A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

【当世欧州サイケ事情】デッド・ヴァイブレーションズ/ニュー・キャンディーズ/ルシッド・ドリーム/チャーチ・オブ・ザ・コズミック・スカル/幾何学模様etc.

2019年04月01日 00時50分21秒 | ロッケンロール万歳!

80年代から90年代にかけて欧米でサイケデリック・リバイバルが起こり、世界中にサイケデリック・ロックを標榜するバンドが数多く登場した。その中からネオサイケデリックやシューゲイザーやドリームポップ、ストーナーロック、ヘヴィ・サイケといったサブジャンルが生まれ、世界のポップシーンに影響を及ぼした。21世紀に入ってからは、殊更に「サイケ」を標榜しなくても、ロックの中にサイケの要素が含有されるようになった。しかし、筆者のように「サイケ」を人生の指針として心に刻んだ音楽愛好家にとっては、何でもこなすマルチな才能よりも「これしか出来ない」不器用なミュージシャンに共感を覚えるのは確かであろう。

そんな「サイケしか出来ない」不器用なバンドやアーティストを、現在のヨーロッパ/イギリスで探してみた。

●デッド・ヴァイブレーションズ Dead Vibrations

2015年4月スウェーデン、ストックホルムに出現した4人組。シューゲイザー、ネオサイケ、ロックンロールの境界を越えて、暴力的なギター、雷鳴のドラム、歪み切ったベース、リバーヴ・ジャンキーなサウンドはヴェルヴェット・アンダーグラウンドの曾孫と言える。女子ドラムが素敵。 

Dead Vibrations – "On a Sunday Morning" – Live session


●ニュー・キャンディーズ New Candys

イタリア、ヴェニスにて2008年に結成。ダーク・モダン・ロックンロールと呼ばれるサウンドは、ノイジーで血の臭いのするギターと浮遊感のあるドリーミーなメロディに彩られている。カラフルなライトショーを取り入れたステージが見どころとのこと。 

フェルナンド・ヌッティ FERNANDO NUTI(lead vocals, guitar, sitar)
アンドレア・ヴォルパト ANDREA VOLPATO(lead guitar, backing vocals)
アレッサンドロ・ボッチェーロ ALESSANDRO BOSCHIERO(bass)
ダリオ・ルチェッシ DARIO LUCCHESI(drums, percussion)

New Candys - Song for the Mutant 


●ソニック・ジーザス Sonic Jesus 

 

イタリア生まれのマルチ楽器奏者ティツィアーノ・ヴェロニーズ Tiziano Veroneseにより2012年にスタートしたプロジェクト。Fuzz Club RecordsからリリースしたEPが各国で高く評価され、ヨーロッパ中のロックフェスから出演依頼が殺到した。2017年アルバム『Grace』をリリース。浮遊感のあるアシッド・フォークを核に、ガレージロックとクラブビートも取り入れ、サイケの境界を拡張している。

Sonic Jesus - Lost Reprise

 

●ルシッド・ドリーム The Lucid Dream

イングランド中部の街カーライルで2008年に結成。明晰夢(自分で夢であると自覚しながら見ている夢)というバンド名に相応しい夢(ドリームポップ)と現実(爆音ギター)が鬩ぎあうロックンロールを展開する。

マーク・エマーソン Mark Emmerson (lead vocals, guitar)
ウェイン・ジェファーソン Wayne Jefferson (guitar, keys, backing vocals) 
マイク・デントン Mike Denton (bass, backing vocals) 
ルーク・アンダーソン Luke Anderson (drums, percussion)

The Lucid Dream - Bad Texan


●ヘヴィ・マインズ The Heavy Minds

 

オーストリア北部のアウトバックをベースとするサイケデリック・ガレージロック・トリオ。60年代後半/70年代ヘヴィサイケに影響されたファズ・サウンドが特徴。プログレ、ネオサイケ、ローファイ、ガレージロックの要素も兼ね備えた個性派である。

The Heavy Minds - Rivers (Official Video)

 

●1000モッズ 1000mods 

ギリシャのチリオモディで2006年に結成されたストーナーロックバンド。バンド名は出身地 Chiliomodiの言葉遊び(1000の発音はギリシャ語でchilliaになる)。影響を受けたバンドとしてMC5、ブラック・サバス、 Colour Haze、Kyussをあげている。粘り着くファズギターと地を這うビートが、トリップ感を醸し出す。

ダニ G. Dani G. - Vocals and Bass
ジアニス Giannis S. - Guitar
ジョルゴス Giorgos T. - Guitar
ラブロス Labros G. - Drums

1000mods - Electric Carve (Official Video)

 

●チャーチ・オブ・ザ・コズミック・スカル Church of the Cosmic Skull

 

イギリス・ノッティンガム出身のロック・バンドにしてスピリチュアル団体でもある。世界中をコズミック・レインボーで繋ぐことを目指しているという。「ELO、ディープ・パープル、フリートウッド・マック、クイーンのファンの為のオカルト・ポップ」と評される。ハモンドオルガンやエレクトリック・チェロを取り入れ、6声のハーモニーを持つサウンドは「ブラック・サバスをバックにABBAが歌う」とも形容されている。良質なブリティッシュロックで信者を獲得しようというコンセプトは素晴らしいが、問題はその存在を如何に世界にアピール(布教)していくかであろう。

ビル・フィッシャー Bill Fisher - Guitar & Vocals
マイケル・ウェザーバーン Michael Wetherburn - Hammond Organ & Vocals
ロズ・ストーン Loz Stone - Drums
サム・ロイド Sam Lloyd - Bass & Vocals
ジョー・ジョイス Jo Joyce - Vocals
エイミー・ニコルソン Amy Nicholson - Electric Cello & Vocals
キャロライン・コーリー Caroline Cawley - Vocals

