サーフィンとサイケ。日本に居るとちょっと結びつかない気がするが、ハワイやカリフォルニア、そしてゴールドコーストなどのサーフィン天国の住人は波乗りしたあとに一服キメて、意識を拡げて宇宙と交歓していたのだろう。サーフファッションブランドのクイックシルヴァーがジョン・シポリーナの居たQuicksilver Messenger Serviceから名前を取ったという嘘も都市伝説程度の説得力はある。とりわけコアラとカンガルーと砂漠しか無いオーストラリアの波乗り程度しか楽しみが無い怒れる若者たちはサーフィン映画に意識革命を投影し、波のまにまにアシッドを振りかけていた。サウンドトラックに地元のガレージバンドが駆り出され、一服キメて精神サーフに精を出した。
1969年サーフィン映画の古典『エヴォルーション』のサウンドトラックを担当し、一躍波乗りサイケの代表格に躍り出たのがタマム・シュッドという4人組。1964年にニューキャッスルで結成されたThe Four Strangersというビートバンドを前進とする。65年にThe Strangersとして2枚のシングルをローカルヒットさせた。同年The Sunsetsと名前を変えてシドニーに移り、Surf City、The Star Clubなどのクラブでライヴ活動。67年までに数枚のシングルをリリース。80年代アメリカのガールズガレージバンドThe Pandorasがカヴァーした『Hot Generation」のオリジナルは彼らである。そのうち2枚はポール・ウィティグ監督のサーフィン映画のサントラに使われた。
Tamam Shud "Lady Sunshine". Hit Scene 1969
67年末、バンド名をTamam Shud(タマム・シュッド)に変更。11世紀のペルシャの詩人ウマル・ハイヤームの詩集『ルバイヤート』の最後に記されたこの言葉は、終末・結末を意味する。68年後半、ウィティグ監督『エヴォルーション』のサントラを録音。更に数曲アルバム用に録音し、完成したのがデビュー・アルバム『エヴォルーション』だった。
●Tamam Shud『Evolution』(CBS – SBP 233761 1969)
サーフィン映画のサントラと言っても時は60年代末、ベンチャーズやサファリーズやビーチ・ボーイズではない。メンバー自身もCream, The Jimi Hendrix Experience, Pink Floyd, Eric Burdon and The (New) Animals,Grateful Deadなどアシッドロックに影響を受けており、長尺のインプロヴィゼーションを交えレコーディングされた楽曲をスタジオ処理しサージェントペパーズ風のアシッド・サーフ・プログレッシヴ・ロックを展開している。しかしイギリスの緻密なサウンドに比べどこか垢抜けない野性味がオーストラリアらしい。
Tamam Shud (Aussie) - LP " Evolution " (1969, Heavy Prog Rock)
アルバムのリリース直後に16歳のギタリストが加入し、70年1月にオーストラリア初の野外ロックフェスPilgrimage for Popに出演。その勢いでスタジオに入り2ndアルバムを制作した。
●Tamam Shud『Goolutionites And The Real People』(Warner Bros. Records – WS 200001 1970)
ガレージロック色が残っていた1stに比べ、この2ndはプログレッシヴに進化しており、70年代的なサウンドに突入した。曲調はより穏やかになり、フォーキーな浮遊感を感じさせる。サーフィンのあとのチルアウト用のサウンドトラックと言える。オリジナル盤は檄レア。間違いなくオーストラリアの70年代ベストアルバムのひとつだが、リリース直後に再びメンバーチェンジ。
Tamam Shud (Aussie) - LP " Goolutionites And The Real People " (1970, Heavy Prog Rock)
ライヴステージにはフルートやピアニストが参加し、ジャジーな要素も取り入れた演奏も行う。71年サーフィン映画『モーニング・オブ・ジ・アース』のサントラに参加、テーマ曲を含むEPをリリースし、サントラ盤にも収録された。。
●Tamam Shud 『Bali Waters』(Warner Bros. Records – EPW-207 1971)
幽玄なインストナンバー「Bali Waters」がリード曲のシングル盤。同時リリースのサントラ盤はサントラ初のゴールドディスクとなったが、シングル曲のラジオオンエアはなく、そのままバンドも活動停止した。
Tamam Shud - EP "Bali Waters / Morning Of The Earth OST"(1970)
その後1993年に再結成し3rdアルバム『Permanent Cultureをリリースするも95年に解散。2002年に一度だけの再結成、2008年に本格的に再活動をはじめ、2016年4thアルバム『Eight Years Of Moonlight 』をリリース。何度か再発された1stアルバムが2016年8月アナログ盤とCDで正式の再リリースされたばかり。
Taman Shud "A Book Among Magazines"
オーストラリアの地下、いや海底ロック界に君臨する「最後の(Tamam Shud)」サーフサイケバンドである。
ネクロ魔と
対バンしたら
どうなるの?
●NECRONOMIDOL ネクロ魔@タイ王国 マハサラカム タワンダン公演 2016.8.10(水)
2:24:00くらいからほぼフルステージ収録。「Tamam Shud」はセトリに無し。
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