『RED 堀清英 写真展』 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
『RED 堀清英 写真展』
2022/1/19~2/20



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の『RED 堀清英 写真展』を見てきました。

愛知県に生まれ、ニューヨークで写真を学んだ堀清英は、ファッションやカルチャー誌などで活動し、ライブ写真からポートレートと幅広く作品を発表してきました。

その堀の新旧の写真から構成されたのが『RED』と題した展覧会で、初公開の『RED』をはじめ、1990年以降の写真や手製のフォトブックなどが展示されていました。



まず目に飛び込んでくるのが鮮烈なまでに赤く染まった空間で、そこには今回の表題作である35点の『RED』が展示されていました。



いずれも赤いワンピースを身につけた1人の女性を写していて、ほとんどは手で顔を隠すように鏡を持っているため、表情を伺うことはできませんでした。



それは堀本人こそ写されていないものの「自分自身を投影した、セルフポートレート」とされていて、まさに神出鬼没ならぬ、街中や公園、水が抜かれたプールやバーと思しき店内などを瞬間移動するように行き来していました。



また左右から視点を変えることで異なったイメージが浮かび上がる作品もあり、まるで人が分身しているようなシュールな雰囲気も感じられるかもしれません。



続くのが「WHITE」と題した純白のスペースで、モノクロとカラーを問わず、1990年以降に撮影された比較的小さな写真が100点ほど並んでいました。



そこには人物から戸外の光、また舞台の一場面を思わせるような光景が写し出されていて、顔でリンゴを隠すように持つ女性など『RED』を連想させる作品もありました。



その「WHITE」を進むと「GRAY」と名付けられた行き止まりのスペースが広がっていて、額装された写真からフォトブック、さらに映像作品などが展示されていました。



「RED」から「WHITE」、それに「GRAY」と変化する空間構成からしてドラマテックで、あたかも堀の仕事を時間をさかのぼるようにして追うことができました。



「自身の写真作品はサイコロの眼のように偶発的に導かれたピクチャーポエムである」堀清英



予約は不要ですが、混雑時は入場が制限される場合があります。



会期中は無休です。2月20日まで開催されています。

『RED 堀清英 写真展』 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2022年1月19日(水)~2月20日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:11:00~19:00。 
 *最終入場は18:30まで。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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『横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」』 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
『横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」』
2021/12/10〜2022/1/30



ポーラ ミュージアム アネックスで開催中の『横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」』を見てきました。

現代美術家の横溝美由紀は、かねてから国内の美術館にて場所を活かしたインスタレーションを手がけ、近年はキャンバスのシリーズにも取り組んで作品を発表してきました。

その横溝の新作を含む作品で構成されたのが『Landscape やわらかな地平のその先に』で、キャンバス11点と彫刻のインスタレーションが展示されていました。



まず会場中央にて目を引くのが『aero sculpture』で、約4000個にも及ぶ半透明の箱が煉瓦のように積み上がっていました。



いずれもセロハンテープとプラスチックシートを用いて作られていて、触ることこそ叶わないものの、薄い皮膜のような弾力を帯びているようでした。また周囲の光を取り込んでは白く瞬いているように見えるのも美しいかもしれません。



この『aero sculpture』を囲むようにして壁に展示されたのが、キャンバスを用いた平面の作品でした。



そのうち『landscape S040.001.2021-study for Clumps of Glass by Vincent van Gogh』には、細かい傷のような色の線が全体を覆うように広がっていてオール・オーヴァーの抽象画を連想させるものがありました。

とはいえ、これは例えばポロックのようなドロッピングの技法ではなく、油彩を施した糸を無数に指で弾くことによって描いていて、それぞれの線は織物のように重なりながらイメージを築いていました。また重なり合う線は刻み込まれた彫刻の痕跡のようで、絵具の飛沫や色の重なりは半ば偶然性に委ねられていました。

それにタイトルに『Gogh』とあるように、ゴッホの描いた絵画の色彩を思わせる面もあって、抽象の向こうに草むらなどの自然の景色が見え隠れしているようでした。



1本1本、無数の線を弾いていく作業には途方もない集中力や労力が込められているようで、長い時間の蓄積も感じられました。


予約は不要です。1月30日まで開催されています。

『横溝美由紀「Landscape やわらかな地平のその先に」』 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX
会期:2021年12月10日(金)〜2022年1月30日(日)
休館:年末年始(12月29日〜1月4日)。
料金:無料
時間:11:00~19:00 *入場は18:30まで 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる 百年前掛け』 クリエイションギャラリーG8

クリエイションギャラリーG8
『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる 百年前掛け』
2021/12/9~2022/1/22



クリエイターと豊橋の職人が協働して作った前掛けを展示、販売し、収益金をチャリティーとして寄付するイベントがクリエイションギャラリーG8にて開かれています。

会場には1つ1つを職人たちが手作りした前掛けが並んでいて、それぞれにデザイナーらが創意工夫を凝らした意匠が施されていました。



愛知県豊橋市は古くから前掛けの生産地として知られていて、1950年から70年にかけては多い日に1日1万枚もの前掛けを出荷していました。



今回はチャリティーに参加した有限会社エニシングは、2005年から豊橋にて前掛けの企画販売を手がけていて、100年使える前掛けを実現するため、最高級の生地を用い、100年前のトヨタ製のシャトル織機によって作りあげました。



いずれの前掛けの絵柄もプリントではなく、一度染め上がった生地から絵柄の部分の色を抜く「染め抜き」と呼ばれる技法を用いていました。こうすることでプリントとは異なり、柄の部分の劣化がなく、表面がゴワゴワすることがないそうです。