Church of the Cosmic Skull - Evil in your Eye (Official Video)

欧羅巴
サイケの色は
カラフルに

●幾何学模様 Kikagaku Moyo

2012年に東京で結成。シタールを取り入れたアシッドロックで海外から高く評価され、海外ツアーを何度も行っている。これまで3枚のアルバムをリリース。テキサスのオースティン・サイケフェスやパリコレクションのIssei Miyakeコレクションで演奏をしている。

Go Kurosawa(ds,vo)
Tomo Katsurada(g,vo)
Daoud Popal(g)
Ryu Kurosawa(sitar)
Kotsu Guy(b)

Kikagaku Moyo/幾何学模様 "Kodama" Official Music Video

 

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映画『ボヘミアン・ラプソディ』に思うロックの二面性〜“伝説のチャンピオン”『クイーン』vs “お前は売女”『セックス・ピストルズ』

2018年11月15日 02時23分58秒 | ロッケンロール万歳!


クイーンのフレディ・マーキュリーの半生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』が話題である。かくいう筆者も40年来のクイーン・ファンの家人と一緒に応援上映を観てきた。飛行場の荷物運びがロックスターに成り上がるまでのドタバタ劇はまるで『スパイナル・タップ』のリメイク版だが、実話に基づくノンフィクションという点で興味深い。家人に依ると史実と異なる部分が何ヵ所かあるそうだが。つまり70年代のロック・スターは名声や性欲や酒やドラッグに溺れ常人には思いもつかない愚行を重ねる一方で、救いを求める孤独な魂を宿していたという事実である。よくやるな、と感心するやら呆れるやらしたのは、ラストのライヴ・エイドの演奏シーンの完コピ振り。森村泰昌のセルフ・ポートレートの映画版のようなこだわりと狂気に恐れ入ってしまった。

ラミ・マレック主演!映画『ボヘミアン・ラプソディ』予告編


映画の中に「ウィ・ウィル・ロック・ユー」の誕生が描かれている。自分たちの演奏に観客を参加させたいと考えたブライアン・メイが、スタジオでメンバーやガールフレンドに足踏みと手拍子をさせて「ドンドンパッ」のリズムを作り出したという。このエピソードは史実ではないらしいが、クイーンがレコーディングをしていたロンドンのウェセックス・サウンド・スタジオで、セックス・ピストルズがデビュー・アルバムのレコーディングをしていたことは映画には登場しないが史実である。ピストルズは当時EMIと契約していてクイーンのレーベル・メイトだった(すぐにテレビでFUCKを連発した事件が発生し契約破棄に至った)。

The Great Rock 'n' Roll Swindle (1980) Trailer


当然ながらスタジオで顔を会わせることになり、シド・ヴィシャスとフレディ・マーキュリーがケンカをしたという逸話が伝えられている。⇒QUEENフレディー・マーキュリー VS ピストルズ シドヴィシャス
それはともかく、注目すべきはオールド・ウェイヴの代表格のクイーンと、ニュー・ウェイヴの急先鋒ピストルズが由緒正しいスタジオできちんとした機材とプロフェッショナルなエンジニアを使って録音されたことである。ピストルズはピンク・フロイドやロキシー・ミュージックを手がけたクリス・トーマスのプロデュースで「パンク=チープ」ではないハイクオリティなサウンドを作り上げた。

Freddie Mercury Vs. Sid Vicious(Sex Pistols) 1977


完成した2枚のアルバム、クイーン『世界に捧ぐ』 (News Of The World) とセックス・ピストルズ『勝手にしやがれ!!』(Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols)はイギリスで同じ1977年10月28日にリリースされた。アメリカでの発売日は不明(州によって違っていた)だが、イギリス盤とほぼ同じ頃だった可能性が高い。つまりこの2枚は同じ日にレコード店に並び、どちらが売れるか競ったのである。その結果本国のUKチャートではピストルズ1位・クイーン4位でピストルズの勝利。アメリカではクイーン3位・ピストルズ106位、日本ではクイーン3位・ピストルズ29位とクイーンの圧勝だが、『勝手にしやがれ』はアメリカでロングセラーになり15年後の1992年にプラチナディスク(100万枚)に輝いた。

Queen - We Will Rock You (Official Video)


それ以上に面白いのは両アルバムのオープニングSEである。『勝手にしやがれ』の1曲目「さらばベルリンの陽 Holidays in the Sun」は逼迫した軍靴の行進の足音でスタート。一方『世界に捧ぐ』の1曲目「ウィ・ウィル・ロック・ユー We Will Rock You」は映画に出てきた通りのドンドンパッの足踏み&手拍子ではじまる。パンクは戦争や危機を予感させる軍靴の響き、大物ロックは「みんなで仲良く手を叩こう」。似たような音でも両者の意識の違いを如実に物語っている。また「伝説のチャンピオン We Are the Champions」で自らを勝利者として誇ったクイーンに対し、ピストルズは「アナーキー・イン・ザ・U.K. Anarchy in the U.K.」で無政府主義者になりたいと無法者宣言をした。 経済危機に喘ぐ70年代末の大英帝国で、革命を求める欲求不満の若者たちがどちらを支持したかは明らかだろう。

Sex Pistols - Holidays In The Sun


しかし1年半後にピストルズのパンク性を象徴するシド・ヴィシャスがオーバードーズで死去。14年後にクイーンの顔だったフレディ・マーキュリーがエイズで死去。二人とも伝説のロッカーとして今でも多くの信奉者を産んでいる。ライフスタイルや政治思想は違ってもロックンロールの神に見初められたことは間違いない。

