング増感)ことを
発見した。

※ シリコン半導体では、シリコン(Si)結晶中にリン(P)をドーピングすると、ドー
  パントであるPが母体のSiに電子を与えることで、n型化する。P+イオンのプラス
  電荷に弱く束縛された電子が自由な電子になる効率をイオン化率といい、ドーピ
  ング効率にほぼ等しい。Siでは、室温でほぼ100%である。今回の結果は、有機半
  導体中のCs2CO3ドーパントに束縛された電子が自由になる効率(イオン化率)
  を10%から百%に増大できたことを意味する。press141118-4.jpg

 





典型的な有機半導体として、フラーレン(C60)と無金属フタロシアニン(H2Pc)から成る
共蒸着膜(C60:H2Pc)に、ドナー性ドーパント分子(Cs2CO3)をドーピングした系につい
て、ケルビンバンドマッピング法※によって発生した電子数を測定。下
図1にドーピ
ング効率のCs2CO3ドーピング濃度依存性を示します。H2Pc単独膜(青)、C60単独膜(
黄)の約10%に比べて、C60:H2Pc共蒸着膜(比率1:1)(赤)は、約50%と非常に増大。
下図2に、ドーピング効率の共蒸着膜中でのH2Pc比率依存性を示す。H2Pc比率99%まで
ドーピング効率は増え続け、97%に達した。このように、共蒸着膜にドーピングでドー
ピング効率が増大、「ドーピング増感効果」が起こっていることを確認。

※ 金属電極とn型有機半導体を接合すると、下に凸のバンドの曲がりが形成される。
  本方法では、電位の有機半導体膜厚依存性からバンドの曲がりを直接描画し、曲
  がりの幅と大きさから直接生成した電子の数を求められる。


そこで、C60:H2Pc共蒸着膜を、C60とH2Pcから成る超格子と仮定、電荷分離超格子モデ
ルを考案(下図3)。H2Pc, C60へのCs2CO3ドーピングでは、ドナードーパント(Cs2
CO3)は、H2Pc, C60双方に電子を与えることができ、両者をn型化します(下図3左)。
H2Pc, C60単独膜では、ドーピング効率は10%で、10個に1つのドナーがイオン化し
する。ここで、C60:H2Pc共蒸着膜にドーピングの場合、青矢印で示したH2PcからC60
の電子移動が引き続いて起こり、最終的にはすべてのドナー(Cs2CO3)がイオン化し
生じた電子はすべてC60側に移動、ドーピング増感が引き起こされる(下図3右)。
なお、H2Pcはキャリア供給層として働いていることになるので、H2Pc比率が増えると、
ドーピング効率も増える(上図2)。



有機太陽電池においては、励起子を解離(イオン化)して光電流を発生させるために
H2PcからC60への電子移動(青矢印)を利用。(光電流増感)。今回のドーピング増感
は、ドーパントをイオン化するために、全く同じ電子移動を利用し、光電流増感のド
ーピング版と考えているという
なお、アクセプタードーピングに関しても、同じド
ーピング増感現象を観測しており、これは、一般的に起こる現象だとしている。

今回の発見とイオン化率増感を説明する電子移動モデルは、世界で初めて。有機太陽
電池の光電流を高効率で発生させるために、1991年に提案した混合接合(バルクヘテ
ロ接合)のドーピング版に相当する意味を持つ。ドーピングによるpn制御技術は、
有機太陽電池のみならず、有機トランジスタ、有機LED等の有機デバイス一般に波及
果がある。将来、有機半導体エレクトロニクスという新しい分野・産業を創造で
る基本技術になると考えられるから、超ノーベル賞級?の発見となるに違いない。

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参考:「1種類の有機半導体による太陽電池の作製が、全ての有機半導体で可能にな
った!」2012.09.07

 

 参考:特開2012-219355 真空蒸着成膜方法、真空蒸着成膜システム、結晶性真空蒸
    着膜

 