ともかく前掛けは1つとして同じものがなく、かわいらしい動物の絵柄などのお気に入りを探して歩いていると、しばらく時間を忘れてしまうほどでした。また各デザイナーが前掛けに際して寄せた短いコメントも面白いかもしれません。



こうしたデザイナーと並んで目を引いたのが「クリエイション・キッズ・ラボ」と題し、子どもたちがオンラインのワークショップで作った前掛けの展示でした。グラフィックデザイナーの佐々木俊が講師を務めたもので、子どもたちは花や動物、また文字などを駆使しながら多様なデザインを展開していました。



なおクリエイションギャラリーG8と同じ銀座に位置するガーディアン・ガーデンでも同時に展示が行われています。それぞれ出品作家はクリエイションギャラリーG8が106名、ガーディアン・ガーデンが38名で、2つの会場で異なった前掛けが公開されていました。



なお前掛けは完全受注生産のため、会場での販売は一切ありません。すべてオンラインショップ「ポンパレモール」(https://store.ponparemall.com/rcc-gallery/)での予約注文販売となります。発送は3月末を予定しています。

オンライン販売のため、銀座に出向くのが難しい方も参加可能なチャリティーイベントです。一度公式サイトをチェックしてみてはいかがでしょうか。


WEBメディア「イロハニアート」でも展示の様子を紹介しました。

100年使っても大丈夫?!クリエイター×職人のコラボレーション。チャリティーイベント『百年前掛け』展が開催中(イロハニアート)

年末年始のお休みを経て、年明けは6日より開館しました。1月22日まで開催されています。*写真はすべて『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる 百年前掛け』展示風景より

『144人のクリエイターと豊橋の職人がつくる 百年前掛け』 クリエイションギャラリーG8@g8gallery
会期:2021年12月9日(木)~2022年1月22日(土)
休館:日・祝日。 
時間:11:00~19:00。
料金:無料。
住所:中央区銀座8-4-17 リクルートGINZA8ビル1F
交通:JR線新橋駅銀座口、東京メトロ銀座線新橋駅5番出口より徒歩3分。
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「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」
2021/11/23~12/19



資生堂ギャラリーで開催中の「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」を見てきました。

アーティストの中島伽耶子は、壁や境界線をモチーフとした作品を手掛け、国内外の展示や芸術祭などで発表してきました。

その中島が資生堂ギャラリーの空間に築いたのも、文字通り「壁」そのもので、ちょうど大小の2つの展示室を遮るようにして立っていました。



まず1階より階段を降りると、踊り場から左下のスペースに見えるのが白い壁で、壁には透明アクリルのような板が何枚も突き出ていて、中央部分には扉がありました。

白い壁はほぼ天井付近にまで達しているためか、向こう側のスペースを望むことは叶わず、踊り場からは壁と扉のみを見ることしかできませんでした。そしてちょうどベルのスイッチが置かれていて、押すと壁の手前に置かれたベルから非常を知らせるような強い金属音が発せられました。また時折、ドアの上の明かりが灯る様子を見ることができました。



踊り場から階段を降りると先の白く明るいスペースから一転、薄暗がりの空間が広がっていて、展示室を斜めに横切るようにう大きな壁が立っていました。いうまでもなく、先ほど踊り場から見た壁の反対側で、壁の表面には植物の模様がプリントされていました。そして扉にはノブが付けられていたものの、いわば「作品」として触れることは許されていませんでした。よって扉をあけて行き来することはできません。



この壁にはたくさんの透明アクリル板が付いていましたが、それらは壁の両面に別々に設置されているわけではなく、貫通、つまり突き刺さっていました。よって板の部分から向こう側の照明が透過して、床に散った同じ透明の板の破片へと光が反射していました。



板が刃物のように鋭く貫通した壁と静けさを打ち破るなベルの激しい音は、どこか痛みを連想させる面があり、越えられない壁の存在も相まってか疎外感や閉塞感を覚えてなりませんでした。結果的に壁を突き抜けられるのは、板そのものと、板を透過した光、そして乾いたベルの音だけでした。



私も資生堂ギャラリーのすべての展覧会を追えているわけではありませんが、大展示室と小展示室を完全に区切った会場プランははじめて見たかもしれません。また影に刺さる板ががハリネズミの針に似ていることと、ドイツの哲学者であるショーペンハウアーの寓話「ハリネズミのジレンマ」から引用された「ハリネズミ」というタイトルも興味深く思えました。

*ヤマアラシ(ハリネズミ)が暖め合おうと互いに寄り添うと、針のような毛で相手を傷付けてしまうため、近づいたり離れたりすることを繰り返すジレンマ。他者との適切な距離を探る心理的な葛藤を表す言葉として使われる。(解説より)

「第15回 shiseido art egg」展示スケジュール
石原海展:9月14日(火) ~10月10日(日)
菅実花展:10月19日(火) ~11月14日(日)
中島伽耶子展:11月23日(火・祝) ~12月19日(日)


今年度のアートエッグは中島展をもって終了します。今後、専門家諸氏の選定を得て、12月下旬頃に「shiseido art egg賞」の受賞者が公式サイトにて発表されます。

12月19日まで開催されています。

「第15回shiseido art egg 中島伽耶子展 ハリネズミたち」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2021年11月23日(火・祝)~12月19日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「第15回shiseido art egg 菅実花展  仮想の嘘か|かそうのうそか」 資生堂ギャラリー

資生堂ギャラリー
「第15回shiseido art egg 菅実花展  仮想の嘘か|かそうのうそか」 
2021/10/19~11/14



新進アーティストを公募展の形で紹介する「shiseido art egg(シセイドウアートエッグ)」も、本年度で15回目を数えるに至りました。

3名の入選者によって順に行われる個展のうち、現在開かれているのが、1988年に生まれた菅実花(かん みか)の「仮想の嘘か|かそうのうそか」で、会場には写真や映像、またレンズを用いたインスタレーションが展示されていました。



