「東京オリンピックと新幹線」 江戸東京博物館

江戸東京博物館
「東京オリンピックと新幹線」 
9/30-11/16



江戸東京博物館で開催中の「東京オリンピックと新幹線」を見てきました。

今年開業50年を迎えた東海道新幹線、そして開催から同じく50年が経った東京オリンピック。思えば1964年は、東京オリンピックと東海道新幹線という二つのビックプロジェクトが為された年でもあります。



それを振り返っての展覧会です。出品は新幹線やオリンピック関連の資料など200点。模型だけではなく、図面や資料などもかなり展示されています。思いの外に見応えがありました。

さてタイトルにもあるように、ともかくオリンピックと新幹線が際立っていますが、実はそれに加えてもう一つ重要な展示があるのもポイントと言えるかもしれません。


「東京オリンピックポスター(公式Bポスター)」 デザイン:亀倉雄策 写真:早崎治 1962(昭和37)年

とするのも本展は大きく分けて三部構成。オリンピックと新幹線の開業に先立ち、言わば前史として、終戦から1960年頃までの生活資料を見せているのです。

そしてこれが面白い。始まりは1946年にヒットした「リンゴの歌」です。会場内にもBGMとして流れている。「市民の声」を聞くために行われたNHKによる「街頭録音」の幟なども展示されています。

さらに終戦後に発刊された雑誌もずらり。岩波の「世界」をはじめ、女性誌、男性誌を問わず並んでいます。当初はアート誌として人間の性の解放をうたったという「性文化」の表紙はボッティチェリでした。

日本国憲法公布時に出た記念メダルや都電の記念乗車券なども興味深いもの。また1947年に発行された東京の戦災消失区域の地図も目を引くのではないでしょうか。都心部から現在の環七の内側にかけてかなりの地域が失われていることが分かります。ちなみにこの時はまだ22区です。後に板橋と練馬が分離して23区となりました。

そして昭和30年代の家電製品です。いわゆる三種の神器として最も普及が遅かったのが電気冷蔵庫です。電気洗濯機は脱水用でしょうか。レバーが付いています。さらには白黒テレビです。1953年(昭和28年)に発売され、1964年には普及率が90%近くに達しました。また団地の設備、当時は最先端だったステンレス製の流し台なども登場しています。こちらは懐かしい方も多いかもしれません。

「アサヒグラフ臨時増刊 東海道新幹線 開業50周年記念『完全』復刻/朝日新聞出版」

続いては新幹線です。ケースのひな壇にずらりと揃うのは歴代新幹線などのO、OH、もしくはOJゲージの模型。思わずがぶり付きになってしまいますが、開通に至るまでの資料も見逃せません。新幹線建設のために行われた土地収用、輸送量の想定、さらには全体の計画の基礎資料など、おそらくは国鉄の内部で製作された書類なども出ていました。

さて鉄道好きにとって嬉しいのは模型にあわせて、実際に使われた備品も展示されていることです。


「東海道新幹線開業記念タバコ(ピース)」 1964(昭和39)年 個人蔵

電車形式プレートからビュッフェ内の時計にスピードメーター、そして食堂車のメニューに食器類、さらには開業時などに配られたメダルや記念品、また運転士の制服、制帽など、かなりバリエーションがあります。


「東海道新幹線0系電車の1等車座席」 1964(昭和39)年 個人蔵

極め付きは0系の座席です。私も微かに記憶にある青とシルバーのモケットシート。また開業時、1等車(現グリーン車)と呼ばれていたゴールドの2人掛けシートもあわせて展示。何でも当初は1等車をゴールドクラスと呼ぶ計画があったために、このような色になったそうです。そして0系新幹線の団子鼻、連結器カバーも実物です。目移りしてしまいます。


「東京オリンピックポスター(公式Dポスター)」デザイン:亀倉雄策 写真:早崎治 1964(昭和39)年 江戸東京博物館

3部立てのラストがオリンピックです。始まりは招致ポスター。そして亀倉雄策による有名な4種類の公式ポスターが並びます。第一号のAポスターは10万部刷られたとか。また最後の公式Dポスターは聖火を持ったランナーのデザインですが、何とロケ地は荒川の土手だったそうです。これは知りませんでした。

都民向けの啓発ポスターも面白いのではないでしょうか。「食中毒なくして明るいオリンピック」や「オリンピック!世界にしめそう明るいタクシー」などの標語がうたわれています。ひょっとすると2020年の次期東京オリンピックに向けても同じようなことが行われるかもしれません。


「東京オリンピック会場施設模型(国立競技場)」 1962(昭和37)年 秩父宮記念スポーツ博物館

もうまさに解体されようとする国立競技場のスタンド平面図や代々木選手村の会場模型など、建築好きにも楽しめそうな資料も少なくありません。そしてオリンピックで実際に使われたメダルやユニフォームなどの展示も臨場感を高めてくれます。

僅かながら芸術関連の展示も見どころの一つです。オリンピックの年に東京国立博物館や東京国立近代美術館で開催された記念の展覧会のカタログや半券などが並ぶ。前者は「日本古美術展」、後者は「近代日本の名作展」です。また内容について細かに踏み込んではいませんが、記録映画の製作に関する展示もあります。オリンピックを別の角度から見定めてもいました。


「カラーテレビ」 1963(昭和38)年 NHK放送博物館

私はこの時代を全く知りませんが、どこか懐かしさを覚えるのが不思議でなりませんでした。ひょっとすると両親なりから話の聞いた1960年代の熱気のようなものを、展示を通して擬似的に体験出来たのかもしれません。

土曜の夕方以降に出かけましたが、会場内は空いていました。(毎週土曜のみ19時30分まで開館。)余裕をもって観覧出来ると思います。

「東京オリンピックと新幹線展 博物館相互割引について」(江戸東京博物館)

東京ステーションギャラリーの「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン展」と原鉄道模型博物館「ありがとう!SHINKANSEN展」の間で相互割引があります。半券をお忘れなきようご注意下さい。

「東京オリンピックと新幹線/青幻舎」

11月16日まで開催されています。

「東京オリンピックと新幹線」 江戸東京博物館@edohakugibochan
会期:9月30日(火)~11月16日(日)
時間:9:30~17:30 *毎週土曜日は19時半まで。(入館は閉館の30分前まで。)
休館:月曜日。(月曜が祝日の場合は翌日)
料金:一般1340(1070)円、大学・専門学生1070(850)円、小・中・高校生・65歳以上670(535)円。
 *( )は20名以上の団体料金。
 *常設展との共通券あり
 *毎月第3水曜日(シルバーデー)は65歳以上が無料。
住所:墨田区横網1-4-1
交通:JR総武線両国駅西口徒歩3分、都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口徒歩1分。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )