『Delphine Dora / Hymnes Apophatiques』 『デルフィーヌ・ドラ / 否定神学聖歌』
text by 剛田武 Takeshi Goda
CD : Morc Tapes morc 86 / DL : bandcamp
Delphine Dora : Pipe organ, vocals
1. l’espace transcendant (超越的な空間)
2. la plénitude des signes (記号の充満)
3. s’extraire de l’abîme (奈落の底からの脱出)
4. ritournelle scolastique #1 (スコラ哲学的リトルネッロ #1)
5. athanor (錬金炉)
6. mystère indicible (言いようのない謎)
7. ritournelle scolastique #2 (スコラ哲学的リトルネッロ #2)
8. allégresse (歓喜)
9. l’immuable sous-jacent (根底にある不変のもの)
10. la table d’émeraude (エメラルド色のテーブル)
11. l’abîme qui les sépare (二人を隔てる奈落の底)
12. kaïros (カイロス)
13. eon (イーオン)
14. l’esprit vide (空っぽの心)
15. opus divinum (神聖な作品)
16. immobilité (不動)
17. saisir l’éternité dans le temps (時間の中で永遠を把握する)
Mastering by Michael Anderson
Composed by Delphine Dora in St Saphorin Church (July 2021)
Thanks to Yan & Jon from Jolie Vue Festival and Wim (Morc Tapes)
Recorded live at Gallery Nomart in Osaka on
Feb. 19, 2022 during Kohei Nawa’s solo exhibition Esquisse.
Total 38:52
Art direction and production: 林聡 Satoshi Hayashi
Recording and mastering: 林聡 Satoshi Hayashi
Liner notes: 建畠晢 Akira Tatehata / 剛田武 Takeshi Goda
Translation: クリストファー・スティヴンズ Christopher Stephens
Design: 冨安彩梨咲 Arisa Tomiyasu
2013年12月、大阪のコンテンポラリーミュージックユニット.es(ドットエス)の東京ツアーで初めて橋本孝之とsaraの生演奏を体験した筆者は、彼らをを「場所で演奏するのではなく、場所を演奏するユニット」と表現した(⇒#631 .es(ドットエス)LIVE IN TOKYO 2013)。.esのCDのほとんどは拠点である現代美術ギャラリー「ギャラリーノマル」で録音されており、深いナチュラル・リバーヴに包まれた演奏の質感は、ライヴハウスやジャズクラブで演奏される即興ジャズや前衛音楽とは異質の音響ユニットとしての.esのアイデンティティだと思っていた。しかし初めて訪れた新大久保EARTHDOMと池ノ上 BAR GARI GARIに出演した二人は、ギャラリーノマルの演奏を再現するのではなく、それぞれの場所を演奏に同化させ、二日間全く異なる演奏により自我同一性を見せつけた。その1年後に観た四谷茶会記でのライヴでは、据え付けのアップライトピアノのペダル操作でサックスの音を残響させて茶会記の音を演奏してみせた。
でんぱ組の歌詞は字数が多いので歌詞カードの文字が細かすぎて読みにくいことで定評がある。しかも老眼の筆者が拡大鏡を使って苦労しながら調べた曲だけなので、他にもあるかもしれないが、少なくとも2011年から2019年までの9年間に10曲、つまり毎年1曲を超える頻度で<冒険><アドベンチャー>という歌詞の曲を発表しているグループは他にはいないのではないだろうか?特筆すべきは5.「Dear☆Stageへようこそ」で、この歌詞はメンバーではなく、歌の中に登場する田中と称するしがないサラリーマンが、でんぱ組が所属する秋葉原のイベントバー、ディアステージを初めて訪れた時に発するセリフである。つまりディアステージに来ること自体が<冒険>という訳だ。そんなディアステージで誕生したでんぱ組.incこそ、“冒険の冒険による冒険のためのアイドルグループ(Idol group for the adventure by the adventure of the adventure)”であることは間違いない。そして成瀬瑛美=“マキシマム”えいたそは生まれながらの<“超”冒険者>なのである。