まず目を引くのが、壁一面に並ぶ「ステイバラダイス」と題した写真で、鏡のあるリビングのような室内空間において2人のそっくりな女性が写っていました。いずれも作家の菅をモデルとした作品でした。



あまりにも姿かたちが似ているゆえに、はじめは一体、どのように写したのかわかりませんでしたが、実のところ1人は菅本人で、もう1人は精巧に作られた人形でした。

かねてより菅は「生殖」をテーマに人形を写真に写し続けていて、いわばクローンならぬ、作家自身の頭部を型取りして作った人形とともに撮影するセルフ・ポートレイトを制作してきました。



またコロナ禍の元、菅はスタジオに1人こもって「ステイパラダイス」を写していて、人間と直接会うことを極力避け、代わりに人形とずっと一緒にいたことから、たまに話しかける存在になったとも述べています。

さらに現在、千葉県松戸市にあるアーティスト・イン・レジデンスの「パラダイスエア」の一室をスタジオとして借りて制作していて、室内空間にはかつてのホテルの内装がそのまま活かされています。



ちょうど展示室の中央に吊られたレンズ越しに見やると、写真が歪んだり、時に無数に分裂していって、あたかも万華鏡の中を覗き込むような気持ちにさせられました。また人間と人形、つまりの本物と偽物のどちらかを見分けようとすればするほど、その境界が曖昧に見えてくるのも興味深く思えました。



もう一方の小展示室では菅のスタジオを再構成したインスタレーションが展開されていて、19世紀の視覚トリックとして人工的に幽霊を映した「ペッパーズゴースト」をモニターで再現した作品が公開されていました。



モニターには菅の姿がぼんやりと消えるように映されていて、まさにスタジオへ突如現れた幽霊のようでした。


「第15回 shiseido art egg」展示スケジュール
石原海展:9月14日(火) ~10月10日(日)
菅実花展:10月19日(火) ~11月14日(日)
中島伽耶子展:11月23日(火・祝) ~12月19日(日)



11月14日まで開催されています。

「第15回shiseido art egg 菅実花展  仮想の嘘か|かそうのうそか」 資生堂ギャラリー@ShiseidoGallery
会期:2021年10月19日(火)~11月14日(日)
休廊:月曜日。*祝日が月曜にあたる場合も休館
料金:無料。
時間:11:00~19:00(平日)、11:00~18:00(日・祝)
住所:中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A2出口から徒歩4分。東京メトロ銀座線新橋駅3番出口から徒歩4分。
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「今津景個展 Mapping the Land/Body/Stories of its Past」 ANOMALY

ANOMALY
「今津景個展 Mapping the Land/Body/Stories of its Past」
2021/10/2~11/7



ANOMALYで開催中の「今津景個展 Mapping the Land/Body/Stories of its Past」を見てきました。

1980年に生まれたアーティストの今津景は、歴史的名画や博物図譜、それにSNSにアップされた写真など、ネット上の画像データをPhotoshopにて編集した下図をもとに、キャンバスに油彩で描く作品を制作してきました。



その今津の都内では3年ぶりとなる個展が「Mapping the Land/Body/Stories of its Past」で、会場には主に昨年から今年にかけて描かれた絵画、および鉄のオブジェなどが展示されていました。


「RIB」 2021年

ともかく目を引くのは、鮮やかな色彩を伴いつつ、激しい動きを見せるように展開する大画面の油彩画で、中にはバナナの房や虎、はたまた名画の一場面と思しきモチーフが入り乱れるように描かれていました。


「Memories of the Land / Body」 2020年

これらのモチーフの一部は、今津が現在、拠点とするインドネシアの歴史や文化に関係する素材も取り込まれていて、銃剣を構えた兵士なども見られました。

またPhotoshopを取り入れつつも、絵画のストロークやタッチそのものは生気に溢れていて、流れてはぶつかりあい、跳ね上がる絵具の熱量のようなものを感じることができました。

さらに今津は今回の新作において、Photoshopのみならず、3DレンダリングソフトであるDimensionも利用していて、奥行きと平坦さが同時に表れたような独特の画面が築かれていました。


「Artificial green by nature green 2.0」 2021年

こうした一連の絵画とともに興味深いのが、マシンを用いた「Artificial green by nature green 2.0」でした。これは熱帯雨林のジャングルを描いた風景を水を含んだ筆が自動で消していくもので、いわば時間で変化をし続けるインスラレーション的な作品でした。

「Artificial green by nature green 2.0」は、インドネシアの作家であるバグース・パンデガとの共作として発表され、一度同国では公開された際はオラウータンが描かれていたものの、今回はキャンバス上に姿はなく、上部に吊り下げられた細い横長のモニターに映されていました。


「Artificial green by nature green 2.0」 2021年

ひたすらくるくる動きつつ、筆がキャンバスをなぞっていましたが、これは作品の左に展示されたアブラヤシからの生体電流によって制御されているのだそうです。会期が進むことにジャングルは薄くなっていくのでしょうか。その行末も気になりました。


11月7日まで開催されています。

「今津景個展 Mapping the Land/Body/Stories of its Past」 ANOMALY@ANOMALYtokyo
会期:2021年10月2日 (土) ~11月7日 (日)
休廊:日、月、祝祭日。11月7日のみ日曜日開廊
時間:12:00~18:00。
料金:無料
住所:品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩約8分。東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅中央口より徒歩約11分。京浜急行線新馬場駅より徒歩12分。
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「ル・パルクの色 遊びと企て ジュリオ・ル・パルク展」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「ル・パルクの色 遊びと企て ジュリオ・ル・パルク展」
2021/8/13~11/30