● 最新ワイヤレス充電技術 

 
JP 2014-220499 A 2014.11.20

ワイヤレス蓄電システムは、このオールソーラーシステムでは宇宙太陽光発電システ
ム用のウェイトは低いが地上の分散システムでは重要な技術分野となる。ここでは、
3つのワイヤレス蓄電の最新技術を考察する。上図の特開2014-220499「互いに置き
換え可能な給電側共振器および受電側共振器を有する無線送電システムの変換器」は
構成機器類の互換性を高め部品点数を減らし、メンテナンス性を改善する特徴――無
線送電システム10は、電気車両20のための無線充電システムの一部として使用。
給電側変換器12内の給電側共振器コイル、および受電側変換器16内の受電側共振
器コイルは、実質的に同一であり、互いに置き換え可能である。変換器12、16内
の共振器を保持する構造、ならびに給電側変換器12および受電側変換器16内の共
振器24に接地面を提供する板もまた、実質的に同一であり、互いに置き換え可能で
ある。各共振器は、キャリア巻取り器またはボビンで形成され、このキャリア巻取り
器またはボビンは、磁心を封入する実質的に同一でかつ互いに置き換え可能な2つの
半体を有し、電線コイルを巻装――をもつ。


また、上図の特開2014-223018「無線電力送信システム」では、マイクロ波エネルギー
が、1または複数の適応位相調整されたマイクロ波アレイエミッタを有する電力送信
機によってビーコンデバイスからビーコン信号が受信されるのに応答する位置に集中
する。充電されるデバイス内のレクテナは、マイクロ波エネルギーを受け取って整流
し、それをバッテリーの充電および/または主電力用に使用することで、無線電力送
信は、マイクロ波エネルギーを経て電子/電気デバイスに無線充電と主電力を供給す
るためのもの。

これは、
電磁(EM)信号が単一の電力源から電力送信されると仮定するとEM信号は、距
離rに対して係数1/r2の割合で強度が減少する。従って、EM送信機から遠く離れたところ
で受信される電力は、送信された電力のうちのほんのわすかとなる。また、受信信号の電力
を増大するには、送信電力を上げなければならない。送信信号がEM送信機から3センチメ
ートル離れた位置で効率的に受信されると仮定すると、同じ信号電力を3メートルの有用な
距離から受信するには、送信電力を1万倍に上げることが必要。そのような電力送信は、生
体組織に有害の恐れがあり、すぐ近くの電子デバイスのほとんどと干渉する可能性が高いし、
熱として散逸することもあり、危険で無駄である。

また、指向性アンテナを利用するにはいくつかの課題があり、その一部として、アンテナがど
こを示しているかを認識することと、アンテナを追跡するのに必要な機械デバイスにノイズが
あって信頼性に欠けることと、送信の見通し線にあるデバイスの干渉が発生する。指向性電
力送信は、一般に信号を正しい方向で示し、電力送信効率を高めることができるようにデバ
イスの位置を知る必要があり、デバイスが正しい位置にあるときでさえ、受信するデバイスの
パスまたは近くにある物体の反射および干渉により、効率的な送信は保証されないなどの問
題解決に考案。

 

上図の特開2014-217044「セキュアな充電プロトコルを用いたワイヤレス充電システム」
は、ワイヤレス充電システムでは、電力受信機が、電力送信機から無線で電力を受け
取ることができるが、送信機と受信機との間で行うワイヤレス充電方法には、リプレ
イ攻撃、盗聴、無許可充電、無許可アクセスなど、様々なセキュリティ上の脅威が存
在する。例えば、攻撃者が正規の電力受信機になりすますことで、電力送信機から無
許可で充電を受けることが考えられる。また、攻撃者が、電力受信機と電力送信機と
の間で交換されるデータを盗取することが考えられる。

