長野・小布施への旅~北斎の足跡を訪ねて 前編:長野県立美術館・善光寺

江戸時代の浮世絵師、葛飾北斎は晩年に3度に渡って現在の長野県の小布施を訪ねると、祭屋台や寺院の天井絵などを描くなどして活動しました。



今回、私が長野と小布施に行こうと思ったきっかけは、同県立美術館にて『葛飾北斎と3つの信濃―小布施・諏訪・松本―』が開かれていたからで、あわせて北斎ゆかりの寺院として知られる岩松院なども拝観するため、小布施にも足を伸ばすことにしました。

東京駅から北陸新幹線のあさまに乗り、11時頃に長野駅に着くと、まずはバスにて長野県立美術館を目指しました。



長野県立美術館は、善光寺本堂に隣接する城山公園内に位置していて、前身の長野県信濃美術館(1966年開館)の老朽化による建て替えにより、2021年にオープンしました。



新たな美術館を設計したのは宮崎浩/株式会社プランツアソシエイツで、善光寺を望むロケーションの中、城山公園へと埋め込まれるように建てられました。また隣接する谷口吉生による東山魁夷館は、建築後30年経った2019年に全面的に改修されました。



『葛飾北斎と3つの信濃―小布施・諏訪・松本―』(8月27日会期終了)は、「冨嶽三十六景」といった代表的な摺物をはじめ、美人画や花鳥画といった肉筆を踏まえつつ、信州の3地域での北斎の活動を紹介するもので、北斎に加えて松本の商人と関わりのあった高弟の抱亭五清の作品などが公開されていました。


『上町祭屋台』 1845年 小布施町上町自治会

とりわけ圧巻だったのは北斎が天井画を描いた小布施の上町祭屋台で、同町の岩松院本堂の天井絵の原寸大高精細複製画とあわせて見ることができました。



一通り『葛飾北斎と3つの信濃』を鑑賞したのちは、館内の「ミュゼ レストラン 善」にてランチをいただくことにしました。レストランは善光寺を目の前に望む2階に位置していて、ガラス張りの開放的なつくりとなっていました。



展覧会とのコラボメニュー「小布施」は、アミューズ、前菜のお重、そしてメインの鯛のヴァプール(生姜と柚子風味のソース)に付け合わせの季節野菜の洋風揚げ浸し、それにデザートのゆずのモンブランとゆずを基調としたコースとなっていて、夏らしくさっぱりとした味に仕上がっていました。



このあとは長野県にゆかりの作家の作品を紹介するコレクション展示室、そして日本画家、東山魁夷の作品を展示する東山魁夷館を鑑賞しました。



東山魁夷館とは横浜に生まれ、神戸に移ったのち、長く千葉県の市川に住んだ東山魁夷が、晩年になって自作を一括して長野県に寄贈したのち、1990年に開館したもので、現在は約970点の魁夷作品を所蔵しています。



水盤から建物を望むと、谷口建築ならではの美しい景観を見せていて、魁夷の作品はもとより、建築物としても大きな魅力を感じました。



この東山魁夷館と本館をつなぐ連絡ブリッジに面した水辺テラスでは、美術家の中谷芙二子による「霧の彫刻」が展示されていて、時間を区切って行われる水の噴出により霧が造形物として立ち上がる光景を楽しむことができました。



長野県立美術館を後にし、善光寺へ向かうと、この日は平日にもかかわらず、大勢の参詣客で賑わっていました。



本堂から内陣、お戒壇めぐり、経蔵、善光寺資料館など巡ったのち、山門へと上がると、長野市街を一望することができました。



中編:浄光寺・岩松院・おぶせミュージアムへと続きます。

「長野県立美術館」@naganoartmuseum
休館:水曜日(水曜が祝日の場合は翌平日)
時間:9:00~17:00
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般700円、大学生及び75歳以上500円、高校生以下無料。
 *コレクション展。本館・東山魁夷館共通。
住所:長野市箱清水1-4-4
交通:JR線長野駅善光寺口バス乗り場1から、アルピコ交通バス11系統善光寺経由宇木行、もしくは16系統善光寺・若槻団地経由若槻東条行、17系統善光寺・西条経由若槻東条行で「善光寺北」下車、徒歩約3分。長野電鉄善光寺下駅下車、城山公園へ徒歩約15分。

「善光寺」
窓口時間:9:00~16:30
本堂内陣券:一般600円、高校生200円、小中学生50円、未就学児無料。
 *共通券(三堂・史料館参拝券):一般1200円、高校生400円、小中学生100円、未就学児無料。
住所:長野市大字長野元善町491-イ
交通:JR線長野駅善光寺口バス乗り場より「1番のり場(善光寺方面行き)」に乗車し、善光寺大門下車、徒歩5分。
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