メゾンエルメスで開催中の「ル・パルクの色 遊びと企て ジュリオ・ル・パルク展」を見てきました。

1928年にアルゼンチンで生まれ、フランスへ移住して活動するジュリオ・ル・パルクは、視覚的錯覚あるいは動力を用いたキネティック・アートの作品を手がけ、ゲームの要素を取り入れた観客参加型のインスタレーションなどを制作してきました。

そのル・パルクの色をテーマにした日本初個展が「ル・パルクの色 遊びと企て」で、同ギャラリーの2つのフロア、及びビルの壁面にあたるファサードに多様な作品を展示していました。



当初、モンドリアンやロシア構成主義に影響を受けたル・パルクは、幾何学的な抽象画を制作していて、1960年代に入るとキネティックアートやオプアートのアーティストらによる視覚芸術探究グループ(GRAV)の創立メンバーとして活動しました。



ル・パルクは1959年より黒と白を出発点に、自身が構想した14色を用いた作品を展開していて、色をさまざまな組み合わせながら、平面や立体に表現していました。



冒頭には1950年代から70年代のモノクロやカラーの小さな作品が展示されていて、ル・パルクの比較的初期の制作を知ることができました。厚紙にインクで描きこんだり、コラージュを施したするなどシンプルな味わいも魅力かもしれません。



とはいえ、やはり目立っていたのは、ガラスブロックに囲まれたエルメスのスペースを彩るように設置された、モビールなどの大型の作品でした。


「モビール」

そのうち今年の新作のモビールは、実に3300枚以上のステンレススチールから作り上げられていて、ガラス越しに差し込む外の光を受けてきらきらと瞬いていました。またスチールを1枚の葉に見立てれば、たくさんの葉を茂らせた大樹のようにも思えるかもしれません。


「モビール14色」

同じく新作の「モビール14色」は、かつてよりル・パルクが使い続けた14色のガラスを配した作品で、天井から床へと美しいグラデーションを描いていました。


「反射ブレード(刃板)」

鏡のように反射するブレードを用いた「反射ブレード(刃板)」も面白い作品ではないでしょうか。ちょうど人がブレードの後ろへ回ると、その姿が無数に分割するように映って見えました。


「ロング・ウォーク」展示風景

銀座エルメスのファサードを用いた「ロング・ウォーク」も数寄屋橋の景色を変えるような存在感があったかもしれません。まるでカラフルなリボンがビル全体を祝福するかのように彩っていました。

なおファサードについては、現在の「ロング・ウォーク」の展示が10月14日にて終了し、15日以降入れ替えが行われ、10月30日からは「シリーズ14-2 分割された円」が公開されます。そちらも追って見たいところです。



コンセプチュアルな思考に基づいた抽象度の高い作品ながら、遊び心のある仕掛けもあるのもル・パルクの魅力かもしれません。エルメスのホワイトキューブがカラフルな色で満ちていました。



11月30日まで開催されています。

「ル・パルクの色 遊びと企て ジュリオ・ル・パルク展」 メゾンエルメス
会期:2021年8月13日(金)~11月30日(火)
休廊:10月27日(水)、11月20日(土)。
時間:11:00~19:00 
 *当面の間、開館時間を短縮。10月28日のみ18時閉館。
 *最終入場は閉館の30分前まで。
料金:無料。
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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「The Absurd and The Sublime ギイ ブルダン展」 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
「The Absurd and The Sublime ギイ ブルダン展」 
2021/9/8~10/24



シャネル・ネクサス・ホールで開催中の「The Absurd and The Sublime ギイ ブルダン展」を見てきました。

1928年にパリに生まれたギイ・ブルダンは、マン・レイといったシュルレアリストの影響を受けて写真を手がけ、ヴォーグなどのファッション誌やシャネルをはじめとするブランドの広告を制作してきました。

そのブルダンの個展が「The Absurd and The Sublime」で、会場にはモノクロからカラーへと至る写真が一堂に公開されていました。



画家としてキャリアをはじめたブルダンがマン・レイと出会ったのは1951年のことで、以降、生涯にわたってシュルレアリスムの大きな影響を受けました。



初期のモノクロの写真は確かにシュルレアリスムを思わせるような構図を見せていて、人や脚、靴などのモチーフを時にトリミングするように写していました。また具体的な素材を用いつつも、抽象的なパターンを感じさせるのもブルダンの写真の面白いところかもしれません。



1955年にパリのギャラリーで写真展を開いたブルダンは、その後すぐにファッション誌のフランス版「VOGUE」に見出されると注目を集め、よほどの才能を見せたのか、「VOGUE」も新人であったブルダンに制作上の自由を与えては写真を制作させました。



ブルダンは被写体となる宣伝対象の商品たちをイメージの中心に置かず、いわば「ほのめかす」(解説より)ように扱っていて、1950年から60年代の広告の基準から逸脱していました。あくまでも見る人をイメージの中に引き込んでは、疑問を投げかけるようにして興味を引こうとしていたのかもしれません。



マン・レイともにブルダンの制作に際して影響を与えたのが、サスペンス映画の神様と呼ばれるアルフレッド・ヒッチコックでした。ヒッチコックの映画に魅せられたブルダンは、「犯罪現場」(解説より)を作り上げていて、例えば殺人事件の現場を想起させるようにミステリアスな作品を制作しました。



鮮やかな色彩と大胆な構図を用いつつ、ストーリー性を感じさせるブルダンの写真は、甘美的でかつ艶やかさも持ち得ていているのではないでしょうか。とりわけ色彩の眩しいまでの赤に魅せられました。



斜めにスリットを刻むような会場構成も効果的ではなかったでしょうか。まるで身体とファッションを巡る1つのストーリーが築かれているかのようでした。



予約は不要、会期中も無休です。(但し混雑時は入場制限あり)



