『牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児』が開催中です

フランスと日本にて活動し、ともに自然の風景などを描いた画家、アンドレ・ボーシャンと藤田龍児。地域と時代こそ異なるものの、2人に通じる牧歌的な絵画世界は、どことなく響き合っているといえるかもしれません。



そのボーシャンと藤田龍児の作品を紹介する『牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児』(会場:東京ステーションギャラリー)について、イロハニアートへ寄稿しました。

フランスと日本の2人の画家が愛した自然の風景。ボーシャンと藤田龍児の牧歌的な絵画の魅力 | イロハニアート

展示では前半に藤田、後半にボーシャンの作品が並んでいて、ラストに藤田とボーシャンの作品を合わせて見比べる構成となっていました。

まず藤田の画業で注目したいのは、20代の頃から画家として活動するも、48歳にして大病を患うと、一時絵を描くことを断念していて、その後50歳を過ぎてから再び絵筆を取ったことでした。

また初期の頃は抽象的な表現をとっていながら、再び画家の道を歩みはじめた以降は、広い野原や小高い丘、また古い街並みや鉄道や工場といったのどかで親しみやすい風景を描いていて、作風を大きく変化させていました。

しかし若い頃からモチーフとして描いたエノコログサ(猫じゃらし)などは、後年も一貫して取り上げていて、画家が強い生命力の象徴として捉えていたエノコログサへの愛着を見ることもできました。このほか、下塗りに黒を用いていたり、ニードルによるスクラッチ(引っ掻き)を多用するなど、細かな表現の技法についても興味深かったかもしれません。



一方、美術とは無縁の環境に育ったボーシャンは、苗木職人として園芸業を営んでいて、結果的に画家の道を歩みはじめたのは50歳を前にしてからのことでした。

元々、順調に園芸業を営んでいながらも、一次大戦の終結後は農園が荒れて破産し、妻が精神に異常をきたすなど、過酷な現実とも向き合っていて、後に絵こそ高く評価されたものの、必ずしも順風満帆の人生とは言えませんでした。


ともに過酷な状況に置かれつつ、心に染み入るような牧歌的な作品を描いたボーシャンと藤田には、確かに共通する要素が見出せるのではないでしょうか。そのノスタルジックで温かみのある風景世界に心を惹かれました。

東京ステーションギャラリー単独での開催です。他館の巡回はありません。

7月10日まで開かれています。

『牧歌礼讃/楽園憧憬 アンドレ・ボーシャン+藤田龍児』 東京ステーションギャラリー
会期:2022年4月16日(土)~7月10日(日)
休館:月曜日。*5/2、7/4は開館。
料金:一般1300円、高校・大学生1100円、中学生以下無料。
 *オンラインでの日時指定券を販売。
時間:10:00~18:00。
 *金曜日は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
住所:千代田区丸の内1-9-1
交通:JR線東京駅丸の内北口改札前。(東京駅丸の内駅舎内)
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