映画【シド・アンド・ナンシー 30周年デジタル・リマスター版】予告


現在も活動する元メンバーたちの魂もロック天国へ召される日がいつか来る。それは聴き手である僕等も同じである。ロックンロールが楽しめるうちは思い切り楽しみたいものである。ねえ。

あの世でも
喧嘩してるか
仲良しか

Queen - Live In Japan 1985 (5/11/85) - Part 1


Sex Pistols Live at Budokan, Tokyo Japan ● The Filthy Lucre Tour ● Full Performance (1996)

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【私のB級サイケ蒐集癖】第14夜:ガレージパンクの初期症状『?(クエスチョン・マーク)・アンド・ミステリアンズ』『シャドウズ・オブ・ナイト』

2018年06月17日 01時36分06秒 | ロッケンロール万歳!


ガレージロック (Garage Rock) は、1960年代半ば以降に台頭したロックの1ジャンル。ガレージ(車庫)で練習するアマチュアバンドが多かったことに由来する名称で、時に60sパンク(60年代パンク)、ガレージパンクとも呼ばれる。1970年代前半に一時忘れられたが、パンク・ニューウェイブ隆盛の1977年以降に再評価された。
Wikipediaより


77年にパンクに心酔した理由のひとつは長ったらしいギターソロやドラムソロのない潔さと加工されていない録音の生々しさだった。しかし80年代が近づきニューウェイヴと呼ばれるシンセサイザーを多用し電気処理した音作りが主流になると、潔さや生々しさがロックから失われていった。そんな時に公開されたザ・フーの映画『さらば青春の光』は60年代ロックの未加工のパワーを全編に漲らせ、モッズ少年のライフスタイルを克明に描く秀逸な青春映画だった。少し前に名画座でリバイバル上映された『アメリカン・グラフィティ』に心酔していた筆者は、ロンドンの哀愁漂う雰囲気とブリティッシュ・ビートの熱量に心奪われた。ザ・フーやスモール・フェイセズの初期の荒々しいR&Bナンバーにはパンクの潔さとは違った若気の至りを感じさせた。

Quadrophenia - Official Trailer [HD]



ドクター・フィールグッドやウィルコ・ジョンソンに続いて79年にデビューしたイギリスのパブロック・バンド、ジ・インメイツが日本でもちょっとだけ話題になった。彼らのシングル『ダーティ・ウォーター』はアメリカの60年代のバンド、スタンデルズのカヴァーだった。ブリティッシュ・ビートではなくアメリカの曲というのに興味を持ちレコード店へ通ううちに、『ナゲッツ』や『ペブルス』等のコンピレーションLPを通じて多数の知られざるガレージパンクバンドが存在したことを知った。そのきっかけとなったレコードを久々に聴いてみた。

The Inmates Dirty Water 1980



●?(クエスチョン・マーク)・アンド・ミステリアンズ『96粒の涙』
? & The Mysterians ‎– 96 Tears (Cameo ‎– SC-2004 / 1966)


1983年9月に下北沢エジソンで購入。アメリカのバンドなのに何故かキングレコードのThe Root of British Rockシリーズで77年に再発された日本盤。たぶんほとんど売れなかったのでは?ミシガン州サガノー出身のメキシコ人5人組グループ。常にサングラスをかけているリード・ヴォーカルの名前が?(クエスチョン・マーク)。サングラス程度で正体不明とは些か幼稚に思えるが、ドッツ東京の例もあるので笑えない。タイトル・ナンバー『96粒の涙』で全米No.1に輝いた彼らの特徴は執拗に同じフレーズを繰り返すオルガンにとどめを刺す。?の粘着質のヴォーカルと相俟って、出口のない十代のフラストレーションの迷走感を暴き出す。ギタリストは当時16歳、オルガンは15歳だからホントのティーンエイジキックスである。筆者的にはペンタトニックだけしか弾けない中学生のように辿々しいギタープレイに痺れる。

Question Mark & The Mysterians - 96 Tears



●シャドウズ・オブ・ナイト『グロリア』
The Shadows Of Knight ‎– Gloria (Dunwich ‎– S-666 / 1966)


シカゴ出身の5人組。ワーナー・パイオニアの青春秘蔵盤シリーズで81年に再発(日本初発売)された。このシリーズはMC5『キック・アウト・ザ・ジャムズ』やラヴ『フォーエヴァー・チェンジ』も含み、当時海外で盛んだったサイケ再評価の動きに連動していた。ガレージパンクの古典として有名なジャケットに包まれて、全米10位ヒットのゼム『グロリア』のカヴァーを含むR&Bフレイヴァー溢れるナンバーを収録。ミステリアンズよりも演奏は達者で、ヴァン・モリソンの影響を受けたダミ声ヴォーカルもカッコいい。そしてふてぶてしい面構えのメンバーの平均年齢は19歳だから、多少世の中の仕組みを理解しはじめ、十代の欲求不満を音楽で解消する術を無意識ながら心得ているのだろう。

Shadows of Knight Gloria


これら以外にザ・シーズ、アウトサイダーズ、ブルース・マグース、ミュージック・マシーン、ガンツ、ケニー&ザ・カジュアルズなどガレージパンクの世界にハマっていくことになる。

ガレージで
パンクしたまま
オーヴァードライヴ

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ルビナーズ/カイル・ヴィンセント@高円寺HIGH 2017.11.9 (thu)

2017年11月12日 01時40分35秒 | ロッケンロール万歳!