10月24日まで開催されています。

「The Absurd and The Sublime ギイ ブルダン展」 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2021年9月8日(水)~10月24日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:11:00~19:00。 
 *最終入場は18:30まで。
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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「中村萌 our whereabouts - 私たちの行方 -」 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
「中村萌 our whereabouts - 私たちの行方 -」
2021/9/3~10/10



ポーラ ミュージアム アネックスで開催中の「中村萌 our whereabouts - 私たちの行方 -」を見てきました。

1988年に東京で生まれた中村萌は、丸太を削り出しては油絵具で着彩した彫刻を手がけ、台湾のアートフェアで人気を集めるなど、海外でも注目されてきました。

その中村の新旧作で構成されたのが「our whereabouts - 私たちの行方 -」で、会場には主に楠を素材とした木彫や平面の作品、計24点が展示されていました。



それらはいずれも植物、とりわけ樹木や雲をまとった子どものような姿をしていて、あたかも森の中に住む小さな妖精のようでした。



丸々とした顔の頬は薄いピンク色に染まっていて、目を虚に開けている一方、静かに眠るように伏していました。まるで夢見心地のような表情もかわいらしいのではないでしょうか。



細目を開けながらも、すぐ前を見るのではなく、遥か遠くを眺めるような視線も興味深く思えました。またぷっくらと膨らんだ口は時に微かに開いていて、小さな声で何かを祈りを唱えているようにも見えました。



私が特に心を引かれたのは表面の多様な質感表現で、丸みを帯びて滑らかな部分と、一転しての荒々しく削り取られたような箇所からはともに木の温もりが感じられました。



塗り残しの木目を活かした油絵具による鮮やかな彩色も魅力といえるかもしれません。会場内には木そのものの香りが満ちていて、さながら森の奥深くへ迷い込むかのようでした。



「わたしのようで、わたしではなく、だれかのようで、だれでもない。そんな曖昧な存在を探るようにして、つくりつづけています。」 中村萌 *ポーラ ミュージアム アネックスのWEBサイトより


なお本展とあわせ、ポーラ ミュージアム アネックスにほど近い京橋のギャラリー椿でも「inside us」と題した個展を開催中です。

「中村萌 inside us」ギャラリー椿
会期:2021年9月3日(金)〜9月25日(土) *日・月・祝 休廊
時間:12:00〜18:00
http://www.gallery-tsubaki.net/tsubaki.html

予約は不要、撮影も可能です。10月10日まで開催されています。

「中村萌 our whereabouts - 私たちの行方 -」 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX
会期:2021年9月3日(金)~10月10日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~19:00 *入場は18:30まで 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」 メゾンエルメス

メゾンエルメス
「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」 
2021/4/23~7/18



メゾンエルメスで開催中の「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」を見てきました。

ロンドンを拠点に活動するキュレーターのマチュウ・コプランは、展覧会の伝統的な役割や枠組みを揺るがすべく、新たな体験や知覚を提案するような試みを続けてきました。

そのコプランが日本で初めてキュレーションを手掛けたのが「エキシビジョン・カッティングス」で、挿し木や接ぎ木を用いたインスタレーションと映像ドキュメンタリーを展示していました。



まずspaceAの「育まれる展覧会(環境)」と題した展示室では、木の台座やベンチなどが置かれていて、中央の土が入れられたプランターには甘夏の苗が植えられていました。



これらはタイトルの「カッティング」から植物の挿し木や接ぎ木を参照しつつ、他の場所に移植された生命が人工的に育むことを意図したもので、いわば生態ないし環境そのものが築かれていました。



一連の木の什器は音を主軸に美術制作やパフォーマンスを手がける西原尚らが手掛けていて、無肥料や無除草といった自然農法で知られる福岡正信自然農園から土が届けられました。

こうした木と自然を取り巻く環境と同じく重要なのが、木の台座の上など数台のスピーカーから響く音楽でした。



作曲したのはアメリカのミニマル・ミュージックの巨匠の一人として知られるフィル・ニブロックで、全6曲の音楽を展覧会のために書き下ろしました。いずれもチェロやギター、ヴィオラの他、声楽アンサンブルなどによる音楽で、持続音を多用するドローン・ミュージックと呼ばれるものでした。

多くはパリなどで活動するアーティストによって演奏されましたが、1曲は日本のヴォーカル・グループのVox humana(ヴォクスマーナ)が、東京で演奏と録音を行いました。

ともかく音楽はひっきりなしに鳴っていて、音も大きく、音圧にてスペースを満たしていくかのようでした。もはや主役は音楽にあるといえるかもしれません。



一方のspaceBでは、コプランが過去にキュレーションした「閉鎖された展覧会の回顧展」を振り返る映像、「アンチ・ミュージアム:アンチ・ドキュメンタリー」が上映されていました。ここでは過去に様々なアーティストが自らの決断や芸術行為によって閉鎖した展示を取り上げていて、中には日本のハイレッド・センターが画廊を展示初日に閉じて議論を呼んだ「大パノラマ展」などもありました。



自らの展覧会のアーカイブを編集、つまりカッティングしつつ、アートと展示空間のあり方などを問い直す興味深い内容だったのではないでしょうか。コロナ禍において閉鎖を余儀なくされた美術館についても言及していて、リアルタイムな問題として考えさせられるものが少なくありませんでした。



