A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

贋作と再創作~フェルメール光の王国展@フェルメール・センター銀座

2012年05月11日 00時43分57秒 | アート!アート!アート!


先日銀座ヘ行く機会があったのでフェルメール・センター銀座で開催されている「フェルメール光の王国展」を観てきた。

17世紀オランダの人気画家ヨハネス・フェルメールの全37点の作品が一堂に会した作品展として話題になっているものである。GWという事もあり会場はかなりの人手で、この展覧会の為に制作された宮沢りえと小林薫による音声ガイドが聴けるヘッドフォンを耳に展示作品をゆっくり観て回る人が多かった。

もちろんオリジナルではなく監修者である分子生物学者の福岡伸一氏により"リ・クリエイト"という最新デジタル技術を駆使して蘇らせた作品である。ホームページの解説によれば"「re-create」とは、複製でもなく、模倣でもない。あるいは洗浄や修復でもない。「re-create」とは、文字通り、再・創造である。作家の世界観・生命観を最新のデジタル画像技術によって翻訳した新たな創作物である。"とのことである。

しかし!"リ・クリエイト"には「本物=オリジナル」のありがたみが全くない。所詮はやはり複製なのである。例えば油絵特有の絵の具の匂いがしない。美術展を観に行く理由はただ単にその絵画を鑑賞するだけではなく、本物にしかない「重み」を味わうことではないだろうか。例えそれが観る者の自己満足的な思い入れであっても。絵を見るだけだったら画集やCD-ROMやDVDで充分である。主催者のフェルメールの全作品を展示したいという熱意には敬意を払うが、お金を払って偽物を観せられるのには納得がいかなかった。

フェルメールは贋作事件で有名でもある。ハン・ファン・メーヘレンという男が敵国ドイツにオランダの至宝を売却したことが1945年に発覚して国を挙げての大スキャンダルになった。しかもメーヘレンはそれが自分が描いた贋作だと告白したのである。彼の手による贋作「エマオのキリスト」はオランダの美術館に過去最高額で購入されていたともいう。また1970年以降は度重なる盗難事件にも見舞われており、この類い稀な才能を持った画家の作品は幾多の試練を経験してきた。そんな伝説的な作品群であるから"再創作"による作品展というのが成り立つのだろう。

ロックやポップスではアマチュアによる「コピー=贋作」とプロによる「カヴァー=再創作」は別次元のものと受け止められる事が多い。それならば初音ミクなどボーカロイドによるカヴァーはどうなのか、というとそれはそれで別のジャンルと呼べる創作物だ。

美術の世界では森村泰昌氏による自らが有名な絵画や有名人に成りきるセルフ・ポートレイトは手法的には音楽で言えばカヴァーだが、森村氏のオリジナルな表現法として高く評価されている。

デジタル技術の進歩によりどんなものでもクローン的なコピーが可能な時代に本当のオリジナルを表現する事は難しくなった。コピペやリツイートにより本来誰の創作だったのかが限りなく不明瞭になっていく。



捏造と
贋作に満ちた
この世界

このブログだってどれが本物でどれが偽物なのか分かりませんよ!



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