この問題解決として、タグ装置と、タグ装置を備える電力送信機と、電力送信機から
電力を受信する電力受信機を備える対象物と、電力送信機を制御する充電コントロー
ラと、からなるワイヤレス充電システムにおけるワイヤレス充方法。充電コントロ
ーラが、対象物から充電要求を受信した場合に、チャレンジを生成して、このチャレ
ンジを、対象物を介してタグ装置に送信する。タグ装置は、受信したチャレンジに対
応する応答を、チャレンジおよび充電コントローラとの間で共有されている第一の秘
密データに基づいて生成し、対象物を介して充電コントローラに送信する。充電コン
トローラは、受信した応答が、送信したチャレンジと、第一の秘密データに対応する
ものである場合に、対象物が所定の範囲に位置するかを確認し、対象物が所定の範囲
に位置する場合に、電力送信機に対して電力を無線で送信するよう指示することで、
セキュアなワイヤレス充電プロトコルを用いたワイヤレス充電システムを提供もので

ある。
 


● 太陽光電力-商用電力自動切替調整機

 

ネクストエナジー・アンド・リソースは本日、太陽光発電システムと商用電源を自
動的に切り替える小型の装置「NR-PC1000」を発売する。価格は2
万9700円(税別)。
現在、太陽光発電システムとして脚光を浴びているのは屋根上や遊休地などに太陽
電池モジュールを設置し、パワーコンディショナーを介して商用電源(系統)と接
続(連系)する方式。
太陽光発電システムには連系を前提としないタイプの使い方
もある。オフグリッドと呼ぶ。そもそも商用電源が利用できない山間部や無人の島
などでの利用だ。個人が家庭などで利用することもある。太陽電池モジュールを蓄
電池と直結し、蓄電池をインバーター(直流交流変換器)につなぐ。インバーター
には交流のコンセントが備わっており――候や時間帯によって太陽電池の出力が下
がると、蓄電池の出力が次第に低下する。放っておくと、家電の電源が突然落ちて
しまうことを防止――家電などの利用が可能。欧米で先行する「マイクロインバー
ター」と同じ機能。

※ NR-PC1000は2つの電源と接続して使う。インバーター(変換器)からの入力と
  商用電源(交流100V)からの入力だ。常時インバーター入力の電圧を監視して
  おり電圧が低下すると15ミリ秒以内に商用電源に切り替わる。内蔵リレーを用
  いており、切り替えは自動だ。太陽電池の発電が回復すると、再度インバータ
  ー入力に戻す。


● 世界初、あらゆるICT機器に対応する高電圧直流給電システム

NTTファシリティーズは、販売中の高電圧直流(High Voltage Direct Current)給電シ
ステムについて、500kW級大容量HVDC整流装置(最高効率98%)および、HVDC
整流装置から出力されたDC380Vの電力をAC200VAC100V、DC-48Vに変換する変
換装置:マイグレーション装置を開発、2013年6月より販売。
HVDC給電システムは、
データセンター等におけるICT機器への給電電圧を約380Vにすることで、多くの実
績を有する通信用直流給電システムの高い品質を維持しつつ、交流給電システムと
比較して消費電力量を最大20%削減、給電信頼度10倍向上、電源スペース最大40
削減の効果が期待できるものであり、交流給電システムと同等レベルの費用で構築
が可能だ。
変換効率をさらに向上させた大容量HVDC整流装置をラインアップに追加
し、省エネルギーに貢献。また、マイグレーション装置をラインアップに追加する
ことで、あらゆるICT機器へのHVDC対応が可能となり柔軟なシステム構築が実現。

 

従来の交流給電(下図/左上)、低圧の直流給電(同/右上)、高電圧直流給電
(中央)について交流と直流の変換段数や、UPSとの接続を下図に示した。高電
直流給電は変換段数が少ないため、電力の変換ロスを抑えることできる。UPS
と直
結することで信頼性も高い。細いケーブルを長く引き回すことができるため
設置の
自由度が高くなる。ただし、高圧の直流を使おうとすると、交流とは異なる問題が
生じる。交流と違ってコンセントの設計が難しい。交流は電圧が最大値(例えば
100V
から0Vへ、さらに負の最大値へと1秒間に50回(または60回)変化する。こ
のた
めコンセント(ソケット)からプラグを引き抜くと、電圧が0になった時点で
電流が止まる。ところが直流は電圧が一定だ。さらに高圧であるため、引き抜い
も短時間アーク放電が起きる。感電の危険性がある。

