「花鳥の詩」 山種美術館 9/23

山種美術館千代田区三番町2 三番町KSビル1階)
「花鳥の詩」
8/19-9/24(会期終了)

日本画の醍醐味でもある花鳥画が揃った展覧会です。お馴染みの土牛や御舟を中心に、約50点ほどの美しい日本画が展示されていました。



びわ色の体が映えた、速水御舟の「朝鮮牛図」(1926)は絶品です。鼻輪を付けられて、少し前のめりになった一頭の牛。すらりと垂れた尾や、直線的に伸びる背中の描写が、凛とした牛の姿を捉えています。そしてその透き通った目の味わい。この気品はどこからやって来るのでしょうか。見ているとまるで心が浄化されるようです。初見でしたが、いつも惹かれる御舟のさらなる名品に出会うことが出来ました。これはたまりません。



横山大観からは「木菟」(1936)も印象的です。闇から朧げに浮き上がるミミズクが一羽、木の幹にしっかりと足を付けてとまっていました。そしてこの作品もそれこそ目に注目です。まさに万物の全てを見通すかのような強い意思が感じられました。まさに慧眼でしょうか。この視線からはなかなか逃れることが出来ません。



奥村土牛では「兎」(1942)を第一に挙げたいと思います。お得意のたらし込みによって生まれた重量感のある兎。丸みを帯びたその体と、仄かにピンク色がかった耳のコントラストが優れていました。憂うかのように佇むその所作もまた魅力的です。一体、何を見つめているのでしょう。



この展覧会のハイライトは上村松篁の「白孔雀」(1973)でした。実際の白孔雀も大変に羽が長く、実に見事な鳥だということですが、この作品もそれに負けないような美しさを表現しています。胸を張って構える白孔雀と、その後方へ限りなく伸びる羽の連鎖。まるでレースのカーテンのように薄く透き通り、そして後ろは白煙のように靡いていました。また、黄色いハイビスカスとの響宴も冴えている。これまでに見た松篁の中でも、一位二位を争うような美しい作品だったと思います。

好みの花鳥画だったからでしょうか。いつもよりもさらに楽しく拝見することが出来ました。澄んだ秋空の下の休日にぴったりな展覧会だったと思います。


*本日より山種美術館のWebサイトが全面リニューアルされました。全く趣が一新され、大変スマートに、また見やすくまとまっています。それにプリントアウト専用の割引券(100円引!)もついていました。是非一度ご覧になってみてください!(トップページの背景に御舟の「炎舞」が掲載されているのも嬉しいところです。)
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