AMR presents
The Rubinoos「ロックンロール・カヴァー・ナイト」
スペシャル・ゲスト:Kyle Vincent

場所: 高円寺HIGH
日時: 2017/11/09
開場 18:00 開演 19:00



4度目の来日を果たすルビナーズから日本のファンへ特別なプレゼント。彼らが愛してやまないロックンロールの名曲ばかりをプレイする特別なライヴに先着200名様をご招待。加えて、彼らと親しいUSシンガー・ソングライター、カイル・ヴィンセントがオープニング・ゲストとして出演。本国アメリカでも絶対観られないこの特別なライヴを絶対に見逃すな!!
*無料イベントですが、会場にて1ドリンクのご注文が必要になります。



アイドルの無銭(無料)イベントは数多いがロックバンド、特に来日バンドの無銭イベントは珍しい。しかも筆者が数ヶ月前からハマっているパワーポップUSAのレジェンド「ルビナーズ」だとは夢ではないかと何度も確認した。2011年以来通算4回目の来日ツアーということもまったくノーチェックだったし、このチャンスを逃したら二度と観れないかもしれない。他に気になるアイドルイベントもあったが、この日だけはと意を決して高円寺HIGHを訪れた。よくある70年代ロック再結成ツアーの加齢臭漂う客層ではなく比較的若めの現役ロックファンや女性ファンの多い現場は、新宿JAMやRed Clothのガレージロック系イベントの面持ち。
【パワーポップUSA】THE POP/THE A′s/THE RUBINOOS/THE dB′S/MILK′N′COOKIES etc.

●カイル・ヴィンセント


何処かで聞いた名前だなと思ったが、ライヴを観ても思い出せない。アコギやエレピの弾き語りはAORと西海岸ロックとパワーポップのアマルガム。伸びのある高音のロングトーンの素晴らしさに震えるが、最も楽しいのは親父ギャグ連発のMC。アメリカのスタンダップコメディを思わせるステージにショービズ魂を感じる。カラオケをバックにハンドマイクで歌うベイ・シティ・ローラーズは本物以上に本物っぽい。後で調べたら2000年頃再結成BCRに参加したことを知り納得。1985年のクリスマスにキッス、ボン・ジョヴィとカイルのバンド、キャンディで武道館公演が企画されたがキャンセルになった、という話は本当のことだという。

Kyle Vincent | Wake Me Up (Acoustic)




●ルビナーズ


70年結成だから全員60代のルビナーズのメンバーの外見は気のいいおじさんだが、演奏は驚くほどパワフル。90年代に再結成して以来、コンスタントに活動してきた現役感がハンパない。60'sサーフ/ガレージ・ロック、バブルガムポップ、70年代パンク/ニューウェイヴを中心としたカヴァーはどれも一流のハーモニーでアレンジされ、アメリカらしいポップセンスに溢れている。オールディーズで盛り上がろう的なレトロ趣味ではなく、今現在のルビナーズスタイルを発揮して、満場のファンも大喜び。個人的にはフレイミング・グルーヴィーズ「シェイク・サム・アクション」と西部劇映画「続 夕陽のガンマン (The Good, The Bad, The Ugly)」のテーマ曲が嬉しかった、洋楽を聴き始めた中学生の頃を思い出した。オリジナルでもカヴァーでも関係なくルビナーズ入に染めてしまうポップの魔法を堪能した。

The Rubinoos - I Think We're Alone Now


カヴァーソング
ロケンロー精子
受粉せよ

物販で申し訳程度に飾ってあったサンフランシスコのガレージロックバンド「サイコティック・パイナップルズ」のブック型CDを購入。直接メンバーが参加していたわけではないが、記念としてルビナーズ・メンバー+カイル・ヴィンセントからサインをもらった。


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【おやじロックはハートブレイカー】トム・ペティ/ジョニー・サンダース/グランド・ファンク・レイルロード/レッド・ツェッペリン/フリー/ハイロウズ

2017年10月04日 08時51分58秒 | ロッケンロール万歳!


筆者がハートブレイク(Heartbreak)という単語を知ったのは廚二時代にラジオで聴いたエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」だった。スローテンポの艶かしいロケンローはハートブレイク=失恋の切なさを語っていた。当時住んでいた金沢のダイワデパートの中古レコードセールでグランド・ファンク・レイルロードの「ハートブレイカー」というシングルを買って、プレスリー以上に切ない絶唱にエクスタシーを感じた。60・70年代ロック界には「ハートブレイカー」を称するロッカーが少なくない。青春の苦しみや欲求不満をロックで発散したロック界の「失恋者」の歴史を紐解いてみよう。ところで厳密には「ハートブレイカー(Heartbreaker)」とは失恋した本人ではなく「胸が張り裂ける思いをさせた人」つまり恋愛の相手を差す。

●グランド・ファンク・レイルロード『ハートブレイカー』(1969)


「レッド・ツェッペリンもぶったまげたゴキゲンなサウンド!!」というキャッチコピーは69年のデビュー当時レッド・ツェッペリンのアメリカ公演の前座をやった際に、その歌と演奏力で聴衆を熱狂させ、ツェッペリンを食ってしまったという実話に基づく。シングルカットされた「ハートブレイカー」を井上陽水がパクった「傘がない」は筆者のカラオケの十八番。演歌に通じる絶唱は最高にアガる。1971年雷雨の後楽園球場での来日公演は洋楽ロック伝説として今もロックおやじの自慢話の定番である。


Grand Funk Railroad - Heartbreaker



●レッド・ツェッペリン『ハートブレイカー』(1969)