LinQは福岡を拠点に2011年に結成されたアイドルグループ。グループ名は「Love in Qsyu(九州)」の略語だという。でんぱ組との繋がりは2014年の10枚目のシングル『ウェッサイ!!ガッサイ!!』のタイトル曲をでんぱ組プロデューサーのもふくちゃんが全面プロデュース、ミュージック・ビデオを夢眠ねむと映像監督のスミスによる映像ユニット・スミネムが監督し、相沢梨紗が衣装デザインを担当したことである。そのカップリング曲が「冒険」というのも、LinQがリスクを顧みずあらたなコラボレーションに挑戦した意気込みを感じさせる。
ロック界のカリスマ、ジム・モリソン率いるザ・ドアーズの代表的ナンバー。原題「Light My Fire(私の火をともせ)」を心ではなく“ハート”に火をつけてと訳した日本タイトルの素晴らしさ。J-POPに同じタイトルを使った同名異曲がいくつもある。えいたそがともした筆者のハートの火は永遠に消えることはない。
The Doors - Light My Fire ( HQ Official Video )
●グランド・ファンク・レイルロード『ハートブレイカー』
Grand Funk Railroad / Heartbreaker
Pink Floyd - Atom Heart Mother: '71 Hakone Aphrodite
●イエス『ハート・オブ・サンライズ』
Yes / Heart Of The Sunrise
ピンク・フロイドと並ぶ英国プログレの雄イエスの71年のアルバム『こわれもの(Fragile)』に収録。邦題は「燃える朝やけ」。“Dream on on to the heart of the sunrise 日の出のハートにあなたを夢見続ける”という歌詞は筆者のえいたそへの想いそのままである。でんぱ組.incの太陽と呼ばれたえいたその輝きは、卒業しても「世界が萌える朝やけ」に他ならない。
Yes - Heart Of The Sunrise Live 1972 Yessongs [HD]
●ヘンリー・カウ『リヴィング・イン・ザ・ハート・オブ・ザ・ビースト』
Henry Cow - Living in the Heart of the Beast
英国プログレのもうひとつの(オルタナティブな)雄と呼べるヘンリー・カウの75年のアルバム『傾向賛美(In Praise of Learning)』に収録。「野獣の心に住む」という意味で、政治的な歌詞の難解な構成の15分におよぶ組曲。えいたそのハートの中に野獣の心があることは、2017年に筆者による論考『えいたそ野性時代』で考察したが、それから5年経った今でも獣のハートを保ち続けるパワーには恐れ入るしかない。ついにえいたそのハートの難解性を分析する研究が求められる時代が到来したのかもしれない。
パンクロックのハートは何色だろう?1977年14歳の時に出たセックス・ピストルズの『勝手にしやがれ』は有名な黄色ジャケではなく、蛍光ピンクのアメリカ盤を買ったので、黄色とパンクは結びつかなかった。その10年後の1987年に『THE BLUE HEARTS』のジャケットを見たとき“パンクロックは青だ!”と確信した。35年経ってもザ・クロマニヨンズでロックンロールし続けるヒロト&マーシーのハートは今も青いままに違いない。えいたそのハートの色は黄色のままだろうか?見極めなければなるまい。
パレードをコンセプトに人の心をワクワクさせるアイドルグループ。グループ名の「I MY ME MINE」には「私は私、自分らしく」という意味を持たせている。2021年6月16日 神田明神ホールにてデビュー。メンバーは音海ゆうな、鈴永りさ、高槻あいの、早瀬ゆい、本多しおり、百千もね、雪白ひなの7人。
爆裂女子や2021年8月7日に活動休止したTHE BANANA MONKEYSのヲタクだったB氏の現在の推しグループ。元夢幻クレッシェンドのメンバー3人を含み、6人がアイドル経験者。ルックス的にはキラキラ系だが、サウンドはスピード感のあるエレクトロロック。メンバーカラーが決まっているのでサイリウム現場が楽しそう。 https://imymemine.bitfan.id/
めろん畑a go goが所属するGollipop Recordから2021年1月24日に登場した新生マスクドアイドル。メンバーは皆野うさこ、やわらぎめんま、玖月琴美 の3人で、同じ事務所のThe Grateful a MogAAAz(モガーズ)やRUNAMENを兼任する。80~90sアニメソングのカバーをレパートリーとする。ゴリラのマスクがトレードマーク。
爆裂女子やネクロ魔からめろん畑a go goへ流れたヲタクは数多い。2019年に姉妹ユニットとしてモガーズがデビュー、めろん畑との兼任メンバーもいて、現場の一体感が生まれた。めろん畑がサイコビリー、モガーズがニューウェイヴ&ビートパンクとどちらもロック寄りなので、もっと和めるパフォーマンスが出来るユニットとしてちびゴリラが生まれたのではないだろうか。着ぐるみアイドルはなんとなく新鮮だし、耳馴染みのあるアニソンをやってくれそうなので、ぜひ観てみたいものだ。