緊急事態宣言を受け、4月25日より5月15日、また5月23日より6月1日まで臨時休館していましたが、6月2日に再開されました。

なおエルメス銀座店の混雑緩和のため、ソニー通り沿いのエレベーターより入館する必要があります。店内用エレベーターでは入館できません。



ガラス越しの光や音楽を浴びる甘夏の苗はどこまで生育を続けるのでしょうか。会期末に改めて見てこようと思いました。



予約は不要です。7月18日まで開催されています。

「エキシビジョン・カッティングス マチュウ・コプランによる展覧会」 メゾンエルメス
会期:2021年4月23日(金)~7月18日(日)
休廊:会期中無休。
時間:11:00~19:00 
 *当面の間、開館時間を短縮。
料金:無料。
住所:中央区銀座5-4-1 銀座メゾンエルメス8階フォーラム
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅B7出口すぐ。JR線有楽町駅徒歩5分。
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「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー

ギンザ・グラフィック・ギャラリー
「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック」 
2021/6/8~7/7



ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催中の「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック」を見てきました。

スポーツイベントやブランド、さらには広告などを目的に作られたスポーツ・グラフィックは、時にアスリートらの躍動感や美しさを表現しては、多くの人々の心を捉えてきました。


「東京2020公式アートポスター/パラリンピアン」 AD:GOO CHOKI PAR

そうしたスポーツ・グラフィックに着目したのが今回の展覧会で、日本の1970年以降のスポーツに関するポスターやイラストレーションなど120点が展示されていました。


「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック」 1階展示室風景

さて多くのポスターが並ぶ中、まず目に飛び込んでくるのが水色の大きな卓球台でした。ただ一方のコートのみが丸くなっていて、はじめは一体どのような目的で作られたのか分かりませんでした。そしてこれは障がいの内容によって一般的に長方形の卓球台も異なったかたちとして見えるという、パラ卓球選手の視点を再現するために作られたパラ卓球台でした。


「パラ卓球台 コートが丸い卓球台(八木モデル)」 提供:一般社団法人日本肢体不自由者卓球協会

「八木モデル」と呼ばれる卓球台は、パラ卓球の八木克勝選手が両手を伸ばせないため、卓球台が大きな円のように見えることに基づいたもので、日本肢体不自由者卓球協会によって制作されました。これまでに同協会ではパラ卓球の選手にリサーチを行い、コートの丸い卓球台や左に伸びた卓球台などを作っていて、パラ卓球の魅力を伝えるイベントにて公開してきました。


「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック』 地下展示室風景 *手前は福田繁雄「ノータイム」1987年

一方で下の展示室へ降りると、今度はグラフィックデザイナーの福田繁雄による「ノータイム」などが並んでいて、スポーツ選手をユニークに造形化した様子を見ることができました。


「フジテレビ国際スポーツフェア'85」 AD:葛西薫 *左のパネルが榎本バソン了壱が「鉄球で太陽射抜け怪力伝」と詠んだ俳句。

このほかにも俳人の榎本バソン了壱が「地球という競技場あり筋肉祭」や「バット折る剛球必打センター前」などのスポーツの世界観を詠んだ俳句も展示されていて、思いの外にバリエーションのある内容となっていました。ポスター以外にも見どころの多い展示ではないでしょうか。


「パシフィックリーグ&セントラルリーグ60周年」 AD:服部一成

とはいえ、「長野冬季オリンピック」や「東京マラソン2009」、それに「パシフィックリーグ&セントラルリーグ60周年」といったスポーツのポスターも充実していて、いずれも見入るものがありました。


「アジア太平洋博覧会福岡’89」 AD:浅葉克巳

そのうち「東日本縦断駅伝’90」や「アジア太平洋博覧会福岡’89」などはスポーツのダイナミックな動きを見事に表現していたのではないでしょうか。


第46回、第41回「世界卓球選手権大会」 AD:浅葉克巳

雪舟の絵画をモチーフとした「長野冬季オリンピック」の開会式や、風神雷神を大胆に描いた「世界卓球選手権大会」といった美術を引用したポスターも目を引きました。



会場の随所に置かれていたブリキの卓球のおもちゃにも目が止まりました。これらは今回の展覧会の監修を務めた浅葉氏が、過去に中国にて見つけたものと同じおもちゃで、実際に触れて遊ぶこともできました。


「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック』 地下展示室風景

パラ卓球台はラケットを手にして体験することが可能です。利用方法などは会場受付にてお尋ねください。(混雑時は不可)


予約は不要です。7月7日まで開催されています。

「SPORTS GRAPHIC スポーツ・グラフィック」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー
会期:2021年6月8日(火)~7月7日(水)
休廊:日曜・祝日。
時間:11:00~19:00
料金:無料
住所:中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅から徒歩5分。JR線有楽町駅、新橋駅から徒歩10分。
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「川内倫子 Under the same sky」 MA2Gallery

MA2Gallery
「川内倫子 Under the same sky」
2021/6/1~7/1



MA2Galleryで開催中の「川内倫子 Under the same sky」を見てきました。

1972年に生まれ、2002年に第27回木村伊兵衛写真賞を受賞した川内倫子は、これまでにも「照度 あめつち 影を見る」(2012年、東京都写真美術館)や「川が私を受け入れてくれた」(2016年、熊本市現代美術館)などで展示を重ね、国内外にて評価されてきました。

その川内のMA2Galleryでは初めての個展が「Under the same sky」で、会場には新作の「Des oiseaux」を中心に、「はじまりのひ」「光と影」など過去のシリーズの作品が展示されていました。



さて今回の個展に際して川内が新たに被写体として見据えたのが、自宅の近所で見つけたというツバメの巣でした。そこでは餌を持ち帰る親ツバメや餌を食べようとするヒナ鳥などを撮影していて、必死に生きとうとするツバメの生命の営みを見守るような視点が感じられました。



と同時に、白く透明感のある光に包まれた木立や空も捉えていて、ツバメを取り巻く自然環境が写真へと美しく切り取られていました。こうした光に対しての繊細な美意識が伺えるのも川内の写真の大きな魅力かもしれません。