ブリティッシュロックの雄レッド・ツェッペリンの69年の2ndアルバム『レッド・ツェッペリンII』に「ハートブレイカー」という同名異曲が収録されている。発売日はGFRが69年8月、ツェッペリンが69年10月22日とGFRの方が2ヶ月早い。アメリカ公演でGRF喰われた仕返しではないか?という説は妄想かもしれないが、英米ハードロックの巨匠が時を同じくして失恋ソングを発表した事実は興味深い。

Led Zeppelin - Heartbreaker - Live Earls Court



●フリー『ハートブレイカー』(1972)


GRF、ZEPの3年後、英国を代表するブルースロックバンド、フリー (Free)がリリースした6作目にしてラスト・アルバムが『ハートブレイカー』。日本人ベーシスト山内テツ迎えた新編成で再スタートを切ったが、力及ばず73年に解散。そんな苦しみを象徴するスローブルースは失恋になぞらえて「ハートブレイカー」と呼ぶしか無かったのだろう。

Free-'Heartbreaker'-1973



●トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズ『アメリカン・ガール』(1976)


「ハートブレイカー」というバンド名はそれ以前にもあったに違いないが、世界レベルで名をなしたのはトム・ペティが最初だろう。1950年10月20日 アメリカ合衆国フロリダ州ゲインズビルで生まれたトムは、マッドクラッチというバンドを経て、1976年にトム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズとしてデビューを果たし、ソロやボブ・ディラン等とのバンド活動を含めアメリカを代表するロック・アーティストとして君臨した。筆者は決して熱心なリスナーでは無かったが、リッケンバッカーを弾くブロンド長髪のルックスは、エリオット・マーフィーを思わせカッコいいし、アメリカらしい骨太なギターロックは折に触れて聴きたくなる。2017年10月2日心拍停止で66歳で逝去。合掌。

TOM PETTY & THE HEARTBREAKERS - American Girl (1978 UK TV Performance)



●ジョニー・サンダース&ザ・ハートブレイカーズ『L.A.M.F.』(1977)


トム・ペティと同じ頃ニューヨークで、ニューヨーク・ドールズを脱退したギタリストのジョニー・サンダース(1952年7月15日 - 1991年4月23日)が結成したバンドが同じハートブレイカーズ。77年ロンドンに渡り『L.A.M.F.』 (Like A Mother Fucker)をリリースし、セックス・ピストルズとツアーを行いニューヨークパンクとロンドンパンクを結ぶ存在となった。リリース当時は単に「Heartbreakers」名義だったが、トム・ペティ&ザ・ハートブレイカーズの商標の関係で後に「Johnny Thunders and The Heartbreakers」に改められた。

Johnny Thunders & The Heartbreakers - Born To Lose (Punk Rock Movie, 1977)



●ザ・ハイロウズ『ハートブレイカー』(1997)


日本側のハートブレイカー代表は元ブルーハーツのヒロト&マーシーが95年に結成したTHE HIGH-LOWS。97年にリリースしたEP『4×5』(フォー・バイ・ファイブ)に収録。ブルース好きな甲本ヒロトの作詞作曲で、マイナーメロディの失恋ブルースロケンローになっている。ライヴで披露されたことはほとんどないと思われるレア曲。

ハートブレイカー/THE HIGH LOWS




失恋は
何歳になっても
悲劇的



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【おやじロックは三単語】ブルー・オイスター・カルト/ブラック・オーク・アーカンソー/バックマン・ターナー・オーヴァードライヴ/テン・イヤーズ・アフターetc.

2017年09月28日 08時36分50秒 | ロッケンロール万歳!


音楽ストリーミングサービスSpotifyは流しっぱなしにしておくと勝手に選曲して曲が流れるので重宝している。通勤電車で居眠りして最寄り駅で目覚めたら、何処かで聴いたような古いハードロックが流れていた。おおかっこいい、と思うとブラック・サバスやレインボーだったりして、聴かず嫌いしていた70年代ハードロックの新鮮な響きに喜々快々した。パープル・ファミリーが続いた後に突然ハーモニーメインのマイナー調のフォークロックが流れ出した。バーズかCSNYだっけ?と思ってスマホをみたら「Blue Öyster Cult」の文字。凡百のアメリカン・ハードロックだと思っていたブルー・オイスター・カルトのコーラス・ハーモニー豊かな叙情歌に、俄然興味が沸いてきた。他にも単語三つのバンド名が頭に浮かんだ。サザン・ロックを中心にブルースロックやカントリーロック、サイケやハードロックに多い三単語バンドのひと味違った燻し銀サウンドに慰撫されてみたい。

●ブルー・オイスター・カルト Blue Öyster Cult


ニューヨーク出身のハードロックバンド。結成は1967年と意外に古く、72年にメジャー・デビューし10作を超えるアルバムをリリース。バンド名は「地球の歴史を監視するエイリアン組織」の名称とのこと。70年代後半の「ゴジラ」の一発ヒットや、『ミュージック・ライフ』に載ったギタリストが4人並んだ写真のイメージが強く日本では損をしている。今でもギタリストが多いバンドは「ブルー・オイスター・カルトみたい」と呼ばれる。

Blue Oyster Cult - Don't Fear The Reaper (Single Version) (1976)



●ブラック・オーク・アーカンソー Black Oak Arkansas


名前の通り1970年に米アーカソンソー州で結成されたサザン・ロック・バンド。1971年から1976年までの僅か6年の間に実に10枚もの作品を米アルバム・チャートにランク・インさせ人気を誇った。日本盤もリリースされたが果たして日本での人気はどうだったのだろう。アメリカ南部らしいワイルドなジャケットが多く当時中学生の筆者はドキドキしていた。ダミ声ヴォーカルが好き嫌いが分かれそう。