9月28日に新宿ロフトで開催された最終ライヴ「爆裂大解散」ではMC無しで全レパートリー18曲を一気に披露。ありがとうの言葉しかない潔いステージを見せた。そして解散当日10月3日のYouTube配信はメンバーのトークという予想を大きく裏切り、お台場を50分間ひたすら走り続け、最後にデビュー曲「GREAT FXXKING MY WORLD」の路上パフォーマンスで締めるという清々しいエンディングを迎えた。♬この素晴らしきくそったれの世界を / Great Fucking My World / 今ここから走り出すよ♬という歌詞になぞらえて、解散は終わりではなく、新しいはじまりである、というメッセージを届けてくれたのである。
●ヴェルヴェット・アンダーグラウンド/ラン・ラン・ラン The Velvet Underground / Run Run Run
1967年にアンディー・ウォーホルのプロデュースでデビューしたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー作『Velvet Underground & Nico』に収録。ドラッグやSMなどをテーマにした文学的な歌詞、前衛的・実験的なサウンドで後のロックに大きな影響を与えたVUが歌う「RUN RUN RUN」は死への疾走のように聴こえる。くそったれな世界で生きるには表だけではなく裏の世界を知ることも必要なのである。
The Velvet Underground - Run Run Run
●ザ・フー/ラン・ラン・ラン The Who / Run Run Run
ブリティッシュ・ロックの象徴的バンド、ザ・フーの2ndアルバム『クイック・ワン』(1966)の1曲目に収録。モッズのアイドルとしてデビューしたザ・フーがより幅広い人気を獲得しつつあった時期ではあるが、「RUN RUN RUN」は大人への反抗を歌った「マイ・ジェネレーション」に似た粗削りなR&Bナンバー。青臭いと言われても、いつまでも反抗心を忘れてはいけないね。
Run Run Run - The Who
●ザ・シュープリームス/ラン・ラン・ラン The Supremes / Run, Run, Run
ブラック・ミュージックの大スター、ダイアナ・ロスが在籍していたガールズ・グループ、ザ・シュープリームスの2ndアルバム『Where Did Our Love Go(愛はどこへ行ったの)』(1964)に収録。シングル曲が3曲連続で全米No.1ヒットを獲得し、シュープリームスを大ブレイクに導き、モータウン黄金時代のきっかけになった。「Run, Run, Run」も典型的なモータウン・サウンドでソウル・ミュージックの楽しさに満ちている。いつも笑顔で心に歓びを持って生きていこう。
The Supremes - Run, Run, Run [Remastered]
●スライ&ザ・ファミリー・ストーン/ラン・ラン・ラン Sly &The Family Stone / Run, Run, Run
6~70年代ソウル/ファンクの代表的シンガー&プロデューサーのスライ・ストーン率いるスライ&ザ・ファミリー・ストーンのデビュー・アルバム『Whole New Thing(新しい世界)』(1967)に収録。60年代後半、まだ白人中心だったロック・フェスティバルで多大な人気を集めた彼らの原点ともいえるファンキーなスタイルにはブラック・ミュージックのソウル(魂)が宿っている。アイドルのソウル(魂)も消えることはないだろう。
現在は大槻マキとして活動する女性シンガー、大槻真希が2000年にリリースしたサード・シングル。フジテレビ系アニメ『ONE PIECE』のエンディングテーマに起用され、自身最大のヒット曲となった。同年の1stアルバム『ROCK’N ROLL LOVE LETTER』に収録。プロデュースは80年代バンドブームを代表するビート・パンク・バンド、JUN SKY WALKER(S)のギタリスト森純太。ストレートなビートと分厚いギターが燃えるパンク・スピリットを感じさせる。最強で最狂のパンクロックアイドル爆裂女子は解散しても、パンク・スピリットはメンバーの心の中で燃え続けることだろう。
アイドルではないが、ヴィジュアル系ヘヴィメタルバンド、Unlucky Morpheus(あんきも)のJILLは東京藝術大学出身で国内外のコンクールにて多くの受賞経験を誇るバイオリン奏者。バンド内ユニットQUADRATUM From Unlucky Morpheusでヘヴィメタルのカバーをしているのがカッコイイ。他にケミストリーやJUJUなど数多くのJ-POPアーティストと共演する実力派だが、なんといってもゴスロリファッションとキュートなルックスがヲタク心をくすぐる。物販でチェキとか撮れるのだろうか(そればっかり)。
【Cover】Yngwie Malmsteen - Far Beyond The Sun (Violin Cover)