1階から4階への4つのフロアを有するMA2の空間も効果的に生かされていたのではないでしょうか。1階から階段を上がりながら、窓の外の風景と写真を交互に見ていると、いつしか現実と写真との境界が曖昧になるような錯覚に囚われました。戸外と写真の中の空とが互いに繋がっていくようなイメージに近いかもしれません。



ツバメの撮影は、まさにコロナ禍において1回目の緊急事態宣言が発出され、外出などに制約が余儀なくされた2020年4月にはじめられたとしています。



日常で身近な風景に潜むピュアな美しさの一瞬を見せる、川内ならではの写真に心を引かれました。


近年、川内は「古典×現代2020―時空を超える日本のアート」(2020年、国立新美術館)にも作品を発表してきましたが、少なくとも都内の美術館としての個展は2012年の「照度 あめつち 影を見る」に遡らなくてはいけません。そろそろ再びまとめて作品を見られる機会があればと思いました。



会期が延長されました。7月1日まで開催されています。

「川内倫子 Under the same sky」 MA2Gallery
会期:2021年6月1日(火)~7月1日(木)
休廊:日、月曜、祝日。
料金:無料。
時間:12:00~18:00
住所:渋谷区恵比寿3-3-8
交通:JR線・東京メトロ日比谷線恵比寿駅東口から徒歩10分。東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩8分。
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「MIROIRS(ミロワール) - Manga meets CHANEL」 シャネル・ネクサス・ホール

シャネル・ネクサス・ホール
「MIROIRS(ミロワール) - Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」
2021/4/28~6/6



フランスのファッションブランド「CHANEL」と、人気漫画「約束のネバーランド」を描いた白井カイウと出水ぽすかがコラボした展覧会が、銀座のシャネル・ネクサス・ホールにて行われています。



それが「MIROIRS(ミロワール) - Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」で、「約束のネバーランド」の原作者である白井カイウと作画家の出水ぽすかが、シャネル創業者のガブリエル・シャネルの人生や哲学にインスパイアして描いた「miroirs(ミロワール)」の漫画世界を、会場内にて立体的に展開させていました。



フランス語で鏡の複数形を意味する「miroirs(ミロワール)」は3章構成で描かれていて、第1章では読書や空想の好きな少女を主人公に物語が紡がれていました。そこで少女は本を起点に空想の世界へと入り、ガブリエルの扮したハサミの魔女とともに新しいファッションを楽しむ様子が表されていて、シャネルの様々なイメージの断片がモチーフへと散りばめられていました。



そして2章ではオシャレを楽しむ女性、さらに3章では体にコンプレックスを抱く少年が主人公となったストーリーが続いていて、既存の価値観を転換させ、自由を勝ち取ろうとしたガブリエルの精神を表すようなメッセージを読み取ることができました。いずれも舞台は現代の東京でした。



「ガブリエルは、自分の着たいもの、したいこと、こう在りたいという姿を貫いて、人々を魅了し、世界の価値観の方を変えていきました。」 白井カイウ *会場内より



最初の鏡の間から3つの空間へ区切られた構成も魅惑的ではなかったでしょうか。また円窓や鍵穴の入口なども効果的に用いられていて、それぞれの章の手前から奥へ進んでいくほど、漫画の世界の中へと入り込んでいくような体験が得られました。



この他では1921年から2012年までの「シャネルN°5」のボトルや、1954年のリップステックをはじめ、1938年の「HARPER’S BAZAAR」に掲載されたガブリエルの好きなイラストなど、シャネルに関する資料も思いの外に充実していました。



「翼を持たずに生まれてきたとしても、自分の翼が育つのを妨げてはならない」 ガブリエル・シャネル *会場内より


イントロダクションとして「miroirs(ミロワール)」のあらすじも紹介されていましたが、3つの短編のうちの1話を週刊少年ジャンプのサイトにて試し読みすることもできます。


新型コロナウイルス感染症予防対策のため、オンラインでの予約制が導入されました。事前に専用サイトにて入場日時を指定する必要があります。1人1回につき4名分まで予約が可能です。



金曜日の夕方に出向きましたが、定員制ながらも場内はなかなか盛況でした。観覧には早めの予約をおすすめします。



撮影も可能、有難いことにお土産まで付いていました。出口にて頂戴することができます。



6月6日まで開催されています。

「MIROIRS(ミロワール) - Manga meets CHANEL / Collaboration with 白井カイウ&出水ぽすか」 シャネル・ネクサス・ホール
会期:2021年4月28日(水)~6月6日(日)
休廊:会期中無休。
料金:無料。
時間:11:00~20:00。 
 *最終入場は19:30まで。
 *5月22日(土)、23日(日)、24日(月)については10:00より開場
住所:中央区銀座3-5-3 シャネル銀座ビルディング4F
交通:東京メトロ銀座線・日比谷線・丸ノ内線銀座駅A13出口より徒歩1分。東京メトロ有楽町線銀座一丁目駅5番出口より徒歩1分。
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「田原桂一 表現者たち-白の美術館」 ポーラ ミュージアム アネックス

ポーラ ミュージアム アネックス
「田原桂一 表現者たち-白の美術館」
2021/4/28~5/30



ポーラ ミュージアム アネックスで開催中の「田原桂一 表現者たち-白の美術館」を見てきました。

「光」をテーマに作品を制作してきた写真家の田原桂一は、長らくパリを拠点に活動を続け、ヨーロッパの古い彫刻の写真を石などに焼き付けた「トルソー」などのシリーズで人気を博しました。