● 世界初 400V級直流給電用コンセントが米国安全規格「UL認証」取得

 

NTTファシリティーズと富士通コンポーネントは、このような課題を解決する400V
級直流給電用コンセント(ソケットとプラグ)を開発、2010年11月から販売を開始
している(下図)。
ソケットとプラグはいずれも最大電圧430V、最大電流10Aに対応
する。絶縁耐圧は2500V(1分間)。挿抜回数は5000回だ。ソケットの寸法は41×41
×49ミリメートル、プラグの寸法は40×21.5×54.2ミリメートル。電流遮断時のア
ーク放電を防止に、ソケット側にアーク消弧モジュールを取り付
け、通電・遮断制
御を確実にするほか、プラグが誤って抜けることを防ぐために
ソケットに開閉スイ
ッチを内蔵。このスイッチと機械的スイッチが連動すること
で、感電を防ぎ、ソケ
ット、プラグとも難燃性素材を使用し、高電圧直流の危険
性を減すことで、2014年
11月27日、両社はこのコンセントがUL認証を取得。認証
の種類はUL 2695。直流給
電用ソケットとプラグの安全規格である。世界で初め
ての取得である。UL認証は電
気製品などの安全性を保証するものとして、米国で
標準的に利用される。



● パワー・ツウ・ガス 

「電力は貯められない」というのは昔の話である。今では蓄電池を使って、昼間に
余った電力を夜間に利用することができる。電力会社では高低差のある2つのダム
を組み合わせた「揚水発電」を利用して、余剰電力を水力エネルギーに変えて貯め
ておける。それでも電力が余ってしまう、だから再生可能エネルギーを急に増やさ
ないでほしい、と電力会社は主張する」(余剰電力で水素ガスを作る「Power to Gas
2014.11.28 スマートジャパン)と掲載しているが、これは『再エネが一番安い時
』(2014.11.28)で掲載引用した記事(日本ビジネスプレス「原油安でも再生エ
ネの方が安い、が世界の新常識 本来は先を行くべき日本が周回遅れになる危険性
」2014.11.28)と期せずして同期している。そして、ならば水素がある。余った
電力を使って水を電気分解すれば、水素ガスと酸素ガスを発生させることが可能だ。
電力(パワー)からガスを作るので、欧米では「Power to Gas」と呼ぶ。電力を貯め
る新しい方法として、ドイツをはじめ先進国で研究開発が活発になってきたという
から、これこそわたしが提唱する『オールソーラーシステム』と合致し、その背景
としての『デジタル革命渦論』があるというわけだ。そろそろ次のステージ展開の
準備ということになるのだが・・・。

           
                                   

 

 

● 彦根城フェスのフィナーレイベント 流鏑馬



流鏑馬(やぶさめ)は、疾走する馬上から的に鏑矢(かぶらや)を射る、伝統的な騎射技術
稽古・儀式のこと。馬を馳せながら矢を射ることから、「矢馳せ馬(やばせうま)」と呼ばれ、
時代が下るにつれて「やぶさめ」と呼ばれるようになったといわれる。流鏑馬という言葉か
ら、連想したことは儀式としてのそれでなく、「状況(時代)を先導する所作」というイメージ
に突き当たった。それはそれまでの人知れぬ鍛錬、シャドーワークそのものであり、『愚図
にあやかる』(内村剛介)や『(人の本性は)知行不一致』(吉本隆明)の言葉に突き当たる
ものがある。そう思い当たったら、精神が昂揚し、天候の悪い中を押し、ウィスキーを買い
に出かけていた。



 

 

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