Black Oak Arkansas / When Electricity Came To Arkansas / 1974



●バックマン・ターナー・オーヴァードライヴ Bachman-Turner Overdrive


バックマン3兄弟とターナーにより1970年に結成されたカナダのロックバンド。当時の日本ではカナダも辺境ロックだった気がする。筆者にとってカナダは北海道のように広大な国というイメージがあり「ハイウェイをぶっ飛ばせ!」という放題も相俟って、トラック野郎のロックバンドだと思っていた。今聴いてもその印象に大きな違いは無い。

B.T.O - Roll On Down The Highway - HQ



●グランド・ファンク・レイルロード Grand Funk Railroad


70年代の日本ではレッド・ツェッペリンを凌ぐ人気を誇ったハードロックバンド。中学時代の筆者はグランド・パンツ・レインコートと呼んでいた(同じくオール・マン●・ブラジャーズ・バンドというのも)。3Dメガネで飛出すジャケットとか豪華な装丁も売れていたからこそ可能だったのだろう。ギタリストのマーク・ファーナーのオリジナルモデルのギターが欲しかった。

Grand Funk Railroad - Heartbreaker (Live)



●マーシャル・タッカー・バンド The Marshall Tucker Band


サザン・ロックでは個人名を冠した名前が多く、必然的に三単語バンドだらけになる。

1971年アメリカ南部のサウスカロライナで結成されたこのバンドも同じかと思ったら、今頃になってマーシャル・タッカーという名前のメンバーがいないことを知って茫然自失としている。イラスト中心のジャケットが魅力で、中学生の筆者はジェネシスと同じようなイメージで捉えていた。

The Marshall Tucker Band - Can't You See - 9/10/1973 - Grand Opera House (Official)



●ウィンターズ・ブラザーズ・バンド The Winters Brothers Band


テネシー州ナッシュビル出身のサザン・ロック・バンド。ジョニー・ウィンターが大好きだった廚二時代に音楽雑誌で見たこのジャケットのイラストが忘れられない。勿論ジョニーとは無関係だと知っていたが。結構宣伝された割にはパッとせず、本国でもこの一作でメジャー契約を切られたが、地元のインディーレーベルで活動を続けているようだ。

The Winters Brothers Band live at the Volunteer Jam in 1979



●ビリオン・ダラー・ベイビーズ Billion Dollar Babies


1969年デビューしたアリス・クーパーはバンドの名称でもあった。ヒット街道を走るうちにヴォーカルの個人名となり、73年にメンバーを一新しアリス・クーパーはスーパー・スターになった。残された元メンバーが結成したのがビリオン・ダラー・ベイビーズ。アリス・クーパー時代のヒット曲を名乗る自虐バンドか?。ヴォーカルがアリス似なのも痛ましい。今年春、オリジナル・アリス・クーパー・バンド再結成ツアーで和解した模様。

Alice Cooper Band Reunited - I'm Eighteen & Billion Dollar Babies May 14 2017 Nashville



テン・イヤーズ・アフター Ten Years After


65年デビューのイギリスのブルースロックバンド。69年ウッドストック・フェスティバルに出演し大々的な人気となった。筆者がギターを始めた頃、早弾きギタリストの筆頭に挙げられていたのがアルヴィン・リーだった。細かいピッキングで全部の音を弾くスタイルは、タッピングやライトハンド奏法が一般的になる以前の超絶テクニックに違いない。

Ten Years After - Good Morning Little School Girl - 8/4/1975 - Winterland (Official)



●ジョニー・ウィンター・アンド Johnny Winter And


百万ドルのギタリスト、ジョニー・ウィンターは中学時代のスーパーアイドル。パンクに痺れてギターの練習を放棄した後もジョニーだけは愛聴していた。高校進学時に買ったギターはグレコのファイアーバード・モデル。セックス・ピストルズも使っていたので問題なし。ジョニーの魅力は『狂乱のライヴ』のジャケット写真に凝縮されている。数年前にやっと来日したジョニーが椅子から立ち上がったときの昂奮が忘れられない。

JOHNNY WINTER AND: 1970 Clip w. RICK DERRINGER


おやじロック
若いときでも
おやじっぽい

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【J-ROCKアラート発令中!21世紀の警報ソング】ブルーハーツ/ハイロウズ/クロマニヨンズ/グドモ/SOPHIA/たんこぶちん/ランナウェイズ

2017年09月16日 09時53分30秒 | ロッケンロール万歳!



THE BLUE HEARTS『爆弾が落っこちる時』



ブルーハーツ『月の爆撃機』





THE HIGH-LOWS『ミサイルマン』





ザ・クロマニヨンズ『突撃ロック』





グッドモーニングアメリカ『ミサイルをぶちかましてぇな』





SOPHIA『ミサイル』





たんこぶちん『遠距離恋愛爆撃ミサイル』





横道坊主「ミサイル』





THE BLUE HEARTS『チェルノブイリ』





The Runaways『Cherry Bomb』




警報だ
悩殺爆弾
降ってくる

J-ALERT警報音(弾道ミサイル警報音)

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【パワーポップUSA】THE POP/THE A′s/THE RUBINOOS/THE dB′S/MILK′N′COOKIES etc.

2017年08月18日 08時22分51秒 | ロッケンロール万歳!