「ポートレート」シリーズ 展示風景

その田原のポートレート表現に注目したのが「田原桂一 表現者たち-白の美術館」で、1970年代後半から10年に渡って世界的な巨匠を撮影した連作と、近年テレビ番組の「白の美術館」にて出演者を撮り下ろした作品が展示されていました。


アンドレ・マッソン 撮影年:1981年

まず最初の黒に統一された空間に並んでいたのが、画家のアンドレ・マッソンや美術家のヨーゼフ・ボイス、それにクリスチャン・ボルタンスキーなどを写した「ポートレート」シリーズでした。


ピエール・クロソウスキー 撮影年:1982年

その多くは2枚対になるように展示されていて、じっと前を向いているだけでなく、部屋のベットで横たわっていたり、鏡を覗き込んでいるなど、様々な様子を捉えていました。


クリスチャン・ボルタンスキー 撮影年:1979年

2019年に国立新美術館などで開催された個展の記憶も新しい、クリスチャン・ボルタンスキーの写真も興味深いかもしれません。1979年の若かりしき姿を写していて、何やら窓の外で照れ笑いを見せているような表情が印象に残りました。



こうした「ポートレート」シリーズからカーテンをくぐり抜けると、一転しての白く明るい空間に展示されていたのが「白の美術館」での写真でした。


「白の美術館」 展示風景

「白の美術館」とは、株式会社ポーラの提供によりテレビ朝日にて放送されている番組で、田原は企画段階から携わると、2017年の放送開始直後に出演したデザイナーや俳優、それに指揮者といった表現者と呼ばれる人々を撮影しました。


山本耀司

会場には山本耀司や小松美羽、森山未來を捉えた写真が続いていて、先の「ポートレート」シリーズと同様に、2枚合わせて展示されていました。


宮田まゆみ

一連の「白の美術館」で心に留まったのは、人物そのものよりも、耳や手といった身体の一部のみを切り取るように写した作品でした。例えば笙演者の宮田まゆみでは耳が写されていましたが、あたかも自ら発光するように白く輝いて、それ自体が石の彫刻のようにも見えました。



また深い皺の刻まれた山本耀司の手も重みがあったのではないでしょうか。年月や努力を重ねて切り開いた1つの到達点が身体へ滲み出ているいるかのようでした。


田原桂一「self portrait」 2004年

「写真はその人の姿だけでなく心の中をも切り取る。写真は彼らが見つめている未来さえも映し出す」 田原桂一 *会場内より


新型コロナウイルス感染症対策に伴う緊急事態宣言を受け、事前予約制が導入されました。前もって専用サイトで入場日時を指定する必要があります。



5月30日まで開催されています。

「田原桂一 表現者たち-白の美術館」 ポーラ ミュージアム アネックス@POLA_ANNEX
会期:2021年4月28日(水)~5月30日(日)
休館:会期中無休。
料金:無料
時間:11:00~18:40 
住所:中央区銀座1-7-7 ポーラ銀座ビル3階
交通:東京メトロ有楽町線銀座1丁目駅7番出口よりすぐ。JR有楽町駅京橋口より徒歩5分。
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「青木野枝 Mesocyclone」 ANOMALY

ANOMALY
「青木野枝 Mesocyclone」
2021/4/17~6/5



ANOMALYで開催中の「青木野枝 Mesocyclone」を見てきました。

1958年に東京で生まれ、工業用の鉄を使った作品で知られる青木野枝は、全国各地の芸術祭に参加するだけでなく、近年も府中市美術館にて展示を開くなどして多様に活動してきました。

その青木のANOMALYでの初めて個展が「Mesocyclone」で、タイトルに付けられた巨大な鉄のインスタレーションが空間の全てを支配するかのように展開していました。



ともかく目に飛び込んできたのは、コンクリート剥き出しの床の上から天井へと曲線を描くように連なる鉄のリングの群れで、まるで水流が激しく乱れながら自在に動くように広がっていました。



「Mesocyclone」とは気象用語で低気圧の循環構造などを意味していて、青木が思いを馳せるという世界に循環する水の一様を表していました。その上昇しては下降し、空間へ渦を巻くリングには、正面も後ろもなく、全てが連動しては結ばれているかのようでした。



本来的に重い素材である鉄が、あたかも軽みを見せるように繋がっているのも特徴で、1つ1つのリングが水の泡などを思い起こさせるものがありました。



しかしながら表面には溶断された跡が傷のように残っていて、荒々しく生々しい表情を見せていました。またリングの重なり合う溶接面にも力強さ、あるいは緊張感が感じられたのではないでしょうか。



しばらく全体を眺めていると、例えば空気や炎の柱が渦巻いているようにも思えて、無機的なはずの鉄からは想像もつかないイメージが頭に浮かんできました。鉄や塊のある彫刻という概念を解き放ち、空間全体へ新たな世界を築き上げるのも青木の制作の大きな魅力かもしれません。



この「Mesocyclone」とは別のスペースでは、鉄の「霧と山」や石鹸を用いた「立山」のほか、メゾチントによる平面の作品なども展示されていて、青木の近年の制作を追うことができました。



なお過去の府中での展示同様、恒久的に設置される場合を除くと、会期終了後に作品は解体されます。その意味では「Mesocyclone」も、ANOMALYでは最初で最後の展示となります。



予約は不要です。当初の会期が延長されました。6月5日まで開催されています。

「青木野枝 Mesocyclone」 ANOMALY@ANOMALYtokyo
会期:2021年4月17日 (土) ~6月5日 (土)
休廊:日、月、祝祭日
時間:11:00~18:00。
料金:無料
住所:品川区東品川1-33-10 Terrada Art Complex 4F
交通:東京臨海高速鉄道りんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩約8分。東京モノレール羽田空港線天王洲アイル駅中央口より徒歩約11分。京浜急行線新馬場駅より徒歩12分。
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