1980年のオムニバスアルバム『都市通信』が昨年2月にCDリイシューされたのをきっかけに、日本のパンク第一世代=アルバム『東京ロッカーズ』、第二世代=アルバム『東京New Wave』に続く、ロッカー第三世代のパンク/ニューウェイヴバンドの再発や再始動の動きが起こっている。『都市通信』の参加バンド、美れいのメンバー岩本清顕のソロEP+未発表曲集『SOUGI+:KIYOAKI IWAMOTO』がリリースされたり、同じく『都市通信』に参加したシンクロナイズは、後継バンド、スカーレッツの音源を含めた三枚組CD『An Afterimage』をリリースするとともにライヴ活動を再開。さらにNON BAND~S-Ken~江戸っ子~シンクロナイズ~スカーレッツで活動してきた野本健司の最新ソロ作『music for myself』、螺旋~リザード~無限水路~天速等の北川哲生の最新ソロ作『解放区1984』といった関連作品が続々リリースされている。
⇒『都市通信』と79年の塩ビ盤〜東京ニュー・ウェイヴ'79/スジバン/シナロケ/パワーポップ/ピストルズ/ツネマツ/ミラーズ/フリクション
そして2021年2月、さらに驚くべき作品がリリースされた。
●絶対零度『LIVE at 回天'80 + Junk Connection EP』
79年に結成され吉祥寺マイナーの地下音楽と新宿ロフト&渋谷屋根裏のパンクロックを繋ぐ存在として82年まで活動したポストパンクバンドの黎明期を明らかにするアルバム。1980年5月に六本木スタジオ・マグネットで開催されたレコーディングライヴ「回天'80」で録音された未発表ライヴ音源と80年に地引雄一の自主レーベルJunk ConnectionからリリースしたEP『絶対零度』のデジタルリマスターを収録。一聴してガーンと来るの波止康雄の強烈なヴォーカル。岩石のようにゴツゴツと粗削りなロックサウンドの圧を突き崩す衝動のパワーは、INUの町田町蔵の河内弁に負けない東京のべらんめえ精神の発露である。ヴォーカルの波止脱退後の音源は2013年に2枚組CD『絶対零度II』と『絶対零度III』の2セットが発売されたが、正直言ってバンドとしての全体像を掴むには膨大かつ多様過ぎて、消化不良のままだった。今回のリリースでポストパンク世代=第三世代を象徴するアヴァンギャルド・ロック・バンドとしての本質が明らかになった。改めて後期のサウンドを聴き直してみて、日本のパンク‣ニューウェイヴ史を再検証する必要があるかもしれない。それほどの衝撃作といえる。
絶対零度『LIVE at 回天’80+JUNK CONNECTION EP』
●螺旋『神秘の国 / サイケデリックゲリラ』
キーボードをフィーチャーしたポップなロックンロールで『都市通信』のエンディングを飾った螺旋の未発表曲がなんと7インチシングル盤でリリースされた。録音クレジットは明らかにされていないが、おそらくリーダーでギタリストの北川哲生が住んでいた賃貸マンションを改造したホームスタジオでの録音だろう。螺旋館と呼ばれたそのスタジオで『都市通信』の各バンドのレーコーディングがされている。ドアーズやストラングラーズを思わせるキーボードが印象的な2曲は良質なパンクポップで、東京ロッカーズのリザードにも通じるサウンドである。螺旋解散後に北川がリザードに参加したのも頷ける。卓越したメロディ・センスは時代を超えてアピールするに違いない。『都市通信』にはリズムが変幻する捻くれた曲もあるので、他の曲もあったら是非聴いてみたいものである。
RASEN
この先どんな地下音楽&地下ロックの秘宝が発掘されるのか、楽しみにしていよう。
第三の
ロックバンドは
謎の石