地下音楽/地下ジャズ/地下アイドルばかり聴いていると、単純明快なロケンローが無性に聴きたくなる。60sガレージロックやパンクも悪くないが、青春時代の甘い思い出を呼び覚ますちょっと哀愁のあるキャッチーな曲が疲れた心に刺さる。77年に勃発したパンクロックは翌年にはニューウェイヴと呼ばれるようになり、幾つかのサブジャンルが生まれた。そのひとつがパワーポップだった。元々はザ・フーのサウンドの表現だったパワーポップは、決してニューウェイヴ固有のものではなく、70年代バブルガムポップやグラムロックと連動しながらパワーポップバンドが活動していた。誰もニューウェイヴと呼ばないベイ・シティ・ローラーズやバスターも「明快なギターサウンドとキャッチーなメロディ」というパワーポップの定義に当て嵌まる。しかしながら地下愛好家の筆者の心を震わせるのは、名声や成功を手にすること無くひっそりと活動したB級バンドたちの残り香なのだ。筆者のパワーポップ偏愛盤・アメリカ編をお届けする。肝心なのは音なのでプロフィールは端折らせていただくことをご了承いただきたい。

●THE POP/ザ・ポップ『GO!』


ジャケットが最高にカッコいいロサンゼルスの4人組。79年の2ndアルバム。

The Pop - Shakeaway



●THE A′s/ジ・エーズ『THE A′s』


ニューヨーク出身の5人組。79年のデビューアルバム。キーボード入、鼻にかかった中性的なヴォーカルがNYパンクっぽい。

THE A's - Live - Who's Gonna Save The World - OGWT - 1979




●THE dB′S/ディービーズ『Stands for decBels』


ニューヨーク出身の4人組、81年のデビューアルバム。陰影のあるサウンドはブリティッシュポップの香り。

The dB's - Stands for deciBels




●DIRTY ANGELS/ダーティ・エンジェルス『Kiss Tomorrow Goodbye』


ニューヨーク出身の4人組、76年のデビューアルバム。パブロック風の哀愁ロケンロー。

Dirty Angels - Tell Me (1977)




●MILK′N′COOKIES/ミルクン・クッキーズ『Milk 'N' Cookies』


ニューヨーク出身の4人組。73年結成のグラムポップバンド。75年のデビューアルバム。バブルガム風のアイドルボイスがカワイイ。

Milk 'N' Cookies - Not Enough Girls (In The World)



●THE RUBINOOS/ルビナーズ『The Rubinoos』


カリフォルニア州バークレー出身の4人組。77年のデビューアルバム。日本ではアイドル風に宣伝された。今年11月に来日する。

Rubinoos - Full Concert - 05/24/80 - Berkeley Community Theatre (OFFICIAL)




●PSYCOTIC PINEAPPLE/サイコティック・パイナップル『Where's The Party? 』


74年にロサンゼルスで結成された4人組。80年のデビューアルバム。ジャケのラリッたパイナップルは「パイロマン」というキャラクター。

Psychotic Pineapple - I wanna get rid of you



●SORROWS/ソローズ『Teenage Heartbreak』


ニューヨーク出身の4人組。80年のデビューアルバム。初期ビートルズ風のガレージパワーポップ。

Sorrows "Bad Times Good Times" Trailer Oct 19


パワポとは
ソフトじゃなくて
ロケンロー





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【Disc Review】ケヴィン・モービー『シティ・ミュージック』〜鏡の向こうの自分が歌う都会の唄〜

2017年07月11日 01時04分40秒 | ロッケンロール万歳!


都会に生きる悲哀を唄で表現する心優しき自作自演シンガー、などと書くと部屋に引き蘢って鬱々と音楽を作りネット配信するインドア青年を想像するかもしれないが、ケヴィン・モービーはそういうタイプではない。しかし人生をスポットライトの中で満喫するリア充でも無いことは確かだ。鏡に映った自分の姿を無表情に眺めるジャケットは、70年代の鏡の肖像とは次元の異なる存在の希薄さに霞んでいくように思える。

▼鏡ジャケ3選

リンダ・ロンシュタット『夢はひとつだけ』/シルヴァーヘッド『凶暴の美学』/ロジャー・ダルトリー『ワン・オブ・ザ・ボーイズ』


コレまでにリリースしたソロアルバム『ハーレム・リヴァー』(13)、『スティル・ライフ』(14)、『シンギング・ソー』(16)の3作に描かれたのは、20代後半の年齢に比して極めて落ち着いた内省的な世界感だった。静謐な歌い口の中に、冷静に社会を観察する冷めた精神が宿るもの哀しい表情は、ロックシンガーと言うより詩人や随筆家の風貌をたたえている。そんなケヴィンが四作目のソロ作のテーマに選んだのは「シティ=都会」の生活。

「City Music」


毎晩夕食の後、太陽が沈むと夫とふたりで近くの公園に出かけ、アイスクリームを買って食べる。公園の反対側のバーが開くと店に入る。バーではバンドが演奏している。故郷の田舎町で聴いた音楽とは違って都会の音楽はみんなエレクトリック。バーが締まるまで音楽に合わせて踊り、バンドが演奏を終えてドラムをタクシーに乗せて帰るのと一緒にふたりは公園を通ってアパートに帰る。翌朝遅めに目を覚まし、目を擦りながら夫が着替えるのを眺める。ズボン、シャツ、靴、帽子、そして最後にネクタイ。自分も着替えてコーヒーを飲む。そして同じことを繰り返す。

ニューヨークの無名者が書いた手記がジャケット裏に書いてある。ケヴィンが住むカリフォルニアでも、僕等が住む東京でも、都会の生活は似たようなものである。都会で聞こえるのは都会の音楽=シティ・ミュージック。様々な出来事や感情が音楽と共に営まれる。それをケヴィンの観察眼で描き出した11編の物語。しかしそれは他者のものではなくケヴィン自身の物語でもある。上記の手記を書いたのはケヴィン自身かもしれないし、僕かもしれない。都市生活者は無名者であるのだから。

