都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
佐竹本三十六歌仙絵(小野小町) 東京国立博物館(特集陳列)
東京国立博物館
特集陳列(本館特別1室) 9/5-10/1
「佐竹本三十六歌仙絵(小野小町)」(13世紀)
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この小野小町には惚れました。今、東京国立博物館で特別に展示されている「佐竹本三十六歌仙絵(小野小町)」です。黒髪を垂らし、朱の映えた装束を纏う小野小町。あたかも顔を隠すかのようにして後ろを向いています。(そう言えば、百人一首の小町も後ろ向きでしたが…。)水のように流れる黒髪と、折重なる装束が、まるで一つの波のように合わさっていました。華麗です。
「佐竹本三十六歌仙絵」とは、数ある「三十六歌仙絵」の中でも一番古い時期に属する作品です。また「三十六歌仙」とは、藤原公仁(966-1041)の選んだ36名の歌人のことで、小町の他にも、山部赤人や在原業平などの有名な歌人が挙げられています。そして鎌倉時代に、彼ら歌人たちを尊ぶ風潮が興って、この「三十六歌仙絵」が成立しました。ちなみに描かれている人物は、同じ時代に隆盛を迎えた似絵(やまと絵の肖像画。)の技法によるものです。つまり、古来の優れた和歌に思いを馳せながら美しい似絵も楽しめるという、実に贅沢な作品だというわけです。
*古今和歌集 小野小町*
「色見えで うつろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける」
(この作品に収められている和歌です。移ろう恋心を花の色の変化と対比させています。)
ところで佐竹本とは、秋田の佐竹家に伝わった品という意味を示します。元々は二巻の絵巻物だったそうですが、その後切断されるなどして、現在の掛軸の形に落ち着きました。その資料的価値も高い作品です。
さすがに鎌倉時代のものということでやや傷みもあるようでしたが、展示では拡大写真なども用いて、その趣向を楽しめるように工夫されていました。またこの他にも、別場面にあたる2点(住吉明神と壬生忠峯)が展示されています。(20日からはさらに藤原興風が加わり、合計4点が展示されます。)そちらもなかなか見応えがありましたが、この小野小町の美しさはやはり別格です。全く予備知識なく拝見した作品でしたが、一目見てその姿に惹かれました。
展示期間は来月1日までです。また、佐竹本の小野小町は滅多に展示されない作品だとも聞きました。これを機会に一度ご覧になられてはいかがでしょうか。
*ak96さんのブログ「徒然なるまままに」に、佐竹本三十六歌仙一覧表が掲載されています。これは必見です。
特集陳列(本館特別1室) 9/5-10/1
「佐竹本三十六歌仙絵(小野小町)」(13世紀)
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この小野小町には惚れました。今、東京国立博物館で特別に展示されている「佐竹本三十六歌仙絵(小野小町)」です。黒髪を垂らし、朱の映えた装束を纏う小野小町。あたかも顔を隠すかのようにして後ろを向いています。(そう言えば、百人一首の小町も後ろ向きでしたが…。)水のように流れる黒髪と、折重なる装束が、まるで一つの波のように合わさっていました。華麗です。
「佐竹本三十六歌仙絵」とは、数ある「三十六歌仙絵」の中でも一番古い時期に属する作品です。また「三十六歌仙」とは、藤原公仁(966-1041)の選んだ36名の歌人のことで、小町の他にも、山部赤人や在原業平などの有名な歌人が挙げられています。そして鎌倉時代に、彼ら歌人たちを尊ぶ風潮が興って、この「三十六歌仙絵」が成立しました。ちなみに描かれている人物は、同じ時代に隆盛を迎えた似絵(やまと絵の肖像画。)の技法によるものです。つまり、古来の優れた和歌に思いを馳せながら美しい似絵も楽しめるという、実に贅沢な作品だというわけです。
*古今和歌集 小野小町*
「色見えで うつろふものは 世の中の 人の心の 花にぞありける」
(この作品に収められている和歌です。移ろう恋心を花の色の変化と対比させています。)
ところで佐竹本とは、秋田の佐竹家に伝わった品という意味を示します。元々は二巻の絵巻物だったそうですが、その後切断されるなどして、現在の掛軸の形に落ち着きました。その資料的価値も高い作品です。
さすがに鎌倉時代のものということでやや傷みもあるようでしたが、展示では拡大写真なども用いて、その趣向を楽しめるように工夫されていました。またこの他にも、別場面にあたる2点(住吉明神と壬生忠峯)が展示されています。(20日からはさらに藤原興風が加わり、合計4点が展示されます。)そちらもなかなか見応えがありましたが、この小野小町の美しさはやはり別格です。全く予備知識なく拝見した作品でしたが、一目見てその姿に惹かれました。
展示期間は来月1日までです。また、佐竹本の小野小町は滅多に展示されない作品だとも聞きました。これを機会に一度ご覧になられてはいかがでしょうか。
*ak96さんのブログ「徒然なるまままに」に、佐竹本三十六歌仙一覧表が掲載されています。これは必見です。
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