「Aboard My Train」


無名者が自分を取り戻す為には時分自身を見つめ直すことが必要。それに適した道具は「鏡」に他ならない。化粧品で鏡に書き残された文字こそ、自分で自分にあてたメッセージ。恰も某ヒット映画で時間と空間を超えて入れ替わる見知らぬ相手に伝言を伝えたように、鏡の向こうのもうひとりの自分が、メッセージを書き残した自分と入れ替わる時が来るかもしれない。つまり『シティ・ミュージック』に収められた唄は鏡の向こうの自分にあてたメッセージソングとも言えるのである。それを聴くあなたや私が都会の鏡のあっちとこっちのどちらにいるのか、ケヴィンのサイケデリックな唄を聴きながら確かめてみるのも一興だ。



■ケヴィン・モービー・バイオグラフィー
アメリカのシンガー・ソングライター(1988.4.2生) 。フォークロック・バンド、ウッズのベー シストやザ・ベイビーズのギタリストとして知られる。ルー・リード、ボブ・ ディラン、ニール・ヤングらの影響を受け、10歳の頃からギターを始めクリーピー・エーリアンズというバンドを結成。カンサス州からブルックリンに移った のち、ウッズに加入する。ブルックリンに住んでいる間、パンク・ガールズバンド、ヴィヴィアン・ガールズのキャシー・ラモーンと親しくルームメイトであり、一緒にザ・ベイビーズを結成し2枚のアルバムをリリースしている。ソロとしては13年に1作目『ハーレム・リバー』、14年に2作目『スティル・ライフ』、16年に<Dead Oceans>移籍第一弾で3作目となる『シンギング・ソウ』を発表。このアルバムが米音楽サイトのピッチフォークでBEST NEW MUSICと8.3点の高得点を獲得し、国内外で話題をさらった。17年、4作目となる『シティ・ミュージック』を発表する。

都会の唄
通りに立って
歌いたい

▼都会のアルバム3選

エリオット・マーフィー『夜の灯』/シティ・ボーイ『リッツホテルの晩餐会』/S-KEN『魔都』


Elliott Murphy - Diamonds By The Yard


City Boy - Momma's Boy


魔都/S-KEN(1981)
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汝、我が民に非ズ(町田康 新プロジェクト) / マリア観音 / アープンクッカ@秋葉原 club Goodman 2017.6.11(sun)

2017年06月19日 08時33分50秒 | ロッケンロール万歳!


CLUB GOODMAN 21st Anniversary
<無機質な狂気 第4夜~NAOMI Presents Special~>

町田康・新プロジェクト”汝、我が民に非ズ”が、「無機質な狂気 第4夜」にいよいよ登場。 共演は、マリア観音とアープンクッカ。

80年代の日本のパンク最初期のバンドとして必ず名前の上がる”INU”。その”INU”のボーカリスト「町田町蔵」として、そして、芥川賞受賞も受賞した作家「町田康」として、その両輪で活動してきた氏の最新音楽プロジェクト” 汝、我が民に非ズ ” が活動を開始、初めてグッドマンに登場して頂きます!
共演は、こちらも長い活動暦を誇る”マリア観音”と現在の東京アンダーグラウンド・シーンで活躍する”アープンクッカ”

是非、この刺激的な夜をお見逃しなく。
(Club Goodman公式サイトより)

【出演】
汝、我が民に非ズ(町田康・新プロジェクト)
マリア観音
アープンクッカ

開場 18:30 / 開演 19:00
予約 ¥3500/当日¥4000(+1drink)

最近土日は殆ど女子関係の現場に入り浸っているので、今日こそはと決意して昼は江古田の地下現場、夜は秋葉のロック現場を訪れた。今回はその後半、秋葉現場のレポートをお送りする。
背徳トリゾイド/silentwave@江古田 Cafe FLYING TEAPOT 2017.6.11(sun) 

●マリア観音

(写真の撮影・掲載は出演者の許可を得ています。以下同)

1987年結成の長寿バンド。当時テレビのイカ天で観た通りの全身パフォーマンスを30年後も続けているのは驚異的。頭でっかちの知性派ぶった連中を蹴散らす肉体派ロックは、野蛮ギャルドを標榜する野性派ジャズのなか悟空と人間国宝に通じる。ダッシュしジャンプし銅鑼に蹴りを入れる木幡東介のアクションはアイドル現場の乱闘モッシュ擬(もど)きにも喝を入れる。

●アープンクッカ


全く予備知識無しに観たバンドだがかなりの衝撃。女子ヴォーカル&ギターの中村アリー率いる3人組。最初にギター無しで歌った姿に大森靖子を感じたが、ギターを持つとガレージロックもしくは歌謡サイケ風の王道ロックシンガーに変身。ジャニス・ジョプリンもしくはSuperflyの様なシャウトに高円寺風味を感じたが、後で聞いたら実際にUFO CLUBをベースに活動しているとのこと。

●汝、我が民に非ズ

町田町蔵・康の熱心なリスナー/読者ではないが、同年代の表現者としてヒロト&マーシーと共に共感を覚える。ライヴ・パフォーマンスをきちんと観るのは初めてに近い。サックス、ピアノを含む5人組バンドを率いて性急なパンクから甘いバラードまで歌いこなす姿はカッコいい。「恋愛当事者では無い年になって初めてラヴソングが書けるようになった」という言葉に、女性アイドルと疑似恋愛に耽る我が身を顧みた。オレはオレの民で在ろうと決意を新たにした。

我が心
戻る処は
ロックンロール

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